概要
無頭人(むとうじん)は、頭部が無くて胴部に顔がある亜人などの総称である。世界中の伝承に登場するが、創作作品のキャラクターとしても様々なものが見られる。
古くは紀元前5世紀のヘロドトスの『歴史』や、紀元前3世紀頃に完成した『山海経』にも記述があり、内実はそのような人種であったり、魔神や魔物、斬首刑などで首を失った者のアンデッドである場合もある。
南方熊楠が柳田國男へ送った書簡のなかで 『類聚名物考』にある「乳目臍」(にゅうもくさい)と言う「胸腹に顔眼有り、首なき人」を紹介している。
代表的な無頭人
人種
人間と同様に生と死を避けられない生き物として秘境で生活している存在。つまり、異形の人種である。ただ、後世にはどんどん脚色が重ねられて「人種」とは言いがたい者にもなっていった。それでも、あくまで能力は人間並みであり、むしろ人間ほど好戦的ではない。ローマ人にはブレムミュアエと交戦した記録がいくつもあるが、それらはローマ人が「ブレムミュアエ」と呼んでいた(人間の)原住民との交戦であった。
- アケパロイ(リビア) - 紀元前5世紀古代ギリシアのヘロドトスが『歴史』で言及。記録上、最古の無頭人。ブレムミュアエと同一視されることになる。
- ブレムミュアエ(エチオピア、ほか)- 1世紀ローマ帝国の大プリニウス『博物誌』で初出した。古代において最も影響力の大きかったローマ人が信じ、後世にも伝承したたことから、歴史的に最も重要な無頭人と言える。その後、人々の興味が向く地域で彼らと同様の人種の存在が語られることになり、アレクサンドロス3世の東方遠征以降はインドにも、大航海時代以降はアメリカ大陸にも、“いる”ことになった。
妖怪・精霊・神霊など
人智を超えた、人間とは別次元の存在。神のごとき強大な者もいれば、駄洒落から生み出された何の背景も持たないキャラクターもいる。
- 刑天 / 形天(中国) - 強力な巨人神(のちには妖怪)。紀元前3世紀頃に完成した『山海経』にて初出。
- カバンダ(インド) - 強大な精霊。紀元3世紀頃に成立した『ラーマーヤナ』初出。
- アンスロポファジャイ(イングランド)- 人喰いの怪物。シェイクスピアの『オセロ』(1602年)に登場。
- デュラハン(アイルランド)- 古来伝承されてきた死霊。『南アイルランドの妖精物語と伝説』第2巻(1828年)初出。
- スリーピーホロウ(アメリカ)- 13植民地時代以降のニューヨーク近郊で伝承され始めた死霊。『スリーピー・ホロウの伝説』(1820年)以降に広まる。
- 胴面(日本)- 妖怪。尾田郷澄『百鬼夜行絵巻』(1832年)(cf.) 初出。原典に解説文は無い。「どの面を下げて」の「どの面」からの駄洒落ではないかと考察されている。
- 五体面(日本)- 尾田郷澄『百鬼夜行絵巻』初出。原典に解説文は無い。
- 首なしライダー(日本)- 死霊。1976年代初出の都市伝説的存在。
- プゴット(フィリピン)- ルソン島 (cf.) に伝わる怪物。
- ヨナルデパズトーリ(メキシコ)-アステカ神話の神テスカトリポカの化身の一つで、この姿で顕現するという伝承がある。
20世紀以降の作品上のキャラクター
- イゴーロナク(アメリカ)- 神性の怪物。クトゥルフ神話(20世紀)に登場。
- ジャミラ(日本)- 怪獣。ウルトラシリーズ(1966年~)に登場。初登場は『ウルトラマン』第23話「故郷は地球」(1966年12月18日放映)。
- サイコジェニー(日本)- 悪魔。『デビルマン』(1972年~)の登場キャラクター。
- はらだし(日本)- 妖怪。佐藤有文(1939-1999年)の妖怪関連本に登場。
- 頭脚人間(『未確認少年ゲドー』|日本)- 未確認生物。作品の発表期間は2004-2005年。
- 首なし人間(『未確認少年ゲドー』|日本)- 未確認生物。
- ガンメン(日本)- ロボット兵器。『天元突破グレンラガン』(2007年~)に登場。