概要
てんとう虫コミックス6巻に収録「ニクメナイン」にて初登場。その後同コミックス32巻及び、藤子・F・不二雄大全集8巻に収録「しずちゃんさようなら」にも登場する。そして本稿では後者の解説も行う。
錠剤の道具で、これを1粒飲むと体から不愉快なオーラが放たれ、しばらくの間誰からも嫌われてしまう。ただし現れる効果には厳密には違いがあり、前者は周りから睨まれたり反感を買ったりするのに対し、後者は相手が嫌がって逃げていくというものになっている。
ちなみに1992年版ニクメナイン及び、水田版での後者のアニメ化の際は液体状のものに変更されていたが、容器のデザインが異なっていて、1992年版は試験管のような物だったのに対し、後者ではコルク栓で塞がれた紫色の丸底フラスコのようなものになっている。
ストーリー
「君にはつくづく呆れた。同じ小言を何回繰り返すつもりだね。ホントにもう……。
このままじゃ、ロクな大人になれんぞ!先生は断言する!」
先生にいつも以上に厳しく説教されてしまい、自分は将来しずかと結婚しても、彼女を幸せに出来ないのではないかと落ち込むのび太。そこで彼はしずかを不幸にしない為にも、今の内にしずかと決別する決心をする。
ドラえもんはそんなのび太の様子を見て「そんな先のことを今から大げさに」と言うが、のび太は「未来を変えるには今から手を打たなくちゃいけない!」と断言し、しずかから借りていた本を返し、その際しずかのママに「しずちゃんにさよならと伝えて下さい」と伝言を頼む。
だが、しずかは自分に会いもせずに帰ってしまったのび太を心配して追いかけてた。のび太は「もう僕たちは会うべきじゃない」と別れ話を切り出すも、しずかは聞くはずもなかった。そこでのび太はしずかに嫌われるべく、断腸の思いで彼女のスカートをめくってしまう。しずかはのび太の頭にたんこぶを作り、「嫌い」と言いながら立ち去ってしまった。その後、のび太は出木杉に「君は良い奴だからしずちゃんを幸せに出来る!しずちゃんを頼んだよ!」と言い、泣きながら去って行く。
その話を母親や出木杉から聞いたしずかは「のび太に何かあったのでは?」と心配していると、ジャイアンとスネ夫がのび太が先生にひどく怒られていたことで話しているところを見かけた。ジャイアンは「あれだけ言われれば世の中嫌になるよな」、スネ夫も「僕なら死にたくなるね」とお互いのび太を可哀想に思っており、それを聞いたしずかはのび太が自殺を考えているのではないかと焦り、野比家に向かう。
その頃、しずかと本気で決別しようとするのび太の様子を窺っていたドラえもんは「バカバカしいとは思うけどいじらしくもある」と考えていた。するとしずかが野比家にやって来て、のび太は大慌てする。見かねたドラえもんは、服用すれば誰からも嫌われるひみつ道具「虫スカン」を取り出す。しかしのび太は虫スカンを全部飲んでしまい、彼の身体中から強烈な不愉快放射能が放出され、たまらずドラえもんとママは野比家から逃げ出す。
野比家にやって来たしずかも不愉快放射能の効果で逃げ出しそうになるが、のび太は虫スカンの過剰摂取で瀕死に陥っていた。そのことに気付いたしずかは不愉快放射能の効果に逆らい、のび太をトイレに誘導して虫スカンを吐かせることで事なきを得た。
のび太が回復した様子を見て安心したしずかに対し、彼は「そんなに僕のことを心配してくれたの?」と尋ねる。するとしずかは「当たり前でしょ!お友達だもの!」と言う。その後のび太は「しずちゃんに嫌われるのは、また今度にするよ」と言い、それを聞いたドラえもんは優しく微笑みながら「それが良い」と答えるのだった。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版と水田版で各2回ずつ放送されており、放送日は前者が1981年6月22日及び1986年8月22日、後者が2005年7月8日及び2012年2月3日である。ちなみに1986年版以外はサブタイトルが全て「しずかちゃんさようなら」になっている。
1981年版
- ドラえもんの「まだ結婚してるわけでもないのに」に対してのび太は「でも結婚するんだよ!タイムマシンで見て来たじゃないか!」と言っている。またのび太は机に向かって泣いていて、ドラえもんが嫌いになったのか聞く下りや貧乏暮らしをする2人のイメージはカットされている。
- のび太が持っていた風呂敷は青い地に赤い水玉が描かれたもので、ドラえもんは空いた本棚を見ながら「残ったのは漫画ばっかり」と言っている。ちなみにこれ以後のバージョンでも、この台詞のシチュエーションは同じになっている。
- スカートをめくってしずかからビンタされた後、び太は空地に立ち寄っていて、そこで出木杉と会っている。
- のび太が吐いた場所は洗面台だった。
- しずかがのび太のことを弱虫呼ばわりする描写はカットされている。
- ラストでのび太は、しずかの優しさを再認識し、大好きと言っている。
- 本編終了後のショートアニメは、不愉快なオーラを放つどら焼きからドラえもんが逃げるというものだった。
1986年版
- サブタイトルが「のび太のカターイ決心」に変更されている。
- 先生はのび太の座っている机の前で説教をしていて、ジャイアンとスネ夫は」教室の前でこれを立ち聞きしていて、のび太が出て来ると試しにボールをぶつけてみたが、無反応だったため生きていればいっといいことあると叫んでいた。
- のび太がイメージ不幸の一生は、原作での姿ののび太達が電車が走る橋の下で、先生が営むおでん屋の屋台で子供に飲ませるおつゆを分けてもらおうとしたが、商売の邪魔だと言われてしまい、そこにスーツ姿のジャイアンとスネ夫もやってきて笑われてしまうものだった。
- アメリカに留学とかと提案するのび太にママは「そんな寝言は留学できる成績を取ってからおっしゃい!」と言って追い出している。
- のび太はしずかとのつながりを断ち切ろうと、君とは結婚できないと宣言するイメージをしたが、「あっそう」と返され、直後に今日の算数の宿題はやったか聞かれたが、のび太は忘れてしまっていて、これにドラえもんは大笑いしていた。またしずかに本を返そうと言うのはドラえもんが提案した。
- のび太はスカートをめくった際は1981年版と同じくビンタを一発食らっている。
- スネ夫の台詞のうち「死にたくなる」は「立ち直れなくなる」に変更されている。ちなみにこの時ジャイアンとスネ夫は、ベンチに座ってかき氷を食べていた。
- しすかは「どんなに叱られたってへこたれないのが男の子でしょ!」とも言ってのび太を叱っている。
- ラストでドラえもんは「立派な大人になれるように一生懸命勉強すれば、しずかちゃんに嫌われる心配ないんだけどな」とつぶやいていて、のび太は「それは無理な注文だな」と言って笑い合った後、ママが切ったスイカを食べている。
2005年版
- 冒頭のび太の横をベビーカーを押している夫婦が通り過ぎている。
- のび太は宿題を忘れたことで先生に叱られていて、場所は職員室だった。ちなみに先生の台詞のうち「断言する」は「保証する」に変更されている。
- のび太がイメージした貧乏暮らしには、雨漏りのする家の中で傘をさしている様子も追加されていた。
- ママは「何寝ぼけたこと言ってるの!」と言って怒っていた。
- スカートをめくられた際しずかは、これまで同じくビンタを一発している。
- スネ夫の台詞のうち「死にたくなる」は「家出しちゃうかも」に変更されている。
- 上記の通り、ムシスカンが液体状のものに変更されていたため、のび太はこれを頭から振りかけていて、しずかはのび太を風呂の中に入れ、頭からシャワーをかけて助けている。
- しずかはのび太を叱った後、涙ながらに「知らない!」と言ってのび太を風呂の中に突き飛ばしているが、のび太は幸せそうな顔をしていた。
2012年版
- 2005年版と同じく冒頭でのび太の横を夫婦が通り過ぎているが、父親が子供をおんぶしていた。
- のび太は宿題を忘れたこと、遅刻したこと、0点ばかり取ったことなどについて叱られていて、1986年版と同じく机に座った状態で叱られていた。
- のび太はアメリカ留学の他に一生宇宙旅行をすることも提案していて、ママは「バカなこと考えてないで、さっさと宿題をやりなさい」と言って怒っている。
- スカートをめくられたしずかは「嫌い!」とだけ言って立ち去っている。
- スネ夫の台詞のうち「死にたくなる」は「生きる希望なくなるね」に変更され、この時ジャイアンとスネ夫は公園のベンチに座っていた。
- ムシスカンは2005年版と同じものだったため、しずかはのび太の頭にシャワーをかけて助けているが、風呂には入れていなかった。
- しずかは「もっとしっかりしなきゃダメでしょ!頑張れば何だってできるんだから!」とも言ってのび太を叱っている。
- ラストで2人は屋根に腰かけるだけで座ってはいなかった。
余談
テレビシリーズ4バージョンの他に映画『STAND BY ME ドラえもん』では3DCGとして映像化されている。