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「この仮頼谷一樹は 愚民共(こいつら)とはわけが違うのだ」


「この鸚鵡が我が手の中に入ったことこそ、このアルティメット・シィンガーに世界を手に入れる正統なる資格があるという証明――」


概要編集

ぶどうヶ丘派出所の青年警察官東方良平の部下。『クレイジー・Dの悪霊的失恋』におけるラスボス

おかっぱと右頬の泣きぼくろが特徴。


少年時代、吸血鬼の祖父・茂儀造から“万能の真実”にまつわる話を聞かされたことで歪んだ精神を植え付けられる。以後は自分を特別と見て他者を見下すようになるった。

(祖父に関しては上記の吸血鬼のリンク先を参照)。

祖父との話により「この世には隠された真実があり、それに触れた者は世界の頂点に立つ資格が得られる。そしてそれはいずれ自分の前に現れる(自分は特別な存在であることが約束されている)」と考えていた。

ただし仮頼谷がまだ小学生だったこともあってか、具体的な話は聞かされておらず、万能の真実が何なのか分からないでいた。


大人になった頃に祖父から吸血鬼にしてもらう(エキスを与えられる)予定だったようだが、その前になぜか祖父は失踪してしまった(小説版では波紋戦士スピードワゴン財団に討伐されたことが示唆されている)。


その後、ペット・サウンズを従えたことで念願であった万能の真実に触れた(人類の頂点に立った)と考える。だがこれで終わりではなく、今度はトト神も手に入れることで“過去”と“未来”を我が物にしようとする。

同時に、ペット・サウンズを取り戻しに来たホル・ホース東方仗助の抹殺も目論む。


小説版では弓と矢を持った学生服の男からペット・サウンズを渡されたことで特別な力を手に入れたとして、アルティメット・シィンガー(究極の存在)を自称するようになった。


性格編集

普段は善良な“お巡りさん”の仮面を被っているが、内心では常に他者を見下している。

祖父の教えである「頂点を目指す者は下らぬ誇りや信念などに拘らず、最終的に勝てばよかろうの精神でいればいい」を実践しており、邪魔をする者も邪魔になる者も容赦なく排除しようとする。

こんな性格の男だが祖父のことは慕っていたようで、今でも「お祖父様(おじいさま)」と呼んでいる。小説版では祖父に対する好意は不明で、変り者と見ていた。


小説版では勉強も運動も得意ではなく、普通と劣等の中間くらいであることが語られている。何の根拠もないのに「この仮頼谷一樹は特別」と自負し、そのことに気づかずのうのうと暮らす愚民に怒りを感じている。

本人は猫を被っていると思っているが、ボインゴに話し掛けても返事がなかった時は「この仮頼谷一樹が話し掛けているのに」と口走ったり、事故に遭った警部が命に別状はないと聞くなり舌打ちするなど、内面の醜さを隠し切れていない。


その根底には他者に対する『軽蔑』の感情がある。祖父の教えのせいで自分は「本来なら帝王となるべき人間」と思い込むようになり、自分を特別扱いしない愚民共を『軽蔑』するようになった。


能力編集

ラスボスでありながらスタンド能力を持たない一般人。そのため下記のスタンド能力を借り受けている。


ペット・サウンズ編集

過去を体験させる能力。

耳たぶの一部をペット・サウンズに食われたことで魂の一部が連結し、同調することが可能となっている。このためスタンドのもう一人の本体と呼べる立場にある。


ペット・サウンズは小動物のため“記録する”ことに容量がいっぱいになっており、スタンド能力を行使することが出来なかった。

それを補うのがもう一人の本体である仮頼谷であり、彼の意思で能力が発動出来る。魂同士が連結しているためかDIOに関する記録も知っているようだ。


つまるところ努力も労力もなく棚ぼた的に手に入れた能力である。


トト神編集

未来を見る能力。

漫画版ではボインゴから奪い、小説版では花京院涼子をペット・サウンズの支配下に置いた際に拾った。

仮頼谷は「これで過去と未来を手に入れた。私は無敵だ」と喜んでいたが、すぐに仗助とのラストバトルに入ってしまうため活用はされなかった。


アルティメット・シィンガー編集

小説版における仮頼谷の二つ名(自称)。

ペット・サウンズを従えたことで特別になった自分を「究極の存在」と称える意味を込めて付けた。


祖父との話により「この世には隠された真実があり、それに触れた者は世界の頂点に立つ資格が得られる。そしてそれはいずれ自分の前に現れる」と考えていた。

警察官になったのも何となく“万能の真実”に近付けそうな気がしたからである。


そしてペット・サウンズを従えたことで真実に触れたと考えアルティメット・シィンガーを名乗るようになった。

ラストバトルでは地の文での彼の名前がこれになっているので大変長ったらしい。書く方も大変だっただろう。


劇中では「シィング、シィング、アルティメット・シィンガー♪」と小声で歌うシーンがある。

スタンドと同じく楽曲が元ネタだろうか?


結末編集

劇中では清原幸司に密かにペット・サウンズを貸し与え、ホル・ホースと東方仗助にけしかけさせた(清原的にはペット・サウンズがいきなりの自分の前に現れ、その力を見せたので悪用して人間狩りを始めた)。

だが清原は仗助に拘束され、そこを良平によって逮捕された。

用済みとなった清原をペット・サウンズによって恐慌状態にするという形で口止め・制裁を行う。

清原のことは前々からマークしており、自分に代わって表舞台に立ってもらうために見逃していた。


以後の結末は下記を参照。


漫画版編集

2巻では笑顔でボインゴに近付き、気絶させてトト神を奪うことに成功する。続けて花京院涼子も幻覚に捕らえて建設現場まで誘導させた。

まずはボインゴに涼子の衣服を着せ、建設現場まで“涼子”を助けに来た仗助を罠に掛ける。仗助が涼子ではなくボインゴだと気づいて驚いた瞬間、ペット・サウンズの能力を発動。DIOに配下が殺された時の過去を体験させ、二人まとめて始末しに掛かる。

しかし仗助は自分たちの首にロープを巻くことで脳に送られる血液を減らして幻覚を打ち破る。


3巻では下着姿になった涼子に拳銃(同僚から盗んだもの)を渡し、拳銃自殺させようとする。ホル・ホースは涼子の自殺を止めるべく奮闘することに。


そして仗助との戦いの舞台は屋上に移り、再び幻影に捕らえる。今度はダニエル・J・ダービーがDIOとポーカーをした時の過去を味わわせる。その間に仗助に近付き、ガスバーナーで身体に穴を空けて殺害しようとする(建設現場に入り込んだ不良がガスバーナーで事故死した、というシナリオを考えていた)。

だが間一髪のところで仗助はペット・サウンズにダメージを与えてまたもや幻覚から逃れる。


咄嗟に仮頼谷は「良平の部下」を名乗って仗助の背後に回り込み、ガスバーナーを手に襲い掛かる――というところで殴り飛ばされ失敗に終わる。

仗助曰く「オレみたいなナリしてるヤツを見たら警官は応援を呼ぶ。本気で心配して声を掛けるのはじいちゃんくらいだ」とのこと。


仗助「あんたがオウムを利用してオレ達を襲ってたんかよッ

   一応聞いとくが一体どーゆーつもりだったんだ てめーはよお」

一樹「~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

仗助「あっ?? 何だって!? 聞きとれねーぞッ もっとはっきり大きな声で喋れよッ」

一樹「~~~~~~~~ッ

   くくく くくくくくくくッ

   …まんまとこの位置まで誘き寄せられたな!? このバカがッ

   と言ったんだよ!!」


仗助が近付いて来たところで最後の足掻きとしてペット・サウンズの能力を発動。最大最強のスタンドのラッシュを味わわせることで逆転を計る。


「オレを倒しただけで安心したな!? オウムにトドメを刺さずにいたなッ

 オレとペット・サウンズはあくまで別の個体

 本体を動けなくすればスタンドも動けなくなるというルールは通用しねえんだよッ

 先天的にスタンド能力を持っているからといって図に乗るなよッ ヌケサクがぁ!!!

 オレは遥かな高みから お前ら人間共を見下してやるのだァアア!!!」


……が、しかし。仗助は幻覚に掛かっていなかった。

既にペット・サウンズは嘴にヒビを入れられており、正確な鳴き声が出せない=鳴き声でのスタンド能力が発動出来ない状態となっていたのだ。

しかも仗助の“治す”能力によってペット・サウンズの体内にあった自身の一部(耳たぶ)を取り出され、自分の耳に治されてしまう。こうなってはもうペット・サウンズを操ることは出来ず。


仗助「そういやさっき 遥かな高みとかなんとか言ってたよなあ

   なら お望み通りにしてやるよ」


逃走を試みるも屋上では逃げ場などなく、ドラララッシュを叩き込まれ敗北。

工事用シートとガスバーナーを肉体にくっ付けられ、人間熱気球として空高く飛ばされてしまうのだった。


その後、木に引っかかっているところを良平たちに発見されたが……


「この仮頼谷一樹は 全ての生物の頂点に立ったのだッ

 うけ…うけけけけけッ」


という妄言を吐くだけの精神状態になっており、まともに会話も出来なくなっていた。ペット・サウンズの能力で恐怖とトラウマを人々に植え付けた悪党は、同じく恐怖によって再起不能となったのだった。

なお、仮頼谷は無断で拳銃を持ち出していたため逮捕・処罰などを受けることになると思われる。


小説版編集

ホル・ホースにペット・サウンズを撃ち落とされたが、実はそれっぽい剥製を囮にしていたことが語られた。本物のペット・サウンズは仮頼谷によって回収されている。


清原が敗れたため自ら動くことになり、花京院涼子に幻覚を見せて誘導し、ホル・ホースと東方仗助を建設現場まで誘き出した。その際に涼子が落としたトト神を手にした。

そして上記と同じ経緯でアセチレン・トーチで仗助の身体に穴を開けようとするが、幻覚を破られ失敗。


そこで良平の部下を名乗って背後に回り、金属の破片で刺殺しようとする。

だがその破片を治されたことで壁まで一緒にふっ飛ばされ、壁と手が融合して身動きを封じられる。

仗助は「他人に気遣ってもらえないことには自信がある」「警察官だからって無条件でいいヤツとは限らない」と考えていたので、始めから仮頼谷を疑っていたのだった。


仮頼谷は小声で話すことで仗助を近付けさせ、再びペット・サウンズの能力を発動。無駄無駄ラッシュの幻覚で逆転を図る。


「おれがおまえ如きに屈すると思ったかッ。

 東方仗助――おまえなどおれの足下にも及ばないクズに過ぎんのだッ!

 すべての人間は我が足下に平伏すのだッ。

 おれは遥かな高みから、人間どもを見下ろしてやるのだッ!」


しかし既に嘴の形は、カットしたダイヤモンドのような表面に変形させられていたため正確な鳴き声が出せず失敗。耳たぶの一部もペット・サウンズの体内から取り出され、仮頼谷に耳に治されてしまった。

そこにいたのは、もはやアルティメット・シィンガーでも何でもない仮頼谷一樹というただの人間だった。


仗助「なんか言ってたよな、そうそう、人を見下ろしてやる、とかなんとか――そんな風なことを言っていたな」

一樹「ううううっ――」

仗助「そういうのが好きなのか、オメーは。高いところがお好みか」

一樹「うううううっ――」

仗助「ところで――オメー、興味あるか。おれの髪型のことが気になるか? どうしてこんなグレートな髪型にしているのか、その真の理由を」

一樹「ううううううっ――」

仗助「特別に教えてやろうか。実はな、ほんとうのところは――」


直後、仮頼谷は正真正銘のスタンドラッシュを叩き込まれ敗北。

全身の皮膚に工事用シートを融合させられ、アセチレン・トーチもくっ付けられ人間アドバルーンとしてどこかへ飛ばされてしまった。


仗助「いや――やっぱり、教えてやんねー」


その末路すら見届けることなく、仮頼谷に興味を失くした仗助は立ち去っていった。


数十分後、無断で持ち場を離れていた仮頼谷を探していた警察官たちによってけやきの枝に引っ掛っていたところを発見される。

錯乱状態になっており「アルティメット・シィンガーはすべての生物の頂点に立った」と意味の分からない台詞を繰り返し、会話もまともに出来なくなっていた。

更に同僚の拳銃を持ち出していたことが発覚し、上層部は仮頼谷を病気による退職か服務規定違反による解雇か悩むこととなった。


なお、全身の皮膚に癒着したシートを剥がすためには何度も外科手術か必要とのことで、半年以上の入院生活が確定しているとのこと。


仮頼谷一樹は、これからも幻覚を見続けるのだろう。アルティメット・シィンガーという有りもしない栄光の幻覚を――。


余談編集

4部での仗助は主人公でありながらラスボスを倒していなかったが、本作のラスボスである仮頼谷を倒したことで主人公としての面目躍如となったわけである。

両者の因縁に関しても、片やジョセフ・ジョースターの息子、片やカーズの思想を受け継いだ吸血鬼の孫という間柄。


小説版での最後のやり取りは、カーズ戦でジョセフが言った「知りたいか? 知りたいか? 教えねーよ!」のオマージュと思われる。


内面的には一貫して小者だった仮頼谷だが、ペット・サウンズを利用した手腕自体は見事なものである。もしも仗助を事故死に見せ掛けて殺そうとしなければ勝っていた可能性が高い(拳銃自体は涼子を自殺させるために使用されたが、もしも仗助が幻覚を見て無防備なところを銃撃すれば間違いなく終わっていた。もっとも警察官の拳銃で一般人を射殺すれば間違いなく足が付くのだろうが)。


本作の主要人物たちは仗助を除いて過去の呪縛に囚われている。

ホル・ホースや涼子は共に呪縛から脱したが、仮頼谷だけは“万能の真実”に囚われ続けるという対照的な末路を辿っている。


関連タグ編集

ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋

青年 警察官 警官 外道 中二病 拳銃

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