概要
東京都の八王子駅と群馬県の倉賀野駅間を結ぶ92キロの路線である。地方交通線。
「八王子から高崎までを結ぶ」から八高線であり、渋谷の待ち合わせ場所に鎮座する犬とは関係ない。系統上は倉賀野までだが運行上は高崎を起終点とし、倉賀野(正確には北藤岡)-高崎間は高崎線の線路を用いる。
八王子-高麗川間が1996年に電化されており、東京都で最後まで残った非電化路線である。
南部の電化以降、高麗川で列車系統は分断されている。高麗川以北は埼玉県内唯一、かつ群馬県内でもたった2つ(もう1つはわたらせ渓谷鐵道)の非電化路線である。
便宜上電化区間を「八高南線」、非電化区間を「八高北線」と呼ぶこともあるが、公式なものではない(全通前は八王子-東飯能間・児玉-倉賀野間の南北に分けて建設していたためそう呼ばれていた時期はあった)。
沿線周辺の様子や運行本数から山間部を通る路線と想像されるがそうでもなく、金子-東飯能間の加治丘陵中央部や、東飯能-小川町間の関東平野を進む以外の区間は比較的高低差の安定した場所を通っている。さらに何と全区間を通してトンネルが1つもない…が、これは八王子-高麗川間が電化された以降の話。かつては東福生-箱根ヶ崎間の横田基地滑走路の延長上に1ヶ所だけ存在したが、電化工事の際に天井だけ取り除かれて左右の壁のみが残る。本来は飛行機からの落下物から鉄路を守るために作られてもの。現在も法律上はトンネルとして扱われるため、地図やカーナビなどによってはトンネル記号が表記される場合がある。
沿線には拝島・東飯能・高麗川・小川町・寄居といった主要な乗換駅が多くある(特にJRを使って秩父に行く場合東飯能や寄居は非常に重要)にもかかわらず、列車の本数が少ないのみならず、川越線と直通する高麗川や青梅線などと接続する拝島など一部を除いて他路線や他社線との接続が殆ど考慮されていない。
これは元々この路線が群馬の製糸業や秩父のセメントなどの貨物輸送を主眼に置いて建設されたものであり、長いこと旅客に力を入れてこなかったことが原因。実は敗戦直後に死者100人越えの死亡事故を2度も起こしたという黒歴史もある……
さらに小川町-寄居間は東武東上線も通っており、竹沢駅は目と鼻の先に東武竹沢駅がある。本数で言えばあちらの方が圧倒的に多く、小川町からは池袋に直行できるため、これと比べて利便性が薄い八高線の同区間は全体から見て最も本数が少ない。HONDAの新しい工場に因んでできた新駅みなみ寄居駅も東上線の方であり、八高線には全く影響がない。
これだけ聞くと東上線が八高線の客を奪ったようにも聞こえるが実態はその逆で、結果として後からできた八高線が、東上線の群馬延伸計画を横取りしてしまったのである(東上線は元々東京から群馬【上州】を経て新潟へ至る路線として計画されており、寄居からそのまま高崎に抜ける予定だったが、八高線が通ることが決定したため寄居で打ち止めになった。高崎から長岡への経路の構想も上越線と毛呂被り…もといモロ被りである)。
八王子-高麗川間は大半の列車が川越線川越駅まで直通運転を行う。奇遇にも高麗川駅の頭文字が「高」であるせいで、八高線を「八王子から高麗川までを結ぶ路線」と思っている人もいるが、これは誤りである。
なお、川越線と八高線とで上り下りの方向が異なる(八高線は八王子方面が上り、川越線は大宮方面が上り)ため、列車番号が高麗川で切り替わることになる。
高麗川-高崎間はほとんどの列車でワンマン運転を行っているが、2022年3月のダイヤ改正以降は電化区間の八王子-高麗川(-川越・南古谷)間の全列車もワンマン運転を行っており、乗車率・本数・両数が少ない(ワンマンだが1両で運転される列車もある)非電化区間の方にのみ一部の列車で車掌が乗務する。
電化区間と非電化区間それぞれの運行頻度が異なるため、八王子方面との接続時間は列車によってまちまち。
電化区間の中間駅は全て列車交換が可能だが、非電化区間は一部の交換可能駅が軒並み棒線(1面1線)化されたため現在は交換不可駅が圧倒的に多い(離れた位置に忽然と遺された対向式ホームや、駅前後の分岐を改修したことで生じた不自然なカーブなどで確認できる。島式ホームの越生はエレベーター設置・西口改装工事のため1番線の線路が撤去された)。
八王子-高崎間を中央線などを乗り継いで行った場合とどちらが早く着くかは、経路・乗り換え・時間帯によってまちまちであるが(列車本数は中央線経由の方が多く、八高線は高麗川を境に北部は1時間1~2本、南部は1時間に2~3本)、ルート的には八高線の方が効率が良い。つまり、八高線は近いけど遅く、中央線経由は早いけど遠い。
乗り換え回数は、八高線は高麗川乗換えで1回、中央線は新宿で湘南新宿ライン(高崎線直通)に乗り換えた場合、どちらも最低1回。また、八王子から「むさしの号(中央線と武蔵野線が貨物線を駆使して大宮へ直通する普通列車)」に乗って終点の大宮で高崎線に乗り換える(同じく乗換1回)というニッチな手段もある。運賃はいずれを経由しても1980円。どの経路を選ぶかは利用客の用途・都合・気分次第である。
現在の使用車両は電化区間が209系3500番台とE231系3000番台(どちらも元中央・総武緩行線の車両を改造)、非電化区間はキハ110系である。
電化区間の全列車でワンマン運転が行われる以前は青梅・中央線快速の直通(八高線を通る青梅特快も含む)などがあったが、線内は全て各駅停車(普通)であり、優等列車は元々なかった(1961年から1965年まで新宿~水上間を当路線経由で結んだ準急「みくに」が走っていた)。
近年、特に北八王子駅周辺は開発により急速に人口が増えており利用客も急上昇しているが、路線としての扱いはあくまでも地方交通線であり、周辺路線より料金が割高になってしまうのが利用者の悩みの種となっている。
複線化や列車増発の要望もあるが実現には至っていない。一応、1996年の電化は八王子~高麗川間沿線の急激な人口増加に対応したものではあったが……
そして同様の問題が実は北でも起きている(群馬藤岡駅。藤岡市内を走る鉄道が八高線しかなく、朝夕の時間帯は恐ろしく混雑する)。