概要
ブレムミュアエ(ラテン語:Blemmyae)とは、古代地中海世界や中世ヨーロッパの人々が、秘境(探検未踏地)に住んでいると信じていた亜人(人間と似て非なる伝説の生物)の一種で、リビアやエチオピアの辺境地にいると考えられていた。ブレムミュエス人( - じん)ともいう。無頭人(英語:Headless men|頭部が無く、胸部から腹部にかけて顔がある亜人)の一種。
伝承者の説明や挿絵に基づけば、ブレムミュアエの「顔」は必ず胸部にあり、腹部にまでは及ばないのが基本で、腹部にはせいぜい掛かっている程度である。
1世紀ローマ帝国の博物学者・大プリニウスことガイウス・プリニウス・セクンドゥス (cf.) が、自著『博物誌』にて「リビュアの東方辺境やアイティオピア(※現代のエチオピアを含むエジプト以東以南の広域)の秘境に住む」との旨の記述をしている(※a)。なお、現在は、リビュアのほうはリビア砂漠以西のオアシス、アイティオピアのほうはナイル川上流域のヌビアに位置する現アスタプス川 (cf.) の近辺であろうとの考証がされている。
紀元前5世紀古代ギリシアの歴史家ヘロドトスが自著『歴史』の中で言及している、リビュアの首無し族「アケパロイ」は、リビュア住みのブレムミュアエにあたると考えられている。
なお、アケパロイやブレムミュアエと同類と思しき無頭人の伝承は、北アフリカから東南アジアにかけての広範な地域から確認されるようになるが、こういったものは広く「無頭人」で分類するのが無難であろう。
また、アレクサンドロス・ロマンスにもブレムミュアエが登場するものの、この物語においては、剛毛に覆われて脚が見えず、全身が黄金色に輝く、身の丈3メートルを超える巨人であるなど、オリジナルとはかなり違ったものに変容している。この巨人は、11-12世紀イングランドの教会法弁護士であるティルベリのゲルウァシウスが伝える「(エジプト近辺の)無頭人種」からの影響が強く見られる。
アケパロイ及びブレムミュアエは、古代地中海世界にて、秘境への恐れが生み出した空想上の怪物であるが、スキアポデスや穴居人(トログロデュテス)などその他の亜人とともに、その実在性は中世まで長く信じられ続けた。
14世紀イングランドの騎士で旅行家でもあったジョン・マンデヴィルは、自著『東方旅行記』の中で「ブレムミュアエを目撃した」旨の記述をしており、後世の探検家に影響を与えた。
諸言語名
- 古代ギリシア語:Βλέμμυες(ラテン翻字:Blémmues、音写例:ブレムミュエース), Βλέμυες(ラテン翻字:Blémues、音写例:ブレミュエース)
- ラテン語:Blemmyae(音写例:ブレムミュアエ), Blemyes(※a,b)(音写例:ブレミュエース〈※b〉)
- 英語:Blemmyes(音写例:ブレメーズ)(※b,c)
- 日本語:ブレムミュアエ、ブレムミュエス人
脚注
※a "BLE´MYES" - William Smith, editor (1854, 1857) A Dictionary of Greek and Roman Geography, volume 1 & 2, London: Walton and Maberly.
※b "Blemyes" - Wiktionary(ウィクショナリー 英語版)
※c "Blemmyes" - メリアム=ウェブスター "Merriam-Webster Dictionary(メリアム=ウェブスター・ディクショナリー)"
外部リンク
- 二点星「ゆっくり歴史よもやま話 ブレムミュアエ」- ニコニコ動画