説明
『魔法つかいプリキュア!』第29話でシンデレラの絵本を見たモフルンが、リンクルスマホンの力で自分がシンデレラになった夢を見たというエピソードが放映された。
この夢の中ではモフルンは擬人化ではなく、いつものくまのぬいぐるみ姿でシンデレラになっていた。そして名前もシンデレラではなく「モフデレラ」であった。
絵本の世界の登場人物たちはモフデレラの姿に何の疑問も抱いていなかったため、この世界ではモフデレラは「人間の女の子」という扱いのようだ。
ただ、これはただの夢ではなくモフルンの存在そのものが絵本の世界に実際に入り込んでおり、リコ、みらい、ことはもそれに巻き込まれて夢を通じて絵本の中に入ってしまった。
他にもこの絵本の中に登場する人物たちのうち何人かは今までモフルンが出会った人物たちが演じていたが、完全に絵本の中の役割になりきっていた。彼らが夢の中に取り込まれていた本人なのか、モフルンの記憶から適当に姿を構成されたNPCなのかは定かではない。
絵本の登場人物の中で、みらい、リコ、ことはの3人だけは自分が外の世界から連れてこられたという自意識を持っていたが、当のモフルン自身は「モフデレラ」という役割になりきっており、みらいたちと出会っても初対面という認識だった。
みらい、リコ、ことはの3人はモフデレラを絵本の通りのハッピーエンドに終わらせれば、外の世界に脱出できるのではと考え、モフデレラをサポートすることの奮闘することになった。
また、モフデレラの意地悪な家族達はすでに倒したはずの闇の魔法つかい達の幹部が演じていた。(モフルンの記憶から姿を構成されたNPCというのが妥当な解釈だが、闇の魔法つかいの幹部の素体となった動物達は力を失いそのまま自然に還っているので、それらが「夢に取り込まれて役割を与えられた」ということもあり得る)
ラストにはモフデレラが王妃ではなく魔法使いになるなど我々のよく知っているシンデレラのストーリーとは違った展開になっている。
闇の魔法つかいの幹部が女装して登場したり、バトルでなくプリキュア音頭のダンス対決で決着をつけたりと、「どうせ夢オチにするんだから際限なくハッチャケていいよね」というスタッフの態度が分かりすぎる公式が病気なエピソードであったが、プリキュアシリーズではこういうカオス回が毎年一つは出てくるのも伝統なのである。
モフルンが普段は表には見せない乙女ちっくな部分が表面化されたエピソードであり、秋の映画版に向けて「モフルンは女の子である」ということを小さいお友達にもわかりやすく伝えるお話という意味合いも持っている。
登場人物
- モフデレラ
本作品の主人公、名前の通り演じ手はモフルン。意地悪な継母や姉達に意地悪されていたが、見かねたリコ達の魔法でドレスとガラスの靴を履き、冷凍みかんの馬車に乗ってお城へ。本来のモフルン同様、献身的で健気な性格。最後はガラスの靴の力によって魔法つかいとなる。
- 魔法使い
演じるのはリコ。お婆さんの格好だが中身の見た目はいつも通り。本編同様魔法があと一歩上手くいかない。なお、みらいのことをお姫様抱っこするシーンが話題を呼んだ。
- ネズミ
演じるのは朝日奈みらいと花海ことは。ネズミの耳と尻尾をつけただけの人間の姿だが、サイズだけはネズミと同じくらいの手のひらサイズになっていた。ベタだが語尾に必ず「チュ」がつく。ネズミなのに魔法が使える。なお、馬車にはならない。
- 意地悪な姉
演じるのはバッティとスパルダ。スマイルプリキュアのバッドエンド王国のメンバーはプリキュアを陥れるためにこの役に成り済ましたが、この作品では普通にその世界の登場人物である。そのため特殊な能力などは使わない。なお、バッティはほとんどオカマ同然である。スパルダは三幹部の中では一番シリアスだっただけにある意味ギャップが激しかったと言える。
- 意地悪な継母
演じるのはガメッツ。こちらもオカマ同然。「舞踏会」を「武道会」と勘違いして「戦いに行く」と意気込んだりと、元のガメッツ同様戦闘好きな面は見られたものの、それ以外ではあまり元の面影は無かった。
王子に対してちょっと古いアプローチをしたり、モフデレラにはずっと意地悪をしていた。悪い魔法つかいの魔法で巨大化したが、プリキュアによって浄化され改心。なお、亀なのに泳げない。中の人である中田譲治は本編でおふざけアドリブを抑制されていたせいか、「アドリブではないか?」と思われるセリフが各所にあった。
- 王子
演じるのは校長。金髪になって名実ともに若いはず…なのだが一人称などの口調がそのまま。モフデレラの美しさに一目惚れする役柄なのだが、モフデレラは最初から最後までくまのぬいぐるみの姿なので、重度のケモナーにしか見えない。
- パーティー参加者
演じるのは補習メイト。パーティーに参加し、王子とダンスしようとするも、悪役軍団に押しのけられてほとんど出番がなかった。
- 悪い魔法つかい
ナシマホウ界のシンデレラには存在しないはずの役。演者はヤモー。本人曰く「悪い魔法」を使い、対象を怪物にする能力を持つらしい。しかし、冷凍みかんに跳ね返されて継母に当たってしまい、責め立てられてタジタジになっていた。
- プリキュア
これまたナシマホウ界のシンデレラには存在しないはずの役。ネズミのみらいと魔法つかいのリコが手をつなぐことで変身する。プリキュアへ変身する時はみらいはリコに合わせて変身時だけ巨大化されて普段のキュアミラクルと同じ姿になった。しかし単独変身のことはに関しては変身してもサイズは変わらない上にキュアフェリーチェになっても語尾に「チュ」が付いていたままだったため(ミラクルは語尾は抜けていた)、なんで私だけと不満を述べていた。
結末
悪い魔法つかいによって怪物にされた継母を元の姿(ガメッツの姿ですが…)に戻したことで、モフデレラの継母と姉妹たちも反省の様子を見せる。
だが、リコたちの未熟ゆえかここまで予想以上に時間をかけてしまったことで、12時の魔法が王子の眼の前で解けてしまう。村娘の姿に戻ったモフデレラだが、王子はそのありのままを受け入れ、モフデレラもこれが自分の本当の姿だと胸を張る。
これで二人は結ばれてめでたしめでたし。あとは「外の世界」からモフルンの夢の中にやってきたみらい、リコ、ことはの3人が夢から脱出すればすべては終わるということで、モフデレラのための冷凍みかんの馬車で虹の道を辿り夢から覚めようとするが、12時の魔法の期限切れはこの馬車にもかかっており、馬車は途中で消え去り、3人は虹の道から空中に放り投げ出された。
その時、モフデレラの中にはないはずの「3人を助けなければならない」というモフルン本人の気持ちが高まり、モフデレラは魔法学校の制服を着たモフルンの姿へと変化し、その魔法でクリスタルの馬車を作り出す。それに乗ってみらい達は夢から脱出する。
そして翌朝、みんなの目が覚めた時、絵本を見てみると内容が書き換わっていることに気づく。
あれからモフデレラは魔法の才能に目覚め、人々を助ける「伝説の魔法つかい」となったというお話に…
そう、あれはただの夢ではなく、現実に作用していたのだ。
その証拠に、みらいのベッドのサイドテーブルには、夢から脱出するために生み出されたクリスタルの馬車のミニチュアが……!?
諸々の話
プリキュアとシンデレラ
過去のプリキュアシリーズでシンデレラを題材にしたストーリーには、
- 『Yes!プリキュア5』第38話:この回ではミルクが人間界を勉強するために小説を書こうと思い、シンデレラの物語を書き写すうちに物語を改編したことが発端となっており、のぞみがシンデレラ、こまちが継母にりんとかれんが姉、うららが魔法使い、ココが王子という物だったが、そこにブンビーが現れて……
- 『スマイルプリキュア!』第39話:この回の演出はまほプリSDの三塚雅人が担当しており、「はじまりのシンデレラ」の本の中の世界に入り込んでシンデレラとなったみゆきを始め、プリキュア&3幹部たちが色々巻き起こすことになる……がれいか王子やら魔法使いやよいやらケモNISSANやら飛び出すことに。
と、どちらもかなりのカオス回となっている。
で、これだけに留まらず、スマプリの映画『絵本の中はみんなチグハグ!』では絵本の世界に入り込んだみゆきがシンデレラになったり(その後ニコによって他の物語とミックスされた状態になってしまう)、『Go!プリンセスプリキュア』第37話では学校での劇として、きららとトワのクラスがシンデレラを演じている(トワがシンデレラ役、きららが魔法使い役)。
ということで、シリーズを通して物語の題材としてはシンデレラはかなりの頻度で出ていることになる。
魔法界の童話の存在
物語の末にモフデレラが魔法使いになるという物語改編。こうした結末の改編というのは、スマプリの時でもやったことなのだが、今回は少々事情が異なる。
今回の発端となったのが魔法学校の図書館にあった絵本なのだが、魔法界の童話ではナシマホウ界のものとは物語が異なっている。
「シンデレラ」自体も魔法使いのお婆さんが主人公に据えられ、シンデレラを助けるために活躍するというお話になっているほか、「ピーターパン」もティンカーベルが勇気ある魔法使いとして活躍する物語、「花咲かじいさん」に至ってはおじいさんが魔法使いとなってさくらを咲かせるという物語となっており、とにかく魔法使いが主人公として描かれている。
みゆきやゆいがこれを知ったらどんな反応をするのかはともかく、ナシマホウ界と魔法界でここまで物語が異なるのは興味深いだろう。
「魔法界の住人は昔から正体を隠してナシマホウ界に接触を続けていた」というのが本作の根底の世界観なため、同じルーツの物語が双方の世界で知られる中で、それぞれの世界に合わせて改変が続けられて今の形になった…などと想像力が広がるところもある。
今回の演出と脚本は
今回演出を担当した土田豊氏は直近では『プリキュアオールスターズみんなで歌う♪奇跡の魔法!』の監督を手がけているが、元々はギャグ演出に定評がある演出家である。中でもスマプリにおいては第13話(修学旅行シリーズ前半戦、みゆきが不幸の連続で大凶顔)、第20話(ミエナクナ~ル、ふたりはステルスプリキュア)、第29話(ゲームバトルからの夏休みの宿題忘れてどん底状態)など、ギャグ面での傑作回を手がけ、『マリー&ガリー』でもかなりの頻度で演出を担当している。田中裕太氏も今回の話を見て「やっぱり土田さんは頭がおかしいと思いました(超リスペクト)」と絶賛していた。
一方、脚本の坪田文氏はまほプリでプリキュアシリーズ脚本初参加だが、『プリティーリズム』シリーズや『リルリルフェアリル』を脚本を担当していたこともあり、それで察する人も多かった模様である。
カオス回と裏腹に
次回予告の時点で内藤圭佑プロデューサーは「実はとっても重要な回だったりもします」と意味深なつぶやきをしていた。
そしてふたを開けてみると、最後にモフデレラが魔法を放った時に現れた謎の馬車……それは既に後期オープニングで登場していた謎のアイテムだったのである。直ちに「財団Bはここで販促か!?」とツッコミが飛ぶが、校長王子が「レインボーキャリッジ」と名付けたこの大型アイテム、夢から覚めると机にあったことから、今後のキーアイテムとしてクローズアップされることになるだろう。
また、同時に今回の物語改編はリンクルスマホンが勝手に作動して、夢をいじくる形で書き換えてしまっている。これまでもことはが魔法を使う際にスマホンが動作した描写があるため、ことはとスマホン、そして魔法の関連性をうかがわせるエピソードであったとも言えるだろう。
その他に
- 王子との舞踏会と言う事で、王宮の場面では『Go!プリンセスプリキュア』のBGMが多数使われているが、その他に王子とモフデレラのダンスではハピネスチャージの映画版『人形の国のバレリーナ』で用いられたヨハン・シュトラウス2世の「ウィーン気質」(サントラ上では「ドール城の舞踏会」と表記)がそのまま流用されている。さすがにリコとつむぎの中の人が同じだから、ということではなく、実はこの流用は前年映画『パンプキン王国のたからもの』でみなみがバレエを踊ったシーンに続いて2度目である。
- その王子とモフデレラのダンスシーン。よくよく見ると舞踏会の客の中に勝木かなにそっくりな人物が怪訝な表情をして紛れ込んでいる。