魔術士オーフェン
まじゅつしおーふぇん
概要
本編の正式タイトルは『魔術士オーフェンはぐれ旅』(1994年~2004年、2011年~2014年)。
作者は秋田禎信。イラストは草河遊也が担当した。
1994年に富士見書房より刊行され、シリーズ累計1200万部を突破したダークファンタジーで、90年代のラノベ界を『スレイヤーズ』と共に支えたといっても過言ではない作品。
破天荒なキャラクター達と緻密な世界観で人気を博し、2度のアニメ化をはじめとしてCD、ゲームなど大規模なメディアミックスが行われた。
かつては富士見ファンタジア文庫で出ていたが、現在はTOブックスにて発刊中。
シリーズは本編に当たる第一部・西部編、第二部・東部編、短編に当たる無謀編&プレオーフェンに分けられる。そして2011年から新シリーズが再開され第四部・原大陸編が刊行された。なお第三部は新大陸開拓時代の出来事で執筆予定はない。
本編では世界の成立にかかわる魔術の秘密が仲間との冒険譚として描かれ、
短編では破天荒なキャラクター同士の絶妙な掛け合いがコメディタッチで描かれている。
魔術
世界を術者の理想とする現実に改変する力。
人間の魔術士が使用する場合には「音声魔術」と呼ばれる。
術の影響を及ぼしたい場所に届く音量で呪文を唱える必要がある。
あくまで情報を飛ばすことが目的であり呪文の言葉については内容を問わないため、術者それぞれに特徴的な呪文が生み出されている。ぶっちゃけた話、術の構成さえ適切に編んであればただの叫び声や鼻歌でも同じ効果が出るのでOK。
その為、詠唱文句は完全に術者の趣味の反映でしかない。
基本的に集中力が必要な上、発動までタイムラグがあるため接近戦では使えない。
よって自らの身を守るためには肉体を使った戦闘技術が必須である。
音声魔術には物質への干渉を行う黒魔術と精神支配を行う白魔術が存在する。主人公のオーフェンを始めとする多くの魔術士は黒魔術士である。
オーフェン曰く「紙を燃やすのが黒魔術で、紙を別のものに変えるのが白魔術」らしい。
また、白魔術士の中には「精神士」と呼ばれる「肉体を捨て精神のみの存在となる」事で物理的な現象や制限に囚われない力を持つ者もいる。
すべてを可能とする力を魔法と呼び、限定的な力である魔術とは明確に区別される。
この魔法と魔術の存在はキエサルヒマ大陸の秘密に大きく関わってくる。
ドラゴン種族は音声以外の様々な媒介を魔術に使用する。
そのため6つのドラゴン種族と、ウィールドドラゴン・ノルニルの末裔である人間の魔術士が使える音声魔術を合わせ7つの魔術が存在している。
ドラゴン種族
オーフェン「ドラゴンと言えばトカゲみてーな姿をして、火を噴いて、財宝を溜めこむ。そんな風に思ってるだろ」
マジク「そうですね」
オーフェン「だがありゃ作り話だ。でかいトカゲなんてのはただのダイナソアに過ぎない。本物のドラゴンは魔術を使う者をさす言葉なんだよ。言うなれば俺達魔術士も広義の意味ではドラゴンだ」
『魔術士オーフェンはぐれ旅2 我が命に従え機械』より
本作におけるドラゴン種族は、哺乳類に似た姿をした6種の種族を挿す。神々の持つ全能の力「魔法」を盗み出して彼らなりに作り上げた「世界改変能力」が「魔術」なのだが、6種族はそれぞれその代償として健全な肉体を失っている。
- ウィールドドラゴン・ノルニル:通称「天人」。人間に非常に近い種族で、緑色の髪を持つ。数百年単位の寿命を持つ長寿の種族だが、既に絶滅している。使用する魔術は文字を媒体とする「沈黙魔術」。人間の魔術士は全て人間とウィールドドラゴンの混血者の子孫である。魔術と引換に失ったものは明示されていないが、劇中で登場するのは女性のみであり、恐らくは種族としての純粋な血を残す為に必要な異性を喪失していると思われる(魔術を得た時点から純粋種を残せなくなった為、残った者達の寿命と共に種が途絶えてしまった=絶滅)。
- ウォードラゴン・スレイプニル:通称「鋼鉄の軍馬」。巨大な黒馬の姿をしており、思考だけで全てを無に帰す「破壊魔術」を持つ最強の種族。しかしながら現在はただゴロゴロと寝ながら冷気を吹き出すばかりであり、「意識」を奪われているらしい。
- ディープドラゴン・フェンリル:通称「深淵の森狼」。巨大な漆黒の狼の姿をしている。食事も排泄も呼吸も必要とせず、集団で暮らす。視線だけで世界の法則を塗り替える「暗黒魔術」を有する。成人(成獣)の個体数を増やす力を失っており、子が成熟する為には親の死が必要となる。が、劇中では親の死を経ずに成熟した個体が登場した(一匹増えた)。
- レッドドラゴン・バーサーカー:通称「密林の果て無き放浪者」。自分の肉体を自由自在に作り替える「獣化魔術」を使うことが出来る。赤い熊の姿をしていることからこの名がつけられたが、実際元の姿を見たものはいない。
- フェアリードラゴン・ヴァルキリー:通称「深紅の獅子」。小さな赤い鬣を持つライオンの姿をしている。自然界の法則を契約により使役する「精霊魔術」を使うことが出来るのだが、五感の全てをはく奪されており、今や「聖域」に少数が生息するのみとなっている。
- ミストドラゴン・トロール:通称「不死の獣」。塔を背負った犀のような姿をしており、頑健な肉体と強力な火力を持つ一斉奏射を得意とする。匂いを媒介とし天候を操る「大気魔術」を使用する。高い知能を有するドラゴン種族の中でこいつらだけ非常に本能剥き出しであり、神々により「知性」を奪われたのではないかとする説もある。
その他
このように本作では、魔術には発動手順や原理などの「説明」がなされているほか、
空間転移や飛行など一般的なファンタジーの魔法で出来そうな事の多くが制約されているのも特徴の一つである。
作者インタビューによれば、魔法が魔法であるという理由で説明をやめてしまうのが普通のファンタジーだが、それに理屈を付けて説明をしたものであり、それが変わったものに見えたのでは、とのこと。
こういった設定は、90年代初期には非常に斬新なものであり、それまでの剣と魔法といったファンタジー作品とは異なる独特の世界観とリアリティを生み出すのに一役買った。
さらに2000年代以降は本作の影響からか「魔法と魔術を区別する」「魔法(魔術)といえども、その現象を成り立たせている法則や定義が何らかの形で存在する」「魔法(魔術)といえども法則に縛られる以上は、法則の穴(セキュリティホール)を突くなどのウィークポイント(弱点)がある」という作品が爆発的に増えた。
そのため、本作はそうした世界観を持つ作品の嚆矢として上げられる事がある。
キャラクター
※CVは記述がない限り、1990年代のTBS版 / 2020年のはぐれ旅のもの。
<第一部・西部編>
【登場人物】
サルア・ソリュード
魔術士と敵対するキムラック教会の幹部”死の教師”の一人。
一見すると軽薄なお調子者だが大陸でも屈指の剣の達人。
説教が大好き(本人は否定している)。
教会を再生するためメッチェンと行動を共にする。
<第二部・東部編>
【登場人物】
ライアン・スプーン
軽薄でハッタリじみた話し方を好む剣術教練場の練習生。
ある目的からロッテーシャの剣術教錬所に潜り込んでいる。
ヘルパート
レッド・ドラゴン種族でドッペル・イクスの一員。
ドラゴン種族最悪と呼ばれるほどの暗殺者。
アルマゲスト・ベティスリーサ
最接近領の領主と呼ばれる貴族。
強力な部下を携えドッペル・イクスと暗闘を行う。
ダミアン・ルーヴ
領主に仕える白魔術士。
精神体でありながら何十年もの間消滅を免れてきた。
ウィノナ
領主に仕える非公式騎士。
アルマゲストに心から忠誠を誓っている。
プルートー
宮廷魔術士≪十三使徒≫の長。
王都の魔人と呼ばれ、チャイルドマンと双璧をなす強力な魔術士。
<無謀編>
【登場人物】
コンスタンス・マギー(コギー)
CV:飯塚雅弓 / 高橋美佳子(2000年代ドラマCD)/小山百代
マギー家の次女。通称コギー。
犯罪を取り締まるエリート集団である派遣警察官である…はずなのだがとにかく無能。
オーフェン達と毎日ドタバタ劇を繰り広げている。
<プレオーフェン>
チャイルドマン教室
牙の塔にある最も優秀な生徒が集うエリート教室。
王都の魔術士の台頭により権威を失うことを恐れた牙の塔が宮廷に対抗するために創設した。
最強と呼ばれた魔術士チャイルドマンをスカウトし、彼の技能を7人の生徒に受け継がせようとした。
ちなみに生徒たちは優秀だがかなり個性的な問題児ばかりである。
【登場人物】
キリランシェロ
チャイルドマンの戦闘・暗殺術をすべて叩き込まれた魔術士の暗殺技能者。
その能力の高さから≪鋼の後継≫と言う二つ名を持つにまで至り、大陸中にその名を轟かせる。
性格は真面目で純情、お人よし。同世代のハーティアとは親友にしてライバル。
実はオーフェンの子供時代の姿である。現在は名前を捨ててオーフェンと名乗る。
アザリー
ブラウンの瞳と癖のある黒髪を持つ茶目っ気のある女性。
チャイルドマンの持つ天人の遺産及び知識を受け継ぐ。
黒魔術だけでなく白魔術も扱う教室内で最も優れた魔術士。
同時にチャイルドマン教室きってのトラブルメーカーでもある。
レティシャ
CV:伊藤静(はぐれ旅)
優等生タイプの正統派美人。
キリランシェロが”攻める”戦闘技術を学んだのに対し、主に戦争で生き残るための”受ける”戦闘技術を学んだ生徒。
潔癖すぎてたまに周囲を巻き込んだ癇癪を起こすことがある。
フォルテ
CV:前野智昭(はぐれ旅)
教室最年長で落ち着いた雰囲気の男。もっともそれは上辺だけで冷静さは足りないらしい。
特殊な情報網”チャイルドマン・ネットワーク”を継承した。
後輩たちの面倒見はよく、あとでフォローを入れたりするなどして教室をまとめている。
コミクロン
CV:安田陸矢(はぐれ旅)
男性だが髪を三つ編みのお下げにして白衣を着込んでいる。
自称・科学者で人造人間シリーズという名のガラクタを作ってはキリランシェロに戦いを挑み返り討ちにあう日々を送っている。
文字通りの変人だが医療魔術に関しては右に出るものがいないスペシャリストである。
コルゴン
ナイトノッカー(迷惑来訪者)の二つ名を持つ。
性格は天然で放浪癖があり牙の塔にはほとんどいない。いる時は屋根裏部屋のサボテンを育てている。
チャイルドマンから秘密裏にキリランシェロと同じ戦闘法を受け継いだもう一人の暗殺者。
フルネームはユイス・エルス・イト・エムグ・エド・コルゴン。
複数の名前は任務によって使い分けている。
チャイルドマン・パウダーフィールド
名実共に大陸最強の大魔術士にして元暗殺者、現在はチャイルドマン教室の教師。
長身で感情のない完璧超人。25歳という若年ながら牙の塔を事実上掌握している。
出自など謎の多い人物だが、大陸を左右する重大な使命を胸に抱く。
<第四部・原大陸編>
【登場人物】
マヨール・マグレディ
第四部の主人公。
フォルテ、レティシャの息子。
母にそっくりな容姿を持ち、エリート主義を地で行く優等生。
だがベイジットに手を焼かされてきたこともあるため、柔軟な考えも出来る善良な青年である。
妹を連れ帰るため新大陸へと渡る。
ベイジット・バッキンガム
フォルテ、レティシャの娘。マヨールの妹。
兄とは対照的にあっけらかんとした性格で、目的のためなら嘘をつくことも厭わない。
魔術士だが落第生であり魔術士としての自分に劣等感を抱く。同時に魔術のみで価値が決まる魔術士社会に反発している。
力を求めて新大陸へと密航する。
オーフェン・フィンランディ
第一部、第二部の主人公。
”島”を救う代償として旧体制を破壊し、結果として戦争を起こしたことで魔王と呼ばれている。
開拓団を率いて新大陸での開拓を成功させた。
現在は様々な役職を兼任する原大陸の最高権力者にして世界最強の魔王術士である。
マジク・リン(ブラディ・バース)
スウェーデンボリー魔術学校の教師兼魔術戦士。
第一部、第二部では半人前だったが第四部では伝説と呼ばれるほどの魔術士にまで成長した。
オーフェンの片腕としてその実力を発揮している。
TVアニメ
J.C.STAFF制作により、2度のTVアニメ化がされた。
1998年10月から1999年3月にかけてTBS系列局の一部とBS-iにて全24話が放送された。
基本的には原作の1巻をアニメ化したものだが、2巻や4巻に収録されたエピソードやオリジナルストーリーも展開された。
作者の秋田禎信は「原作と同じにやってはアニメにならない」としていたが、放送後原作ファンからは「原作に沿って作って欲しい」と批判が相次いだ。
その後、1999年10月から2000年3月まで『魔術士オーフェンRevenge』のタイトルで第2シリーズが、やはりTBS系列局の一部とBS-iにて放送されているが、放送局に関しては「入れ替わり」があった。第1話と第2話こそ原作11巻の一部を拝借してはいるが、それ以外はオリジナルストーリーとなっている。
余談ながら、青森テレビや北陸放送やテレビ山口や熊本放送のように、どちらも放送しなかったTBS系列局も少なくない。
第1期の音楽制作にシャ乱Qのはたけが関わっていたからか、シャ乱Qやタンポポ、太陽とシスコムーンといったアップフロントグループ系アーティストが主題歌を担当することが多かった。
2018年には生誕25周年を迎える2019年に、
原作の正式タイトルである『魔術士オーフェンはぐれ旅』のタイトルで作り直されることを発表。
主人公・オーフェンの声は森久保祥太郎が続投することが決定している。
2019年3月には第1弾PVが公開。
同年8月、正式な放送時期が当初発表されていた2019年中ではなく2020年1月からであることが発表され、同時にクリーオウやマジクなどのキャスト陣、制作スタッフ陣、第2弾PVが公開された。
TOKYOMX、WOWOW、AT-X、BSフジにて放送。なお、TOKYOMX以外の3局は衛星波のテレビ局である。
アニメーション制作はスタジオディーンが担当する。
主題歌を森久保がbuzz★Vibesというロックユニットの片割れという格好で担当。もう片割れのshinnosuke(元SOUL'd OUT)が劇中音楽も手掛ける。
放送時期は未定ながら、第2シリーズ・キムラック編の制作構想がある。