負けヒロイン
まけひろいん
概要
ラブコメ系の漫画等のような、原則的に結末が一つしか描かれないタイプである作品において、主人公への片思いが成就せず失恋してしまうヒロイン及び女性キャラクターを指す言葉である。
しかしマルチエンディング形式のゲームといった、主人公と結ばれる結末が各々に用意されている場合はこう呼ばれることは少ない。
しかしそれがメディアミックスした時、特にアニメや漫画なら媒体の特性上ストーリーは一本道になってしまい、主人公の恋人となれるヒロインは一人だけになるため、負けヒロインという概念が生まれてしまう。
因みに男性キャラ(負けヒロインの男版)の場合は『負けヒーロー』という呼び方がされるが、該当キャラが圧倒的に少ないためあまりネット等で用いられることはない。
なお、安易な負けヒロイン呼びは完結作品の場合はネタバレ、そうでなくともレッテル貼りとなるため、避けるように。
原因と具体例
「本編開始時点で、自分が主人公と恋仲になるうえで大きなアドバンテージを持っていたにもかかわらず、そこから進展して恋仲になるための行動を取っていなかった」というパターンが有名である(好かれる為の行動を取っていても想いが伝わるとは限らない)。アドバンテージには「家族や幼馴染等で主人公との付き合いが(主人公にとっての異性として)最も長い」というのがお約束。
所謂「ボーイミーツガール」展開で出会うヒロインは、主人公に対して強い印象を与える事が多いため、これに競り合えなければ勝負の土俵にすら上がれない。
幼馴染、妹(義妹)、姉(義姉)、従姉(従妹)、クラスメイト
前述の通り本編開始の時点では、恋敵がまだ登場しておらず、自分は主人公の数少ない知り合いの女の子及び女性であるというとても大きなアドバンテージを持っているのがお約束だが、以下のようなパターンで失恋するケースもある。
- 『想いを告げて主人公との関係が壊れてしまう事を恐れる』等でヘタレてしまっている間に、転校生や学園のアイドル、生徒会長、お嬢様(もしくはお姫様)等の属性を持つ別のヒロインが主人公と知り合って仲良くなり、そのまま主人公を取られてしまう。『告白もせず、ずっと幼馴染みや家族、友達の立場で甘えてる』という状況から読者からも反発は少なくない。
- 「主人公の幼い頃の思い出の女の子」(草壁優季)や「主人公が幼い頃に助けた女の子」(神坂春姫)等といった自分以外にも主人公と本編開始前に出会っていた別のヒロインが主人公と運命の再会を果たし、そこから二人は仲良くなって恋に落ち、そのまま主人公を取られてしまう。
- 主人公が何らかの理由で異世界に行ってしまいそのまま生き別れになって、自分の知らない世界で、主人公は異世界でヒロインと出会って恋仲となり、事実上の失恋をしてしまう。
- メタ的な話ではあるが、マルチエンディング形式のゲームでは自分(及びハーレム)以外の全てのルートで「負けと判定されてしまう」(他のヒロインは主人公の事を好きにならなかったり、そもそも登場さえしない事もあるので「負けと判定されない」)。
- 『(カースト的な意味で)自分が主人公より上であり、主人公には悪口や暴力、理不尽な仕打ちをしても許される。』という身勝手な思考で今まで主人公に接してきたせいで、主人公から絶交や絶縁を宣言されてしまい、主人公が別のヒロインと出会って恋仲になり失恋してしまう。
主人公と同じパーティメンバー
これは小説家になろうやカクヨム等で読める『追放もの』で見られるケースで、主人公が自分と主人公の所属する冒険者パーティーのメンバーの一人(主に勇者等のリーダー格)からクビを宣告をされてしまい、そこでの身の振り方で負けヒロインになるか否かが決定する。『主人公についていく』または『所属パーティーを抜けて、追放された主人公と合流できた』場合は負けヒロインルートを回避できるのだが、もし我が身可愛さや『リーダーに弱みを握られている』『所属する組織や家系等の都合で自分の意思でパーティーを抜けられない』などの理由でパーティに残って主人公と別れた場合は、主人公は自分の知らない所で別のヒロインと出会って仲間や親密な関係になり、更には恋仲にもなって自分の負けヒロイン化が確定するという末路を辿るケースが多い。
性格面
負けヒロインに与えられやすい属性として「幼馴染」の他に「ツンデレ」が挙げられる。想いを告げるのを極端に恐れているタイプと同様に相手に対して中々素直になれないことが敗因なのではないかと言われる。
ただし高坂桐乃、ルイズ、雪ノ下雪乃のようにツンデレで主人公の心を射止め結ばれたケース、さらに幼馴染でツンデレ(というより若干性格がキツめ)という属性を持ちながら、最終的に主人公の光熱斗と結ばれた桜井メイルなどの例もある為、ツンデレ=負けヒロインの方式が成り立つとは言い難い。
負けヒロインにありがちとされる髪型
- 青い髪色、中でもショートヘアのキャラクターが負けヒロインになりやすい傾向にあるのではないかという風潮がある(該当キャラは「美樹さやか」など)。しかしながら『地獄先生ぬ~べ~』のゆきめのように本命とされた高橋律子に打ち勝ち、片想いを成就させたヒロインも少なくない。また、青髪ではないが『いちご100%』の西野つかさもショートヘアで勝ちヒロインになったケースである。(これは『ぬ~べ~』『いちご』の両作者がそれぞれゆきめ、つかさに想像以上の人気が出てしまい『勝ちヒロインを変更した』と語っている)
- ツインテール、特に金髪。青髪ショート同様に負けヒロインの象徴として度々候補に挙がる事もあるが、詳しい出所は不明。代表例は澤村・スペンサー・英梨々。英梨々の場合、幼馴染、カースト的に自分が上だと思っている(ので主人公を何度も裏切る)、ツンデレ、と負けヒロインに与えられる事が多いとされる属性をかなり備えている。イレギュラーなケースとして『姫ヶ崎櫻子は今日も不憫可愛い』に登場する姫ヶ崎櫻子のように最初から負けヒロイン属性の塊として設定されているパターンもある。
全滅
これも最近のラブコメでいくつか見られる展開の一つであり、要するにヒロイン候補全員を主人公が振るという物で、いわゆるヒロイン全員の負けヒロイン化である。
これも結末が賛否に分かれ、「一応ヒロインに優劣を付けない」「未来がある結末」という評価もある一方で、「結末をぼやかしている」「物語として完結してない」など批判も多い。
救済
負けヒロインの末路として「主人公以外の別のキャラと結ばれる」というものが多く見られるが、ファンにとっては救済になるどころか逆に荒れる原因になる事がある。
事前に伏線が十分に張られていなかったり、同じく失恋したキャラが相手だったりすると「最終回発情期」や「余りものカップル」といったご都合主義的な展開に取られかねないし、「(元来女性は失恋を引きずりにくいとはいえ)あれほど主人公に恋していたはずなのに、あっさりと別の男に乗り換えた」ように見えてしまう危険性もあるためである。
他のレギュラーキャラが相手ならまだしも、それまで全く登場しなかった無名のモブキャラが相手ともなれば、主人公に感情移入しながらヒロインを推してきたファンにとって「どこの馬の骨とも知らない奴に寝取られた」ような後味の悪さを残す事になり、猶更荒れやすくなってしまう。
ファンにとっての一番の望みは、やはり自らの感情移入先である主人公と結ばれる事なのである。
そのため、一部の作品では本編での負けヒロインがメインヒロインに昇格するifストーリーやスピンオフが展開される事がある。例として
など。
また、主人公が最初から一人のヒロイン一筋、最初からヒロイン一人一人に相手役を用意する、パラレルワールド扱いで全ヒロインに主人公と結ばれるエピソードを設ける、極端な例だが「ハーレムエンドにしてしまう」(『新妹魔王の契約者』『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』)など最初から負けヒロインを作らせない手法もある。
注意
ファンにとっての推しのヒロインが負けヒロインと化してしまうと荒れやすい。
確かに、作者が物語上で成長した部分やその後の人生を見せず、ぽっと出の男と無理やりのフォローのようなカップリングもしたりするなどして雑に処理しているシナリオ上の問題ではある。
ただ、どんな作品にも言える事だが、自分が望んだ通りの展開にならなかったからといってその責任をキャラクターに押し付けるのは考え物である。それは単なる夢の見過ぎでしかない。
忘れないでおいて欲しいのは、恋愛はあくまで人生の数あるイベントの1つであり、それがうまく行かなかっただけで即人生の勝ち負けが決まる訳ではないという点である。
よっぽど尖った世界観でない限り、主人公と結ばれなかったからといって即死んだり消滅したりするということはないし、新しい恋や出会いだってあるだろう。
失恋だって立派な恋愛の1つだし、それを糧に成長することだってある。何より恋愛以外にも幸せになれる方法はたくさんある。
あくまで1つの物語の中で思いが成就しなかった、というだけの話なのである。
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