概要
概ね、すべての駅に停車をする列車を「各駅停車」と呼ぶ。私鉄では「各停」あるいは「普通」表記、もしくは表記なしになっている事が多い(「各停」表記は主に関東に多く、「普通」表記は主に関西に多い傾向にある)。
必ずしもすべての路線に「普通」ないし「各駅停車」が存在するわけではなく、種別としては特急や急行だけという路線もある(各駅に停車するが、種別は特急などのまま)。「普通列車」が存在しないJRの路線(石勝線・津軽海峡線など)では、特急券無しで乗車できる特例がある。
元々は急行料金の必要な急行列車以外の列車すべてを「普通列車」と呼んでいた経緯があり、大都市近郊に乗り入れる長距離を走る列車(※)が都市圏では主要駅以外停車しないこともあり、後述する「普通」と「各停」が混在する元となっている。
- ※···最近ではほとんど見られないが、「ムーンライトながら」になるまでのいわゆる「大垣夜行」は快速ではなく、時刻表などでは「普通」だったのはこの名残り。
「青春18きっぷ」は正確には「快速列車も乗れる」というよりは、「特急・急行などの特別料金などを必要とする列車に乗れない」と解釈する方が正しい。
新幹線にも「こだま」などの各駅に停車する列車は存在するが、特に種別を案内しておらず各駅列車でも普通列車扱いでは無い(開業時はこだまが「特急」・ひかりが「超特急」となっていた)。
普通と各駅停車が併存して走る例
通勤形電車の場合は普通と各駅停車に厳密な差はないに等しいが、近郊型列車の場合は普通列車でも通過駅のある場合があり、路線によっては両者が並行して走るものもある。そのような場合、「普通=各駅停車」なのかどうかを確認したほうが無難。主に首都圏のいわゆる「通勤五方面作戦」の対象となった路線に存在する。
JR東日本・通勤五方面作戦の路線
国鉄時代は大まかに言えば113系、115系、415系が普通列車・201系、103系、101系が各駅停車として運用されていて、外見から容易に見分けがついたものの、E231系導入以降は両者の外見が似ているため以前より見分けがつきにくい。外見上ではざっくり言えば2階建てグリーン車を繋げている列車が「普通列車」、そうでない列車が「各駅停車(通勤電車)」と言うことが出来るので、編成全体を見れば見分けがつくとも言える。が、2020年以降に中央線快速にもグリーン車が連結される予定であり、将来的には必ずしもそうとは言えなくなる。
東海道本線 東京口
横浜駅までの京浜東北線の各駅停車や横浜駅~大船駅間の横須賀線に対し、戸塚まで新橋・品川・川崎・横浜の4駅に停車する小田原・熱海方面の列車が該当する。この系統は国鉄時代湘南電車と呼ばれていたものである。
関西の東海道線・山陽本線(いわゆるJR京都線・JR神戸線)だと、京浜東北線の各駅停車に相当する電車の種別が「普通」、東海道本線普通列車に相当する種別は「快速(各駅停車区間は普通)」となっている(後述)。
東北本線(宇都宮線・高崎線)東京駅・上野駅/山手線方面~大宮駅間
この区間は三複線になっていて、
- 各駅にホームがある「電車線」→京浜東北線(各駅停車)
- 上野・(尾久(電車線・貨物線とは大きく離れたところを通過する))・赤羽・浦和・さいたま新都心・大宮の各駅にのみホームが存在する「列車線」→宇都宮線・高崎線(上野東京ライン・上野駅発着)
- 田端から合流し赤羽・浦和・大宮の各駅にホームがある「東北貨物線」→田端からは山手貨物線に入る湘南新宿ライン
で系統分離されている。
中央線快速
かつては「甲府行普通(列車でスカ色115系12両編成使用、途中三鷹・立川・八王子・高尾以降各駅に停車)」と「高尾行快速電車(電車でオレンジ色の4扉通勤型10両編成使用)」が並行して走っていたが、停車駅は前者の方が少なく「高尾行各駅停車」が早朝・夜間だけの存在で、各駅停車としては後述にもある中央・総武線及び地下鉄東西線乗り入れ列車も混在するなど、慣れない利用者には区別のつきにくい存在であった。現在では大月以遠甲府方面への普通列車については、すべて立川以西発として解消している。
常磐線
取手駅以北に向かう中距離列車を「普通列車(通過駅あり)」、上野駅(もしくは北千住駅)~取手駅間のみ走る列車を「快速」「各駅停車(通過駅なし)」としているが、利用者から紛らわしいという声があったのか、現在は駅の表示上は「普通列車も快速と表記」している。
かつては普通列車の停車駅が快速より少ないこともありトラブルの多かった種別であるが、表記および停車駅の統一により解決に至っている。
総武本線
いわゆる中央・総武線の各駅停車と、千葉以遠を結ぶ快速電車(普通列車相当)に分けられている。
その他
厳密に普通と各停を分けているのは一社だけである。
南海電気鉄道 なんば駅~岸里玉出駅間(南海本線、高野線)
これは南海本線(西線)が今宮戎・萩ノ茶屋の両駅にホームがなく通過するためで、南海高野線系統は「各駅停車」、南海本線は「普通(アナウンスでは普通車)」と分けられている。車内掲示の南海線の停車駅案内では今宮戎と萩ノ茶屋は存在しない形になっている(駅ナンバリングが飛んでいるので駅の存在の推測は可能)が、駅の発車標や放送などでの普通の停車駅案内は下りは「新今宮と天下茶屋から先は各駅停車」、上りは「天下茶屋までの各駅と新今宮に停車」と、両駅が通過扱いであることを徹底した案内がされている。
これは1970年までは南海本線にも各駅停車が運転されていたためである。(高野線との複々線区間では高野線の東線を走行)
JR西日本東海道・山陽本線(京阪神緩行線)
全国版の大型時刻表でこの区間の欄を見ると、「快速」と表示された列車はなく、見た目は特急と普通と新快速しか走ってないように見えるが、これは現地では普通は「快速」扱いとなっており、これとは別に「各駅停車」が存在するため。快速は高槻駅(一部は京都駅)~明石駅間で通過運転を行なっており、快速の停車しない駅は通常前記の時刻表には掲載されていない。前述のように首都圏での東海道線普通列車と京浜東北線電車の関係に準じるが、快速電車は主に電車線(京浜東北線に相当する線路)を走行しており、設備上においても明らかに通過駅が存在する点が東海道線普通列車と異なる。
JTB発行の時刻表では長らく通過駅があるという表記はされておらず、巻末付近の京阪神緩行線の初電・終電の欄外に当該区間の「新快速・『快速』は◯◯~◯◯ページを参照」と、ここにだけ唯一快速電車であることを窺わせる注釈がされていただけであったが、2013年現在市販されているでは、種別表記のない列車で「各駅停車」の表記がない列車は全て「快速電車」であり、各駅停車は未掲載の駅にも停車するとの注釈が欄外に表記されている。また交通新聞社発行の時刻表においても「高槻~明石間は快速停車駅を掲載しています。各駅停車は◯◯ページを参照してください」などとの注釈が欄外に表記されている。
車両の種別表示についても113系時代は「快速」の表示は無かったが、117系以降の世代の車両では快速運転区間は「快速」、各駅停車区間は「普通」と種別幕に表示されるようになっている。なお、駅などでの案内は国鉄時代から「普通」であり、各停用の103系の行先表示は当初は「普通」の固定表示であった。
各駅停車の通過について
各駅停車と名乗っていながら通過する例が少数ながら見受けられる。
JR東日本埼京線
埼京線は山手線区間においてホームの設置されている駅が池袋駅・新宿駅・渋谷駅・恵比寿駅・大崎駅に限定されており、それらの駅に全列車が停車する。そのため、山手線に対する「快速」の役割を果たしている。
問題はここから。埼京線の普通は各駅停車と呼称するが、山手線内に入っても種別変更を行わないため、「通過駅のある各停」が発生する。ただし、埼京線の使用する線路には湘南新宿ラインも入るため、それに対する各駅停車とも解釈ができる。
東京急行電鉄大井町線
大井町線は二子玉川駅~溝の口駅間において東急田園都市線との線路別複々線となっている。この区間には二子新地駅、高津駅があるが、大井町線側の線路上にはホームが存在しないため、大井町線の各停のうち、種別が緑色で表示されている電車は通過する。日中はこの2駅に停車する大井町線の各停(青各停)が設定されている。
京王電鉄京王線
京王線は新宿駅~笹塚駅まで複々線であり、新設側の線路は京王新線と呼ばれている。この両駅間にある初台駅・幡ヶ谷駅は新線側に駅があるため(一応初台駅は旧線側にもホームがあるが新線開通後封鎖)新宿駅に発着する京王線の各停は通過する。これらの駅は京王新線開業前は京王線の各停が停車していた。
阪急電鉄京都本線
梅田駅~十三駅間は宝塚、神戸、京都線の3複線であるが、このうち京都線のみ途中の中津駅にホームがなく、普通電車も含めて全て通過している。京都線は戦後に線が増やされる前は宝塚線の線路に乗り入れて梅田に直通していたが、3複線化された際、ホームを設置するスペ-スがなかったとも、京都線の複線部分は法的には宝塚線の複々線化という名目で作られ、宝塚線の急行線という扱いだったという経緯だったからとされる。
これらのこともあって、十三駅では京都線の案内表記、大阪梅田駅では京都線ホームの駅名標に、「中津にはとまりません」と追記されている。
過去の例
近畿日本鉄道(近鉄)の今里駅は、現在のように複々線化されるまでは奈良線の普通電車のみ停車で、同じ線路を走行していた大阪線系統の普通電車が通過していた。複々線化後は全ての普通電車が停車するようになった。
関連タグ
普通:鉄道の種別に限らない「普通」という語句全般のタグ
鈍行(どんこう):各駅停車の呼び名の一つで、正式ではないがイベントなどで使用されることがある。