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概要編集

機動戦士ガンダムカタナ」は月間ガンダムエースにて2009年から2013年にかけて連載された作品であり、「オレら連邦愚連隊」の続編にあたる。

作者は曽野由大 脚本はクラップスが前作に引き続き担当している。


前作とは違い本作はガンダムタイプモビルスーツが多数登場するがガンダムタイプの機体もそうでない機体も一部のゲーム作品や模型誌で登場するようなマニアックな機体が多いのは前作と同様である。

これより以下物語の根幹に触れるネタバレあり


ストーリー編集

時代は宇宙世紀0084年。「一年戦争」、「デラーズ紛争」という2つの戦乱を終えた地球圏は荒廃の一途をたどっていた。

いまだ一年戦争の戦禍による経済不況は深刻であり、その影響はついに地球圏を治める地球連邦軍にも及び、街は人員削減によるリストラを受けた失業者で溢れかえり経済の低迷はとどまるところを知らないのだった。


そんな中、かつては「連邦の懐刀」と恐れられたが今は地球圏を覆う経済不況と、急速に影響力を強めつつある連邦軍内部の急進派勢力である「ティターンズ」に押され衰退しつつある連邦軍対破壊工作特殊捜査旅団こと「BGST(バーゲスト)」へある人物が新任の指揮官として着任する。


彼の名は「イットウ・ツルギ」。

彼は地球連邦軍の綱紀粛正を掲げ、いずれ連邦政府をも立て直していく所存であることを表明するところから話は始まっていく。


勢力編集

BGST(バーゲスト)編集

正式名称「連邦軍対破壊工作特殊捜査旅団」。

地球連邦政府創設以来から活動していた対テロ部隊であると同時に軍警察としても行動し、軍内外の法の番人の役割を担ってきた由緒正しき組織である。

創設者一族の「ツルギ家」の長男が指揮官職に就いている時期にBGSTは躍進してきたということから「BGSTはツルギ」という暗黙の了解が存在する。


「ツルギ家」という日系の一族が創設に関わっていることから隊舎には武道場や神棚、刀掛けがあり訓練では剣道を行うなどかなり和風色が強い組織であり、所属するメンバーもその道を極めたような風貌をした隊員がかなり多い。

このことから別名「任侠部隊」としても呼ばれているが地元住民からは法の番人として非常に信頼されている。

隊舎の刀掛けに飾られているBGST隊長の証である「バーゲストの刀」という日本刀と代々ツルギ家の長男が受け継ぐ小太刀が揃うことでツルギ家の長男が指揮官に就くという就任式が存在する。

このバーゲストの刀は「BGST隊長にしか抜けず、それ以外のどの力自慢でも抜刀できなかった」という伝説があるがこれはただ束の口に回すことで外れるロックがあるだけであり就任式のパフォーマンス用に作られただけとイットウ本人が発言している。


シン・フェデラル編集

連邦軍内部の軍閥勢力であり組織のエンブレムに「袈裟斬りにされた連邦軍エンブレム」を持つ。

その出自はかつて宇宙世紀0083年に連邦軍が挙行しようとした観艦式にてデラーズ・フリートに強奪されたガンダム試作2号機による核攻撃を受けながらも生存した当時の観艦式に参加していた連邦軍艦隊であり、後に連邦政府がこの一連の事件を隠蔽したことで「生死不明」として処理された事に憤り連邦軍へ反旗を翻した。

その目的は現体制の地球連邦政府を打倒し、宇宙に新政権を樹立した「ニュータイプ国家」を作り上げることである。


サイド1などの反連邦感情が強いコロニーなどに影響力を持ち、一部ではアナハイム・エレクトロニクス社ともパイプがあるようでありペズン・ドワッジといった旧ジオン系MSからジム・カスタムといった比較的新式の機体にガンダム試作2号機などの特殊機まで配備している。


ティターンズ編集

「デラーズ紛争」以降、地球至上主義を標榜し発言力を強める連邦軍内部の強硬派であり連邦政府内外からも危険視されている。詳細は該当記事にて。


登場人物編集

イットウ・ツルギ編集

本作の主人公であり階級は中佐。BGSTの現隊長であり先代隊長であるカネサダ・ツルギ大佐の実の息子でもある。

軍人どころか成人にも見えないほどの童顔であるが作中のセリフから20歳以上なのは間違いないが正確な年齢は不明。

ツルギ流剣術の遣い手であり生身でもMS操縦時でも並外れた近接戦能力を持つ。

しかし射撃が非常に下手で自身もこれをコンプレックスにしており隠している。

基本的に物腰が柔らかく怒鳴りつけることなどはしないが、父であるカネサダのことになるとその限りではない。

実は過去に父カネサダの手により「強化人間」の実験計画被験者として参加した過去がありイットウ本人も様々な強化実験を受けた強化人間であることが後に判明する。

共に実験の被験者となった友人のほとんどは実験の過程で精神を病み、イットウ曰く「解剖された」とのこと。

そうした非人道的な行いをしてきた父カネサダを深く憎悪しており自らの手で殺めることも辞さない。

搭乗機はストライカー・カスタム


フランチェスコ・メンゲル編集

地球連邦軍大尉でありBGSTの副長。作中では「副長(カシラ)」と呼ばれている。

カネサダ無きBGSTを受け持ち、隊を仕切ってきたが自身がツルギ家の人間ほど優れてはいないということを自覚しておりイットウが隊に赴任して以降はイットウのよき理解者として行動した。

戦闘の際は作戦指揮を担当し隊員に檄を飛ばしている。

妻帯者であり、妻には頭が上がらず電話口では冷や汗をかきながら話すシーンがある。


ボンチャイ・ヤスコビッチ編集

地球連邦軍曹長。BGSTの下っ端隊員であり髪型は金髪のリーゼント、軍服をだらしなく着込むなどひと昔前のヤンキーや暴走族を彷彿とさせる風貌をしている。

連邦軍に入隊する前は名の知れた走り屋として暴走行為に明け暮れる毎日を過ごしており、ある日マフィアとのトラブルに巻き込まれた際に当時BGST隊員だったべレーノ・アバッキオに救われたことで恩義を感じ入隊した。

MS操縦技術は当初はそこまででもなかったものの、ポール・マーキュリー大尉から伝授した奥義を体得し戦闘を有利にすすめるなど非凡な才能をのぞかせる場面もあった。


カネサダ・ツルギ編集

地球連邦軍大佐にしてイットウ・ツルギの父。同時にBGSTの先代隊長であったが、観艦式の警護として参加していたところガンダム試作2号機による核攻撃で消息不明となっていた。

しかし実は核攻撃を生き延び、傷を癒やす内に生存した自分達を切り捨てでまでも体制の維持に腐心する連邦政府に見切りを付け、地球連邦政府への復讐を掲げる「シン・フェデラル」を創設した。

木星圏で強化人間開発計画を推進し、精神感応AI「妖刀」を産み出し、これらサイコミュを利用した集団催眠を行使して「全人類の闘争本能を抑え込み戦争の根絶を成す」という「仁の日」を完遂しようと暗躍する。


ツルギ流剣術を使いこなし、その腕前はイットウすら赤子扱いするほど。

MS戦でも圧倒的な操縦技術を持ち単騎でジム・クゥエル数機とサラミス改級を撃沈するなどの腕を持つ。

搭乗機は自身がシン・フェデラルを立ち上げるきっかけとなったガンダム試作2号機であるが、大型のビームバズーカと背部にミサイルポッドを装備したタイプであるシン・フェデラル仕様になっている。


リチャード・グレイソン編集

連邦欧州商工会議長であり、BGSTの影のスポンサー。かつてカネサダから武道を教わった過去を持つ。

しかし真の目的は地球圏に戦乱を永続的に起こし利益を得ようとすることであり、カネサダがサイド1へ根回しをしているところを拘束させ自身は「スパーダ」と名乗り、仮面を装着しカネサダであるように振る舞っていた。

カネサダになりすまして以降は宇宙に新政権を打ち立て、経済活動と人類の生存圏を地球に依存する現体制を脱却しようと考えアースノイド中心の地球連邦政府を打倒し、圧倒的大多数のスペースノイドの民意を反映する新国家体制「ニュータイプ国家」の建国を画策する。

しかし後にカネサダが復帰したところでリチャード自身もイットウと同様に苛烈な強化実験の被検体にされる報復を受ける。

物語終盤で実験から生き延び、実験の過程で精神が蝕まれたのか自分を「神、絶対者」と自称するようになる。カネサダからは「今ごろ水槽の中で廃人になっていると思っていた」と言われているように実験は最初から成功は期待されていなかったことがうかがえる。

精神が破綻した影響か言動が俗っぽくなったかと思えば尊大になったりと不安定になっているが、MSの操縦技術は常人を遥かに上回るレベルになっておりカネサダすら破るまでに至っている。

その後イットウとの死闘のすえに敗れ死亡した。

搭乗機体はドルメル(シン・フェデラル仕様※カラーリングが色と金※2Pカラーベース)→ドルメル・ドゥーエ




コテヅ編集

シン・フェデラル所属の「強化兵士」。ドレッドヘアーの色黒の少年でありスパーダに心酔している。

かつて戦災孤児だった過去があり、スパーダに拾われ強化実験の被験者となる。スパーダへの忠誠心と少年離れしたMS操縦技術、生身の身体能力はこのときに得られたものである。

しかし後に強化兵士より上位の存在である「強化人間」の開発が成功したことでするスパーダことリチャードから切り捨てられてしまう。その後強化実験による洗脳が解け以降はBGSTに協力するようになる。

洗脳は解けても強化実験で得たニュータイプ能力は健在であり終盤の戦闘ではサイコミュを使い戦っている。

搭乗機はジム・カスタムガンダムNT-1ネティクス


ベレーノ・アバッキオ編集

元BGST隊員であり、現在はシン・フェデラルに所属している。階級は不明。

かつてヤスがBGSTに入隊するきっかけとなった人物でありカネサダらが観艦式での攻撃で行方不明になった際に捜索隊を組織し宇宙へ上がったがその後べレーノ自身も行方不明となった。

実はカネサダの思惑に賛同し連邦から離反してシン・フェデラルに参加していたことが判明する。

龍を模した巨大戦艦である「カイザー・オブ・ドラゴン」の艦長でありスパーダの護衛兼始末人を務める。


サキ・デッサウ編集

一年戦争時に創設された連邦軍MS教導団「ネメシス」隊の指揮官を務めていた軍人。階級は少佐から大佐に昇進している。

本作ではシン・フェデラルに再集結させたネメシス隊ごと参加しているように思われていたが、実は連邦軍からシン・フェデラルの内情を探るよう派遣されたスパイであり各地の工作員の情報や兵力などを密かに伝えていた。

かつて自身に真に守るべき存在に気づかせてくれたユージが今ではすっかり覇気を失い、鬱屈した性格に変わってしまったことを憂い彼を再びネメシス隊へ招集する。


ユージ・アルカナ編集

前作「オレら連邦愚連隊」の主人公。本作でもシン・フェデラルのメンバーとして登場する。

詳細は該当記事にて。


ピンボン・ストーンフィールド編集

ティターンズ所属の軍人で階級は大尉。

民間人や地球連邦軍兵士などに尊大かつ嫌味な態度や言動を取る人物であり、常に副官であるピエールを従えて行動している。

自らの部隊を率いて作戦の指揮などを行うがいずれの作戦も失敗したところをBGSTに救われる形になっている。

作中では眼前まで敵が迫ってきた状況も多い中結局は生還するという場面が多く妙な運の良さを持つ。

モデルとなったのは電気グルーヴの石野卓球氏(石野→ストーンフィールド 卓球→ピンボン)


スーチー・オコンネル編集

ジオン残党軍の女性であり階級は曹長。一年戦争時はジオン突撃機動軍に所属していた過去をもち7機の撃墜スコアを持つ優秀なMSパイロット。「濃緑の毒蜘蛛」という異名を持ち、ヒート・ホークをブーメランのように飛ばす戦法で戦う。

自身の父同然であった養父のゴドー中佐をシン・フェデラルのコテヅに殺害されてからシン・フェデラルとコテヅへの復讐に駆られていたがイットウのはからいによりBGSTと行動するようになる。

後にサイド7へ潜入し、シン・フェデラルの動きを探っていたがサイド7に格納されていた「ブルーディスティニー・Ω」に影響されたことで本機のパイロットとなる。


ムラマサ・ツルギ編集

資源惑星「ハーモニー1」で暮らす老人。同惑星で資源採掘を行っており静かに暮らしていたが、シン・フェデラルの攻撃から逃れてきたヤス達に出会い匿うことになる。

スパーダの事、「妖刀システム」からさらに強化兵士の事まで知っているなど謎の多い人物であるがその正体はカネサダ・ツルギの父でありイットウの祖父であることが判明。

損傷した2機のストライカー・カスタムとフルアーマー・アレックスを組み合わせて修復させた「フルアーマー・ストライカーカスタム」を完成させイットウ・ツルギの再起を助けた。


ポール・マーキュリー編集

地球連邦軍所属の軍人で階級は大尉。

屈強な大男であるが根っからのオネェでもあり、ボールで編成されたブラックチェリー隊の隊長を務める。

一年戦争では「北の玄武」と恐れられたエースパイロットであり前作「オレら連邦愚連隊」に登場した「東の鷹」の異名を持つホーク・ロイザー大尉とは知り合いである。

「タートルヘッド・スピン」というド直球すぎる技やその他多くの奥義を体得しており、その実力に惚れたヤスから「師匠」と呼ばれるようになる。

モデルはおそらくフレディ・マーキュリー


余談編集

第1話のドム・キャノンとの戦闘でドム・キャノン頭部のパイプをイットウのストライカー・カスタムが引きちぎるシーンがあるがこの時のストライカー・カスタムのポーズがファーストガンダムがザクⅡの頭部パイプを引きちぎるシーンと同じであり、ドム・キャノンのパイロットも「なんてエネルギーゲインだ!」と驚いている。


本作では他作品のガンダムシリーズ、特に「機動戦士ガンダムUC」のオマージュであると思わせる場面が多い。


例えばスパーダ(リチャード)の「人類の経済活動のために地球に固執する意味はなく、コロニーだけで十分」という思想はフル・フロンタルが提唱した「サイド共栄圏」構想と符号する点が多い。

スパーダ自身も「仮面を被り、組織の本来の司令官であるように振る舞っていた」という点でもフロンタルに近いといえる。


そしてイットウとストライカー・カスタムの関係性もバナージ・リンクスユニコーンガンダムに酷似している。

まずバナージもイットウも「幼い頃から強化人間の実験を受けていたニュータイプの才能を持つ人間」という点で一致しており、乗り込んだ機体も「ガンダム」であり搭載されたシステムも「ニュータイプ、あるいは強化人間に反応して起動する」ものである上に、「その搭載された特殊なシステムの開発には実の父が関与している」という部分まで共通している。

作中でイットウが妖刀システムを介してユージ・アルカナの過去を追体験する場面が出てくるが、これはバナージがサイコフレームの力でマリーダ・クルスの過去やネオ・ジオング戦で一年戦争の出来事を追体験したときとよく似ている。


最後に、カネサダが画策した「仁の日」だがこれはサイコミュ装置の一種である「妖刀ムラサメ」から発する特殊な波長で人間の脳に介入し、「人間の闘争本能を抑制する」というものである。

作中ではサイド7の連邦総会で会場を警備するティターンズに使用し会場を襲撃させたがもし本来の意図で使用されればカネサダは後のザンスカール帝国が開発したエンジェル・ハイロゥの先駆けとなっていたのかもしれない。




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