「ウタの話をしよう」
※この記事はONEPIECE FILM REDのネタバレ情報を含みます。 |
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概要
CV:津田健次郎
突き出た頭とその頭に残るつぎはぎ、ウタと同じヘッドホンにサングラスと一見するとフランケンシュタインの怪物を想起させるような頭部である一方、首から下は貴族風という特徴的なスタイルの人物。
FILM RED本編に登場し、赤髪のシャンクスと“世界の歌姫”ウタの関係を知っている人物。
人物
音楽の国『エレジア』の元国王であり、崩壊したエレジア王国にウタとたった2人で暮らしている。
音楽の教師としての才能にも恵まれているらしく、ウタを1人で「世界の歌姫」になるまで育て上げた。ウタのもう一人の育ての父親と呼べる人物。
いち国家の元首らしく責任感の強い人柄で、本編中の行動は一貫して(主にウタに対する)深い愛情と責任感に端を発している。
個人として、ウタに楽譜に拘束され、抜け出すためにベポがコミュニケーションがとりにくく、手間取りながらも脱出に成功した時は穏やかな声で礼を言うなど、人の好さがうかがえる。
活躍
ウタの初ライブ「NEW GENESIS」にて、城らしき建物から会場を物憂げに眺める様子で初登場。
この時点では素性はおろか、名前すら明かされなかった。
次の場面ではウタに追われるルフィらを建物の中に匿う形で登場。しかしウタに発見され、捕獲される。
その後、ベポに救出された後、ルフィ達の元へ赴き、過去の出来事と現在の行動の目的が語られる。
その際に語られた出来事とは以下の通りであった。
12年前、赤髪海賊団がエレジア王国を訪れた際にウタの才能に魅了されたゴードンは「我が国には音楽に関するあらゆる環境が整っている」「国を挙げて歓迎する」と彼女を勧誘。
シャンクスもウタに、船を降りてここに留まっても良い旨を伝えるが、ウタは「自分は赤髪海賊団の音楽家だ」と降船を拒否。シャンクスもその意思を尊重していた。
しかしその夜、エレジア王国全域が炎上するという事態が発生。
その惨状の原因は赤髪海賊団。
ウタを餌にエレジア王国に入り込み、王国を燃やし尽くし、財宝を奪い、ウタを置いて逃走したのだ。
その後ゴードンとウタは2人で王国内で生活し、心に傷を負ったウタに対してせめてもの慰めにとゴードンは音楽を教え続けた。
しかし本編直前の時期、ウタのライブを利用した計画を知るやこれに反対。
だがゴードンがウタの能力を知っているからか、ゴードンからウタに対して積極的に計画阻止に動くことも、ウタからゴードンを積極的に捕縛しておくことも、ライブ当日まではお互いに行わなかったようである。
その後麦わらの一味と協力してウタを止めようとする中、ウタが放った一撃からルフィを庇い腹部を刺し貫かれてしまう。
「シャンクスを信じてるような奴をなぜ庇うのか」と問うウタに対し、ゴードンは真実を語り始める。
「すまなかった…今まで本当のことを言えなくて…」
12年前にエレジア王国を襲ったのは、赤髪海賊団ではなくウタが歌った「TotMusica」により呼び出された魔王「トットムジカ」だった。
ゴードンは魔王を止めてくれたシャンクス達に感謝しつつウタの心に傷を負わせないために「この惨劇は私のせいということにする」と話すも、シャンクスから「この惨劇も、ウタをこの国に置いていくことも、全て赤髪海賊団がやったと伝えてくれ」と提案され、以来12年間シャンクスとの約束を守り続けてきた。
この真実を語ることでウタの赤髪海賊団、ひいては海賊そのものに対する憎悪も拭い去れると信じていたゴードンだったが、なんとウタは1年前にその真実を知っていたことが発覚。
ウタを止めることは叶わず、暴走を止めることは麦わらの一味と赤髪海賊団に託された。
その後魔王が撃破されると同時に腹部の傷も回復した。
一連の騒動後はエレジアを離れ、どこかの島の子供たちに再び音楽を教えているようだ。
評価
上述の通り、責任感と良識を持つ善人として描写されていることは間違いなく、鑑賞者にもそれは伝わっている。
(なお、公開直前の時点でも本編において目立つような悪役キャラ・黒幕キャラが発表されていなかったこと、演じるのがクセのある悪役を演じることも多い津田氏だったことなどから、「コイツが黒幕では?……」と一部のファンからは疑われていた。
しかし公開後には「疑ってごめ゛ーん!!!!」「すげぇいい人だったわ」などの180度翻った意見が大勢を占めた。)
一方で彼が取った選択肢が全て最善であったかというと疑問が残り、特に
- ウタが大人になった後も12年前の真実を告げなかった事
- 禁忌の楽曲の楽譜を処分せず、彼女の力を恐れて島の外に出す機会を失った事
の2点については公開後の批判も根強い。
前者に関して言うと、ウタが真実を知ったのは本編の1年前、配信開始からは2年が経過しており、「ウタの海賊嫌いに同調するファン」「海賊の被害に遭っている現状でウタに救われたファン」の数が膨れ上がっていた。「海賊嫌いのウタという看板」を下ろすわけにはいかなくなっていたのである。
「自身が海賊嫌いとなった原因は真実ではなかった」「しかし海賊嫌いのキャラを取り下げることもできない」この二律背反がウタを精神的に追い込み結果として狂気の計画の原動力としてしまったことは本編で描写された通りである。
ゴードンの視点で見た時、心に傷を負った子どもに真実をいつ告げるべきかというのは難しい問題と言えるものの、遅くとも配信開始前の17~18歳頃の時点で伝えていれば、ウタの歌姫としての在り方もまた別のルートを辿れた可能性は高いだろう。
後者については、ゴードン自身も「音楽が大好きであるが故に禁忌の楽曲が刻まれた楽譜を捨て切れなかった」と事態を悔やんではいる。しかしながら12年前の惨劇を知っていながら(さらにその惨劇に至る道筋は楽譜の保管状況や誰かのミスによるものではないことも把握していながら)何らの処分も行っていなかった点の責任は重いと言わざるを得ないだろう。
そしてエレジアの外でかつての悲劇が繰り返される事を恐れ、積極的にウタを島の外に連れ出す事が出来なくなってしまった結果、彼女は12年間を自分とゴードン以外に誰もいない廃墟と化したエレジアで過ごし、SSG電伝虫が流れ着くまで碌に他者と交流する事なく成長してしまった。
この点に関しての擁護は非常に難しく、本編で描写されていない特異的な性質を予想する声があるに留まる(もっとも、本編中において全く無言及ならともかく、ゴードンがはっきりと「処分できなかったのは自分の意思のせい」と言及している以上はそういった特異的な性質があることを前提にした考察は妄想の域を出ないと言わざるを得ない)。
「トットムジカが発動されたからこそ現実世界とウタワールドの接点が生まれ、麦わら・赤髪連合軍によるウタワールド撃破が可能になった」という擁護もあるが、結果論として映画ではトットムジカを倒した段階で既にウタワールドにいた人々の心は魔王の力に飲み込まれてしまい、裏技的な手段でのウタワールドからの脱出方法としては機能しなかった。
総論的に見ると、彼が「良き父親、良き王であろうとした」人物であることについては疑いの余地はない。しかし12年前の真実をウタに告げるという形でウタ自身と向き合わなかったこと、自国に伝わる災厄に立ち向かわなかったことなどから、責任を取るための行動を自ら積極的に行ってきたという評価もまたし難い。
そういった一連の不作為が本編における惨状を引き起こしてしまったという意味では黒幕めいた立ち位置と言える。しかし彼はそうした事実を踏まえた上で「私は愚か者だ!」と後悔の念を口にしているのであって、いわゆる「黒幕」という言葉から想起されるイメージとは異なった人物ではある。
特にその際には家族を幸せにしなかった実父を持つウソップやサンジからは
「アンタは父としてちゃんとやってた」
「国を滅ぼされても、(シャンクスとの)誓いを守って立派だぜ!」
とウタを孤独にしなかった旨のフォローを受けているので、「悪」を持った役として描写されていないのは確かと言える。
余談
CVを務める津田氏は、本編ではヴィンスモーク・ヨンジの声を担当している。
関連タグ
ONEPIECE FILM RED エレジア(ONEPIECE)
末堂アケミ:『悪意こそないが物語の元凶とも称せる人物』繋がり。
志村菜奈:上記の内容と似ていて息子を守るため良かれと思った行動が後の悲劇に繋がってしまったジャンプキャラ。また、息子も長い間誤解し、真実を知った事がその悲劇に拍車をかけてしまった。ゴードンの声を務めた津田健次郎氏はこの役で出演している。
エフィリン:同年に発売されたゲームに登場する、事前情報で黒幕と思われていたキャラ繋がり。こちらも発売後に謝罪するプレイヤーが続出した。
また、直接の登場はないものの、同作にも「新世界の歌姫」と呼ばれるキャラクターが存在する。
重村徹大:同じく劇場版限定ヒロインである歌姫の父親であるが、こちらは本当に黒幕。しかし娘を想う気持ちはゴードン同様にある。