Let's_try_again
れっつとらいあげいん
東日本大震災の復興支援のためにサザンオールスターズの桑田佳祐が発起人となり、「チーム・アミューズ!!」が結成され、所属する芸能事務所アミューズのタレント、俳優、ミュージシャン計37組54人が参加した。この企画を行った経緯として震災後に福山雅治が桑田のもとに「桑田さんが何かするなら僕も協力します」といったメールをしたことが挙げられている。この曲は桑田によるオリジナルテーマをブリッジにし、所属アーティスト達のヒット曲が挟み込まれるメドレー形式のチャリティー楽曲となっている。
桑田は震災を受け自分は何ができるのか、何をするべきなのかを考えた結果「自分はエンターテインメントの業界で生きている以上、皆様の気持ちが明るくなるような、少しでも元気を取り戻す、その作用点にならなくてはいけないのではないか」という結論に至り、当楽曲の制作に参加したメンバーと語り合ったことによって全員が震災後、自身が考えていた事と同じ事を同時に考え、悩んでいたことを痛感し、立場や世代などを越えて通じ合う確かなものがあったと語っている。
桑田の妻の原由子も震災の直後こそは「こんな時に音楽をやっている場合ではない」と思ったが、その一方で「こんな時にこそ音楽が必要なんじゃないか」と思えもしたという事を明かしており、上述の経緯で楽曲制作が始まった際には、「そうなったらただただ桑田についていこう」と覚悟を決めたことを述べている。
ミュージック・ビデオでは桑田およびサザン・福山・ポルノグラフィティ・BEGINが日の丸を背に歌う、三宅裕司・小倉久寛・岸谷五朗・寺脇康文がAKB48の「ヘビーローテーション」を踊る、福山・岡野昭仁・比嘉栄昇がプロレスを意識した演技をしマイクを奪い合うなどの演出があった。また、クロマキー合成が施されたものが多かった。最後はレコーディング・スタジオ(桑田がよく使用するビクタースタジオの「401スタジオ」)で大合唱されている。監督は川村ケンスケが担当。また、出演者全員がパラパラを踊るシーンの振り付けはMIKIKOが担当した。
制作当時は震災があったことでの自粛ムードと相まって、ネット上には収録楽曲やミュージックビデオの演出への賛否などもあり、制作中に原由子もそれらに対する懸念を抱いていたこともあったが、桑田自身は「この『Let's try again』が被災地の皆様方の耳に届くことがあったとき、困難な状況の中少しでも気晴らしになってくれたら、そして同じように被災地以外の日本中の皆様にも明るく元気に明日を夢見ていただけたら、私たち”チーム・アミューズ!!”にとって誠に本望です」と述べ割り切り、参加者全員とスタッフも桑田の思いを受け入れた。
2011年4月20日に音楽配信、5月25日に12cmCDで発売。発売元はアミューズソフトエンタテインメント。リリースに際し「被災地に支援を! 日本中に元気を!」というこの曲のスローガンが発表されている。当初は配信のみの予定だったが、アミューズや参加アーティストのファンクラブ、レコード会社にCD化の要望が殺到し、より多くのファンに楽曲を届けるべくCD化の調整を進め、生産工程の最短スケジュールで配信開始前日の4月19日にCDとDVDの2枚組作品の発売の告知がなされた。本作は2011年12月31日までの期間限定発売となり、2011年4月から12月までの販売確定分の収益(248,516,336円)を始め多くのファン・スタッフ・関連企業・株主からの義援金や各アーティストのライブでの収益や募金(727,367,360円)が「アミューズ募金」を通じて日本赤十字社や宮城県・岩手県・福島県の地方公共団体に寄付された。
CD盤の歌詞カードにはレコーディングの模様やミュージック・ビデオの撮影風景の写真や、桑田による被災地への見舞いの言葉と前述の制作経緯を語った「『Let's try again』によせて」と題したコメントが収録された。
前述のMVの日の丸を掲揚する演出やスローガンの通り、桑田を始めとしたメンバーやスタッフの日本を応援する気持ちは強く、一部スタッフや監督の川村は表面に「チーム・アミューズ!!」の文字、背中に日の丸がデザインされたTシャツを制作中に着用していた。本作のジャケットもMVと同様に日の丸のイメージが取り入れられ、白い背景をバックにタイトルを表記し、赤い丸をハートマークに変えてその中にチーム・アミューズ!!の名を冠したものになっている。
配信当日に「レコチョクデイリーランキング」および「レコチョク ビデオクリップデイリーランキング」で初登場1位を記録した。CD+DVDはオリコンチャートで週間2位を記録。2011年5月度月間2位、2011年度上半期6位、2011年度年間12位となり、日本レコード協会のゴールドディスクではプラチナ認定を受けた。
この曲に参加したメンバー及び使われた楽曲は下記の通りである。また、演奏にはサザンおよび桑田の楽曲との関わりが深い曽我淳一、斎藤誠、清水美恵、安奈陽子、野沢秀行が参加している。
桑田が作成した前述の「Let’s try again」のテーマ部分にもともと自身の中にあった曲の原案を膨らませ手を加え、改めてフルコーラス書き下ろした楽曲。自身の14作目のシングル「明日へのマーチ/Let's try again 〜kuwata keisuke ver.〜/ハダカ DE 音頭 〜祭りだ!! Naked〜」の収録曲として収録された。
東日本大震災から数ヶ月の時間を経て「当初よりようやく冷静に考え始めることができ、そしてあの震災から学ぶべきことは何なのかを少しずつ探り始めている」といった当時の日本全体の空気感を歌詞に盛り込み、骨太なロックチューンとしてアレンジもより華麗なものとなった。震災直後に制作された曲という事もありバンドメンバーもバランスを考えて演奏する事を心がけていた。日本を応援する楽曲のコンセプトもあって『ミュージックステーション』や『SONGS』で演奏された際には、桑田は白いジャケット・ズボンと赤いシャツという日の丸を意識した衣装で出演した。
批評
ミュージック・ビデオが収録されているDVD『MVP』の特設サイトでは「未曾有の出来事によって直面した現実と向き合い、リアリティをも飲み込んだポップソングに仕上がっている」と解説された。
震災から数ヶ月を経て桑田自身も「東北でライブができるならば『Let’s try again』を改めて歌いたい」と考えていたという。
この曲がライブで演奏される際には観客も拳を上げるなど、会場全体が一体となり力いっぱいに盛り上げる要素が見受けられている。これについて桑田自身も「あの曲の時は、みんなが『日本人、もう一回立ち上がろうぜ!』という気分になるんでしょうね」と評し、幅広い世代の観客がライブに集中する事の有り難みに感謝する発言をしている。
ミュージック・ビデオ
レコーディング風景や桑田の歌唱シーン(虹がかかった青空をバックにしたものと、ビクター401スタジオに組まれた黒バックのシンプルなセットの2パターン)と、震災当時の世の中の実景映像(震災や福島第一原子力発電所事故の余波による不安、震災の影響で積まれた瓦礫などの撤去作業、各地から東北の避難所に届いた救援物資に書かれたエール、自衛隊による災害派遣活動、東北各地の伝統行事や祭事、震災から立ち直ろうとする人々の姿、この曲のリズムに乗って拳を上げたり笑顔を浮かべる人々の姿など)が挿入され、スタッフ及び桑田の日本への愛が伝わる作品となった。