概要
世界征服を企む悪の帝王。
非情さと部下思いで度量が深い部分を兼ね備えた決断力にたける人物。バビル2世の好敵手にして不死身の漢である。
声優を大塚親子(それぞれ、昭和版TVシリーズでは大塚周夫、OVAでは大塚明夫)が演じたことで話題になった。(平成版TVシリーズでは麦人が演じた)
人物
バビル2世の宿敵にして同じ能力を持つ超能力者。世界征服の野望を達成するために世界中に組織を張り巡らせている。
バベルの塔を受け継ぐ後継者候補の一人だったが、初代バビル1世が定めた能力の水準に届かなかったため選ばれなかった。(その能力は、エネルギー吸収能力。バビル2世へとエネルギー衝撃波を放った際、バビル2世は逆にそれを吸収し、エネルギーとしてしまう。ヨミにはその能力がなかったため、後継者に選ばれなかった)
しかし、ロプロス・ロデム・ポセイドンの3つのしもべに指令を下すことは彼も可能で、そのためにバビル2世は何度も窮地に陥った。
悪の秘密結社の首領だが部下思いで懐が深い人物。宿敵バビル2世がストイックであまり感情を表に出さない性格なのに対して、喜怒哀楽の感情をハッキリ顔や態度に出すためか親近感の持てる悪役である。
目的は世界征服。
その具体的な方法は、「改造人間」を用いたもの。
日本を含む世界各国の政治家、軍人、大企業の経営者など、社会的地位の高い要人を拉致し、ヨミ自身の命令のみを聞くように改造を施し、完了した暁には、自分が世界へ号令を下す予定だった。
(日本でも与党の議員や代議士、幕僚長などが改造を受けていた)
また、それに伴い、「4本腕の人間」「ヒレが付いた足」など、異形の改造人間も製造している(これらは破壊された基地跡でのみ発見され、実際には登場しなかったので、実験体だったのかもしれない)。
当初、組織の下部工作員も改造人間であり、驚異的なジャンプ力など、超人的な身体能力を有している。
のちに宇宙ビールスの力を得て、改造人間よりも容易に作りせるビールス人間を尖兵に用いるように(ただし、改造人間の製造は引き続き行っていた)。
組織の運営能力や部下たちへのカリスマ性も高いが、自身もかなり頭脳が切れ、一部で敗れた後に復活した際、なぜ自分が敗れたのか、自分の超能力の力の源が何かを、自分自身で推測し結論を出した(しかもこの推論は正解でもあった)。
また、観察力も優れている。基地内にバビル2世が侵入された際、自身の部下の超能力者・シムレの行動を怪しみ、それが変身し入れ替わったバビル2世だと(超能力を用いずに)見破った。
また、基地に接近するバビル2世を攻撃するため、ロボットを用いて囲んで追い詰め、ミサイルの雨を振らせたり、超能力を用いて基地破壊をカモフラージュし、壊滅したと思わせ引き返させたりと、戦略にも長けている。
マシンの操縦技術も有しており、「V号」の操縦も自分で行う事もあった。
また、ロボットやサイボーグも数多く所有・運用しており、その種類も多い。
特に、3つのしもべに匹敵する巨大戦闘爆撃機「V号」は、破壊されるまでバビル2世を苦戦させた。
部下思いの首領
悪の組織の首領であるが、彼は部下思いで、決してその命を軽んじたり、蔑ろにするような事はしない。
例を挙げると、3度目の対決時、日本の地方都市・F市の地下基地を、バビル2世が水攻めにしたことで窒息に陥りそうになる。その部下たちの声をテレパシーで感じ取り、バビル2世との一騎打ちに不利とわかっていながら、超能力を駆使して部下の命を救う事を優先した(反面、バビルが手段を選ばないともいえるが)。
また、第一部の最終決戦近くの戦いでは、基地に攻め込んできたバビル2世と三つのしもべから逃れ、数名の部下とともに司令室に避難。
コンピューターが、「バビル2世とポセイドン、ロプロスの破壊活動は、原爆投下と同等の被害をもたらす」と予測。そのため、司令室ごと地下深くに移動させて事なきを得るが、地上には多くの部下が残ってしまった。
近くに控えた部下たちに「地上に残った者たちはどうなりますか」と聞かれ、
「コンピューターが、原爆を落とされるのと同じ危険を感じたんだ」と答え、苦悩の表情とともに、
「……あきらめねばなるまい」
と、部下を見殺しにする事に、苦悩と無念さをにじませつつ答えている。
(この結果、貨物船サンライト号の船長など、多くの部下を失ってしまっている)
しかし、基本的には部下思いであり、部下を蔑ろにしたり、使い捨てて無駄死にさせるような事は極力避けている。
一部の初期。チベット山奥の自分の砦を訪ね、塔に戻っていくバビル2世に対し、戦いを仕掛けてみると申し出た部下たちに対し、
「危険だと感じたら、すぐに戻ってよろしい」と深追いを禁じていた。
後にこの部下たちは、ロデムにより全員殺害される。それに怒ったヨミは、岩の怪物・ゴーリキをバビル2世に差し向けるが、それも「お前たち(部下)の手には負えない」からであり、敵わない相手に無理をさせたくないという理由があるからである。
また、第二部ではバベルの塔へと超能力者を逐次投入させ、使い捨てるような事を行っていたが、これは「バビル2世に休む暇を与えず、超能力を使わせ疲労させる」という作戦のためで、「(疲労させた時に)必ず誰かが止めを刺せる。とどめをさしたものには、約束通り望みの物をあたえる」と、褒賞も忘れていない。
その際、部下たちには塔の防衛システムによる攻撃を避けるため、「バベルの塔には侵入するな」と警告していた。
毒に犯されたバビル2世が塔内に逃げ込んだ時、それを追う許可を部下から求められたが、すぐには許可を出さなかった。
が、悩みつつも侵入を許可。
その際、塔内部のしかけを逐次報告するように命じ、「(塔内部の)しかけを、やつが報告してくれる。また、しかけに倒れたとしても、次の者はそのしかけをさけて塔にはいることができる。ひとりの犠牲者で救われる者が多いのだ」と、あくまでも多くの部下に無理をさせず、次の攻略の機会も考えている事を語っていた。
ではあるが、決して部下に甘いわけでもなく、むしろ重大な失敗をしたと判断した時や、重要な情報漏洩が行われると判断した時などは、容赦なく殺害・消去する冷酷さも兼ね備えている。
たとえば、バビル2世に自身の組織の「改造人間製造工場」を突き止められ、逃げられた際。
工場長に対し「このままではどうなるか、わかっているな」と工場長に最後通告した後、工場およびそこで働く部下全員を一瞬で消滅させていた(ボタンを押しての事なので、何らかの仕掛けがあったものと思われる)。
また、組織再編した第二部では。謎の生命体を操る老人が、その生命体に逃げられ利用価値が無くなった際。口封じのためにとサイボーグを差し向け、容赦なく焼き殺した。
また、「部下思い」ではあっても、一般人に対しては決してその限りではない。
打撃を受けたバベルの塔の深部に、偶然入りこんでしまった一般人に対し。情報を得たのちに、バベルの塔の事を秘密にすべく、口封じに殺害してしまった。
さらに、人間以外の存在にはあまり寛大ではない面もある。
宇宙ビールスに侵された犬の群れに対しても、仲間とは認めず殺害し、自身の体内の宇宙ビールスから「仲間を殺した」と非難された(このせいでバビル2世へ止めを差す事が出来なかった)。
その理由は、
「人間は万物の霊長と呼ばれ、もっともすぐれているのだ」
「そんな人間が、犬畜生と手を組めるか」
「わしが世界に号令をかけるとき、犬に大臣でもやらせるつもりか」
「おことわりだね。わしは死んでも人間としての誇りは捨てんぞ!」
これを聞き入れたのか、宇宙ビールスは、以後は人間のみを仲間とするように。
(ただし、ヨミ自身もビールス動物は戦力としては有用と判断はしたようで、犬の他に牛などの動物にビールスを感染させ強化、疲労したバビル2世へと差し向ける事は行っていた)
戦歴
作中では何度もバビル2世に倒されているのだが、その都度復活して世界征服を企む根性の人。
1度目はバビル2世に自らのエネルギーを吸収され、それを打ち返されたことで敗れる。
2度目は超能力増幅装置を開発したが、それは自身の能力を一度に引き出すにすぎない欠陥品だったため、ミイラのように干からびて死亡した。
これでヨミは完全に滅びたかと思われたが、宇宙から飛来した宇宙ビールス(ミクロの世界のエイリアン)が彼の身体で共生し、それまで以上の力を持って復活。一度はバビル2世を殺す寸前まで追い詰めた。この3度目の戦いがバビル2世をもっとも苦戦させたものである。
そして壮絶な超能力合戦の結果、ヨミの身体は超能力を酷使した代償として、急速に老化した(『スター・ウォーズ』エピソード3のダース・シディアスの描写に似る。余談だが、ジョージ・ルーカスは日本の漫画やドラマが大好きなので、このシーンが元ネタなのかもしれない)。
そしてバビル2世の超能力エネルギーに絶え切れず、完敗を認め、自らの棺桶としたマシーンの中に入り、誰も訪れることのない世界へ飛んで行った(それを破壊しようとする自衛隊をバビル2世が必死に説得している。バビル2世とヨミは、本当に認め合った、真のライバルなのである)。
しかし、その後、ヨミの五体はそのマシーンの中で解体され、各地の病院に移植用の身体として配送された。そして移植を受けた患者の生命力を吸収し、各パーツが接合手術を受けたことで、ヨミは3度目の復活を果たす。しかし、意思はかつてと変わらないものの、その身体能力は本人にとって「老いさらばえて、何のおもかげもない」ものだった。そのためか、この時期のヨミは原爆や北極の自然気候を利用して、バビル2世を倒そうとしている。
上記イラストのように、顔には深い創が刻まれ、年老いたその姿を彼は呪い、部下の前に現れる際は常に包帯を巻いて素顔を隠していた。部下も彼のそんな思いを察してか、北極基地において、「ヨミ様、お疲れでございましょう。お眠りください」「……うむ、わかった。眠るぞ。」などとやり取りをしている(彼のカリスマ性がここでも感じられる)。
しかし、その間に部下のミスからバビル2世の侵入を許し、共に入り込まれたポセイドンに基地の機能を完全に破壊され、部下や破壊ロボットも全滅させられた。ここではじめてヨミは素顔を見せ、バビル2世のもとに現れる。
「やめろ。それ以上破壊すると地球が滅ぶぞ」
「よせ。昔のおれなら戦いもしよう。」
「バビル2世、この基地にはおれの夢がつまっている。この基地とともに眠らせてくれんか」
「生涯をかけて戦った男の最後ののぞみを聞いてくれぬか」
など、一言一言がカッコよすぎる。
そしてバビル2世はポセイドンとともに去っていく。ヨミは、「さらば、わがライバルよ」と呟き、静かに基地と共に北極の海に沈んでいった。
なお、『その名は101』にもヨミが登場するが、パラレルワールドと考えればいい。
悪の帝王?
思慮遠望に長け、カリスマ性のある人物であることから、某破壊大帝、某総統、某将軍に先駆ける理想の上司キャラとしても有名である。
また、敵対するバビル2世が強大な超能力者である事に加え、3つのしもべやメーンコンピューターからのサポートを受けている等、圧倒的な力を持っているのを理由に、読者の中にはバビル2世よりも悪役であるはずのヨミの方を判官贔屓してしまう者が少なからずいる。
NHKアニメ夜話では、「当時は世界征服=悪だった」と解説され、部下思いのヨミのどこが悪の帝王なのか?という話題にふれている。
今川版ジャイアントロボの、ヨミをモデルにした「黄帝ライセ」は、国際警察機構を率い、世界の正義と平和を守る立場に、バビル2世をモデルにしたビッグ・ファイアが悪の秘密結社BF団を率いるという逆転劇になっている。