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V号戦車パンター
Panzerkampfwagen V Panther:V号戦車パンター。のちに、Panzerkampfwagen Panther:パンター戦車へ変更。
独ソ開戦直後、ソ連軍の主力戦車T-34にドイツ軍のIII号戦車、IV号戦車は殆ど歯が立たないことが判明し、これに対抗するために急遽開発された。結果として戦後の主力戦車の性格を先取りしたような性格の車両となり、『第二次大戦最良の戦車』と言われる。
特徴
中戦車に分類されているが、実質重戦車に匹敵するサイズであった。
T-34に倣い、ドイツ戦車としては初の傾斜装甲を採用した。傾斜により砲弾を弾き易く、装甲板が垂直の場合より見かけ上の装甲厚を増す(被弾径始)。
車体前面上部装甲は80mmだが、55度の傾斜により140mm相当の見かけ上の装甲厚を得、車体前面の防御力は昼時の方角を取ったティーガーⅠ(垂直装甲を採用)の装甲に匹敵し、砲塔正面装甲は110mmだが、曲面になった防盾により130mm相当の見かけ上の装甲厚を得、砲塔正面の防御力はティーガーⅠを上まわる防御力であった。
ただし側面装甲は40度の傾斜に40㎜の装甲に過ぎず防禦不足でT-34やM4シャーマンにも側面に回り込まれての射撃で撃破されており、この為にアメリカでの評価は側面・後面も装甲が厚いティーガーに比べ悪いが、これは本車が攻防走を高い次元でバランスよく実現する事を目指しており、その為にはどこかを削る必要がある事からやむを得ない選択でもあった。
実際、初陣のクルスクの戦いではドイツ軍側にも側面からの砲撃で撃破された例も報告されたが、それへの批判よりは正面からの砲撃で撃破された報告例が無かった事の方が評価され、戦場に遺棄された31両の中で、砲撃により撃破された22両で車体正面を射貫されたものは一両も無く、全て側面か後面、砲塔前面(85mm高射砲弾と、至近距離からの45mmタングステン芯徹甲弾による)への命中弾によるものだったことが、ソ連側の調査で判明している。
主砲に7.5cmKwK42L/70(70口径)を採用。口径75mmは当時のドイツ軍で一般的なものであったが、IV号戦車の長砲身型やIII号突撃砲、各種対戦車砲の48口径より長砲身で装薬量が大きく高初速であり、ティーガーⅠの8.8cmKwK36L/56(56口径)よりも装甲貫徹力で勝っていた。
コンパクトかつ高出力のMaybach HL230P30水冷4ストロークV型12気筒ガソリンエンジンは700馬力を発揮。履帯はT-34に倣った幅広もので、VVSSサスペンションのM4シャーマンよりも接地圧が低く走破性に優れ、西部戦線では巨体の割には予想外の場所から出現し英米軍を驚かせている。
こぼれ話
初陣となる1943年のクルスクの戦いでは実用化を急ぐあまり初期不良が多く、故障で放棄される車両が続出した。
その後は改良され続け故障し難くなったが、西部戦線のノルマンディー上陸作戦、東部戦線のバグラチオン作戦以降は搭乗員の質の低下が激しくなり、性能の優位を生かせないことが多かった。アラクールの戦いでは、米軍に対して大敗を喫している。
「1台のパンターを撃破するのに5台のM4シャーマンが撃破された。」は、元をたどればティーガーⅠの活躍や、パンターに対する米英軍側の予想・見立てを誤解したデマである。
戦後パンターで戦車隊を編成したフランス軍による評価では、「150kmの走行で最終減速機が、1,000kmの走行でエンジンが壊れる」、「鉄道の駅から長距離の進撃は難しい」とされており、戦略的な機動力は脆弱だった。
この欠点は製造元のMAN社も把握しており、遊星歯車式の最終減速機の採用、BMW132空冷星型エンジンへの換装が提案されたが、前者は部品工場の工作機械不足、後者は些細な故障でもエンジンの総分解が必要になるため前線での整備性に問題があり却下されている。
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バリエーション
パンターの生産型は開発された順にD型→A型→G型→F型と、アルファベット順になっていない。これには諸説あるものの未だ謎のままである。
他のドイツ戦車同様、生産中にマイナーチェンジが繰り返されたため、後述する各生産型の特徴は全車に当てはまるものではない。
D型
最初の量産型。
様々な問題の改善のため盛んに仕様が変更された。突貫的な急造によって生産ラインが混乱していたため一括しての変更は行われず、様々なD型が存在する。
共通した特徴としては、車長キューポラが従来のドイツ戦車と同様に円筒形であることが挙げられる。初期のD型は砲塔側面に発煙弾発射機を装備しているが、敵歩兵の攻撃で容易に炎上したため生産中に廃止された。
A型
砲塔に関して改善が図られた。車長キューポラは円筒型から、お椀を伏せたような形になった。
改良後のキューポラは周囲に7個のペリスコープを持ち、その上に対空機関銃用リングが装備される。従来のキューポラの視察口は防弾ガラスをはめた直接視察口であったが、視界が狭く、対戦車ライフル等による被害を受けることが多かった。視察口をペリスコープとしたため車長が狙撃される事がなくなり、視界も大きく改善された。
車長ハッチは「目立つ」と不評だった従来の跳ね上げ式から、スイング式へと改善された。
砲塔左右のピストルポートは廃止され、砲塔上面に近接防御兵器が装備された。しかし発射機の供給が間に合わず、実際には取り付け穴は塞がれていた。
生産中期から照準器が双眼から単眼となったため二つあった防盾の照準口の片方が塞がれ、後には最初から一つだけとなった。
初期の車体はD型と同じだったが、車体前面のピストルポートに代わり、ボールマウント式のMG34S・7.92mm機銃が装備されるようになった。
変速機など駆動系は改善型となった。
G型
最量産生産型で、終戦までに2,943輌が生産された。
車体側面装甲板は一枚板で形成されるようになった。傾斜角度が若干浅くなり、それを補うために装甲は40mmから50mmに増された。
車体前面の操縦手用視察口は廃止され、車体上面に旋回式のペリスコープが設置された。操縦手と無線手のハッチがスイング式から跳ね上げ式に変更され、エンジンルーム上面のデザインも変更されている。
G型の後期生産の一部から防盾下部が垂直に改められた。これは円筒型の防盾下部に当たった敵弾が下向きに跳ね返って装甲の薄い車体上面を貫通、操縦席や無線手席に飛び込む「ショットトラップ」に対する対策であった。
F型
実際に量産されたのはG型が最後だが、終戦時、完成直前まで開発が進んでいたF型が存在した。
前面の面積をできるだけ狭くした「シュマルトゥルム(狭幅砲塔)」と呼ばれる新砲塔が採用された。ショットトラップを防ぐため「ザウコフ型」と呼ばれるティーガーⅡのような円錐形の防盾となった。
軍艦や砲兵科等で使用する、長距離において正確な測距を行うことができる基線長式測距儀が装備された。これは優越した砲戦性能を活かして長距離から連合戦車に対抗しようとしたものであった。しかし、基線長式測距儀は非常に精密かつデリケートな機材であり、敵と正面からの撃ち合いをする戦車での運用には疑問がもたれる。
パンターII
パンターの後継車両として計画された。
ソ連軍戦車の強化による将来的な防御力不足が危惧され、防御力増強を念頭に全体的な改設計を加えた後継戦車の開発が行われた。
パンターD型の生産開始以前に出された改善要求のうち、D型生産開始までに間に合わなかった箇所を設計に盛り込み、同時期に開発されていたティーガーⅡと足回り部品共通化を図った計画とされている。計画名称がパンターIIなのは、計画の時点で生産されていたパンター戦車(つまりD型)の後継という意味合いである。
計画開始はA型よりも早く1943年の秋には生産開始することを目標としていたが、当時は既存車両の生産で手一杯であり、供給の低下は得策ではないと判断されA型生産開始以前に計画放棄された。
パンターII開発の過程で研究された改良点は、ティーガーⅡとの足回り部品共通化以外はA型及びG型において順次導入され、パンターG型は事実上パンターIIの実現といえる。
なお砲塔についてはシュマルトゥルム装備の図面があるが、F型のものとは違っている。
ガスタービン搭載型
新世代の動力としてガスタービンを当時のドイツ陸軍は真面目に検討しており、試作品がパンターに搭載、試験された。
ガソリンではなく灯油でも動くことや、高出力によって走行性能を改善する事などが期待されたが、燃費性能の不足や低速域での性能不足、ドイツ全体の根本的な燃料欠乏から実用化には至らなかった。
搭載されたガスタービンは後にM1エイブラムスなどに搭載されたものと原理は同一であり、走行用に1100馬力以上を発揮したという。
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パンターの車体を利用した派生型
ヤークトパンター
リンク先参照。
パンター指揮戦車
中隊指揮官・副官以上用に350輛が生産された他、改修キットにより既存のパンターから改造された。
ベルゲパンター(パンター戦車回収車)
行動不能となった戦車を回収するための車両。
18tハーフトラックSd Kfz 9ベースの戦車回収車では50t級の戦車を回収するためには3台を必要とする。また、被弾に対して脆弱な非装甲車両による戦闘中の回収は困難であった。そのため、パンターの車体を使って重戦車の回収に適した戦車回収車が製作された。
当初は砲塔を搭載しない車体に簡易クレーンをつけた暫定的な車両であったが、後にヘンシェル社によって回収用ウィンチやクレーン、車体固定用アウトリガーなどが装備された本格的な戦車回収車として製作された。
ケーリアン対空戦車
パンターの車体に、3.7cmFlak44を連装した全周旋回式密閉砲塔を組み合わせた対空戦車。
陸軍兵器局から「車体サイズに比べ火力が貧弱」と指摘され、木製模型の製作のみで計画はキャンセルされた。
M10偽装車
1944年、バルジの戦いに於いて、ドイツ軍のオットー・スコルツェニーSS中佐率いる第150装甲旅団は米軍に偽装した車両や捕獲車両、米兵の軍服を着たドイツ兵によりミューズ河に架かる橋を爆破するグライフ作戦を企画し、その際に投入されたM10(M10GMC)に偽装したパンター。M10のシルエットを模した装甲板を被せるのみならず、キューポラを除去、米軍部隊を模した車両番号まで書き込んでいた。
奇襲効果が失われた後は通常の戦車と同じように戦線に投入され、米陸軍と交戦した。
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登場作品
- 『黒騎士物語』
主人公クルツ・ウェーバーおよびエルンスト・フォン・バウアーが搭乗。
- 『ベルリン1945』
ハルス中隊に半ば強奪する形で一時配備される。
野良中戦車同好会の車両としてF型が登場。
- 『ウクライナ混成旅団』
主人公らがスクラップの中からA型車輛を修理して搭乗。
G型が黒森峰女学園の主力戦車として登場。
パリ市内で自由フランス軍やレジスタンスと交戦。撮影に使用されたのはM24を改造した車両。
- 『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』
主人公たちと対峙するドイツ軍戦車としてG型が登場。主人公の宿敵イェーガーの搭乗車には暗視装置が搭載されている。
シリーズ皆勤の戦車。初代PS「コンバットチョロQ」のみ英語の「パンサー」表記。
「コンバットチョロQ」ではD型とG型、パンターII、さらにはケーリアン対空戦車が登場。D型とケーリアンはバトルアリーナ「ミドルクラス」で交戦するのみだが、G型とパンターIIは中盤の強敵として立ちはだかる。
PS2「新コンバットチョロQ」ではD型・A型・G型・F型・パンターIIが登場。中盤以降のステージで登場する。D型は「ザンブニール攻防戦」、パンターIIは「爆撃の閃光都市」クリアで使用可能となる。
A型とF型はステージ中には登場せず、A型はエキスパートアリーナ「マスボンバー」で、F型はバトルアリーナ「ウォーター」で対決、勝利すると使用可能となる。
G型もエキスパートアリーナ「テクニカルウェイ」で対決、勝利すると使用可能となる。
いずれも同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーと車体機関銃タイプ「B」カテゴリーの武装を装備できる。
GBA「コンバットチョロQ アドバンス大作戦」ではG型らしき車両が「V号戦車パンター」として登場。「75ミリカノン」と「汎用バトルタンク」で再現可能。
クセがなく扱いやすい75ミリカノンと、そこそこな機動力を誇る汎用バトルタンクによる中堅クラスの戦車。敵タンクとして登場する際にはクラッシュ効果(一撃必殺)を防ぐことが出来る「お守り」を装備している。
敵勢力Qシュタイン帝国の主力戦車であり、「エリートタンク」と名乗る強化タイプも登場。タイプごとに異なるサブウェポン・オプションを持つが、「エリートタンクIV」と「エリートタンクV」は主砲を換装している(IVは「ロケット砲」、Vは「15.2センチ砲」)ためパンターからかけ離れた外観になっている。
関連リンク
関連イラスト
関連タグ
I号戦車 II号戦車 III号戦車 IV号戦車 V号戦車 VI号戦車 ティーガーⅠ ティーガーⅡ
pzkwv ...パンター戦車の制式名が由来になっていると思われる