概要
何らかの事情により国籍を2つ持つことを指す。
世界が平和で国家間の交流が盛んな時代ではメリットが大きく、逆に戦争が多く国家間の交流が少ない時代ではデメリットが大きい。
事情
出生による国籍取得は、大きく分けて生まれた地による「生地主義」、親のルーツによる「血統主義」の二つが存在する。そのシステムの穴を突く形で混在する理由で発生する場合がある。
- 両親が異なる国籍を持ち双方が血統主義をとる場合の混血によるもの
- 血統主義により国籍が付加される両親が生地主義の土地にて出生した場合
- 移民や婚姻、帰化等により他国の国籍を取得し、自国に国籍の離脱を申請しなかった場合
無国籍
逆のパターンとなると子供が無国籍、すなわちどこの国の国籍も持たない状況や国籍不明となるが発生する場合が存在する。その場合の例外として「出生地の国籍」が与えられることがある。
問題
字面から悪いことのように誤解されがちだが悪いことではない。そもそも二重国籍の人の多くは生まれながらにして自動的に二つの国籍を得ているので、善悪の価値観で判断することは間違っている。
二重国籍を認めている国は認めていない国より多い。日本では基本的に認められていないが、世界的に見れば少数派なのだ。
問題となるのは、複数の国家から納税や徴兵などの「国民としての義務」が課せられたり、「有事の保護」の問題が存在することである。もし国籍を持っている二つの国が戦争となり、一方の国に徴兵制があろうものならかなりややこしくなる。
一方で「国際的な活動がしやすい」などのメリットもある。
職業の制限
一部の国ではこのような状況のものに公務員の資格を与えないとする法律等が存在する。また政治家に関しても同様に資格を与えないと憲法などに明記されている場合が存在する。またこれらの制限は一部のみにかかる場合も存在する。
日本
日本国では血統主義を採用し原則としてこの状態を認めておらず、この状況の場合他国籍の取得から2年、あるいは22歳までにどちらかの国籍を選択する必要がある。しかし、実際の運用ではこの状況は事実上の黙認状態となっている。
- アルゼンチンやブラジル、北朝鮮(※1)、イランなど、国籍の放棄が困難な国が存在する。
- また北朝鮮の場合、日本と国交が無いというのは「日本政府は国として認めていない」という事なので、下記の台湾と同じ問題も生じてしまう。更に※1の様に韓国へ逃れ、正当と判断された場合は韓国籍へ上書きされる。
- 台湾など、日本政府が公式的な国家として認めていない地域の場合はどうなるのか法解釈が曖昧
- 多重国籍を認めている国も存在するため、各種事情により国籍を放棄しない場合が存在する
- 国籍選択の宣言をすれば、もう片方の国籍放棄は努力義務でしかなく、相手国にその事実が通達されるわけではない
- また国籍放棄を行わなかったことに対する罰則も存在しない
- 介護や財産等個人の事情にもかかわってくるため、下手すると人権問題にもなりうる
- そもそも当事者に両親等の説明不足等により多重国籍の認識がない場合が存在する
国籍離脱の際には「大使館・領事館で領事と面談」「手続きにかかる費用」など、時間的・金銭的コストもそれなりにかかるケースが多い。
例として、アメリカの場合は「領事と二回以上面談する」「必要経費は最大でおよそ24万円」となる。
それまで放置状態だった二重国籍問題だが、クール・ジャパン運動に伴い2010年代になると大衆レベルで愛国主義が高まリ、民進党の蓮舫(蓮舫二重国籍問題)をきっかけに二重国籍禁止を徹底すべきという主張が増加した。
ただし、この主張が通ってしまうと、元の国の国籍法や元の国の国籍を放棄する手続にかかるコストの違いで、同じく日本に帰化した元外国人でも、日本において地方議員・国会議員・地方自治体首長に立候補可能かに違いが生じる、という「法の元の平等」上の問題が生じてしまう上に、「二重国籍者が日本で政治家になる事に制限を付けるべき」という主張をしている者達の多くが「親日国家」と見做している台湾(中華民国)から日本に帰化した者は、日本の政治家になれない(中華民国の国籍法では他国に帰化しても中華民国国籍の放棄は出来ない為)が、逆にこの主張をしている者達の多くが「反日国家」と見做している中華人民共和国から日本に帰化した者が、日本の政治家に成ろうとする場合は、少なくとも「選挙に立候補する」という最初のハードルは悠々と超えられる(中華人民共和国の国籍法では、他国の国籍を取得した者は、中華人民共和国の役所などで手続をせずとも自動的に中華人民共和国国籍を失なう為)という事態が発生してしまう事になる。
その他の例としては自民党の小野田紀美、テニス選手大坂なおみ、世紀の逃亡犯カルロス・ゴーンなどが話題になった。
ノーベル賞受賞者中村修二について「二重国籍認めていたら日本人扱いもできたんじゃないか」という議論もあったが、ノーベル賞やメダルのためにそこまでする訳にもいかず、全体的には禁止派が優勢な状況である。
なお、アメリカに長期渡航している日本人に現地の日本大使館・領事館からくどいほど言われる事の1つが「アメリカで子供が生まれた場合には、その子供がアメリカ国籍を持つ事を望むのではない限り、必ずアメリカの役所で『この子にはアメリカ国籍を付与するな』という手続と、日本大使館・領事館で『この子供も少なくとも片親は日本人なので、この子に日本国籍を取得させてくれ』という手続をやれ。この2つの手続を忘れると、その子供には自動的にアメリカ国籍が付与され、後でややこしい事になる」である。
ある意味で、在留日本人が最も多い国こそ、「少なくとも片親が日本人の子供が、手続ミスなどで、親が望んでいない国籍を取得してしまったり意図せぬ二重国籍になってしまう」事態が起き易い国と言える。
制限
日本の場合外交官など公務員就業への制限が存在するが、その程度である。自衛官・海上保安官などは「日本国籍を有しない」者は採用対象外だが二重国籍については明確な規定がない。また、海外で国籍が必要な公務員となった場合日本国籍をはく奪可能とされるが、実際の事例は存在しないとされる( 大統領となった人物がいたにもかかわらず国籍はく奪がなされず、のちに日本国籍を認めたことかからも明らか )。
特定業界内の規定としては、相撲界で力士になるには国籍は問われないが、引退して親方になる際は日本国籍でないとなれないというものがある。
海外
海外の事例においては以下のものが有名である。
- オーストラリアでは1901年にできた憲法により「多重国籍所有者の国会議員就任」は禁止されるが、複数名(2018年時点で9名)がこれにより失職することとなった。
- ただし、この件には「政争の為に、事実上、死文化していた条文を引っ張りだして来た」というみみっちい事情も有り、この件で対立政党の有力政治家を失職させようとした政治家の中からも実は自分も二重国籍者だった事をうっかり忘れていたので共連れで失職してしまう、というギャグのような事態まで発生した。