演:大前均
概要
第37話「蛮力バンリキ魔王」から登場する、スーパー戦隊シリーズ初の第三勢力。子分のバンリキモンスを引き連れてベーダー魔城へやって来た。
アイシー曰く「蛇座をシンボルとし、宇宙に生きとし生けるもの全てを呪い、喰らい尽くさないではおかない」「全てを滅ぼした後はベーダーさえも喰らい尽くしかねない」というほどの血に飢えた無法者で、「地獄の使者」「悪魔の使い」「宇宙の用心棒」とあだ名される。
性格は傲岸不遜で、ヘドリアン女王の前でも平気で粗相をするため、ヘドラー将軍とはまったくそりが合わない。
また37話ではベーダー怪物の卵を、49話では縮小したダストラー達を珍味といいつつ食らうなどかなりの悪食であり、43話でデスマスクラーを「きれいな女」と見惚れて口説くなど、美的感覚も常人のそれとは大きく異なっている。
デンジ星人を目の敵にしており、その末裔であるデンジマンを倒すという共通の目的からベーダー魔城に居候することになる。
ベーダー一族も彼のことはかねてから知っており、デンジマンを独自に攻撃していると聞いても「果たしてそれだけが目的か?」と疑念を抱いていた。
特にヘドリアン女王は「行くところ必ず災いをもたらす悪魔、ベーダーにも災いをもたらすかも知れぬ」と、出会う前から強く警戒を促すほどである。
当初は野心を隠してベーダー一族に協力していたが、やがて野心を露わにして反乱。一度目は失敗し燭台にされてしまうが、密かに忍ばせていたバンリキモンスの卵が孵化すると復活し、モンスとともについにベーダーの実権を握る。
戦闘能力
武器として刃を仕込んだ手甲、愛用の得物である大槍を持っており、これを使いこなしての白兵戦を得意とする。
この手甲は振るうことで刃を次々と投げ放つことが可能であり、距離を選ばない戦いを可能としている。
その実力は極めて高く、デンジマンばかりかヘドラー将軍までも圧倒するほど。とくに対ヘドラー戦ではあちこちにテレポートしながら、更にはテレポート先で互いに巨大化しての剣戟を繰り広げた。
また、自由に巨大化も可能で、ダイデンジンの必殺技・電子満月斬りを真剣白刃取りで受け止めるなどの実力を見せ互角以上に渡り合った(この時点で互いの能力が拮抗したため敢えて決着をつけず、再戦の意志を示しつつ撤退した)。
さらに粗暴な物腰に反して非常に頭が回り、初登場の第37話では単独行動をしていたデンジレッド以外の4人に重傷を負わせた。
動向
37話冒頭で「宇宙から見つめる恐ろしい目」として出現。子供たちと一緒に天体観測をしていた黄山が「動かない星」を見つけ、望遠鏡を覗き込んだところで目から光を放ち攻撃した。
同話のAパートでは森の中を歩いていた緑川を吐息の暴風で吹き飛ばし、釣りをしていた青梅を水中に引きずり込むなどで抹殺しようとする。
それらは失敗に終わったものの、次は変身して警戒に当たるデンジレッドとデンジピンクを狙う。
デンジマシーンを運転席全体を銀のシートで覆った霊きゅう車というあからさまに怪し過ぎる囮を用意し、その中に潜むと、レッドを追跡すると見せかけ、後ろで観測していたピンクを急襲。
そして孤立したレッドの前に、霊柩車を爆破して出現する。
レッド「何者だ、貴様!」
「宇宙の用心棒、地獄の使者……バンリキ魔王!」
名乗るや否やデンジレッドに襲い掛かり、その実力にものを言わせて圧倒。
レッドのダブルパンチを顔面に無防備に受けて無傷という恐るべきタフさを見せ、一時はトドメをさす間際まで追い詰めたが、アイシーの横槍でピンク共々取り逃がした。
その後ベーダー魔城に乗り込み、傍若無人に暴れヘドラー将軍らの手を焼かせるが、ベーダー怪物の卵を割って食べたことで怒りを買う。
そこで「50年間眠っていたが、血の匂いで目が覚め、さらにそこにデンジ星人がいた」という理由で地球に来たと語り、自ら刺客として名乗り出た(ヘドラーは「余計なお世話だ」と切り捨てている)。
街を襲撃してデンジマンをおびき出し、後から追いついてきたピンクも合わせた5人と正面激突するが、デンジブーメランの炸裂に合わせて自ら巨大化(しかも挿入歌をぶった切るという勝ちフラグ破壊込み)。
ダイデンジンと対峙し巨大戦を繰り広げるも、電子満月斬りを白刃取りで止めてあえて膠着に持ち込んだ末、「今日はここまでじゃ!」と巨大化を解いて撤収した。
それ以降は出撃する事もなく、酒を呑んでゴロゴロするだけの自堕落な生活をしており、女王からは厄介者扱いされていた。
しかし実際には何かをうかがうような鋭い目つきで周囲の様子を観察しており、ヘドラー将軍には自堕落な風でありながら全く隙を見せないことを怪しまれていた。
物語後半になって、実は打倒デンジマンはベーダー城に潜り込むための表向きの目的であり、真の目的はベーダー城の乗っ取りである事が明らかになる。
第48話ではサッカラーの「勲章が欲しい」という功名心に付け込む形で反乱を扇動、ヘドリアン女王が発動した大規模作戦の内容を全てデンジマンにリークするという造反に及ぶ(ベーダー側も真っ先に魔王を怪しんだが、最初の「零作戦」の時は一日寝ていたことを女王が確認していた)。
その後の「霧作戦」の失敗で、サッカラーの造反がバレたのを機についに本性を現し牙を剥く。
サッカラーを処刑しようとするヘドラー将軍の前に現れて妨害、あちこちへ飛び回った挙句謁見の間へ戻るが、魔王を対処しようと主戦力が集まったところでサッカラーを動かし、毒ガスでマヒさせて女王たちを地下牢に閉じ込めてしまった。
「ウジムシどもめ……勲章をやると煽てたら、本当に反乱を起こしやがったよ。フハハハハ……」
だが、当然ヘドリアン女王も黙ってはいない。バンリキ魔王は女王側の最大戦力であるヘドラーは厳重に拘束したが、女王とミラー・ケラーを侮って自由にしていたため、水晶玉に変身したミラーを介して孵卵器を遠隔操作され、女王側の手駒としてカラクリラーとケンダマラーが誕生してしまう。
2体に追われたサッカラーはあっけなく粛清され、魔王自身も蝋で固められ燭台置きにされるという処刑を受けて反乱は失敗した。
しかし意識を失ったわけではなく、しぶとく反撃のチャンスをうかがっており、程なく密かに潜伏させていたバンリキモンスによって救出されると再び女王を追い落として実権を掌握。
暴虐の限りを尽くして我が物顔で振る舞い、ヘドラーに決死の作戦を行わせ死に追いやった。
ヘドリアン女王もこうなってはデンジマンを倒すよりもまず魔王をどうにかせねばならず、最終話では魔王を挑発して出撃させ、迎え撃ってデンジマンが戦った際には、「頑張れ~、ダイデンジン!!」と、あろうことか仇敵であるデンジマンを応援していた(これには流石に部下のミラーとケラーも驚いていた)。
結局デンジマンはバンリキモンスに歯が立たず一度は敗北。ダイデンジンも稼働不能となり、千載一遇のチャンスを待たざるを得なくなった。
魔王は何としてもデンジマンを誘い出すべくモンスに破壊活動を続けさせ、同じ頃に堪り兼ねて反撃に出たヘドリアン女王を返り討ちにしようとするが、盾に変身したケラーが身代わりとなって死亡。
残ったミラーは女王を離反してバンリキ魔王についたかに見えたが、これは魔王を追い落とすチャンスを狙っての事だった。
優位に立ったことで完全に油断した魔王は、ミラーが近くにいるタイミングで帰還したバンリキモンスに念力を補充し、その様子を見られてしまう。
これによりモンスの弱点が尻尾であることがバレてしまい、この情報をヘドリアン女王がアイシーにリークしたことでバンリキモンスは撃破されてしまう。
「お前だな!? モンスの弱点を教えたのは!?」
ヘドリアン女王「ハハハハハハ! 思い知ったかバンリキ魔王!」
情報が漏れたことを狂乱した魔王は怒り狂ってヘドリアン女王を殺そうとするが、水晶玉に変身していたミラーが目くらましに放った閃光をまともに受けて失明。
「ぐわああああ! 目がああああ! おああああ目が見えぬうううう!」と錯乱して暴れ回り(この時にミラーが巻き込まれて死亡している)、周りの様子が全くわからないまま地上に出てしまった上、モンスを撃破した直後のデンジマンと鉢合わせ。
デンジブーメランの直撃を受けて爆発四散、あっけなく滅び去った。
事実上デンジマンとベーダー一族の共同作戦で倒されたも同然の末路であったが、魔王の暴虐によってベーダー一族はヘドリアン女王と、この時地球にいなかったアマゾンキラーを残して壊滅。
戦意を失った女王は姿を消して潜伏することを選び、事実上バンリキ魔王はデンジマンにとって最後の敵となったのである。
余談
次作ではアマゾンキラー登場時のヘドリアン女王の会話で名前のみ登場。
デザイン段階で大前均が演じる事が決定していたため、大前の肉体を活かした露出の多い衣装となった。
本来は右肩を露出させて左側に盾と鎧があるデザインだったが、大前が左利きであったため、左右逆に変更された。
(組織内の成り上がり者でもなく)純然たる第三勢力キャラでラスボスの座を乗っ取ったのは、スーパー戦隊シリーズの長い歴史の中で未だ他に誰も成し遂げていない快挙である。
関連項目
イナズマギンガー:次作におけるよく似たポジションの敵キャラクター。
バングレイ:シリーズ40周年記念作におけるよく似たポジションの敵キャラクター。
電子鬼:新しい味の料理が食べたいという意欲望が引き金となり変貌したデンジマンを歪めた怪人で新しい味がベーダー一族という観点と「食べる」観点からバンリキモンスの要素を持つためこの2体をモチーフにしたと考えられる。
アクドス・ギル:バンリキ魔王と同様、あっけない最期となってしまったラスボス。