西城戸梨王
にしきどりおう
業界最大手『東京女子プロレス』の暗黒時代と黄金時代を経験しつつ10年以上のキャリアを積んだベテランレスラーの1人だが、2006年を境に上を目指すでもなく下を抑えるでもなくただただ中間層で燻り続けるようになり、時には派閥抗争の応援、時には他団体への貸し出し要員として駆り出される冴えない日々を送っていた。
東女では「一部を除いて単独で活動する中堅以上のレスラーはどの派閥からも誘われない落ちこぼれ」という不文律があり、年を経るに連れてこの悩みが大きくなっていた頃、本格参入に際してレスラー獲得に奔走していた新興団体のFWWWから受けた勧誘に活路を見出し、同じく活動の場を求める硯見ちひろと吉名さゆきの2人を連れて2014年に東女を自主退団した。
FWWWを実質的に経営する社長秘書の南城檸檬曰く「はずれクジを掴まされた」「古巣を裏切った上にお荷物」と散々な酷評を受けているが、腐っても東女の激動期を生き抜いた数少ない10年選手である経験を活かして道に迷う後輩の相談相手となり、新人の活躍の場となる前座試合を専門に出場して会場を温める見せ場を作るなど、知る人ぞ知る縁の下の力持ちとして選手活動を続けている。
本人の談によれば昔からほぼ変わらない体型のままであるらしく、小学生の頃のあだ名は『ハート様』。ただし、太っている事を誇りにすら感じている西城戸本人はこれを拒否するどころか気に入ってさえいた。
10年前(2016年時点)までサーカス大鉛と組んでいたコミックタッグ。お約束のムーブは、某お笑い芸人の一発芸にヒントを得た「ファッツ!」。
大鉛が東女ヒール軍『凶獣』への参加を決めた2006年に両者の合意の上でタッグを円満解消したものの、当時は「地方興行のエース」とまで称された正規軍の目玉タッグであり、外見からは想像も付かない身軽な動きでリング内から会場の外まで縦横無尽に暴れ回るファイトスタイルで人気を博し、地方興行限定で行われた数々の変則試合の中でも『水中マッチ』では無敵を誇った(相手の大半は体脂肪率が低く水に浮かないため)が、本人曰く「進んで思い出したくない若気の至り」、つまり黒歴史に位置付けている。
しかし、たった3年足らずで解散したファッツ時代に世にもたらした影響力は根強く、岸田南美と玉子(美鳥アリサ)がプロレスラーを目指すきっかけを作り、FWWW移籍後も熱烈なファッツファンであり続けるこの2人の確実な獲得を画策したナース小田藤が陰で「ロートル」と蔑まれ孤立していた西城戸を敢えてレジスタンスに引き入れる『海老で鯛作戦』を実行に移して大成功を収め、実は憧れの対象でありながら声を掛けられずにやきもきしていた円陣光子、蓮根、サクリファイ子の不安を払拭した上、ベテラン不足のFWWWにあって新人、若手、中堅の面倒を見つつレジスタンスの結束を固める意外な役割を担うようになった。
ところが、未だに自身を心から慕い続けてくれる岸田と玉子のために大鉛を呼び出して往年の掛け合いを演じた一部始終を見かけた一般人の手によって無断撮影、動画投稿されてしまい、これを知ったマスコミ各社が「ファッツ復活か」と騒ぎ始める一大事となってしまったため、お互いにケジメを付ける意味も込めて東女興行恒例のダークマッチ(第0試合)で団体の垣根を超えた一夜限りのドリームマッチ『ザ・ファッツ対決』に参戦する事となった。
「魅せるプロレス」を追求し続けた2人の最初で最後の直接決戦に加え、FWWW側は5人、東女側は6人のセコンド(西城戸の様子を聞き知った豪徳寺伊吹が「西城戸さんに恥をかかしちゃいけない」と急ぎ手配した)が参加する異例尽くしで迎えたダークマッチは、往時を知るオールドファンのみならずその場に居合わせた観客全員を熱狂と歓喜の渦に巻き込んだ激戦の末に西城戸が完全勝利を収め、直後の第1試合に出場したサモエドと兎角はねるがその割を食って酷く落胆するほどのメインマッチ級の大盛況で幕を閉じた。
なお、タッグ解散以降は同じ団体に所属していながら顔を合わせる機会がほとんど無く、積極的に連絡を取り合う事もしなかったが、陰ではお互いの体や進退を気遣い合う深い絆で結ばれており、大鉛をして「もしアンタにその気があるならFWWWでパートナーを見つけて新生ファッツを結成しても構わない」とまで言わしめている。
お互いの肥満体型に難癖を付け、「そりゃ仕方ないね」「ああ仕方ない」のキーワードを合図に軽快な音楽に乗せて繰り広げる漫才風ムーブ。
西城戸の思い付きで岸田と玉子の目の前で披露した時は、解散以後1度も行っていなかったにもかかわらずすらすらと演じて見せ、当人同士で「いや、意外と体が覚えてるもんだね」「すり合わせ無しでいきなりでも、いけるね」と驚いていた。
西「仕方ないよね」 サ「仕方ない」
サ「太っちまうのは」 西「仕方ない」
西「仕方ないよね」 サ「仕方ない」
サ「何せ私ら」 西「全身くまなくラード体質」
サ「食べれば食べるほど」
西「肥えていく」 サ「丸くなる」
西「膨らむ様子は」 サ「イースト菌」
西「おデブが二人で」 サ「ランデブー」
西「たるんだ体で」 サ「脂肪遊戯」
サ「こんな見かけで...」 西「プロレスラー」
西「リングの餅とは」 サ「私らのこと」
西「それじゃみなさん」 サ「ご一緒に...」
西・サ「ファッツ!」
- 「世の中、デブに偏見もってるだろ?あたしが、その偏見をぶっ潰してやるよ。」
- 「あたしゃただのデブじゃねぇ……飛べるデブだ。そこらのガリよりよっぽど飛べるんだよ!」
- 「動けるデブってーのを見せてやるよ!」
- 「脂肪力(しぼうぢから)の足りない小娘はすっこんでな!」