概要
遊戯王OCGは分かりやすさを重視し、カードのテキストはなるべく短く、また細かいルール用語の定義もあえてせずに運営されてきた。それゆえ既存カードゲームに馴染めなかった層を取り込むことに成功し、一大事業として大成功を収めた。
しかしその弊害として「テキストを読んだだけでは効果の詳細がわからない」「効果発動時の処理がカード1枚1枚で違う場合すらある」という事態が多発し、非常にルールによる裁定が複雑なTCGとなってしまった。
こうしたトラブルの対策として、カード効果についての質疑応答を行う「OCG事務局」が設置されているのだが、この事務局が度々珍回答・誤回答を行ったり、ひどい時は担当者によって言うことが違うという事すらあるために「遊戯王のテキストは日本語ではなくコンマイ語で書かれている」と揶揄されるようになった。
プレイヤーたちもコンマイ語の解釈と運用には日々頭を悩ませており、劇中セリフを引用して
などとネタにしている。
蔑称的な意味合いが強かったが、現在では開発側の尽力によりテキスト、データベース、処理その他諸々が整備されたため、日本語的に違和感のある部分はともかく、開発側の対応がおかしいとしてこの言葉が使われることはかなり減っている。むしろ、シンプルに「誰もが引っかかるあるあるネタ」として使われることの方が多い。
なお軍貫、マナドゥムのようにトンチキなテキストが書かれたカード群が存在するが、これらは意図された演出でありコンマイ語には含まれない。
注意点
デタラメエピソードの流布
有名なコンマイ語エピソードに「カードが違います」があるが、根拠とされる遊戯王Wikiからは記述が削除されており、2chスレの住民からも悪ふさげによる編集を指摘されている。ほか「やむを得ない」「どこでお知りになりましたか?」などの回答が来たという報告もあるが、こちらも悪ふさげの可能性が高く、真偽のほどは不明。
近年ではYouTube、Twitter、まとめサイト等でバズり目的のために、こうしたデタラメエピソードを大袈裟に取り上げ、それを鵜呑みにした初心者や第三者が不適切な発言及びコメントをする事例が後を絶たない。
コンマイ語が難解なのは事実で、当時の開発側の対応が不十分だったり、首を傾げるような裁定が多かったのもまた確かではあるが、だからと言ってデタラメを流布するのは褒められた行為ではない。あくまでも事実だけを「決闘者あるあるネタ」として楽しむようにしたい。
そもそも遊戯王OCG自体『遊戯王』の原作者である高橋氏がストーリーのために大まかに考えたものを、コナミが悪く言えば適当に商品化したものであり、ルール云々は後付けである。
あくまでファングッズ、玩具の一環と販売していたところ、人気を博し展開が大規模になるにつれ、一大カードゲームと化したという経緯があるので、無視できない矛盾が大量に生まれてしまったのは半ば必然であると言える。
また下記で散々述べるように約25年の歴史のうち15年がコンマイ語を巡るやり取りだった。言い換えれば公式とプレイヤーが共に歩んだ努力の道すじで、口うるさく問題視するのも「ゲームをもっとより良いものにしたい」という前向きな気持ちの表れである。だからこそ有志の遊戯王Wikiで積極的に情報共有を行っており、それがひとつの文化として有名になった。
これらを当事者でもない人間があたかも知った口で揶揄するのは、あまり良い顔をされないことは覚えておこう。
過剰なコンマイ語叩き
限定解除(遊戯王)の発表時、儀式モンスターの特殊召喚ルールを無視して特殊召喚するカードのため、蘇生制限を満たさず同期の簡易融合より弱いとして、コンマイ語だと批判が続いていた。
しかし後にヌーベルズの共通テキストがこのカードに準じたものであることが分かり、実際は正常なテキストだったと判明した。
あくまでゲームを楽しむためにテキストの不備が気になるのであって、テキストの不備を探すゲームではない。あまりに開発叩きに固執しすぎると上記のような形で自分が赤っ恥をかくので、ヒートアップしがちな人は何のために遊戯王をプレイしているのか今一度見直すようにしたい。
具体例
似たような意味だが、ルールにおいては違う用語
日本語的に違和感があるかもしれないが、そういうルールである。
- フィールドゾーン、フィールド(場)
前者はフィールド魔法を置くエリアのこと。
後者はフィールドゾーン、(EX)モンスターゾーン、魔法罠ゾーンをまとめた用語。
- 墓地に捨てる、墓地に送る
前者はコストとして手札から墓地に送る、またはテキストに「捨てる」と明記されていた場合。
後者は上記のほか、効果や破壊などを含めた墓地送りのことをいう。
- 時に~できる、場合に~できる
前者はチェーン2以降には発動できず、別の処理が挟まった場合タイミングを逃す。
後者は逃さない。
- このカード名の効果は1ターンに1度しか~、この効果は1ターンに1度しか~
前者は2枚目以降の同名カード含めた制約で、正真正銘ターン1しか発動できない。
後者はそのカードのみの制約で、2枚目以降があれば発動できる。
- 効果の発動を無効にする、カードの効果を無効にする
前者はチェーンブロックの処理中のみ無効で、以降は解除される。
ほか(1)(2)と複数の効果がある場合、(1)の発動を無効にしても(2)までは無効にされない。
後者はカードそのものが無効で、期間も「ターン終了時まで」等テキストに記された通りになる。
発動条件を満たしているのにルール上不可
これらは初心者目線では首を傾げるような話で、子供時代は無視していた、『タッグフォース』などのゲーム作品で初めて知った等のエピソードも聞かれる。とは言えしっかりルールとして制定されている以上、他の事例に比べればまだ納得のできる範疇である。
- 墓地からモンスターを蘇生する ←できない(蘇生制限)
融合、シンクロ、エクシーズ、リンクモンスターなどは正規の手段で特殊召喚しなかった、あるいは特殊召喚に成功しなかった場合、蘇生制限を満たさず、墓地から蘇生できなくなるルールがある。そのため神の宣告で融合召喚を無効にされた青眼の究極竜を死者蘇生で蘇生、といったプレイングはできない。
- カウンター罠にチェーンしてカード発動 ←できない(スペルスピード)
遊戯王にはスペルスピードの概念があり、チェーンできるのはそれ以上のスペルスピードを持つカードのみ。カウンター罠はスペルスピード3なので、同じカウンター罠でしかチェーンできない。例えば神の宣告による破壊をスターダストドラゴンで無効、といったプレイングはできない。
- 戦闘破壊時の効果にチェーンしてカード発動 ←できない(ダメージステップ)
「戦闘で破壊され墓地に送られた場合、〇〇する」などにチェーンして、無効系の通常罠、速攻魔法、モンスター効果を発動することはできない。これはダメージステップ時はスペルスピード3のカウンター罠と一部の例外しか発動できないルールがあるため。
- 〇〇した時、カード発動 ←できない(タイミングを逃す)
上にも書いたが「~の時、〇〇できる」という文言のカードは、通称”時の任意効果”と呼ばれ、直前に発動したカードにしかチェーンできない決まりがある。
例えばリンク召喚が行われた時、①L召喚時に発動する効果、②L素材として墓地に送られたモンスターの効果、とチェーンを組まれると、②に対して発動条件を満たしているかどうかが判定され、①については「タイミング逃している」ため判定すら行われない。最近のカードだと「S:Pリトルナイト」でこのケースが発生しがち。
対象を取る、取らない
おそらくコンマイ語として一番話題になったエピソード。
遊戯王のカード効果には対象を取るもの、取らないものの2種類がある。しかし第9期以前はカードテキストが曖昧で、何をもって「対象を取る」のかが全くもって不明であった。
- 収縮(取る)
モンスター1体を選択する。そのモンスターの元々の攻撃力は(中略)半分になる
- 次元幽閉(取る)
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。その攻撃モンスター1体をゲームから除外する
- 地割れ(取らない)
相手フィールド上モンスターの、攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊する
- サンダーブレイク(取る)
フィールド上に存在するカード1枚を選択して発動する。選択したカードを破壊する
一見すると複数ある選択肢から選ぶ、もしくは「選択」というワードが入っていれば”取る”カードのように思えるが、次元幽閉はその法則に当てはらまない。
別の見方をして、地割れのように効果の対象が指定されていれば”取らない”カードなのかと思いきや、次元幽閉は「攻撃モンスター」と指定されているのに”取る”カードである。違いは何なのか。
答えを言うと判断基準は「処理のタイミング」であり、カードの発動と同時に「このカードに対して使います」と宣言するのが”取る”カード、宣言しない(相手が確認したのを見てから言う)のが”取らない”カードである。
しかしそんなことは上記テキストから読み取れるわけがない。そのためカードごとに「このカードは対象を取るのか」と事務局に確認する必要があり、その難解さからプレイヤー間で話題となった。中には〇〇が対象を取らないのはおかしい等、激しい議論に発展するケースも。
この話題は遊戯王を全く知らない層にも波及し、特に対象を取る・取らないの議論について「日本語的には問題ないのに、なぜ遊戯王界隈では騒ぎ立てるのか」「遊戯王プレイヤーは国語を勉強しろ」など、見当違いの指摘や批判がされるほどだった(当時はこのようなニュアンスの批判記事がグーグルの検索トップに来ていた)
開発側も問題と思ったのか、第9期以降のカードは法則性を持たせられたが、今度は古いカードとの齟齬が起きるという別の問題も発生した(下記)
旧テキストとの齟齬
- 収縮(旧テキスト)
モンスター1体を選択する。そのモンスターの攻撃力は(中略)半分になる。
- 第9期以降のカード
~を選んで、〇〇する。
これも上記に関連したエピソード。
前者は「対象を取る」効果で、後者は「対象を取らない」効果である。しかし日本語的にはどちらも全く同じ意味であり、第9期以降から入ったプレイヤーからすると意味不明な裁定となっている。
第9期以降の新しいカードは、プレイヤー側に配慮してカードテキストが分かりやすくなっているのだが、古いカードはそのままで、結果このような齟齬が起きてしまった。
現在は開発側の尽力により古いカードを含め「~を対象として」または「~を選んで(対象を取らない)」と統一され、エラッタできなかったカードについても公式データベースで「このカードは対象を取ります」と補足するようになった。そのため、現在はこの点についてとやかく言われることは減っている。
『遊戯王マスターデュエル』等で久々に遊戯王に触れたら知っているカードの効果が変わっていたという場合、おそらくこれが原因である。もし友達が困惑していたら優しく教えてあげよう。当時とは処理が代わっていたり、昔できたことができない、または逆にできるようになった…というカードもいくつか出ている。
テキストに記されていない効果
- BF-疾風のゲイル
1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その相手モンスターの攻撃力・守備力を半分にする。
一見するとどこにも判断に困る要素がないが、攻撃力アップの装備魔法を着けている場合はどうなるか等、補足説明が欠けており、少しでも解釈を間違えるとルール違反になる可能性があるという、問題を抱えたカードになっている。
- フィールド魔法の効果で、元から攻撃力が500ポイントダウンしている場合は?
- あるいは収縮で攻撃力が半分になっている場合は?
- このモンスター、戦闘時に攻撃力が1,000ポイントアップするんだけど?
- 魔法や罠でゲイルの効果を無効にすれば、攻撃力は元に戻るんじゃないの?
とにかくややこしい。攻撃力・守備力は戦闘に関わるパラメータで、計算ミスに気付かないまま勝利してしまうと後から不正だとして炎上・批判の的になってしまうので、無視しないわけにもいかない。
ほか逆パターンで、初心者の勘違いをしつこく指摘した結果「うるさいヤツ」とレッテルを貼られ、以降の関係が気まずくなるというケースもある。
ゲイルに限らずこのような事例はいくらでもあり友人同士のデュエルしかり、公式大会しかり、多くのプレイヤーを悩ます原因となっている。
ただ現在はスマホアプリ『遊戯王ニューロン』から公式Q&Aにアクセスでき、そこから上記のようなカードについて公式の見解を得られるので、そこまでデリケートな扱いではなくなっている。
開発者・ジャッジですら把握できていない
プレイヤーからの質問に対して
- 調整中です
- 過去に出した裁定と矛盾した回答
- 自分の墓地カードを当てる「クイズ」発動後にその墓地を確認できてしまう等、頓珍漢な裁定
- 公式大会におけるジャッジミス
もはや玩具の枠を超えて、ひとつの学問の域である。
こうしたトラブルの背景には、事務局の裁定が関係スタッフ間で全く共有されておらず、臨時で対応する部署・担当者もいないという事情がある。
そのため公式大会などにおいて、肝心の公式の判断を仰ぐことができず、各カードショップにいるジャッジ(審判)に判断が委ねられることになってしまい、ある試合ではOKだったコンボ・プレイングが別の試合ではできないと判断されたり、場合によっては失格になったりといった事象が起きた。
このような解釈違いによるトラブルについて、プレイヤー間では「ルール裁定の穴や矛盾、解釈違いを突けばジャッジを利用して相手を失格にできるのでは」と言われ、その恐れがあるプレイングは俗にジャッジキル案件など揶揄されるように。
ほか現場から公式に問い合わせる手段がない関係から、代理として有志作成の遊戯王Wikiがデータベースとして用いられていたが、それを悪用して「遊戯王Wikiの裁定を自分有利に改ざんする」という悪意極まりないプレイングが行われたこともあり、界隈を騒がす大問題となった。
現在ではその反省から、大会では試合中に私物の情報端末を使うことは反則にあたり、専用端末でデータベースを閲覧する決まりになっている。ほか開発側も公式データベースを公開し、解釈の齟齬が起きないようにしているほか、チャット機能を実装しリアルタイムでの問い合わせができるなど配慮をしている。
勿論、実際にこうした盤外戦術を仕掛けるような人はごく少数で、大半のプレイヤーは冗談で言っているだけなのだが実際にできてしまうおそれがあるというのが問題でもある。もし自分がルール不備が原因で発生したジャッジキルによって失格になったりしたら泣くに泣けない話である。
伝説の都アトランティス
「このカード名はルール上「海」として扱う。」という効果外テキストにより、それならカード名は「海」なのではというツッコミが生まれ、公式からもこのカードは「海」であるというニュアンスの回答がされたため、伝説の都アトランティスは存在しないとネタにされるようになった。
さらにそこから派生して、アトランティスの戦士も「ありもしないアトランティスを主張するデタラメ野郎」と風評被害を被ることになった。
念のため追記しておくとネタである。とは言えプレイヤー・公式双方から(そのような意図ではなかったとは言え)存在を否定されるというのは、あまりない現象であり、そのシュールさから笑い話として決闘者の間で定着している。
昨今のコンマイ語
このコンマイ語が特に問題視されていたのは1999~2014年の間に印刷されたカードである。
当然だが公式もそれを認識はしており、2014年の「マスタールール3」制定以降、テキストの改善や、過去のコンマイ語カードのエラッタ再録などが行われている。例えば以下のように効果ごとに(1)(2)と分ける配慮をしている。
- カードA
(1)リリースなしで召喚できるが、その場合そのターンのエンドフェイズに破壊される
- カードB
(1)リリースなしで召喚できる
(2)(1)効果で召喚した場合に発動する、そのターンのエンドフェイズに破壊される
Aは文末までが一つの効果で、妥協召喚した場合は後述のデメリット効果も必ず発動し、月の書で裏守備にするなど対策しない限りどう足掻いてもそのターンは破壊される。
Bは二つの効果に区切られており、妥協召喚と破壊される効果は繋がっていない。つまりスキルドレインなどでモンスター効果を封じれば破壊のデメリットを踏み倒せる。
また2017年の「新マスタールール」以降では「読み替え」という新たな概念が登場し、ルール上おかしな処理が入るカードの再解釈がなされた。上述のおかしな回答・裁定群に関してもこの再解釈によって解決が図られており、明確な回答が出された事例も多い。
無論、同版収録のカードで早速矛盾したり無限ループしたり等の不備が発見されたり、あるいはポールポジションのような無限ループが容易に発生する欠陥カードがありながら、その反省を生かさず簡単にループを組めるカードを刷ってしまうなどツッコミどころは多いが、開発側も全く努力していないわけではないのだ。
公式化?
遊戯王ARC-Vにて、エクシーズ召喚のルールを知らない勝鬨勇雄がXモンスターのことを「レベルを持たないならレベル0」と誤解してしまったことがある。
しかし実際には「レベルの概念がない」が正しい解釈であり、遊矢にそのことを指摘された勝鬨は「何?レベルを持たないならレベル0ではないのか!?」と驚愕、このミスによって敗北してしまうことになった。
余談
- コンマイ語全盛期は、テキストが長文の場合、何かしら”書いてないルール”があるため読んだ通りの処理が行われることは稀で、むしろ「テキストが短いカード」ほど解釈が分かれる余地がないためかえって強いと言われたりした。
- デュエルマスターズでも2010年台後半以降に複雑な効果や二転三転する裁定などが原因でトラブルが増加し、コンマイ語を捩ってタカラトミー語と揶揄されるようになった。
- 遊戯王だけがネタにされがちだが、このようなテキストの不備を巡るトラブルは他のTCGでも散見される。2010年代中後半からSNSなどで他TCGとも関わる機会が増え、また競技性の高い大会も増加したことで、遊戯王以外のTCGでも企業に裁定を訪ねるケースが増加、そのなかで効果の複雑化により分りにくかったり、裁定が二転三転したりするケースが増えたため、遊戯王を笑えるという状況ではなくなったという話も聞く。
関連タグ
歯車街:デュエルリンクスでは裁定変更後の正しい挙動をしているが、旧環境でしか使ったことの無いプレイヤーからバグと勘違いされる珍事が起きた。
ポールポジション:装備カード一枚と併用するだけで無限ループが発生してしまう、欠陥カード。現在は裁定変更でこのような問題は避けられているが、これ自体が黒歴史なのか、再録が行われていない。
まるで将棋だな(異世界はスマートフォンとともに。):「魔法が効かない敵を魔法で倒す」というコンマイ語を思わせるシーン。実際は無茶苦茶な事柄というほどでもなく、理屈自体は定番の方法だったのだが、直前に取ってつけたかのような将棋の話題が出ていた事、それをこの台詞と共に思いつく流れがあまりにこじつけすぎる点が特に槍玉に挙げられてしまった。