概要
御朱印とは、主に神社や寺院において、参拝者向けに押印される印章、およびその印影である。
複数の朱印の印影を集めることを集印(しゅういん)といい、朱印を押印し集印するための専用の帳面を御朱印帳(ごしゅいんちょう)、納経帳(のうきょうちょう)、集印帳(しゅういんちょう)と呼ぶ。屏風折(折り本)にして両側に固い表紙をつけた形式のものと、和綴じ(和装本)のものが多く、寺社、仏具店、神具店や文房具店、書店などで販売されている。
「記念スタンプ」とは違い、寺社の職員や僧侶、神職、氏子などが押印する。単に印を押すだけでなく、その下に墨書で寺社名や参拝日などが書かれることが多く、その墨書も含めて「朱印」と呼ばれる。なお、寺社名や本尊を墨書せずに、寺社名や本尊の入った印章(スタンプ)を押すいわゆる「版木押し」であったり、事前にあらかじめ「書き置き」した別紙、または墨書や版木押しを複写した別紙(印刷したもの)を渡されるもしくは貼り付けられる寺社もあるが、これらは納経帳が現れ始めた江戸時代から存在するものであり、近年発生したものではない。他にも印刷された台紙に印のみを押す場合もある。もちろん、全ての寺社で行われているわけでは無く、受け付けていなかったり、やめてしまった寺社も存在する。
起源には諸説あるが、元々は寺社に写経を納めた際の受付印であったとする説が有力である。そのため、朱印を「納経印」と呼ぶこともある。現在でも納経(写経の奉納または読経)をしないと朱印がもらえない寺院が存在するが、多くの寺社では少額の金銭(初穂料・御布施)を納めることで朱印がもらえるようになっている。金額は、2016年現在、多くの寺社で300円としているが、500円(明治神宮・烏森神社など)、2000円(富士山本宮浅間大社奥宮・久須志神社の直径22cmのもの)などの金額が提示されることもある。また、「お気持ちをお納め下さい」として金額を明示しない場合もある。この場合、「志納」という。また、服装に輪袈裟や白衣姿などでないと応じない寺院、事前に電話等での連絡が必要な寺社もある。
朱印は印に寺社名および本尊名が入っていることから、寺社で授与されるお札などと同等とされ、粗末に扱うべきではないとされる。実際、朱印帳を普段は神棚や仏壇に上げているという人も少なくない。
寺社以外の取り扱い
前項の通り、一般的には御朱印が頂けるのは、その性質上宗教施設のみである。
しかし、近年は御朱印ブームに乗る形なのか(以前から授与されていたものもあるが)、寺社以外でも授与されることがある。
例として、二条城や松本城など城、落柿舎や湯島聖堂などの史跡、さらには福禄寿が祀られているために東京ドームでも授与されている。
また、神道や仏教以外の宗教においても天理教が平成28年頃まで本部で授与していた(現在は廃止)。
また、異例ながら熊本県天草市のキリスト教崎津教会でも取り扱われている(外部リンク)。
海外での取り扱い
御朱印自体が日本独自の文化であるため、当然海外の宗教施設で御朱印を頂くことはできない。
ただし、ハワイには日本由来の神社が多数存在しており、それらの社務所では御朱印を頂けるようだ。
また、韓国の曹渓寺も日本からのツアー向けに特別に御朱印を用意して授与していたことがある。ツアー客以外がお願いした場合も、特に拒否することなく押してくれたようだ。
問題点
転売問題
昨今の御朱印ブームもあり、近年は期間限定で通常と違う色や文面の御朱印が拝受できたり、有名な漫画作品などとコラボレーションした御朱印が配布されていることがある。例えば大覚寺は2017年10月にワンピースの連載20周年記念イベントとして「魔獣と姫と誓いの花」展を行っており、その際にコラボ御朱印の頒布を行い、大反響となり、御朱印の一つは3日で頒布終了となった。
しかしながら、このような貴重な御朱印はネットオークションで高値で転売されることがあり、前述のワンピース御朱印も配布直後から転売が行われていた。
言うまでもないことだが、御朱印は寺社と参拝者との御縁であり、決してコレクションアイテムではない。参拝せず、寺社への崇敬もなく、ネットでコレクション感覚で購入する御朱印には何のご利益もないものであろう。
写経までするのは大変かもしれないが、少なくとも実際に足を運び、きちんと参拝を行って神仏に触れ、その御縁の記念として拝受することが望ましい。
加熱する御朱印ブーム
平成の26~27年頃よりブームとなった御朱印集めであるが、異常な加熱を見せており、度々メディアでも取り上げられている。
元号が改正され、新天皇が即位した令和元年5月1日には明治神宮や坂本八幡宮(福岡県太宰府市。「令和」の由来となった万葉集の一節にゆかりのある神社)では8~9時間待ちの大行列となった。また、令和にちなんだ限定御朱印を出す神社も多く、その結果として武雄神社(佐賀県武雄市)では神社側の想定以上の参拝者が御朱印を求めてやってきたために、5月2日は御朱印授与を休止せざるを得なくなっている。外部リンク
そして、これらの御朱印は早くも当日中からメルカリやヤフオクに出品されており、一部では
20万円以上の高値で取引されるなど、異様な状態となりつつある。
御朱印を頂けない場合
- 一部人気のある大きなお寺などで例外はあるものの、基本的に浄土真宗は御朱印を授与していない。また日蓮宗における御朱印は「妙法」と記された紙を渡される場合が多く、同宗門においては御朱印(納経)帳への直接記載は行わない場合が多い。
- 寺社によってはお寺と神社で同じ御朱印帳を使用している場合、宗教の違いを理由に授与されないことがある。ほとんどの場合は気にされないようだが、一応注意しておくこと。
- 天皇神道元伊勢皇大神宮(京都府福知山市)や白龍神社(宮崎県都城市)など近隣の神社から神社と認められていない神社の御朱印を貰っていると、押印を拒否されたり嫌みを言われてしまうことがある。
- 参拝せずに御朱印だけもらおうとするなど、不誠実な行為はご法度。場合によっては注意されるだけでなく、当然頂けなくなることもある。