「早く人間になりたい!!」
それは、いつ生まれたのか誰も知らない。暗い、音のない世界で1つの細胞が分かれて増えていき、3つの生き物が生まれた。
彼らはもちろん人間ではない。また、動物でもない。だが、その醜い体の中には正義の血が隠されているのだ。
その生き物、それは人間になれなかった「妖怪人間」である……
概要
『妖怪人間ベム』(ようかいにんげんベム)とは、1968年(昭和43年)10月7日から1969年(昭和44年)3月31日までフジテレビ系列にて毎週月曜日19時30分~20時00分の時間帯で放送されたテレビアニメ。
制作は、広告代理店の第一企画(現在のADKグループ)のアニメ制作部門である第一動画が担当した。
1993年、少年ガンガンにて作画:津島直人、脚本:剣名舞による漫画『妖怪人間ベムRETURNS』が約2年に渡り連載。
2006年、前作の基本設定は継承しスタッフ・キャストは一新して38年ぶりに制作された完全新作アニメ『妖怪人間ベム -HUMANOID MONSTER BEM-』がアニマックスで放送された。
2011年10月22日から12月24日まで、日本テレビ系列の『土曜ドラマ』枠(21時-21時54分)にて実写ドラマが放送された(全10話。初回と最終回は22時09分までの15分拡大で放送)。2012年12月15日にはドラマ版の続編として映画も封切られた。
ドラマのエンディングで流れる主題歌はKAT-TUNの『BIRTH』。
また、50周年プロジェクト第1弾として、2017年10月より第1作目(1968年版)の再放送と共にギャグテイストの短編テレビアニメ『俺たちゃ妖怪人間』が放送された。2018年4月からは、第2作目(2006年版)の放送と共に『俺たちゃ妖怪人間G』が放送。いずれもTOKYO MX、BS11、テレビ静岡で放送された。
2019年には『BEM』のタイトルで新作アニメが制作された。キャラクター原案は村田蓮爾。
2019年7月から10月までテレビ東京、テレビ愛知、テレビ大阪、BSテレ東、AT-Xで放送された。
ストーリー
いつどこで誰が生み出したのか誰も知らない、人でも動物でも怪物でもない異形の生物……それが「ベム」「ベラ」「ベロ」の「妖怪人間」である。時には人々に迫害され、また時には友情を育みながら、いつか人間になれる日を夢見て彼らは世に仇なす悪と戦い続けるのだった。
3人の合言葉は「早く人間になりたい!」。
初代の毎話冒頭では「一つの細胞が三つに分かれ…」とナレーションが入り、どこかの実験室らしきところで誕生している。この経緯からベム・ベラ・ベロはむしろ兄弟のようなものと推測される。
物語の舞台はこれといった説明はない無国籍風で描かれ、概ねヨーロッパを思わせる建物が散見されるが、2006年版アニメや実写ドラマ版では現代日本の何処かの街、BEMでは港湾都市「リブラシティ」を舞台としている。
登場人物
CV・演の並び順は初代→2006年版→ドラマ版→俺たちゃ妖怪人間→BEM。
リーダー格。身長190センチ。普段は丁寧な物腰の紳士であり、スキンヘッドで逞しい体つきの壮年黒人を思わせる風貌をしている(ドラマ版の容姿はベム梨を参照)。
タキシード風の黒スーツに赤いシャツ、白のアスコットタイ、黒いソフト帽を身に付け、銀のステッキを持っている。
他の2人と同様にとがった耳、3本指(2006年、2019年放送のアニメ版と2011年放送のドラマでは5本指。2006年版では妖怪化したときのみ3本指になる)であるが、他の2人と異なり変身前から黒目(瞳孔)が描かれておらず、左右の上顎犬歯が長く目立つことが散見される。妖怪人間の中で最も戦闘能力が高く、悪魔、妖怪、悪霊と戦うのは彼の役目である。
口数が少なく必要以上にしゃべらず、重厚な人格を表現している。
変身後もステッキを使う事も多く臨機応変に扱う。
「ウー!ガンダー!!」の叫び声は特に意味を持ってないが、ウガンダ共和国の「ウガンダ」の響きが元ネタ。
『BEM』では白髪に青い目をしている壮年男性の姿となっており、これまで通り悪から人間を守ることで人間になれると信じている。
白い肌と長い髪を持った女性の姿をした妖怪人間。身長170センチ。普段は紫色のローブのような服と赤いマントを身に着け、武器はムチを使用し、普段は左腕(前腕部)に巻き付ける形で携帯している。
戦う相手に笑いながら啖呵を切るなどサディスティックな傾向があるが、ベロには母性的な優しさを見せることもある。悪意を持つ者には3人の中で最も強い嫌悪感を見せる。人間体・妖怪の姿ともに様々な妖術を駆使することが可能。
人間の善性については多少懐疑的なところがあり、ベムとは逆に悪い人間が相手の場合、戦うのは彼女である。
一方で家庭的な側面もあり、日常生活における炊事・洗濯・掃除などは自ら担当している(ただし2006年版アニメでは料理を焦がしかけて慌てたあまりガスタンクの上に落としてガスタンクが爆発して黒焦げになる場面もあった)。
『BEM』では赤髪のロングヘアーをワンサイドアップに結った10代程の少女の姿となっており、アナベラという名で高校生活を満喫している。
その姿は過去にヴィランに殺害された女子高生が元になっている。
10歳前後の子供の姿をした妖怪人間。身長110センチ。一人称は「おいら」。
首から下は赤い全身タイツのような服装で頭髪は青く頭頂部が1本角のように立っている。
好奇心が強く、興味を持ったことにとことんまで首を突っ込むため、ストーリーの展開上よく事件に巻き込まれる。
変身後の姿はベムと似ているが、体格と体色と手脚の太さが異なる。人間の子供と友達になりたがっている。
武器は特に使わず、戦闘能力は3人の中で最も低く、また、心優しい性格のために力を出し切れないこともあり、場合によっては普通の人間にすら負けてしまうこともある。
『BEM』では褐色肌にグレーの髪でヘッドホンをした少年の姿となっており、人間から何度も裏切られたため冷めた性格。仲間と共にゲームセンターに入り浸っている。
余談
第一作は実は日本と韓国の共同制作である。クレジットされている『東洋放送』は当時あった韓国の放送局であり、そこの動画部門が日本から派遣された第一動画のスタッフの指導の下に実質的に制作していた。黄金バットも同様で、無国籍風の世界観を持つのはその為である。また、妖怪人間ベムは海外に輸出する事も視野に入れていたのも無国籍風である理由の一つ。
初代の最終回は三人が炎に包まれる館の中に消え、焼け跡にはベムの帽子、ベラのマントの切れ端、ベロの靴だけしか残っていないという生死不明の形で幕を下ろしている。これは本来は全52話の予定だったのがフジテレビ側の決定により26話に短縮された為、続編『生きていた妖怪人間ベム』を後から出せるようにこのような終わりにしたのだという。フジテレビプロデューサーの別所孝治は打ち切りの理由について、フジテレビの改編により『スター千一夜』が21時台から移動するためとしている。作画監督の森川信英は「キャラクターの怖さによるキャラクタービジネスの不振かもしれない」と推測している。プロデューサーの草野和雄は『生きていた妖怪人間ベム』をいくつかのテレビ局に持ち込んだが、放送は実現しなかった。この作品をもって第一動画が解散した。
80年代にはファンからの声援に答え、妖怪人間のキャラデザを人間らしく変更したパート2が制作され、パイロットフィルムが2本作られたが放送は実現せず。これらは各映像ソフトに収録されている。
第一企画は1999年に旭通信社と合併してアサツーディ・ケイ(ADK)になったため、現在では本作品の原作者はADKということになっている(『BEM』からはADKのアニメビジネス事業会社として発足したADKエモーションズが原作を引き継ぐ)。
初代アニメではベロを物語の中心に据えていたが、2006年版以降はタイトル通りベムが主人公になっている。
後年、サブタイトルの一部が差別的なものがあった為に改題されたものがある(「せむし男の人魂」等)。ソフト化されたものはサブタイトル表示部分がおどろおどろしいデザインの文字からゴシックに似たフォントへ変更されている(後に無修正のオリジナル版がDVDBOX、BDBOX化されている)。
意味不明なテレビCMを作ることで有名な会社、ケンミン食品の焼きビーフンのCMキャラクターに抜擢されたことがある。
ベムとベロがビーフンが出来上がるのを待ちきれず、泣きながら妖怪形態に変身するバージョン、三人がビーフンを食べるやいなや「うまーい!」と感動のあまり変身するバージョンの二種類である。
関連イラスト
アニメ版妖怪人間 | ドラマ版妖怪人間 |
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