概要
正式名称は『BASTARD!!-暗黒の破壊神-』(バスタード あんこくのはかいしん)
1988年より連載開始。ジャンプ黄金期の作品だが、未だ持って未完。
主なメディアミックス展開にOVA、小説、カセットブック、ドラマCD、ゲームなど。
『ウルトラジャンプ』2010年6月号の掲載を最後に中断中(一応は不定期連載という扱い)。累計発行部数は3000万。
主人公であるダーク・シュナイダー(D・S)が、強力な魔法使いや戦士たち、果ては天使や悪魔と戦いを繰り広げるダークファンタジーである。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』や『wizardry』に影響を受けた本格的なファンタジー描写はヒロイックファンタジー作品に馴染みのなかった多くのライトユーザー層に受け、支持を伸ばした。
日本ではファンタジーの草分け的存在の『ロードス島戦記』と同時期であり、後のファンタジー作品群にも多大な影響を与えた作品として知られる。
「悪党に人質を取られる」というお約束の展開に対して全く物怖じせずに暴虐の限りで応じる破天荒な主人公を中心に、時に既存の世界観を塗り替えてしまうほどの大胆な変更など、展開が全く読めないストーリーも魅力的である。
さらに緻密かつ美麗な作画で繰り広げられる迫力ある剣と魔法のバトル、可愛くセクシーなヒロイン達なども人気を支え、ジャンプ黄金期に名を連ねる人気作となった。
基本的なストーリーラインは超シリアスだが、楽屋オチ系の悪ノリを含むギャグ・パロディ・エロも満載で、要するになんでもあり。
連載当時の少年ジャンプは、桂正和も限界に挑んだようにエロ規制もなかなか厳しかったのだが、ものともしないギリギリ描写を多数残している(「寸前」や「事後」、『本番』とも受け取れるシーンも多数掲載された)。
作中に登場するほとんどの人名・国名・魔法名・およびその詠唱などの用語は主に洋楽のハードロック・へヴィーメタルバンドやそのメンバー名を元にしている。
世界観やキャラクター設定は膨大な量で作り込まれており、時に作中で「うんちく」として長文で紹介される。画集やファンブックなどではより詳細に解説されている。
よく休載することでとても有名な作品でもある。
実際、80年代後半から連載が始まったにもかかわらず、終わる気配すらない。
この漫画の連載開始から10年後に始まり、休載することで有名な『HUNTER×HUNTER』にすら巻数で負けていると書けば、いかに刊行ペースが遅いか分かるだろう。
連載期間が長すぎて、初期とは絵柄や世界観が大幅に変わっており、現在は完結が危ぶまれるほどの遅筆および、あまりにも風呂敷を広げすぎたがゆえの迷走が続いている。あまりにも混沌な不安定要素を次から次へと放り込んだため、作者ですらフラグや世界観が把握できなくなっているのだろう。
連載状況
週刊少年ジャンプで連載していた四天王との戦いを描いた「闇の反逆軍団編」から元々作画は凄かったが、書き込み量と週刊連載のペースが合わず、原稿を落とすことが度々あり問題視されていた(時には大きな吹き出しに大きく文字を入れてセリフの勢いで誤魔化していた。単行本で没カットとして掲載)。
結局、次章の「地獄の鎮魂歌編」の序盤で週刊連載は打ち切られる事となり、続きは季刊誌「少年ジャンプ」へと移った。週刊連載では成し得なかった時間と手間をかけたトーンワークは非常に美麗であり、当時の漫画の最高峰といっても過言ではなかった。
当初は破壊神アンスラサクスとの戦いを描いた「地獄の鎮魂歌編」で作品を終わらせる予定だったらしいが、大人の事情により連載は継続することになった。ここが本作品と作者のターニングポイントとなる。
続く「罪と罰編」における天使や悪魔との戦いからインフレが激化し、話の規模も比べ物にならないほど壮大な物と化していく。話の内容に比例し、作画の書き込みも凄まじくなったが、結局、話を畳みきれずに一時中断となる。
「背徳の掟編」では週刊少年ジャンプにカムバックを果たす。当時のジャンプは暗黒期と言われており、連載ペースなどで問題を抱えつつも一定の人気があった本作を呼び込むほど必死だったと言われている。
しかし、この章では敵と味方の再生能力が凄まじく向上し、相手を破壊してもすぐさま再生するというような高次元のバトル(と見せかけた単調な殴り合い)が延々と繰り返され、評価を大きく落とすことになった。
連載ペースは月1の予定だったが、当初から原稿を度々落としていた。途中からは連載が未完にも関わらず、完全版を出版し、その修正作業に没頭するようになる。
数年して「ウルトラジャンプ」へ移籍。そこでも休載を何度も繰り返して、10年がかりで背徳の掟編をようやく完結させる。
これで話が前に進むと思われたが、未完に終わっていた罪と罰編の補足(魔力の刻印篇)に入ってしまい、多数の読者を愕然とさせた(「背徳の掟編」でD・Sが6人の魔王から「ユダの痛み」を奪ったと明かされているが、中断時には魔王に劣る悪魔大元帥に苦戦している状態。また方舟の戦いも全く片付いていない。これまでの刊行ペースと照らし合わせ、完結が絶望視された瞬間でもあった)。
このため、ファンの間では「アンスラ(地獄の鎮魂歌編)で終わったら名作だった」などとよく語られる(「方舟(罪と罰編)もいいよね」派などもある)。
「魔力の刻印篇」はD・Sがポルノ・ディアノ相手に善戦し始めると言う内容。導入部分は作者が「罪と罰編」の直後に出した同人誌「未使用・改訂版」から原稿を流用している。新しく描かれた戦闘場面では、合間にサービスカットが過剰に挟まれ、大した展開も見せないまま連載休止となった。本誌の連載は2010年、単行本の発売は2012年を最後に過去最大級の休止期間となっている。
休止以降、作者の萩原一至が何をしていたかというと、他のアニメやゲームのキャラクター原案やデザイン、画集の出版、セルフパロディとなる本作の成人向け同人誌の制作などをしていたようである。
ゲーム『デモンゲイズ2』発売を記念した2016年のベニー松山との会談では「絵だと何日も描かなければいけないページが、文章だと数十秒で書ける。連載を3年やって一つのお話ができるという3年がかりの仕事が文章だとひと月もかからない」とノベル制作に意欲を見せている。また「漫画の原稿だと完結するのは無理なんですよ」とも零していた。
編集に文章での制作を伝えたところ、難色を示していたそうだが、萩原の方は「挿絵も自分で描くからラノベでやらせて欲しい」と引き下がらなかったという。
2017年の同人誌「桑」で作者が語った今後の展望は「地獄編はプロットが溜まっているが、本編より何百年か前の四天王の話を作っており、書き上げたら集英社で出してもらえるかも」とのことであった。
結局のところ、小説版の発行も長年滞っており、完結自体が難しいのかも知れない。仮に製作中の本が出たとしても、どちらも過去の話である。
完全版
2000年から2009年にかけて発行された書籍。通常のWJコミックスと異なり、本のサイズが大きく装丁も豪華だが、定価は3000円ほどと値が張る。
ちょうど当時の漫画業界が完全版ブームであり、それに便乗したものと思われる。
『BASTARD!!』の場合は本編にも大幅な加筆が加えられているのが特徴。
1巻はデッサンの狂いなどを細かく修正する程度だったが、「全面的に改稿」と宣伝していたせいか、「違いが分からない」と読者からの批判が殺到する。
そのせいか、2巻では本編をまるごと書き換えるレベルでの修正を行っている。連載初期から画風が大きく変わっているが、連載初期の画風に寄せつつ修正されている。
だが、本編の連載が滞る事態となったため、2巻以降は軽微の修正となった。
通常版のコミックスが27巻で中断しているように、完全版も2009年に発売された9巻を最後に刊行が止まっている。話は「罪と罰編」までであり、おそらくここから「魔力の刻印篇」へと繋げ、時系列順に掲載する算段であったと思われる。
後に出版された「文庫版」も、「完全版」同様9巻で刊行停止となっている。
EXPANSION
完全版を執筆した際に、作者曰く「調子に乗ってエロにしすぎた」場面を描いたセルフパロディ同人誌。題名は拡張版を意味する。
完全版2巻でカイ・ハーンへ解毒をする場面、完全版1巻でシーラ・トェル・メタ=リカーナに毒を吸い出してもらう場面をそれぞれ成人向けレベルに引き上げている。
3冊目の『桑』はシーン・ハリも加わった3人の女性キャラとの乱交が描かれている。本編へリンクする設定があるらしいが描写しきれず、こちらも未完に終わっている。
ゲーム
『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』
1994年、スーパーファミコン。地上と空中のラインを移動しながら魔法や技を駆使して戦う対戦ゲーム。使用キャラはD・S、四天王、ダイ・アモンの6名。ガードが出来ないなどシステムが独特で、理解の及ばないゲーマーからはクソゲーと評されることも。
『BASTARD!! -虚ろなる神々の器-』
1996年、プレイステーション。記憶と力のほとんどを失ったD・Sを主人公に展開されるRPG。本作独自のストーリー展開はノベライズを担当したベニー松山の手によるもの。さらに作者の萩原も監修として参加しており、原作で描かれなかった多数の設定が明かされる点が魅力。
『BASTARD!! -ONLINE-』
テクモとシャフトが共同開発していたMMORPG。2005年7月の制作発表以来、沈黙を続けたが、2007年頃より情報が少しずつ出始める。2008年には一般公募によるコスチュームデザインコンテストが企画され、TGSでの出展などイベントでの露出も増えた矢先、2009年に開発中止となった。原作に登場するメタ=リカーナ王国や、四天王が率いる各軍団に所属し、軍団同士で戦うゲームだったらしい。
登場人物
主人公。物語開始時の400年前から生きている伝説の魔法使いと、その転生先の少年。
ダーク・シュナイダーは名前が長いため、概要にもあるD・S表記をされることが多い。
二重人格のような形で併存しているが、どちらの人格でもヨーコには頭が上がらない。
メインヒロインの僕っ娘。口調の割に母性に溢れており、主人公の両方から懐かれている。
「地獄の鎮魂歌編」でいかなる状況にも物怖じしない器の大きな人物に成長、仲間たちを引っ張り世界の危機に立ち向かっていく。
四天王
かつてD・Sに仕えた4人の強者。通称「D・S四天王」。
物語開始時点ではカル=スをリーダーとして再編されており、ヨーコとメタ=リカーナ王国を守ろうとするD・Sとは敵対関係に。
カル=ス・・・破壊神復活を目論む首謀者。幼少時に実母を殺害したトラウマを利用され、アンスラサクスの傀儡となる。
アーシェス・ネイ・・・D・Sの養女兼恋人のハーフエルフ。
ガラ(ニンジャマスター・ガラ)・・・忍者軍団を指揮する豪快な人物。
アビゲイル・・・「冥界の預言者」と呼ばれる僧侶。
鬼道三人衆
ネイの部下。戦いを通して3人とも味方になる。
シーン・ハリ・・・呪符を操る魔道士。
カイ・ハーン・・・破裏拳流剣法を使う男勝りの戦士。
ダイ・アモン・・・吸血鬼。D・Sに呪いを受け下僕となる。
メタ=リカーナ王国
シーラ・トェル・メタ=リカーナ・・・体にアンスラサクスの封印を宿す王女。D・Sに惚れている。
ラーズ・ウル・メタ=リカーナ・・・五英雄の一人で「竜王子」の異名を取る。過去の戦いが原因で身体がドラゴンと化しており、身分を隠してD・Sの旅に同行する。
ジオ・ノート・ソート・・・ヨーコの父。五英雄の一人。神聖魔法と空手の使い手である修行僧(モンク)。
シリン・テンペスト・・・ヨーコの母。五英雄の一人。「辺境の黒き魔女」と呼ばれる魔道士。本編開始以前に死亡している。
ダーナ・メニケッティ・・・五英雄の一人。女海賊の魔獣使い。
ボン・ジョヴィーナ・・・騎士団長。
ア=イアン=メイデの侍
「地獄の鎮魂歌編」でのヨーコの仲間。カイも参加している。
十二魔戦将軍
カル=スに仕える12人の戦士で通称魔戦将軍。
「罪と罰編」でヨーコ、アビゲイル、ラーズと共闘する。
イダ・ディースナ(召喚士)
イングヴェイ・フォン・マルムスティーン(騎士(光速の剣))
サイクス・フォン・スノーホワイト(魔導師(時空系))
ザック・ワルダー(格闘家)
シェラ・イー・リー(吟遊詩人)
ジオン・ゾル・ヴァンデンヴァーグ(暗黒騎士)
バ・ソリー(蟲使い)
ブラド・キルス(騎士)
ボル・ギル・ボル(影使い)
マカパイン・トーニ・シュトラウス(鋼糸使い)
ロス・ザボス・フリードリッヒ(魔法剣士)
天使
アンスラサクスとの戦いを通じて、人間の世界に降臨した天使達。人間を罰しようとする。
ルシフェル・・・大天使長。ルーシェの正体。
ミカエル・・・四大燭天使の一人。ルシフェルを敬愛している。
ラファエル・・・四大燭天使の一人。ベルゼバブと通じている。
ウリエル・・・四大燭天使の一人。ベルゼバブの策略にはまって堕天してしまう。
ガブリエル・・・四大燭天使の一人。地獄からD・Sに救い出された。
アムラエル・・・ウリエルの妹。コンロンと同化させられ、「無効共鳴」の触媒にされた。
悪魔
サタン・・・悪魔達の王。堕天したルシフェルから分離した存在。
7大悪魔王
バエル(ポクチン)
魔神
所属不明
リリス・・・ヨーコに酷似している人間の少女。ベルゼバブの下にいるが、過去・素性は不明。