概要
てんとう虫コミックス32巻及び、藤子・F・不二雄大全集19巻に収録。
このロボットを肩に乗せると、それが肩に乗った人の口を動かしてどんな事にももっともらしい事を言って相手を言いくるめることができる。
ただし、ロボットを肩からはずすと、それまでついた嘘が一気にばれる。
そのため、ヘタをすると言いくるめた相手全員を敵に回すことになる。
ストーリー
のび太とスネ夫は、空き地でジャイアンから「ひさしぶりに新曲ができた。聴きたいか?」と質問され、スネ夫の方はすかさず、「久しぶりだなあ!遅いんだよジャイアン。いつ新曲ができるのかと待ちくたびれちゃったよ」と作り笑顔でおだて、「怠けて悪かった心の友よ」と、ジャイアンはご満悦だった。
だが、お前はどうなんだ、と聞かれたのび太は「もっと遅くても良かったのに。聴きたい聴きたい、どうせ聴かされるなら、嫌なことは早くすませたい。」と、我慢のにじみ出た顔で答え、当然ぶん殴られ「だれが聞かせてやるか!」とジャイアンは空き地を出ていった。
おかげで助かった。ジャイアンの気が変わらないうちに帰ろう、とスネ夫に促されたのび太だったが、0点をとってしまって家に帰りにくいと困り顔。自宅でものび太のママは0点の答案を見つけており、カンカンだった。
実はスネ夫も点数が悪かったが、彼はズルい顔をしながら家に入っていった。
玄関で待ちかまえていたママにいきなり「スネ夫!!」と呼び捨てで怒鳴りつけられたスネ夫だったが、再びすかさず「やめてお母様!」
と駆けより、
「怒ると小ジワが増えるっていうよ。ママの美しい顔がシワだらけになるなんてボク耐えられない!」
と泣き叫び、
「この次頑張るから。いつまでもママに若く美しくいてほしいから」という頃には、もうママをホロリとさせて「まあ……スネ夫ちゃんはなんて優しい……」とまで言わしめた。
ドアの外でこのやりとりを聞いていたのび太は「うまいことやったなあ」と感心して帰宅。
同じころ、ドラえもんが「ぼくからよく言い聞かせるから」とママに一生懸命とりなした結果、「今回は私からは何も言いません」とママも納得したのだが、そこにいきなり「やめてママ!」
と駆け寄り、
「その美しい……というほどでもない顔がしわくちゃになるじゃんか。見るにたえないよ」
……と余計な言葉を放ったせいで、結局正座させられギャンギャンに叱られる羽目に遭うのび太に背を向けながら呆れるドラえもん。
「ばかだねえ、じつにばかだね。」
自分は口下手で損ばかりしている。ごまかしでも良いからスネ夫みたいに要領よくやりたい、とのび太に泣きつかれたドラえもんは、気が進まないながらも「腹話ロボット」を出す。
その直後、まだ機嫌の悪そうなママに草むしりを命じられるが、「ウェー」と言いかけた瞬間腹話ロボットが作動。
「草むしりうれしいな。腰をかがめるのがウェストの運動になるし、指から葉緑素が吸収されて肌もきれいになるんだよね」
と言ったことで、ママがソソクサと自分でやりはじめた。
「ママのためなら喜んでゆずってあげよう」と、調子よく縁側で草むしりを見物していたのび太、さらにお小遣いももらえないもんだろうか、と、こっそりロボットに持ちかけると
「お年玉が年に一回と言うのは誰がきめたのか。現代人は古い習わしにとらわれることなく毎月お年玉を」
との台詞でまんまと金をせしめることに成功。
かなり無茶な理屈でもこの人形が言えば通じてしまうものなのだというのは、ドラえもんも知らなかったようだが、ロボットを止めるとごまかしもばれるんだぞ、と忠告するも、すっかり味をしめたのび太は「ずーっとこのままにしておく」と呑気に散歩に出る。
直後、道で先生に出くわし、「あんな点をとっておいて宿題もせずに遊びまわれる身分か」とお説教を食いそうになるが、ここでも、
「僕は自分さえ成績が上がればという考え方はどうしてもできない」
「仮に頭のいい生徒ばかりのクラスでも、どんなにみんなが一生懸命勉強しても、テストをすれば必ず順位がついて誰かがビリになる!!」
「だから…だから僕が犠牲になって0点を……世の中にこんなバカが一人くらいいてもいいんじゃないでしょうか……」
と6コマにも及ぶ熱弁と共に涙し(この人形に涙を流させる機能は恐らく無いので、のび太本人の熱演と思われる)、のび太の優しさ(?)に感動した先生に「これからもがんばって0点をとりなさい」と励まされた。
また、突然開催が決まった「ジャイアンリサイタル」では、歌い出しから「ひどい歌だなあ」と言って空き地の観客全員を凍り付かせた。「今なんと言った?」と激怒し、今にも殴りかかりそうになっているジャイアンに
「ジャイアンの歌はこんなもんじゃないはずだよ。ノドを痛めているんじゃないの?」
と弁明、これを受けて「そういえば昨日めざしの小骨がのどにささった」というジャイアンに
「無理をしちゃだめじゃないか。将来の大歌手がもっとノドを大事にしてくれなくちゃ」
と言ってジャイアンを感激させ、見事リサイタルを中止させることに成功した。
……と、ここまでは良かった(?)のだが。
リサイタルに遅れて来ることになっていたしずかちゃんに、中止を知らせてあげようと、どこでもドアを使ったのび太。が、例によってしずかちゃんは入浴中だったため、怒らせてしまう。
「ま、まあ聞いてよ」と再び腹話ロボットが作動。
「アダムとイブの時代、人間は裸だった」
「服を着るようになったのは、神様の言いつけにそむいて知恵の木の実を食べたからで、神様の言うとおりにしていれば、人間はいまでも裸のままで楽園で暮らせていたはずなんだ」
「世界の美術館が裸の絵や彫刻でいっぱいなのは美しいからだ」
と力説(このときイメージとしてボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』がコマに出てくる)。
「はだかこそ永遠の美のテーマなのであります!!」
これを聞いたしずかちゃんは、それまで湯船に身を沈めて隠れていたのにザバっと立ち上がる。
「じゃあ恥ずかしがるのが間違いなのね」
「服なんて着なくていいのね!」
と、浴槽からあがってしまい、「それは……」とのび太が口ごもっている間に、
「遊びに行きましょ」
と、どこでもドアから屋外に出て行こうとする。
「極端すぎるよ!」とのび太本人は止めるが、不思議そうに
「のび太さんもそう言ったでしょ」
と、ふりむいたしずかちゃんに、腹話ロボットは
「そうとも、そのまま町中をかけまわろう!!」
と高らかに言ってしまい、どこでもドアから生まれたままの姿で両手を広げて空き地に現れたしずかちゃんに驚愕するドラえもん。
大慌てでのび太が腹話ロボットを地面にたたきつけた瞬間、正気に返ったしずかちゃんは悲鳴とともにどこでもドアで浴室に逃げ帰った。
「みんなまだ怒ってる?」
空き地の土管の陰に身をひそめるのび太に、ドラえもんは
「当分うちへ帰れないね」
と、淡々と報告。
その視線の先には、まんまと騙されたことに気づいたママ、先生、ジャイアン、しずかちゃんが怒りの面持ちでのび太を探し回っていた。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版は1981年11月20日に放送されたが、現在のところ水田版では、まだアニメ化されていない。
1981年版
- ママが0点の答案を見つけたのは部屋を掃除機がけしていたからで、頭には布を被っていた。またこの時ドラえもんは漫画を読んでいなかった。
- スネ夫のママは「スネちゃま!!」と叫んでいた。
- ドラえもんの「バカだね。実にばかだね」の台詞はカットされている。
- のび太がお小遣いをもらおうとする下りは、飲み会を残業と偽って電話をかけて来たパパに対し怒るママを、男は外に出ると色々と付き合いがあって大変だからとのび太が庇う下りに変更され、この後の先生の下りもママに言っている。
- のび太がしずかにした説明のうち、アダムとイブや世界の美術に関する部分はカットされ、裸で外へ出ようとするしずかにのび太はバスタオルを体に巻くよう勧めている。
- 上記の通り先生は一切登場していないので、ラストの場面にも登場していない。