概要
国際連合(こくさいれんごう、英語:United Nations、直訳:連合国、読み:ユナイテッド・ネーションズ)は、1945年10月24日に第2次世界大戦の戦勝国(連合国)を母体として発足した国際機構。本部はアメリカのニューヨークにあり、国際連合憲章に基づいて運営されているが、あくまで独立主権国による国際機構なので世界政府では無い。その証拠に国際連合は固有の軍事力を保有しておらず、軍事力を行使する場合は安全保障理事会に発議して多国籍軍を編成する事になる。国際連盟とは全く別の組織だが、関連する機関の一部を国際連盟から継承している。
国際連盟の「民主的」ではあるが、それ故に有効に機能しなかった失敗に反省し、連合国の主軸となったアメリカ合衆国・ソビエト連邦・イギリス・フランス・中華民国に特別な権限を与えて責任を自覚させる事で、紛争を解決する事を意図して制度が設計されている。一方でこうした制度は、安保理常任理事国の主導による世界秩序を守る為の組織という側面も与えている。
旧敵国(枢軸国)とされる日本・ドイツ・イタリア・ハンガリー・フィンランドなどは当初は排除されていたので加盟が遅れていたが、1955年12月にフィンランドは国際連合に加盟し、日本など他の旧敵国も後に続いた。1960年9月以降は発展途上国(第3世界)の加盟が増えた為、全世界が参加する国際連合総会における安保理常任理事国の主導権は低下し、国際社会の多極化をもたらした。2022年5月時点で国際連合に加盟している国と地域は193カ国に及んでいる。
冷戦時代から指摘されていたが、拒否権を持つ安保理常任理事国の利害が衝突した時は国際連合は力を発揮できなくなる。
冷戦時代は大国の利害が対立する紛争が国際連合の場に持ち込まれる事が少なかった為、表面化する事はあまり無かったが、1989年12月に冷戦が終結して以降は国際連合が本来の紛争を解決する機能を発揮する場面が増加するに従い、安保理常任理事国の対立の場として議論が立ち往生する事例が目立っている。
主要機関
- 総会
全ての加盟国が投票権を持ち、ここでの決議は法的拘束力を持たない。他の主要機関の理事国の選出はここで行う。
- 安全保障理事会
10カ国の非常任理事国と5カ国の常任理事国で構成され、ここでの決議は法的拘束力を持つ。国際連合の最高意思決定機関であり、非常任理事国の任期は2年で再選が禁止されている。
- 経済社会理事会
貿易・輸送などの国際的経済事情と、人種・性差別と言った各種の人権・社会問題を取り扱う。理事国は54カ国で常任は無く、任期は3年である。
- 事務局
事務を行う。
- 信託統治理事会
1994年10月にパラオが独立した事で機能を停止した。
- 国際司法裁判所
国家間の法律的紛争について裁判を執行したり、総会・安全保障理事会などの要請に応じて勧告的意見を与える。
安保理常任理事国
以下の5か国は全て核保有国であり、NPT(核拡散防止条約)によって承認されている。現在では日本・ドイツ・インド・ブラジルなどが新たな安保理常任理事国になるべく運動を展開しているが、未だに実現の目処は立っていない。
国名 | 政体 | 備考 |
---|---|---|
アメリカ合衆国 | 大統領制 連邦共和国 | 無し |
中華人民共和国 | 一党独裁制 社会主義共和国 | 1971年10月25日以前は中華民国 |
イギリス | 議院内閣制 立憲君主国 | 無し |
フランス | 半大統領制 共和国 | 無し |
ロシア連邦 | 半大統領制 連邦共和国 | 1991年12月25日以前はソビエト連邦 |
特権
非常任理事国を含む他の加盟国に無い特権として「拒否権」が付与されている。これは動議が発議された場合は1カ国でも拒否権を発動すれば否決される。この場合は文言を弱めて新たな動議を発議する事で何とか妥協を取り付ける事になるが、最近では決裂や動議が何の拘束力も無い文言に修正される事が多くなるなど、安保理常任理事国の間の対立が深刻化しつつある。ただし例外はあり、国際連合総会緊急会合の開催の是非についての採決に関しては拒否権を行使できない。
多大な欠陥を抱えたシステムではあるものの、そもそも国際連合設立に当たっては常任理事国が「そのぐらいの権利がなけりゃ俺は加わらない」とゴネたために致し方ない部分がある。
国際連盟のシステムはもう少し健全であり、紛争調停の際には当事国は議決に参加することが出来ないシステムになっていた。
しかしながらその結果アメリカなどの有力国が干渉を嫌って加盟を拒否し、また日本やドイツなど国際的に孤立した国が脱退して効力から抜け出してしまうことが相次いだため、結局世界大戦を防ぐことが出来なかった。
例え形骸化を招くとしても、常設の国際会議という枠組み自体が崩壊するよりはいくらかマシということで、国際連合は敢えて不健全な体制を維持している。
関係機関
以下は国際連合と提携を結んでいる国際組織であるが、下部組織では無い。従って国際連合未加盟国・地域が関連団体に加盟している事もある(例えば日本はユネスコに国際連合に加盟する前から参加している)。なお以下の組織などがある。
- 教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)
- 世界保健機関(WHO)
- 国際通貨基金(IMF)
- 国際連合食糧農業機関(FAO)
- 世界銀行(WB)
- 世界知的所有権機関(WIPO)
- 国際連合児童基金 (UNICEF、ユニセフ)
公用語
国際連合の公用語は英語・フランス語・中国語・ロシア語・アラビア語・スペイン語があるものの、基本的に英語とフランス語しか使われない。
非加盟国
世界中の国のうち、ほぼ国際的に承認を受けた国の大半は2000年代後半までに国際連合への加盟を完遂している。発足以前から独立主権国と見做されていた国は、2002年9月のスイス加盟以降はバチカンを除いて全て加盟した状態となり、それ以降に独立した国(例えば2006年6月のモンテネグロと2011年7月の南スーダンなど)は独立後すぐに国際連合に加盟するのが普通となっている。現在国際連合に加盟していない国は以下のような国である。なお国際連合の定義する「国際連合非加盟国」と、国際連合に加盟していない国は厳密には異なる(下記の「オブザーバー」欄を参照)。
該当国の自主判断で加盟を見合わせている国
前述の通り、この条件に当てはまる国はもはや世界中でもバチカンくらいしか存在しない。バチカンは中立性を保つために国際連合の加盟を見合わせているが、オブザーバーとして参加している。この地位にはバチカンを含めたいくつかの国家組織と、国際的な地域連合組織などが該当している。かつてはスイスも同様の理由で加盟を見合わせてオブザーバーの地位に留まっていたが、国民投票により加盟することとなった。
独立主権国であると同時に外交関係を外国に委託又は連合体制を組んでいる国
例えばニュージーランドと自由連合を組むクック諸島・ニウエがある。こうした国は連合相手の国に外交権・軍事権などを委託し、自らの虚弱な体制を補填する関係にあるが、一方で自由連合の場合は国家間の地位は対等と見做されている。
他にもアメリカの自由連合相手であるパラオ・ミクロネシア連邦などがあるが、これらは国際連合に加盟している。一方でクック諸島・ニウエの国際連合代表権はニュージーランドが付託されたまま掌握しており、国際連合からは独立主権国と見做されていない事が非加盟国のままの原因である。
とは言え国際連合自身が一方で両国の「条約締結権」つまり独自の外交権を認めるという矛盾した対応も採っており、2000年代以降両国とも独自の外交関係を築きつつある。なお国際連合原加盟国であるウクライナとベラルーシは、独立した外交権をソビエト連邦に握られ、その一地域としか見做されていなかったにもかかわらず、当時のソ連の強い主張で加盟国となった。認められたのはソ連の国際連合の脱退を防ぐためだったと言われている。独立したのはそれから遥かに後の1991年である。
事実上独立しているが、国際連合加盟国との深刻な係争により加盟出来ない国
殆どの「非加盟国」はここに該当する。以下はいくつかの国を個別に紹介する。
- パレスチナ
- 加盟国136ヶ国が国家承認。この中でも特別な地位にあり、いくつかの国家と外交関係を結び、国際連合からもオブザーバーの権利を貰っているが、加盟は未だ成されていない。原因はもちろん領土を巡って係争関係にあるイスラエルとの関係があるが、そのバックで国際連合安全保障理事会最大の実力国であるアメリカが首を縦に振らないことがパレスチナがこの地位に留まる最大の要因であろう。
- 台湾(中華民国)
- 加盟国19ヶ国が国家承認。但しかつては大半の国際連合加盟国が国家承認していた。言わずもがな安全保障理事会常任理事国の1つである中華人民共和国と地位を巡って係争状態にある。そもそも安全保障理事会常任理事国の一角は同国が占めていたが、1971年10月のアルバニア決議によって中華人民共和国と入れ替わった経緯を持つ。両国とも「一つの中国」を主張し、互いに互いを国として認めていない。然るに、両国共に外交関係を結ぶ国は存在すらせず(それを両国が認められない)、このため台湾が再び国際連合に加盟することを難しくさせている。近年になって中華人民共和国の政治・経済的規模が増し、中華民国と国交を結ぶ国は減少しつつあるが、それでも台湾が経済的に重要な国家であることに変わりはなく、この状態を保ったまま50年以上が経過している。
- コソボ
- 加盟国107ヶ国が国家承認。こちらは独立元のセルビアと、そのバックにつくやはり安全保障理事会常任理事国のロシアの反対により加盟は実現していない。独立の大元の経緯はユーゴスラビア紛争によるもので、この時最初のユーゴスラビア解体時からセルビアに対して対立的な立場を取っていたアメリカ・イギリス・フランスら旧西側諸国の空爆などもあり、国際連合コソボ暫定行政ミッションによりコソボは暫定的に統治された。この後平和裏にセルビアと統治問題が解決出来たら良かったのだが、交渉決裂の形で独立した。この経緯もあってロシアとセルビアは同国を承認する気は無く(現在もセルビアの一自治区と考えている)、オブザーバー加盟すら出来ていない。
- 北キプロス・トルコ共和国
- 加盟国1ヶ国(トルコ)が国家承認。キプロスの北部をトルコ軍が占領し、そのままトルコ系住人を独立させた。ギリシャ系が多く残ったキプロス(南)の方は国際連合加盟国としてトルコと北キプロス以外の国から国家承認を受けてヨーロッパ連合にも加盟しているが、対する北キプロスを承認するのはトルコのみである。
上記以外にもミクロネーションなどの「自称」国が世界中に数多存在するが、外交関係など存在しないような国も多く、まず国とは認識されていないことも多い。それらの国は当然国際連合に加盟していない。
国家条件を満たしていない国
外交権の委託による自由連合国家の他にも、国民を持たないとか領土を持たないとかで国としての基本的資格を喪失している国がある。その1つがマルタ騎士団で、この「国」には領土が存在しない。しかしながらかつては国としての体裁を保っていたために「主権団体」として外交関係がある国があり、国際連合もオブザーバーとして同騎士団を扱っている。
独立していない地域
こうした地域は当然ながら国際連合の加盟はおろか、独自の「国家活動」もままならない状態にある。その形態も様々であり、かつて独立主権国であったが、隣国などに併合されている場合は亡命政府などが活動しており、いくつかの国に超国家的に支援されている場合もある。例えばチベットはかつて独立主権国(ただしイギリスの保護国だった時代も長い)で、現在も亡命政府が活動している。クルディスタンやグリーンランドのように広範な自治権を与えられた地域もあるが、外交権は全く無いので国際連合を含めて国際組織には加入していない。
オブザーバー
オブザーバーの地位は正しくは「オブザーバーとして参加するために招待を受ける実体あるいは国際組織」であり、要は「国際連合が総会に招待しますよ」としている国・団体である。
同じオブザーバーでも国際連合の認める範囲内で行使出来る権限は異なる。最上位と見做される「国際連合非加盟国」は国際連合自身が独立主権国と認めるが正式加盟していない国で、安全保障理事会の決議があれば正式な加盟国となる権利を有する。「国際連合非加盟国」は現在バチカンとパレスチナのみである。もちろん汎用的な意味での非加盟国はこの場合の「国際連合非加盟国」とは見做されていない。
「国際連合非加盟国」以外はヨーロッパ連合などの地域連合や、イギリス連邦など旧植民地諸国により形成される緩やかな国家連合などの機関がオブザーバー団体と見做されている。
創作においての国際連合
SF作品においては国際連合の機能を強化した又は国際連合から発展した全世界統一政府である地球連邦・地球連合などとして描かれる場合が多い。また国際連合として存在している作品もあるが、やはり実在する組織故か数はあまり多くないようだ。
関連タグ
世界政府(ONEPIECE):ONE PIECE世界における世界各国が加盟している国際政府組織。