概要
1972年に公開された東宝配給の特撮パニック映画。
田中光二の「爆発の臨界」を原作としており、非常にサスペンス色の強い内容となっている。
当時の東宝は『日本沈没』や『ノストラダムスの大予言』などのパニック映画を多く手がけており、それらのパニック映画がヒットしていたこと、前年には東京湾内でタンカーと貨物船が衝突・炎上しタンカーを海上自衛隊の潜水艦が雷撃処分する「第十雄洋丸事件」が発生しており、これらの影響でタンカーを題材にしたパニック映画の製作が決まった。
原作者の田中は取材のため『ノストラダムスの大予言』の特撮制作現場を訪れており、そのころから東宝映像社長の田中友幸は映画化を検討していたという。
当初は監督も『ノストラダムスの大予言』と同じ舛田利雄が起用される予定だったが、石田勝心に交代した。
タイトルは『東京湾炎上』だが劇中の爆発シーンはイメージシーンか偽装のため制作された特撮映像であり、主体となっているのはテロリストとタンカー乗員たちの攻防が中心となった骨太のドラマである。
あらすじ
中東から東京湾へと向かっていた原油タンカー「アラビアンライト号」が、テロリストにシージャックされた。
テロリストは鹿児島県喜山(モデルは喜入町にあった日本石油(現:ENEOS)の喜入石油基地)の石油コンビナートを爆破し、それをテレビ中継することを要求。従わない場合はアラビアンライト号を東京湾に突入させて爆破することを宣言した。
要求を呑んで喜山コンビナートを爆破すればば漏れた原油による二次災害で東京どころか首都圏がほぼ壊滅状態、コンビナートを爆破すれば鹿児島湾一帯が死の海と化す危機が迫る中、タンカー内では乗組員が反撃を始めテロリストと戦い始める。
一方政府は両方を回避するためにある奇策を思いついた。それはコンビナートの爆破を特撮で撮影し中継することだった。
スタッフ
監督:石田勝心
特技監督:中野昭慶
原作:田中光二『爆発の臨界』(1974年、祥伝社)
擬斗:日尾孝司
音楽:鏑木創
主題歌:橋本葉子「あなたは旅人」
助監督:今村一平
特撮助監督:川北紘一
特撮製作担当:篠田啓助
協力:(株)大阪商船三井船舶
キャスト
宗方船長:丹波哲郎
館次郎(地質学者):藤岡弘
小佐井機関長:宍戸錠
ムンク:水谷豊
未知子:金沢碧
西沢甲板長:内田良平
岩動達也(一部資料では「石動達也」と表記):渡辺文雄
葛城対策本部長(一部資料では「葛木」と表記):鈴木瑞穂
深見久:佐藤慶
江原一等航海士:北村総一朗
井上三等航海士:潮哲也
片岡機関士:富川澈夫
五十嵐無線局長:久野四郎
初山船医:金井大
寺田司厨長:下川辰平
担当官:加藤和夫
若林進(特撮監督):佐竹明夫
防衛庁長官:入江正徳
林パイロット:佐々木勝彦
記者:佐原健二
映画カメラマン:梅津栄
瀬木運輸大臣:河村弘二
草下通信士:青山一也
原(ボーイ):伊藤敏孝
南二等航海士:小笠原剛
小原機関士(一部資料では「坂田」と表記):小原秀明
田村操舵士:剛達人
関根ダイバー隊長:笠達也
村松自治大臣:神山勝
中園対策本部員:久遠利三
アナウンサー:中江真司
TV中継スタッフ:武藤章生
刑事(鹿児島):渡部猛
記者B:小沢幹雄
刑事:三重街恒二
記者A:加地健太郎
記者:オスマン・ユセフ
プロジェクトメンバーの一員:長沢大
本部通信士:門脇三郎
第三管区海上保安本部職員:加藤茂雄
峠の中継スタッフ:勝部義夫
有島海上保安庁長官:高杉哲平
キファル(ゲリラのメンバー):ケン・サンダース
シンバ(ゲリラのリーダー):ケイ・アモア
ザンバ(ゲリラのメンバー):ウイリー・ドーシー
テンボ(ゲリラのメンバー):マスド・ラシド・ローン
ムボゴ(ゲリラのメンバー):イクバル・ハニフ
記者:トニー・セテラ
余談
アラビアンナイト号の模型は特撮美術の井上泰幸は当初全長8mを要望、制作部長からは2mを指示され、田中友幸は4mで決着をつけたが、井上は結局7.2mで制作した。
水はごまかしがきかないため主役を大きくしないと画が保たないという理由だったが、実際に完成した模型を見た田中は意外と大きくなかったと語ったとか。
アラビアンナイト号の船内・甲板のシーンは実際のタンカー「山菱丸」と「若鶴丸」で撮影した。当然ながら本当に石油を満載したタンカーでゲリラの襲撃シーンを撮影するわけにはいかないため、鉱石運搬と兼用している「若鶴丸」が停泊中の2日間に集中して撮影したという。
本作の石油コンビナート爆発映像は『ゴジラVSデストロイア』と『ゴジラ×メカゴジラ』に流用されている。