概要
無神論とは「神は存在しない」とする哲学、形而上学上の態度のこと。
無神論という名であるが、「神の存在は信じないが、悪魔、天使、精霊、妖精、妖怪、幽霊の存在を信じる」という例はまずない。
無神論とは超自然的な事柄全てを否定する立場、ということができる。
神は存在するという論のことは「有神論」という。英語のAtheismは有神論を意味するTheismに否定を意味する接頭辞aをつけたもの。
神が存在するかどうかは知りえないとする論は「不可知論」である。
「無宗教」と言う場合、無神論や不可知論だけでなく、有神論のある立場(神は存在すると考えるが、特定の宗教の立場には立たない)も含まれる。
無神論的
広義には「至高の存在」「世界の中心、上位」としての神を認めない思想を指し、この観点から儒教や仏教を無神論、無神論的宗教と呼ぶ事がある。
例えば仏教は神々(デーヴァ)の存在を支持し、そのメンバーはヒンドゥー教と共通している。しかし創造主や主宰神という考え方を認めず、ヒンドゥー教義において至高の神とされるシヴァやヴィシュヌもまた迷える衆生とみなす。
宗教における扱い
ユダヤ教の神秘主義「カバラ」ではセフィロト(生命の樹)の真逆のものとしてクリフォト(邪悪の樹)があるが、そのセフィラの一つには「バチカル(無神論)」があり、対応する悪魔はサタンとされる。
社会における扱い
現代でもイスラム教国など無神論者であることを公言することが法的に制約や処罰の対象となる国々が存在する。
比較的厳格ではないインドネシアでもフェイスブックで「神はいない」と書いた男性が逮捕された。
アメリカ合衆国ではセレブを中心に表明する人も多く、リチャード・ドーキンスの無神論本がベストセラーになる一方、信用できない人物として無神論者をあげる人も多い。
無神論である思想
・古代の無神論
ギリシャにはデモクリトスやエピクロス、インドにはアジタ・ケーサカンバリンといった無神論者が存在した。
・マルクス主義、共産主義
共産主義の始祖カール・マルクスの思想には政治・経済における主張や階級闘争だけでなく、超自然的なものを否定する無神論も含まれる。
ソビエト連邦をはじめとする共産主義国家においては、強烈な宗教への迫害が繰り広げられた。
だが、無神論・唯物論の部分のみを否定していたり、宗教の信者でも、有神論・宗教否定部分以外にはシンパシーを覚える人もいる。
南米で興ったカトリック系の思想「解放の神学」には共産主義の影響がある。イエズス会士が共産主義のシンボルである「鎌とハンマー」に十字架をドッキングさせたシンボルを作った事も。
日本共産党では現在、宗教を否定しない立場をとり、そのためカトリック等の宗教信徒にも党員がいる。
・新無神論
リチャード・ドーキンスらが掲げる現代の無神論。宗教、とくにアブラハムの宗教に対する強烈な敵対心を持つ。
科学の称揚、女性の人権支持、LGBTへの寛容、動物愛護、菜食主義(ヴィーガン、ベジタリアン)を特徴に持ち、宗教をこれらに反する前近代的なものとする。