曖昧さ回避
- 『仮面ライダーTHEFIRST』と続編『仮面ライダーTHENEXT』に登場する組織。詳細はこちら→SHOCKER
- 『仮面ライダーシリーズ』に登場する組織の英名。詳細はこちら→ショッカー
- アメリカの『MARVEL』コミックに登場するキャラクターの名前。詳細はこちら→ショッカー(MARVEL)
- アメリカのパンクロックバンド。
概要
『シン・仮面ライダー』に登場する秘密結社で、正式名称は「Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling」。各単語のイニシャルから通称「SHOCKER」と呼ばれる。
組織名を訳すならば「計量的な知能の埋め込み改造により持続可能な幸福を目指す組織」(『真の安らぎはこの世になく』では、「計算機知識を組み込んだ再造形による持続可能な幸福組織」と訳されている)。
シンボルマークは「中心に巨大な1つ目が刻まれた鷲」。マークの下には"IF YOU WANT TO BE HAPPY,BE."という、ロシアの小説家にして思想家であるトルストイの名言を引用したスローガンらしき英文が添えられている。
人類の幸福の結論として深い絶望を抱える人間を支援することを目的としており、救いを求める人々に手を差し伸べ、「絶望を乗り越える力」を与えるという活動を行っている。
少なくともその創設経緯や基本理念そのものは人類社会の幸福を願った慈善組織であり、また組織名に使用されている単語の通り、所謂SDGsに近い発想も取り入れられている。
一見、原典のショッカーのような「世界征服を目論む悪の組織」とは全く別物のようだが……
※以下、作品中盤以降で明かされる要素等のネタバレを含みます。
実態
しかし、そうした幸福を目指す理念は大きく歪んでしまっている。
現在の実態は、選ばれた人間にオーグメンテーション(改造手術)を施し、オーグメントと呼ばれる改造人間を作り出す悪の秘密結社。本質的な理念自体は変わっていないが、目的のために手段を選ばない暴走により善意に基づいて悪行を重ねるという矛盾を抱えた組織となっている。
SHOCKER創設者が開発した人工知能・アイが「人類を幸福に導く」という使命に基づいて管理しており、現在のSHOCKERの活動方針はアイが導き出した「人類の目指すべき幸福とは、“最大多数の最大幸福”ではなく、“最も深い絶望を抱えた少数の人間を救済する”ことである」という結論に基づいて定められた。
この理念は言い換えるなら、絶望を抱えた少数の救済のために、大多数に不幸を与えてしまうという状況を実質的に容認していることを意味する。
SHOCKERに所属するオーグメントは「上級構成員」とも呼ばれる。
上級構成員となった者は、自らがオーグメントとして選ばれる要因となった「絶望」を乗り越るべく、各々の欲望に沿った「自分だけの幸福」を実現しようとする。
しかし、絶望により価値観を大きく歪めてしまっている者を選んでいる都合上、幸福のための手段は社会の倫理を逸脱している傾向が強く、特にそれぞれの理念に基づいて人類の削減・選別や統制を目指す者が多い。全人類の最大幸福ではなく、偏った目線への肩入れの結果、選ばれた者以外のことは考慮されていない。
その結果、SHOCKERから幸福実現のために与えられた力で、人間社会に害を成し、皮肉にも自らの「幸福」の為に「絶望」を撒き散らす存在と化している。
また、こうした歪みはオーグメントだけではなく、科学者も研究のために少し考えれば不幸な結果になると分かる筈の技術に平然と手を出している。
末端の構成員は必ずしも望んでそうなった者ではなく、実験台や消耗品として拉致・洗脳された被害者でもあることが示唆されている。
また、本郷猛の改造についても、SHOCKERを裏切ると決めた緑川博士が一方的に協力者として選出し、一通りの改造を終えて後戻りができない状況にしてから事情を説明し協力を求めた形である為、彼もまた自分達の科学技術そのものは素晴らしいと妄信している面が強い。
このように独善的な幸福追求というエゴを、他者や社会に押し付ける組織となってしまっているが、ケイは観測に徹して介入はしておらず、人工知能はこれを黙認している状態にある(人工知能については存在が説明されているのみであり、一連の凶行や戦いに対しどう考えているのかは一切不明である)。
組織形態
従来のショッカーのような、明確な首領格は存在しない(強いて言えば劇中ではそのポジションに緑川イチローがいるが、一幹部の域を出ない)。
創設者もすでに死亡しており、その使命を忠実に遂行する人工知能が管理はしているものの、具体的な指導はしておらず、あくまで構成員それぞれの考える個人の幸福追求に任せ、AIはただそれを見守っているのみ。
創設者亡き後は、今後のSHOCKERの活動方針を巡って考えの異なる2つの派閥に分断されており、本編の前日譚を描いた『真の安らぎはこの世になく』では派閥間での闘争が描かれている。
現在でも完全な統制体制とはなっておらず、形式的に上下関係や活動地域からグループを形成している者もいるが、基本的には上級構成員それぞれの小規模グループが横並びで存在する構図にある。
「各々の幸福の実現」という方針の都合上、組織の活動は上級構成員による個人プレーが主で、上級構成員同士が互いに干渉するという様子は殆ど見られない。
多くの謎に包まれた組織であるが故、どれほどの規模を誇るのかは不明。少なくとも活動拠点は日本だけに留まらず、世界中に支部が存在している。
構成員は明確に判明しているだけでも、上級構成員とその配下である下級構成員(戦闘員)、オーグメンテーションを行う科学陣が存在。
緑川ルリ子はその出自から多くの情報を有していたが、彼女も存在を知らないオーグメント(及びそれの改造を行った、オーグメンテーション技術者のいる別のグループ)もおり、構成員ですら全体像は把握していない。
機密保持の為、SHOCKERに属する者は全て死亡時に肉体が泡となって分解・消滅する処置が施されている。
オーグメント及び仮面ライダーの高い殺傷能力に加え、プラーナを消耗すると生体情報を維持できず死亡するデメリットの存在、更に下級戦闘員は洗脳状態にある等、生きたままの捕縛は極めて困難で、情報を掴むことは非常に難しい。
SHOCKERの存在や活動は日本政府に認知されており、政府は「SHOCKER打倒」を目的としたアンチSHOCKER同盟を設立しているが、こうした状況については割り切っているようで、捕縛の選択肢を捨てて討伐を前提とした動きがとられている。
活動
上級構成員達の目的は、殺人による幸福感の享受、疫病による人類淘汰、殺戮による世直しと快感、プラーナ技術を用いた洗脳による支配体制、全人類の解脱と、見事に噛み合ってない。
作中に登場した構成員は緑川イチローの指示に従っている者も多かったが、「裏切者の殺害」が自らの幸福追求と合致しているだけであったり、捕獲対象者と友人関係という事情があったりと、上下関係ではなくそれぞれの利害が一致していただけの側面が強い。
個人の寄り合いめいた組織形態ではあるが、上級構成員の大半は専用のシンボルが刻まれた拠点を持ち、戦闘員を指揮する等様々な権限を与えられている。
この為、創始者亡き後も少なくとも構成員の活動を支援できる充分な資金源はあることが窺えるが、それが組織内で暗躍する黒幕なのか、あるいは技術等を目当てにした外部からの出資なのか、詳細は不明。
また、オーグメントの中には自らの理念から「人間」を嫌い、怪人の姿から戻ることを嫌っている者もいるため、こうした一般社会を出歩けない構成員が不自由無く生活できている点でも、やはり構成員に対する様々な支援体制は充実していることがうかがえる。
個々の活動目的自体はバラバラであるが、所属していることによるメリットや、根底にあるオーグメント技術そのものへの心酔という点では、組織として繋がり価値観を共有する意義は根付いているために組織として成立している。
一方で、バラバラで活動していることによる弊害も少なくない。
本編中では絡みが無かったが、「その手で殺すこと」に価値を見出す者と、ウィルス等で「効率よく大量に殺すこと」へと暗躍する者では、人間を減らす結論は同じでも過程の面で相容れない。殺さずに支配する者とは更に対立することになる。
また、オーグメントも殺せるほどの強力な猛毒を運用できるほどの構成員も存在するが、その技術を組織全体で共有はしていない結果、万が一にその毒がオーグメントに向けられる事態が起きれば対抗技術は無いという弱点も生じている。
その他にも、本質的にエゴが強すぎる者の集まりである都合上、計画よりも感情が優先されたり、独自の美学のために一方的優位な状況をあえて手放したりと、結果的にそのエゴが敗因にもなってしまうケースもある。
極端な話、裏切り者である緑川ルリ子および仮面ライダーの抹殺に対して組織全体が総力をあげることができず、また彼女たちがショッカー構成員の拠点に容易に侵入し、ケイとの友好的な対話が可能なのも、それが当人たちの幸福追求なら問題はないとAIから判断されており、SHOCKERの活動の一環として見られている節があるためである。
もちろん、カマキリ・カメレオンオーグなど裏切り者抹殺を志願する者や、現場での交戦なども、オーグメントの幸福追求という観点で問題視されていないのだが。
このように良くも悪くも「ピラミッド型の一枚岩」とは程遠い組織であるが、結果としてオーグメント技術を保有する者さえ存在すればいくらでも新たな構成員及びその者の計画が動き続ける、実体が定まっていない組織故の壊滅の難しさも孕んでいる。
構成員
『シン・仮面ライダー』本編に登場した人物のみ記す。
創設者
SHOCKERを設立した人物。現在は既に故人。
人工知能
創設者の意志を継ぐ人工知能。
アイの作り出したアンドロイド。ケイの前身に当たる。
ジェイの発展型である人型アンドロイド。アイの「目」とも云うべき役目を持つ。
上級構成員(人外合成型オーグメント)
緑川博士の息子で、ルリ子の兄。他の上級構成員に指示を出すなど、特別な地位に就いている。
蜘蛛の能力を持つオーグメント。殺人に幸福感を抱くシリアルキラー。
蝙蝠の能力を持つオーグメント。疫病による人類淘汰を幸福とするマッドサイエンティスト。
蠍の能力を持つオーグメント。ハイテンションな性格で、オーグメントの身体にも有害な猛毒を操る。
蜂の能力を持つオーグメント。女王蜂の如く、人々を洗脳・支配下に置く。
科学者
プラーナ研究の第一人者で、イチローとルリ子の父。本郷猛の恩師でもある。
本郷の脱走を手伝った為、裏切り者としてクモオーグに殺害されてしまう。
SHOCKER科学陣
オーグメンテーション(改造手術)を担う科学者達。全員、白い手術着とマスクを着用している。
戦闘員
SHOCKERの戦闘員。全員が集中線のようなデザインのマスクを着用している。
裏切り者
緑川博士に師事していた青年。バッタの能力を持つオーグメントにされるが、緑川博士とルリ子の手引によりSHOCKERから脱走。「仮面ライダー」を名乗り、SHOCKERと敵対する。
ジャーナリストの青年。何らかの経緯を経て、2人目のバッタオーグに改造された。イチローの刺客として本郷と敵対するが、ルリ子の手により洗脳を解かれ、本郷と同じく「仮面ライダー」を名乗る。
緑川博士の娘で、イチローの妹。SHOCKERの打倒と兄の計画阻止の為、本郷と行動を共にする。
余談
- 上記の通り「組織一体となって行う世界征服」ではなく、「構成員が思う幸福に基づいた各々の理想の実現」を目的としている本作のSHOCKERだが、これにより「何故悪の組織は1人~数人のヒーロー相手に集団で戦わず、律儀に1人ずつしか怪人を差し向けないのか」という特撮番組にありがちな疑問が(本作なりの解釈だが)解消されている。
関連タグ
ショッカー:モデルとなった、仮面ライダーシリーズお馴染みの悪の組織。
SHOCKER:別世界の同名組織。改造人間になることが名誉なことであると考えているなど、似た点が見られる。
ミュージアム、グリード、ホロスコープス、タイムジャッカー:人の願いや欲に漬け込んで、怪人を作り出すライダーシリーズの敵組織。
クレヨンしんちゃん:『シン・仮面ライダー』公開を記念したコラボエピソード「しん・仮面ライダーだゾ」にも登場。
愛国者達:組織全体を超高性能AIが統括している、そのAIが組織創設者の意思とは異なる方向へ暴走を始めた、組織の配下に人体改造を施された戦闘員がいるなどの共通点がある。
ダブルクロス:矢野俊策氏によって製作され株式会社F.E.A.R.で発売されたTRPGシステム。
プレイヤーが敵対することになるテロ組織「ファルスハーツ」がよく似た組織形態を取っている。
努力の方向音痴、違う、そうじゃない:組織の当初の理念と、現在の有り様を一言で表した言葉。
結末(ネタバレ)
『シン・仮面ライダー』本編において、緑川イチローを含む6名の上級構成員が倒されているが、これらはSHOCKER構成員のほんの一部に過ぎない。
アイやケイ、まだ見ぬ上級構成員などが未だ健在しており、本郷の意志とマスクを引き継いだ一文字隼人=仮面ライダーが今後もSHOCKERと戦い続けるという形で物語は終了している。
(実現可能かはまだ不明だが)構想中の続編において、「政府の中に政治家等の役職で潜り込んだSHOCKERと対峙する一文字を描く」ことが語られていることから、SHOCKERは既に日本政府にまで魔手を伸ばしている可能性が示唆されている。