『ぬらりひょんの孫』の登場人物は別ページで解説。⇒鴆(ぬら孫)
概要
中国語ではチェン(Zhen)もしくはチェンニャオ(Zhenniao)、韓国語ではチムジョ(Jimjo)、ベトナム語ではチムチャム(Chim Trấm)と呼ぶ。
緑色の羽毛と真っ赤な嘴を持つ妖鳥。大きさはサギほどで姿は雁やサギ、キジ、フクロウなどの鳥類に似ていると言われ、定説は無い。
『山海経』中山経八の巻に、「女几山」の生き物として登場する。郭璞の注釈に、「大きさは雕(鷲)ほど、紫緑色の羽を持ち、頸(くび)が長く喙(くちばし)が赤い。蝮の頭を食べる」オスを特に「雲日」(うんじつ/ユィンリー/Yunri)、メスを「陰諧」(いんかい/インシエ/Yinxie)と呼ぶ、という。記述がある。
毒蛇や砂子虫など毒のある生き物を好んで食す。
肉は勿論、骨や羽毛に至るまで全身に猛毒を持っている。その威力は鴆が飛んだ跡は作物が全て枯死し、獲物を咥えれば唾液に含まれる毒で獲物が溶け、排泄物が石にかかれば石が砕け散る程で、口に含めば五臓六腑が爛れて死に至る。
その毒気のあまりの威力から毒の代名詞とされ、「鴆殺」と言えば毒殺、「鴆を市する」と言えば毒物の闇取引、「鴆杯」と言えば毒を自ら呷る事を指した。
毒羽を酒に浸す等の形で、暗殺に利用されることもあったという。
この毒の解毒には犀の角が有効であり、皇帝や貴族は犀角の杯をこぞって求めたといわれる。
『山海経』中山経巻の十一にある、瑶碧山に住む生き物で、一つ目の牛のような姿で蛇の尾を持つ「蜚」という幻獣は歩くだけで河を涸らし、草木を枯らし、疫病を流行らせる恐ろしい存在だが、鴆はこの獣を襲って食べてしまう天敵であるといわれる。これは郭璞の注釈によれば別種だという。
ちなみに、近年ニューギニア島で羽毛に毒を持つピトフーイ(モリモズ類)という鳥が発見され、その後も類似した他種の毒鳥が発見されている。もしかしたら古代中国ではすでに知られており、モデルになったのでは?と考えられている。なお『文選』所収の『呉の賦』の注で、黒色、長頸(ながいくび)、赤喙(あかいくちばし)と書かれるこの鳥は、江東(中国の。長江下流域の辺)の大山中には皆生息している、とある。
仮に鴆のモデルとなる毒鳥が実在したとしても南北朝時代までには絶滅したと考えられており、その場合も開発による環境変化や毒を恐れた当時の人々により人為的に絶滅させられた可能性が高いと言われる。また、後世になればなるほど鴆に関する伝承は非現実的なものが多くなっていき、実在した毒鳥の減少と共に話が飛躍し出したのでは、とも考えられる。12世紀ころ成立した『爾雅翼』巻の十六では、この生き物について「蝮、橡の実を食う」、「巨石、大木の下に蛇がいると禹歩(魔法を使う際のステップ。お相撲さんがやる四股みたいなの。中華魔道のお約束)をして止める、単独あるいは群れて生活し、俯仰進退をよくし、いかな石でも群れで歩き回り破壊する」と書かれる。
群馬県の伝説では、畑へ毒を流すといわれる。また関東地方で、「七草なずな」と唱える際の唐土の鳥は鴆であると説明され、その毒は甘いといわれる。
福井県粟島神社の伝説で、朝倉氏を討たんとするものがお社で相談中、これが来て皆殺しにしたというものがある。
関連イラスト
創作での扱い
女神転生シリーズ
初出は中国系の悪魔が独自の姿で多く登場した『デビルサマナー』で種族は”凶鳥”。姿は漢方薬にも使われるタツノオトシゴに似たカラフルな鳥で、登場作品ごとに差異はあるが、伝承のとおりベノンブレスや毒針などの毒攻撃を得意とする。『真・女神転生Ⅲ』では種族は”妖獣”で3D化された。
陰陽師(ゲーム) ⇒鸩
毒羽攻撃を持つ式神。
衛府の七忍
徳川家康が毒を採取するために駿府城地下で飼う巨鳥。
探偵学園Q
九頭龍匠の作品である掛け軸に羽根が使用されており殺人に使われる。
カミヨミ
「沈黙の毒編」で暗殺に羽根が使われた。
鴆-ジェン-
文善やよひ作のBL漫画。毒を羽根に蓄えるほど美しくなる鳥人である鴆と、兄を鴆に殺されたが飼育を引き継ぐことになった将軍との人外×将軍の愛憎の物語。
鴆CHIN 戦国妖女伝説
西條栄一作の戦国時代を舞台にした漫画。
女媧~JOKER~
大西港一作の異形の三国志漫画。呪術で強化された鴆が登場。
関連タグ
ヘビクイワシ:色や無毒な点を除けば共通点の多い鳥類。ただし、鴆との伝承地とはかなり離れたアフリカに生息している。
ステュムパーリデスの鳥:こちらも排泄物に毒があり、現地人を困らせていたとある。