概要
「ケンガンアシュラ」に登場する能力・技術の名称。使用者である十鬼蛇王馬は「前借り」と呼んでいる。
意識的に心拍数を高めることで血流を加速させ、発生した熱量を運動能力に変換し、攻撃の速度や手数といった「回転力」を急上昇させる技。身体能力差を覆すほどの急激な速度の増加をもたらす。ちなみに一般的な『馬力』という単位はトルク(一発あたりの威力)×回転数によって表されるが、憑神はトルクではなく回転数の上昇によって馬力を上げている。
心拍が高まることで心音がエンジン音のように周囲に鳴り響き、体表の血管が腫脹するためか体色も赤く変化、さらに状態が進行すると白目部分が充血して、まるで呉一族の瞳のように変化する。この時の戦い方は剥き出しの攻撃性や凶暴性を感じさせ、山下一夫はこの時の姿を「猛獣」と例えた。
デメリット
物語が進むにつれて技の問題点も判明することになる。その問題点は時系列順に紹介すると、以下の通りとなる。
- 対戦相手との相性
圧倒的に速度が上がるものの肉体の頑丈さまで上がるわけではないので、身体能力の高い相手に対しては使用は望ましくない。事実、関林ジュンとの戦いでは攻撃によって自身の方がダメージを負っている描写がある。
- 「動きの精密性」の低下
圧倒的な速度をもたらす半面、細かい動きが出来ず、二虎流の一部の技が使えなくなるというもの。特に肉体硬化で血流を滞らせる金剛ノ型との相性は最悪で、コントロールできていない状態で使えば、最悪血管が裂けてしまう恐れがある。
- 身体への負荷
この技の使用時には心臓に平常時の4〜5倍に相当するほどの負荷がかかるため、全身の血管に損傷が生じて吐血や鼻・目からの出血を起こすばかりか、脳内出血が原因で記憶の喪失や混濁、幻覚、幻聴など、重篤な症状が現れる(上述した「猛獣」への変化も、記憶の混濁による攻撃性の増加が原因と思われる)。そして最終的には心臓が限界を迎えて死に至る、諸刃の剣というべき危険な面も判明する。
王馬がこの技を前借りと称するのも「寿命の前借り」とでも言うべき性質がゆえと思われる。
- 弱点となりうる「裂傷」
血液の循環を速めるという性質上、出力に比例して出血量が増加するため、裂傷を負った状態で使い続けると失血死する可能性がある。
使用者・関係者
- 十鬼蛇王馬
本作の主人公である彼の切り札として登場し、自身が強者と認めた相手にだけ使用している。初使用時には自身の内面にある無数のろうそくの一角を吹き消すイメージが登場した。
その後も度々使用するが、トーナメント一回戦後に突如として吐血、二回戦で呉雷庵に対して使用したときに能力が暴走を起こす。この時に危惧していた身体への負担が次々と現れ、限界を超えたことで強制解除となり、仕合後にはしばらく目覚めなくなるほどのダメージを負った。
トーナメント決勝戦、黒木玄斎に対して「前借り」の使用を解禁する。二回戦の能力の暴走がきっかけで出力の調整が可能となり、力の上昇率を抑えることで体の負担を減らすだけでなく、今までのデメリットであった二虎流の併用も可能となった。
しかし決勝でも用いた結果、心臓への負担が限界に達した。そのため一度は死亡したと思われていたが、英はじめが何者かが密かに送り届けた培養された新たな王馬の心臓を移植したことで延命している。
ケンガンオメガでは王馬は心臓への負担を軽くするために、主に出力を抑えて使用したり、上昇率を抑えて瞬間的に使用することで相手の攻撃予測をずらすような扱い方をしている。英によると前借りの連続使用は5秒以内がリミットらしく、ロロン戦で前借りの完全開放を行った際には、そのあまりの身体への負荷から「これはヤベェ。我ながらよくもまあ、こんな技よく長時間やってたぜ」と激しい疲労と共に自虐気味に感想を語っている。
東洋電力の速水勝正が持つ私兵である「守護者」の中でもトップクラスの実力者で、彼らもまた憑神を使用できる。
それぞれにムカデをイメージした刺青が入っており、片原滅堂と呉恵利央の話によると「蟲」と呼ばれる何かが関わっているらしいが…?
- 「本物の二虎」
本編の10年前に奥義を習得したばかりの王馬の元に現れた人物で、王馬が憑神を使用できるようにした人物。
桐生刹那によれば十鬼蛇二虎へ致命傷を与えた際に命を落としているそうだが、時を経て憑神を使う者が現れたことから、王馬はその死に疑念を抱いていた。
さらなる奥義
「ケンガンアシュラ」本編が進む中でこの技が「もう一人の十鬼蛇二虎」が編み出した第壱奥義であることが判明。さらに話が進む中で、さらなる奥義が判明する。
- 二虎流第弐奥義「降魔」
危機に瀕した際に風景がスローモーションに切り替わる「タキサイキア現象」の原理を用いた技。使用者は桐生刹那。
「脳のリミッター」を解除することで脳の処理速度を爆発的に引き上げ、相手の動きを的確に見切れるようになる。
ただし自身の意思で「脳のリミッター」を解除することはできず、危機的状況下でなければ発動できない。
さらに使いすぎると脳に深刻な影響を及ぼし、自律神経の失調や、幻覚や幻聴に悩まされる危険性もある。
- 二虎流第参奥義「神魔」
「ケンガンアシュラ」の続編である「ケンガンオメガ」に登場した、憑神と降魔の併用技。使用者は飛王芳。
肉体が呉一族の「外し」に似たような状態に変化、常人の平常時の数十倍という異常加速した心音は最早簡単に聞き取れないレベルであり、強化の度合いは「外し」を瞬間的に凌駕。超人体質の異常筋力に匹敵するパワーを得られる。
また異常加速した心臓の鼓動によって発生する数十倍の速さの血液循環速度を応用し、傷口から血を弾丸のように飛ばす牽制技も使えるようになった。
そして、憑神の欠点だった「一部の技の使用不可」が解消されており、降魔の恩恵で反応速度の大幅な強化ももたらされた、二大奥義のいいとこ取りと言える効果を持つ。
しかし、心臓と脳への負荷は憑神と降魔以上となり、「外し」をも上回る負荷が生じるようになった結果、本来は「使用=死」の文字通り禁断の技。
二虎の4000人の弟子の中で、命を落とさずに扱えたのは飛王芳のみである。
余談
ダンベル何キロ持てる?とのコラボ漫画(単行本ではケンガン26巻、ダンベル5巻)における紗倉ひびきとの大食い対決では、この「前借り」を使うことで引き分けに持ち込むことがやっとだった。
関連タグ
ギア2…外見の変化、技の効用やデメリットの内容が極めて近い戦法。
クロックアップ……王馬の元ネタを考えると、こちらが元ネタになっている可能性が大。
「ケンガンオメガ」最新話までの内容が含むためネタバレ注意
憑神は「もう一人の十鬼蛇二虎」が編み出した奥義では無く、二虎流を創った臥王鵡角によって作られた技であり、臥王鵡角がかつていた組織『我王』が80年前に繋がる者を殺そうとして作った切り札的存在の技をベースにして鵡角が作った技であり、呉一族に対抗するためと言うのは鵡角の方便であった。そのため鵡角が二虎流を教えた『七人の十鬼蛇二虎』全員が憑神を使えていた。