こいつを殺した時にやっとおれの人生が始まるんだッ!
概要
『ジョジョの奇妙な冒険』第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場。序盤における大ボス的存在。
虹村億泰の実兄で、スタンド使いを生み出す弓と矢を所持。劇中ではこの弓矢を不特定多数の人間に無差別使用していた。杜王町の住民から数多のスタンド使いを生み出すに原因なった。
その目的は「化け物になった父親を殺せるスタンド使いを生み出すこと」。
もともと彼らの父親はDIOの配下だったが、信用に足らないという理由から肉の芽を植え付けられていた。DIOが承太郎一行斃されたことで肉の芽が暴走し、父親は醜い不死身の怪物になってしまったのだった。
人間だった頃の父親は家庭内暴力を振るうロクデナシであり、形兆が8歳、億泰が5歳の時に化け物になった。父親が化け物と化した後、形兆は10年かけて上記の全てを調べ上げた。なんとか父を殺してやりたいと策を練るが、どうやっても殺せない…助けられないと痛感するようになる。
人物
億泰の億・BILLIONに対し、兆・TRILLIONなどの文字が刺繍された改造学ランを着ている。
顔立ちは前述の生い立ちもあってか表情がどこか荒んで老成した雰囲気を放っており、アンジェロから「若いようにも年寄りのようにも見える」とも言われている。
直情的で判断力に欠ける億泰とは異なり、沈着冷静で決断力と判断力に長けている。キッチリ作戦を立てその通りに寸分の狂いもなく実行する緻密な戦略の下での戦闘を得意とする。
そして非常に几帳面な性格であり、それをよく表した以下の台詞が有名である。
「お前は一枚のCDを聞き終わったら
キチッとケースにしまってから次のCDを聞くだろう?
自分を「頭が悪い」と評する億泰は、常に重要な決断を全て兄に頼っていた。
形兆も億泰を無能呼ばわりしているが、億泰のスタンドであるザ・ハンドは思い出しただけでゾッとすると述べている。
目的を達成するためであれば肉親に対しても情を捨てる冷徹さを持つが、怪物になってしまった父を死なせて楽にしてやりたいという言葉や、憎まれ口を叩きながらも億泰を守り散っていった最期から、内心では彼なりに家族を愛していたものと思われる。
劇中の動向
アンジェロが東方仗助に敗れたことを知ると、障害になると見て仗助の抹殺を考える。手始めに億泰を仗助と戦わせるが、億泰は敗北した。
そこで今度は矢で射抜いた康一を屋敷内へと拉致し、仗助を誘き寄せて自らが戦うことに。
無数の小型の兵隊を従えるスタンド『バッド・カンパニー(極悪中隊)』によって仗助を完全に圧倒するが、億泰がバッド・カンパニーの射程に入ってしまったことで誤射されてしまう。
その後、復活した康一の様子を見るべく仗助の前へと姿を現す。バッド・カンパニーによる包囲網を完成させ、仗助を完全に追い詰める。
と、その時、座り込んだ仗助を見て「降伏した」と受け取り余裕ぶって死刑宣告をするが、直後、バッド・カンパニーが放ったミサイルをクレイジー・ダイヤモンドの能力で再生され、顔面に大ダメージを受けて気絶。敗北した。
追い詰めておきながら自身の能力を逆手に取られ、飛び道具を顔面に受けて敗北する。皮肉にもその敗因は弟と同じであった。
その間に仗助と康一に父親の姿を見つけられてしまい、形兆は弓と矢を手に上記の過去を涙ながらに語った。
無意味に箱を漁っていると思われた父親に暴力を振るっていたが、東方仗助によって箱の中の家族の写真が復元され、父親がいまでも家族を大切にしていることを知る。
そして仗助から「父親を殺すのではなく助けられるスタンド使い」を探すなら協力すると告げられる。
駆けつけた億泰からも説得されるが、既に弓矢により町の人間を何人も殺してしまっているため、何があろうと後戻りできないと反発する。
直後、自身が射抜きスタンド使いにした音石明のレッド・ホット・チリ・ペッパーが億泰の持つ弓と矢を奪い取ろうと襲い掛かる。咄嗟に弟を庇った形兆は胸を貫かれ、そのまま電線に引きずり込まれ、「お前はいつだって俺の足手まといだったぜ」と弟に言葉を残し死亡した。
彼の死体は黒焦げの状態で電線の上に放置されるというあまりにも惨い状態のまま仗助達に発見され、杜王町の西にある霊園へと埋葬された。
死体を発見した億泰は「兄貴はああなって当然の男だ。宿命だった」と冷静に割り切りながらも、同時に最後には家族である自分を守ってくれたという兄の気持ちを痛感するのであった。
尚、実写版では、レッド・ホット・チリペッパーではなくキラークイーンのシアーハートアタックによる奇襲から億泰を庇い、内側から爆破され完全に消滅するという結末になっている。
登場時は目的のためならば実の弟でさえ殺しかける非情さをみせていたが、目的が父親のためであったり、咄嗟に弟を庇って死亡する等、家族想いな面もある。このように複雑な家庭環境から、彼の家族に対する想いは愛憎入り交じったとても複雑なものであることが分かる。
また矢で多くの住人を殺しておきながら、そのことに強い罪悪感を感じていた節もある。
億泰が吉良吉影に殺されかけた時に見た夢でのやり取りは、まさに『兄貴』であった。
「どこへ行くんだ 億泰」「億泰…行き先を決めるのは、おまえだ」
ザ・兄貴
『ジョジョ三大兄貴』のひとりである。
咄嗟に敵から弟をかばう優しさ、死してなお弟を導く姿勢から、多くのファンにプロシュート・エルメェスと並んで兄貴と慕われている。
ちなみに、3人の中で彼だけが唯一本当の(血縁上の)「兄」である。
スタンド『バッド・カンパニー(極悪中隊)』
記念すべき群体型スタンド第1号。ミニチュアサイズの軍隊のスタンドで、一糸乱れぬ攻撃を行う。火器やミサイル等を有するため殺傷力も高い。
詳細は個別記事へ。
クレイジー・Dの悪霊的失恋
直接の登場はないが小説版では仮頼谷一樹にペットサウンズを渡した黒幕であることが示唆されている。
また最初の敵である清原幸司は、ボウガンで小動物たちを殺傷する事件を起こしており、やがて人間まで狙い始めていた。
余談
アンジェロの回想で登場した時と、実際に登場した時では口調が異なるが、ジョジョではよくあることである。
TVアニメ版では登場後の口調に統一されている。
3大兄貴として数えられるなど人気の高いキャラクターなのだが、序盤で物語から退場してしまったことが災いしたのか、ゲーム作品「オールスターバトル」や「アイズオブヘブン」などに一切登場しておらず、TVアニメ放送まで長らく映像化の機会に恵まれなかったキャラでもある。
なお、スマホゲームのジャンプチヒーローズにはイベントキャラとして登場してる。そして2023年3月3日、ついに「オールスターバトルR」にて有料DLCとして、参戦が決まった。
DIOによって人生を狂わされたとも言える立場だが、奇しくも「落ち目になった実父から虐げられ、ある理由から殺意を抱くようになる」という点で共通している。