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パシフィック電鉄

ぱしふぃっくでんてつ

パシフィック電鉄は20世紀にアメリカ合衆国に存在していた鉄道会社であり、ロサンゼルス近郊で鉄道路線を運営していた電鉄会社。
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概要編集

 この会社のアメリカ合衆国での正式な名称はパシフィック・エレクトリック(Pacific Electric Railway)であるが、日本においてはどう訳するかで好みが分かれるところであり、そのままパシフィック・エレクトリックとするか、あるいは日本の電鉄会社にあやかってパシフィック電気鉄道、またはパシフィック電鉄と訳するか、訳者によってその表現方法はまちまちである。

一部の文献においては太平洋電気鉄道または太平洋電鉄と表現しているものもあるが、本項目では最もよく知られた訳語であるパシフィック電鉄を使用する。

特徴編集

アメリカ西海岸の都市・ロサンゼルスを中心にパサデナ、サンバナディーノ、リバーサイド、ハリウッドビバリーヒルズ、サンタモニカ、ロングビーチなどといった周辺都市を結んだ。

 この線で運行していた電車は、い車体色から「ビッグ・レッドカー」とも呼ばれた。

 パシフィック電鉄が他のインターアーバンと一線を画していた点は「鉄道経営と沿線開発を並行して行っていた」「高密度運転による通勤輸送を中心としたダイヤを組んでいた」ことなどである。この経営手法は日本の各電気鉄道も参考にしたといわれている。


 この会社はもともと1890年代から複数の会社が敷設し、存在していた各都市の路面電車インターアーバン群が、1911年に会社同士の合併(具体的には西海岸のパシフィック電鉄、ロサンゼルス・インターアーバン鉄道、ロサンゼルス・パシフィック鉄道、ロサンゼルス・レドンド鉄道、さらに内陸部のサンバナディーノ・バレー電鉄、サン・バナディーノ・インターアーバン、レッドランド・セントラル、リバーサイド・アーリントン鉄道の8社)により統合し、それらを改軌、あるいは路線接続のための新線を設立したことにより1915年には全盛期の路線網が完成した。

 この路線網は軌道1,700kmおよび鉄道800kmと、関西圏の電車路線網(私鉄国電含む)にも匹敵する驚異的なもので、これをパシフィック電鉄一社で経営していたのだから驚きである(ただし運用車両は300~500両程度であるといわれている)。やはりアメリカはスケールが違った。

 しかしながら1929年の大恐慌以後、収益の少ないインターアーバンでは路線の整備が西海岸の都市の成長に追いつかなかったこと、それにより公営私営を問わず路線バスが台頭し始めたこと、またアメリカにおける本格的な自動車社会の到来などにより経営状態は混乱した。

 そして1930年代以後、財政状況より抜本的改革を行えず輸送需要の低い路線から順次廃止が進み、一部はバス転換された。それがさらに他の路線に悪影響を与え、さらに廃線が進むという悪循環を生んだ。

 それでもロングビーチやサンペドロなどの南部地区は比較的需要も高かったことから運行が続き、第二次世界大戦の間はガソリンの配給制度や工員の輸送により業績は一時的に回復したが戦争後それはなくなり、また自動車の増加により路面電車の運行が困難となっていった。1950年代にはフリーウェイ(高速道路)の整備が具体化、主要路線はバス転換が行われ、1953年には鉄道およびバスの旅客部門をバス会社の「メトロポリタンコーチラインズ(MCL)」に譲渡して自社での取り扱いを廃止してしまい、パシフィック電鉄自身はディーゼル機関車による貨物鉄道となった。

MCL、そして公営化編集

 MCLに譲渡された電車はそれまでの赤一色から、バスと同じグリーンイエローツートンカラーに塗装されて運行を継続するが、もともと鉄道のバス転換を目的として譲渡した面もあったが、道路が発達しないため電車運行を続けており、このころはハリウッド路線が廃止されたにとどまった。

 しかし高速鉄道などの計画を立てたロサンゼルス市は1951年、ロサンゼルス都市圏交通局(LAMTA、南カリフォルニア高速交通局を経て現在のロサンゼルス群都市圏交通局・LACMTAとなる)を設立、MCLを買収する。

 交通局はこの路線の一部をモノレールに転換して高速化を図ろうとしたが、電車運転に2億ドルもの税金が投入されたことで市民(特に自家用車を持つため利用機械が少ないにもかかわらず税金を多く払う富裕層)からは不満も強く、パシフィック電鉄側からも「(モノレールにして連絡できなくするならば)これ以上線路を使わないで欲しい」とクレームがついてしまったことでこの路線の旅客営業は1961年に廃止となった(この後市電も1963年に廃止し、ロサンゼルスには公共の鉄道が消え去った)。

 もっとも、電車が廃止されたあともパシフィック電鉄はディーゼル機関車牽引の貨物列車をロングビーチ線で運行していたが、1965年には親会社であったサザンパシフィック鉄道(SP)に吸収合併されてしまい、貨物路線として存続はしていたロングビーチ線も輸送需要の低下で次第に貨物列車も走らなくなり一時廃線となってしまう。

 1990年にはこの廃線跡を活用し、南カリフォルニア高速交通局(SCRTD)がライトレールであるブルーラインを開業させている。現在はLACMTAのライトレール路線として数多くの乗客を輸送しているが、ここを運行する電車の一部がパシフィック電鉄の塗装を身にまとって運行されている。

ウォーターフロント・レッドカー・ライン編集

 また、サンペドロ近郊には、パシフィック電鉄を再現した保存観光鉄道として「ウォーターフロント・レッドカー・ライン」が運行されている。車輌は古い図面や博物館などで野ざらしになっていた車体をもとに船舶工場で製造した500形のレプリカ(500、501)および950形を個人が買い取り1000形と同様のスタイルにしたうえで、バスに改造されていた車輌を電車に復元したもの(1058)が在籍する。ロサンゼルスを訪れた鉄道ファンの方々は、是非訪れてみてはいかがだろうか。

代表的な車輌編集

 パシフィック電鉄の車輌は1000両以上も存在(ただしこの中には標準軌でないものや旧式のため使用しなかったものなども存在し、運用は500両が限度)しており、それだけに、現場通称ともいえるものが数多く存在した。

  • 600形:ハリウッド方面への中距離輸送で活躍したことから「ハリウッドカー」の通称がある。特に750番台の車輌は複電圧対応でヴァリイ方面で使用されたため「ヴァリィ・セブン」の愛称があった。一部はワンマン改造によって5050形となった。
  • 850形:通称「エイト」。この車輛だけ850番台からスタートしているがおそらくは番号重複を避けるための措置であろう。
  • 900形:通称「ナイン」。850形を一回り大型にした車両で、後述の1001形の原型となった車両。
  • 1001形:形式の上二桁をとって通称「テン」と呼ばれた。長距離用木造電車としては最後の形式。この車輌のトップナンバーは1001であり(PEの電車は通常末尾0から始まる)、それに基づきこの電車は1001形と呼ばれる。これは1000号車が別形式の特別車であったため。
  • 1100形:通称「イレブン」。出入り口の扉が2枚になっており、ラッシュ対策が講じられている。パサデナ線などで使用。ちなみに製造時期は1200形より後。廃車後はアルゼンチンに渡った。
  • 1200形:通称「トゥエルヴ」。さらに製造時期などによって「バタフライ」「サンバナドゥ」「ポートランド」などに分かれる。トレーラー車もあったが通し番号とされた。先述の1001形と異なり、特別車は1299号を名乗り、これを1299形とする場合もある。荷物室つきの車両もあり、こちらは1370形と呼ばれた。
  • 4500形・4600形・4700形:晩年の主力車両で全長22mの大型車。MCLに経営が移管されてからは1500形・1600形・1700形となり、さらに公営化されてからは450形などと呼ばれた。そのデカい図体のおかげで「ブリンプ(太っちょ)」と呼ばれていた。
  • 5000形PCCカー。PEでは唯一の高性能電車であった。廃車後はアルゼンチンに移籍、ブエノスアイレス近郊で働いた。

逸話・影響など編集

  1. パシフィック電鉄を語る上で欠かせないのが、実業家のヘンリー・ハンティントンであろう。ハンティントンはSPの社長だったコリス・ハンティントンで、ロス市内の路面電車を買い取り沿線の開発や不動産経営などを積極的に行った。こうしてパシフィック電鉄の基礎は出来上がっていったのである。
  2. ハンティントンが行った多角的経営手法は小林一三(阪急電鉄)や五島慶太(東京急行電鉄)などに影響を与え、瞬く間に日本の各私鉄へと浸透していった。現在、日本の大手電鉄会社が半ばコングロマリット、すなわち他業種参入の複合企業化していると一部でいわれるのはその影響であるといわれている。
  3. 京浜急行の赤い車体色や名古屋鉄道の車輌番号に使われているフォントなどにも影響が現れているとされる。東京都のバス会社、関東バスにいたっては、パシフィック電鉄のバスのカラーリング(つまりMCL化直前のの派手なカラーリング)をそっくりそのまま真似している。

関連タグ編集

アメリカ合衆国 路面電車 インターアーバン

この記事のカテゴリ編集

鉄道 電車

参照編集

wikipedia:同項目https://ja.wikipedia.org/wiki/ロサンゼルス郡都市圏交通局

WURE's Transport Web:パシフィック電鉄 (パシフィック・エレクトリック・レイルウェイ) ホームページ

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