「地球の忍者達よ、貴様らと戦うのを楽しみにしていた。だが今のはほんのウォーミングアップ。頼むから……ガッカリさせてくれるなよ?」(巻之三十九)
"暗黒七本槍・七の槍サンダール。他人を一切信じないので、配下はすべて忍獣です。"(巻之四十八の「宇宙忍者ファイル」より)
CV:池田秀一
スーツアクター:蜂須賀祐一
登場話数:巻之三十九「七の槍と謎の石」~最終巻「風と水と大地」
概要
物語終盤より登場する宇宙忍者の一人で、宇宙忍群ジャカンジャの幹部「暗黒七本槍」の七の槍に当たる。
サメのような形をした頭に、陣羽織や裃を思わせる鎧をまとった、如何にも武士らしい佇まいが特徴であり、左目はメカニカルな眼帯で隠されている。
物語開始以前より、「アレ」に関する探索任務に単独で当たっていたようでマンマルバの死から程なくしてタウ・ザントからの招集を受け、「アレ」を巡る地球忍者との戦いに加わることとなった。
能力
七本槍としては作中で最後に姿を現した真打とも言えるポジションなだけに、その実力も他の七本槍の追随を許さぬものがあり、地球へ降り立つ前には「アレ」の出現に必要なアイテムを入手すべく、惑星一つを単騎で破壊するという戦果を挙げているほどである。
身の丈ほどもある剛剣「赦悪彗星刀」、短刀としても使用可能なノコギリのような形をした鉄扇、それに鮫手裏剣を武器とし、さらにこれらを駆使した接近戦だけに留まらず、
- 手から光のロープを伸ばし、複数の相手の動きをまとめて封じる「自在縄」
- 巨大なサメの頭を模したエネルギーに乗って突撃する「縄頭蓋(じょうずがい)」
- 隠れた敵をも探し出す「凶ザ目」
- 特定のアイテムに頼らず巨大化可能な「巨大身の術」
といった具合に、駆使する宇宙忍法の数々も凶悪そのものな威力を発揮する。あらゆる物事を、幾手先までも見通すほどの洞察力も目を瞠るものがあり、彼の立てる緻密な作戦は従前までの七本槍の作戦を凌ぐ高い成功率を叩き出す。
おまけに(御前様に返り討ちにあった事はあれど)作中では目立った苦戦はなく、あまつさえ倒され方も正攻法ではなく、不意打ちによる道連れであり、最後までトップクラスの強キャラとして扱われた(暗黒の意志の分身としてのサンダールの場合はこの限りではないが…)。
人物
しかしそうした戦闘や策略に関わる部分以上に、サンダールを凶悪たらしめているのは極端なまでの二面性にあると言える。理知的で涼やかに振る舞い、同じ七本槍の面々を「同志」と称して協調を謳い、主君であるタウ・ザントにも厚い忠誠を尽くす幹部の鑑とも言うべき姿――それはあくまでも表向きのものでしかない。
その裏の顔は冷徹さと並々ならぬ野心、そして自分以外の全てを見下す傲慢さとを併せ持ったマキャベリストであり、他者を一切信用せず目的のためならば巧みな甘言を弄して徹底的に利用し、また自らの行動の支障となると見て取るや味方でさえあっさりと切り捨てることも厭わない。
無論、タウ・ザントに対する忠誠心も絶対的なものではなく、陰で自らが「アレ」を手に入れる機会を密かに狙っており、後述の通りその本性を垣間見るや土壇場で謀反を起こしてみせてもいる。
そうした気質は、自らが配下として従えている「扇忍獣」の存在や彼等に対する姿勢にも如実に現れており、サンダールはあくまでも彼等を「便利な道具」と看做し、また他の者には一切従わぬよう躾けてもいるなど、ここでもサンダールの他者への不信が徹底された形とされている。
このような二面性の持ち主故に物語終盤における主要な登場人物達の死には大体サンダールが絡んでおり、物語上におけるある種の台風の目とでも言うべき存在の一つとしても位置付けられている。
作中での動向
前述の通り、惑星一つと引き換えに手に入れた「怒りの矢」のメダルを手土産に凱旋を果たしたサンダールは、その外面の良さで「同志」達からの信望を得つつ、ハリケンジャー達との初戦においても完全に彼等を圧倒し、彼等からメダルの封印を解くためエネルギーを吸収。敵味方双方にその存在感をまざまざと示してみせた。
その後もサタラクラを巧みに利用し、さらなるエネルギーの確保で首尾よくメダルの封印を解いてみせたサンダールであったが、七本槍の中で唯一自身に対抗心や不信感を示していたサーガインが、自らの目的の支障になると判断するや、こちらも相手の感情を擽る形でメダルを使わせ、彼が作り出したカラクリシステムのデータを密かに収集。そして用済みとなったサーガインをハリケンジャー達に逆転敗北を喫したのに乗じて始末し、これをハリケンジャー達の仕業であるかのように装うことで「同志」達の戦意を煽ってみせてもいる。
サーガイン「き、貴様……俺を倒したら、カラクリシステムが……!」
「心配無用。データは全てバックアップした。怒りの矢もこのサンダールが取り戻してやる。貴様の存在理由はもうどこにもない」
サーガイン「何ィ!?」
「邪魔なんだよ……ご立派な戦士面も気に食わん。早いとこ……逝けィ」
もっともこの鮮やか過ぎる手際は、後にハリケンジャーと相対した際の彼等の反応と併せてウェンディーヌにも僅かながら疑念を持たれることともなったが、それを知ってか知らずかその後もサンダールは、地球忍者側の手に渡った怒りの矢のメダルの奪還に動き、扇獣を囮にしつつ着実に目的を果たした。
またその過程で、それと対をなす「嘆きの弓」のメダルの在り処が「御前様」であると突き止めるに至り、サンダールはさらなる策略を巡らしその弱点を探り当て、彼女と心を通わせつつあったハリケンジャー達までも利用して悲しみの感情を誘うことで封印を解いてメダルを手中に収めることに成功する。
2つのメダルを確保したことで「アレ」の出現がいよいよ現実味を帯びる中、ここまで順調に進んでいたかに見えたサンダールの策略にも徐々にではあるが綻びが見え始めるようになる。
そのきっかけとなったのは、タウ・ザントを究極体とすべく人間の嘆きと怒りを抽出する作戦にサンダールを押しのけてサタラクラが名乗りを上げたことであった。この作戦でサタラクラが文字通りの捨て駒にされる様を見せ付けられたサンダールは、自らと同様に目的のためならば配下を平気で切り捨てる、タウ・ザントの非情な真意を悟ることとなった。
(だ、誰でも良かった……?サタラクラが手を挙げなければ、このサンダールがああなっていたという事か……!)
さしものサンダールもこれには内心愕然としながらも、そうした様子をお首にも出さず命令違反に及んだサタラクラを粛清し、彼の確保したエネルギーを持ち帰ろうとするが、御前様の仇討ちを挑んできたシュリケンジャーを返り討ちにしながらも彼の放った爆弾ボールの一つが回収したエネルギータンクに食い込んだことまでは気付かず、これがハリケンジャー達によるセンティピードへの突入を許す要因となってしまった。
最期
このような失態を演じながらも既に大勢に影響を及ぼすものではなく、タウ・ザントは一足早く究極体へと変貌を遂げ、彼の手によリ遂に「アレ」も出現するのを待つばかりな状況に至ったのだが・・・正にその時、不意をついてタウ・ザントの眉間を貫いたのは、他ならぬサンダールの凶刃であった。
アレの出現を間近に控え、かつ前述したタウ・ザントの本性を知った今、彼を出し抜き「アレ」を手中に収める機会は、この時をおいて他になかったのである。
「「アレ」の力で高みに上るのはこのサンダールだ。タウ・ザントでもサタラクラでも……ましてサーガインでもない」
かくして本性を露わにし、タウ・ザントを血祭りに上げたサンダールは、生き延びていたフラビージョとウェンディーヌにも刃を向けるが、なおも自らの野望を邪魔せんとするハリケンジャー達の排除を優先すべく、ひとまず彼女達から持ちかけられた共闘を受諾。
そしてハリケンジャー達との激闘の末にフラビージョ達が倒された後も、なお生き延びていたサンダールは自ら巨大化に及び、相対した轟雷旋風神やリボルバーマンモスを難なく圧倒するなど相変わらずの凶悪なまでの強さを示してみせた。
「ついに『アレ』が産まれる。新しい宇宙が産まれる!このサンダールが新しい支配者になるのだ!!」
時同じくして「アレ」の出現の兆しを見て取り、サンダールは意気揚々と勝ち誇るも、その油断が命取りとなって轟雷神の不意の一撃をモロに喰らった末に羽交い締めにされた状態からソードスラッシャーで轟雷神もろとも串刺しにされるという、これまでの強者・策士ぶりとは裏腹な呆気ない最期を遂げてしまう。
「無念……!だが、この星も終わる……宇宙も終わる……!滅びるのだ……ッ!!」
こうして野望達成を目の前にしながらも、ゴウライジャーと刺し違える形で死したサンダールであったが・・・程なくして邪悪なる意志が化身した姿として再びハリケンジャーの前に立ち塞がることとなる。
姿形こそサンダール本人とはいえ、その実態は邪悪なる意志の分身に過ぎず、同じく「蘇った」他の七本槍の面々とともに結束してハリケンジャーを抹殺しようとするも、これをすんでのところで阻んだのはサンダールの道連れとなったはずのゴウライジャーであり、彼等も含めた5人との対決の末にハリケンレッドの繰り出す「疾風流剣技・疾風斬」によって引導を渡されたのであった。
備考
デザインはさとうけいいちが担当。サタラクラがお笑い系であったのを踏まえ、「最高に悪くて頭がいいヤツ」を出したいという制作サイドからの注文を受け、同じくモチーフとして予め提示されていたサメの要素を頭に丸々一匹盛り込む形とされた。
ボディについても武士のイメージも含めつつ、サメの背びれ・腹びれを意識した左右非対称の両肩など、やはり明らかにサメであることが分かる形となっており、刀の鞘も同様にシュモクザメに寄せた形状とされている。
CV担当の池田は、声優としては本作が特撮テレビドラマ初出演となる(※1)。彼の代表的な役柄の一つにして、後年の作品でもパロディや引用されることが多いのがシャア・アズナブル(『機動戦士ガンダム』)だが、本作でも巻之五十における巨大戦にて、「見せてもらおうか、地球忍者のカラクリ巨人の性能とやらを!」「当たらなければどうということはない」といった具合に、シャアの台詞が引用された箇所が存在する。
さらに上記に紹介した、彼の持ち武器である赦悪彗星刀(しゃあくすいせいとう)も、「シャア・アズナブル」と彼の異名である「赤い彗星」を掛け合わせたネーミングである(所謂中の人ネタ)。
後年制作された『海賊戦隊ゴーカイジャー』には、ゲスト怪人の一人としてサンダールの子孫に当たる「サンダールJr.」が登場し、こちらも引き続き池田秀一が声を当てている。前述した他者への不信ぶりは子孫へは遺伝しなかったようで、仲間に対する態度は比較的常識的なものとされている。
海外版『パワーレンジャー・ニンジャストーム』では賞金稼ぎのベクサカスとして登場。
こちらでも謀反を企んでいる点は同じだが、バトライザーを装着したレッドレンジャーに一方的に(格闘戦・空中戦共に)圧倒されたり、別次元のローサー軍団が登場する回では別次元の彼は善人となっていたりと原作からは考えられない姿が度々見られる。
脚注
(※1)顔出しでの出演も含めれば、これ以前にも『ザ・カゲスター』や『ウルトラマンティガ』にてゲスト出演の経験がある。