この黒木に付け焼き刃の技など通用せん。
概要
通称 | "魔槍" |
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所属企業 | モーターヘッドモータース(企業序列23位) |
身長 | 185cm |
体重 | 96kg |
拳願仕合戦績 | 拳願仕合初参戦 |
企業獲得資産 | - |
年齢 | 51歳 |
誕生日 | - |
CV | 玄田哲章 |
沖縄発祥の殺人拳法・怪腕流の使い手であり、同業の呉一族、御雷流、因幡流からも一目置かれる暗殺者。
立派な顎髭と鍛え抜かれた身体は厳ついが、他のキャラクター達と比べれば地味な見た目であり、初登場時はそこまで読者の目を引く存在ではなかった。むしろ壁に素手で精巧な仏像を彫る変なオッサンという、色物キャラの雰囲気があった。
しかし、実はこの黒木玄斎はとんだ食わせ物であった。然るべき才能を持った人が、然るべき年月を費やし、然るべき努力を積み重ねた、然るべき滅茶苦茶な強さを持った男なのである。
長年磨き上げられた四肢は肉どころか鉄板をも穿つほどの威力を誇り、余興で精緻な仁王像を素手で石壁に彫りあげるなど技術面も卓越している。
わずか35歳にして至近距離でのライフル射撃を防いだ事で「先読みの極意」を取得しており、拳願絶命トーナメントで対等に渡り合えるのは滅堂の牙こと加納アギト位しかいないだろうと初期で言われている。
旧友の鷹風に頼み込み拳願絶命トーナメントに参加。友である平良厳山の敵を討つ事が目的であると同時に、強くなりすぎた事によって生まれた自身の「孤独」を埋める相手を探している。
序盤は寡黙で弱者にめちゃくちゃに辛辣な男であったが、弟子入り志願者に押しかけられまくって以降はその都度アドバイスを送ったり、最終的には共に修行をするような面倒見の良い面を見せるようになった。
また友人の仇とはいえ、彼の弟子の命を奪わずに済んだ結果に内心安堵するような、深い情けも内に秘めている。
一見すると武術一筋のつまらない男にも思えるが、平良とジャズバーで優雅に酒を呑んだり、ジャケットをカッコよく着こなすなどお洒落なイケオジ属性を持つ。
またつまらない冗談は嫌いだが、面白ければいいなど冗談は好んでいる砕けた一面もある。
倒錯した狂人や度を超したヤンデレ、残虐な野蛮人に独善的な正義魔といった濃すぎるキャラクター達に比べれば、人として至極真っ当な感性を持ったファイターであり、暗殺者という肩書がウソのような”良き大人”でもある。
黒木曰く「自分が殺すのは『生きる資格のない外道』と『生死を賭け闘う価値のある武人』だ」とのこと。
一人称は「俺」だが、「この黒木」も多い。
活躍
ネタバレ注意!
登場時は願流島へ向かう船の中で、壁に穴を開けたり、岩に仁王像を掘るだけの変なオジサンという印象であった。
一回戦では理人と対戦。彼を実力差すら弁えない弱者と見ており、最初は寸止めだけ、彼が一撃当ててからは流儀に合わせてしばらく戦うが、終始理人を圧倒し勝利した。
その日の晩に理人から弟子入りを懇願されたが、「弟子は取らない」と拒否した。
二回戦は自らの友である平良厳山(たいら げんざん)の元弟子であり仇である桐生刹那と対戦。友の弟子だけあって手の内は完全に見きっており、序盤は右足で描いた小さな半径の円の中だけで刹那の攻撃をすべて受けきる超人ぶりを見せ、あの大胆不敵な刹那の背筋を凍らせるほどであった。
その後二虎流の技を織り交ぜて攻撃する刹那に円から引っ張りだされ、右手の指をへし折られるが、刹那の使う技は「付け焼き刃」でしかないと見抜いており、左手を囮に右手で魔槍を食らわせ勝利した。(刹那は自らに羅刹掌を食らわせて急所の心臓をずらしていたことで事なきを得た。)
折れた指は「怪腕流では腕が折れても千切れても鍛錬する」と全く意に介さないタフぶりであった。
ちなみにこの闘い後以降理人を「一郎」と呼んでアドバイスを与えており、意外と面倒見が良いんだな、と鷹風からもツッコミをもらっていた。
三回戦はかつて自らが殺した男の息子、御雷零と対戦。
技の速さは父親ほどではないと思っていたが、倉吉理乃の暗示で御雷の速さは上がっており、彼の攻撃により今大会初めて膝をつく。
だが雷心流の突進する技は速さと引き換えに直進しかできないという弱点を持っていたため、黒木は相手の動きを「先読み」し自らの前に拳を突き出すことで突進してきた相手にダメージを与えるという戦法(格ゲーでいう設置技と言えばいいか)をとる。
…これだけ聞くと何だか「拳を突き出していれば相手が突っ込んできて自滅する」ように聞こえ簡単に思えるが、そう簡単に出来る芸当ではない。
そもそも御雷の技は闘技者であっても目視するのが難しいほど速く、一回戦で彼と戦った根津マサミは手も足も出ず敗北。二回戦で戦った鎧塚サーパインは持ち前の防御力を活かし接近戦をするようにしていた。
そんな中で黒木は動きを先読みし対処してくるのだ。
事実御雷の祖父も「理論上は可能だが、机上の空論でしかない戦法」と言っている。
普通の人間の動体視力が追いつけないスピードで突っ込んでくる敵を「見てからガード余裕でした」と言わんばかりにカウンターを浴びせる…出来るかこんなん!
その後は接近戦に切り替えた御雷に押されるも、隙をつき下付きを繰り出し準決勝へと進んだ。
迎えた準決勝。相手は「滅堂の牙」加納アギト。
序盤は互いに「気の起こり」を読み壮絶な攻防を繰り広げるも、魔槍で先手を取る。
しかし試合の中で進化していくアギトが「武」と「無形」の組み合わせを習得したことで右手の人差し指から小指を折られ左肩を脱臼するといったダメージを負うも、親指のみで魔槍を繰り出す、遠心力で肩をはめ直す等ものともせずに戦った。
相手の戦法の切り替わる瞬間の「虚」を突くことでダメージを与え、さらには相手の最強の技と言うべき「龍弾」を見切って手首を破壊することで不発にさせ遂に勝利した。
そしてとうとう決勝戦。対するは主人公である十鬼蛇王馬。
最初は自らが知らないニ虎流を使う王馬に驚くも、徐々に相手の動きを見切り始める。憑神を使用した王馬の猛攻も次第に押し返し、憑神の弱点である出血(血液の循環を速める奥義故、出血が命取りになる)によって憑神の能力をセーブさせることを強い、最後は「憑神」を使用した状態での「鬼鏖」を防ぎ一撃を加えて遂に優勝した。
トーナメント優勝後、彼は山で滝行を行っていた。
だが名実ともに「最強」の名を手に入れたはずの彼が何故まだ修行を行うのか?
その答えは実に単純である。
「この黒木、未だ青いわ」※
人間離れした握力を持つ「超人」を倒しても、
端正な顔立ちの裏に狂気を隠した「美獣」を倒しても、
雷の如き疾さを誇る「雷神」を倒しても、
決して負けることのなかった最強の「滅堂の牙」を倒しても、
師を超え自らの元にたどり着いた「阿修羅」を倒しても、
それでもまだ、自らの求める「最強」には程遠いと彼は修行を続けるのである。
いやまだ強くなるってアンタ…
※この台詞は、「黒木が最後は青木で占めた」とネタにされていた。
主な技
流派は怪腕流だが、師匠・自身ともに二虎流とも深い関わりがあるため、二虎流由来と思われる技も一部使用できる。
魔槍
極限にまで鍛えられた手による貫手で、黒木の二つ名にもなっている通り代名詞的必殺技である。鍛えあげてしまえば難しい術理も技術もないために如何なる時でも使えて、シンプルゆえに強力。岩を砕き、鉄を穿ち、人肉を抉る威力を持つ。
腕のみでなく足でももちろん、その気になれば親指一本で肉を貫く事が可能。
さらに敵の魔槍への警戒心を逆用した陽動攻撃も仕掛けられるため、成島丈二の言う「軸が一本あれば戦いやすくなる」という戦いの基本を見事に示している技でもある。
無動
金田末吉や今井コスモが身に付けた「先読み」の極致であり、相手が攻撃する瞬間を見極め、その「直前」に動く技術。曰く「攻めの先読み」。
三戦
琉球空手に伝わる単純にして究極とも言われる受けの型。
対戦相手からは「まるで巌」と称される堅牢さを誇る。
正拳六連撃
急所目掛けて放たれる普通の6連続正拳突きだが、達人たる黒木が放てばまさに必殺技級の威力を誇る。
黒木の真の恐ろしさは代名詞の「魔槍」以上に、豊富な経験と鍛練から来る正確な対応力にある。特に防御力は圧倒的であり、対戦相手の「絶対防げない」とされてきた必殺技の一切をことごとく受け止め、あるいは跳ね返して打ち破っている。
また黒木自身はその場で得た閃きによる奇襲ではなく、長年武の道を歩み続けてきた修行の結晶だけで闘っている。それ故に黒木は他の対戦相手と違い、新境地に「覚醒」することなくむしろそれら悉くを打ち破った。黒木にとって、積み重ねのない力は所詮付け焼き刃にすぎないのである。
黒木の代名詞である「魔槍」自体は数ある選択肢の一つでしかない。強力な技を闇雲に連発するのではなく、時に泥臭い頭突きや、カウンターの猿臂(肘)で大勢を決めるなど、使うべき時に使うべき技を使える境地に達したことこそが、真の黒木の強さである。
余談
- 創作裏話
作者によるとコンセプトは「空手を使うメチャクチャ強い奴」。
当初は迫力こそあるもののライバルたちに比べるとやや地味めなキャラデザインに加え、全く主人公たちと関わりがなかったり(桐生刹那の師匠の友という程度)、これといって強さを表すシーンがなかったり、高齢の達人キャラがやられ役で登場するパターンもあったりしたため、噛ませだろうと思われていた。
特に桐生刹那は主人公と因縁があるキャラクターのため、どーせ桐生が勝つんだろ?と思われており、マンガワンのコメント欄には「黒木が勝ったら神漫画」「黒木が勝ったら全巻買うわ」という冗談交じりの声もチラホラあった。
しかしフタを開けてみれば主人公の友人補正、主人公のライバル補正、イケメン補正、ラスボス補正、主人公補正をものともせず優勝するというまさかの事態となった(一応黒木の師は二虎流のルーツである臥王流の祖と友人で影響を受けていたという話が決勝戦直前でされており、全くの無縁ではなかったものの、王馬との間に特別なライバル意識や恨みのような因縁は無かった)。
試合中に強敵と戦うことで成長し新境地の強さに覚醒したり新必殺技を編み出すといった覚醒勝利フラグを「この黒木に付け焼き刃の技など通用せん」という言葉と共に即座にヘシ折ってくるのはバトル漫画界広しと言えとこの人くらいのものだろう。セオリー破りもここまでくると痛快である。
また、彼の強さに関する伏線は少なくともトーナメント開始直後から見ることができる。というのも、トーナメントの抽選では彼の所属するモーターヘッドモータースは上から数えた方が早い9番目に仕合の位置を決めているにもかかわらず、一回戦相手の理人は最後の順番で決めた。
つまり、選択の余地が無かったということであり、この間の21人が対戦を避けたことになる。そのため、この時点で加納アギトと同じくらい他の参加企業から警戒されていたということである。
当初は一回戦で棄権し、理人の師匠ポジションになるという展開も考えられていたが、強い選手が勝つというトーナメントの意義が薄れるということで現在の展開になった。
まさに「強い奴が勝つ」というケンガンアシュラの漫画の特徴を表した存在と言えるだろう。
- 横文字について
『オメガ』で「ハイブリッド」という単語を使った時、鷹風から「お前横文字使うんだな」というツッコミを受けているが、『アシュラ』の第2回戦ですでに「オリジナル」「センス」という語句を用いており、加えて沖縄の米軍に友人がいることやアメリカに渡って不自由していないところを見ると英語を喋れる可能性すらある。
設定ミスにも見えるが、鷹風はあくまで旧い友で、黒木の全てを知っているわけではないという見方もできる。
- バキシリーズとのコラボ
若かりし頃の黒木が登場。片原滅堂によると拳願会の闘技者にならないか長年勧誘していた模様。同じく若かりし頃の愚地独歩からはその並ならぬ実力を見抜かれていた。
ケンガンオメガ
以下ネタバレ注意
アメリカで修行を続けているが、理人がこれについていっており、彼に怪腕流の基礎を手ほどきしている。
その後『煉獄』との交流戦における拳願会チームの代表者として打診を受けたが、黒木は「一郎は強くなった」と太鼓判を押して理人を代わりに日本に送り返す。
その理人は交流戦の第二仕合で対戦するのだが…
なんとこの黒木、弟子(弟子を取ったとは言ってない)の仕合を見にはるばるアメリカからやってきて、こっそり鷹風と観戦していたのである!
あまりのツンデレっぷりに読者は総ツッコミを浴びせるが、公式もこの反応を理解して(遊んで?)いるようで、マンガワンのトップにはデカデカと「弟子が心配おじさん、登場!」の文字が踊った。
ちなみに理人の対戦相手・「羅亡」隼は、何故か黒木を忍者マスターだと思いこんでいる。アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?
後に隼は僅差で理人に勝利を収めるも、理人の常軌を逸した執念を目の当たりにして考え方を変え、自分の殻を打ち破るために負傷を度外視して黒木に戦いを挑んだ。無論、満身創痍の身で黒木に敵うはずもなく当て身一発で失神させられてしまったが、その意を汲んだ黒木は「生き急ぐな若人よ、強くなれ」とエールを送るのであった。
その後、238話にて繋がる者の暗殺依頼を受け、加納アギト、ロロン・ドネアとのドリームチームを組んで登場。
繋がる者の如何ともし難い程の圧倒的実力を感じ取るも、「教えてやろう…勝敗とは強さが決める物に非ず」と怖気付くこと無く真っ向勝負を挑む。
流石の黒木と言えど苦戦を強いられるが、先読みと言った他の選択肢を全て捨て、「攻撃が当たる瞬間に合わせてのカウンター」にのみ注力する事で僅かなりとも手傷を負わせる事に成功する。
途中で暗殺依頼が取り消された事により戦闘は中断となるが、繋がる者が今回の戦闘では左半身を使っていない事を見抜き、再戦の際には互いに本気を出す事を約束しながら去っていった。
その後は蟲との戦いに備え、王馬と共に山で鍛錬をしている様子。
関係者
鷹風切己…旧友
理人…1回戦の相手、押しかけ弟子
桐生刹那…2回戦の試合相手、友の敵
御雷零…3回戦の試合相手、過去に親を殺害している。しかし、御雷側からは「暗殺稼業をしていれば殺される事もある」と恨みなどは持たれていない。
加納アギト…準決勝の試合相手。黒木が「対等の宿敵」「真の強者」と認める数少ない闘技者。「ケンガンオメガ」ではその成長を見た黒木が「今の貴様と立ち会って確実に勝つ保証は無い」とまで言わしめる程。
隼(アルバート・リー)…黒木の事を何故か「ニンジャマスター」と認識している。理人の事は「兄弟子」と呼んでおり、すっかり押しかけ弟子2号のような状態だが当の黒木本人は弟子扱いはしていない。
嵐山十郎太…その凄まじいまでの柔道の技量に対して「この黒木と同類」と評している。
申武龍…作中で唯一黒木が格上と認めた相手。武龍側からも「この国で出会った誰よりも強い」「いい線行くと思う」と黒木に対して高い評価をしている。