概要
『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する石製の仮面。
『ジョジョの奇妙な冒険』の原点というべき最重要アイテムの一つで、アステカ文明が生み出したと推測される。
第一部の物語冒頭にて、アステカの「血の儀式」によって使用されていたことが示唆されており、その後アステカの遺跡に埋もれていたものを考古学の調査に中米に赴いていた若き日のウィル・A・ツェペリが発掘し、これが長き歳月を経てジョースター夫妻によって骨董屋で掘り出され、旅行の手土産としてイギリスに渡ることとなった。
額部から鼻筋にかけてある縄状の装飾と、犬歯のはみ出した唇、涼しげな目つきが特徴。
その秘密
その正体はアステカ文明の「血の儀式」で使用されていた、人間を進化させるオーパーツである。
ジョナサン・ジョースターはディオ・ブランドーとのケンカの際、彼を殴った際に飛び散った血が壁に飾っておいた石仮面に付着し、それに反応して石仮面から骨針が飛び出したことを発見した。
ジョナサンは7年後、考古学上の見地からその正体を解き明かすためにこの仮面を研究し、詳細なレポートと共に大事に保管していた。
しかし、石仮面の骨針を見たのはディオもそうだった。ディオはジョナサンの研究書を盗み見て石仮面が人を殺し得る力を持つと知るや、これでジョナサンを『石仮面研究中に自分で被った際、骨針が作動して事故死』という形で殺す完全犯罪を画策。その実験として、貧民街の老いたゴロツキに石仮面を使用したが、なんとそのゴロツキは死ぬどころか凄まじい腕力と腕から血を吸う力を持つ怪物と化して襲い掛かって来た。しかもディオの血を吸って若返り始めたのだ。
怪物化したゴロツキは朝日を浴びると瞬く間に灰と化して消滅したため、ディオは九死に一生を得る。同時にディオは、石仮面の恐るべき秘密に気付くのであった。
この仮面の秘密、それは「人間の未知の才能を開花させ吸血鬼にする」というもの。
骨針が頭蓋骨を貫き、脳を強く刺激することで脳の未使用領域を活性化させ、人間を不死身の超生命体にしてしまうのである。
上記の「血の儀式」というのは当時のアステカの王達がその性質を利用して永遠の命を得るための行為であった。だが彼らは一夜にして全滅したという。
ちなみにPS2ゲーム版「ファントムブラッド」では、吸血鬼と化した長を操作して一族を虐殺するストーリーが存在する。
ジョースター家の乗っ取り計画がばれたディオは、この仮面をつけて吸血鬼となり、人間をやめ悪の権化となる。
その後もディオはこの仮面を利用したが、最終的にはスピードワゴンらの手によって粉々に砕かれた。
石仮面の使用者
詳細はこちらの吸血鬼一覧を参照。
また、カーズも究極生命体になった際に使用している。
その起源
ところが、第2部にて砕かれたはずの石仮面がSPW財団の調査によってメキシコの遺跡から大量に発見される。
これをシュトロハイム率いるナチス・ドイツ軍が柱の男(サンタナ)共々奪取し、それらを研究した結果、サンタナがこの石仮面によって生み出された吸血鬼を食料としたことも併せ、石仮面は柱の男たちが吸血鬼を生むために作った道具だと結論付けた。
その後に、石仮面は柱の男達の前身である「闇の一族」きっての天才、カーズが作り出したことが明かされた。
本来、石仮面はカーズが柱の男の弱点である太陽の光を克服し、完全な究極生命体になるために作った道具だったのである。
…だが、その目論見は一度失敗した。
なぜなら、石仮面のパワーだけでは自分たちの肉体を骨針で貫いて脳を刺激するには至らず、パワー不足だったのである(カーズ達の「流法(モード)」は不完全な石仮面で得たものである事がアニメ版で示唆されている)。
代わりに、吸血鬼と化した人間は普通の人間よりも遥かに高いパワーとカロリーを持つため、食料として見るならばそれは嬉しい誤算となった。
しかし「闇の一族」はカーズが究極生命体になれば、それに伴い多くの命を奪う必要性が生まれ、結果世界を滅ぼしかねないとカーズの思想を恐れ、彼を殺しにかかってきたのである。
カーズは自らの思想に共感しない一族を自らの生みの親も含めて返り討ちにして滅ぼし、石仮面の力を完成させるキーアイテムである「エイジャの赤石」を求め、唯一自身の思想に賛同したエシディシと共に当時まだ幼く事情を知らなかったワムウとサンタナを連れていずこへか旅立った…。
石仮面はやがてアステカ文明の王族達に受け継がれ、悠久の時を経てジョースター家のもとへと流れ着いた。
ジョースター家とディオの一世紀以上に渡る因縁、そして今なお多くの人々に愛され続ける人間讃歌の物語はこの石仮面から始まったのである…。
そういう意味では、カーズはジョジョの冒険の始まりを作った一人と言えるだろう。
なお残る脅威・影響
その後波紋からスタンドバトルにシフトしていったこともあり、石仮面自体は本編中で顧みられることもなくなっていく。
間接的な影響としては、復活したDIOにエンヤ婆がスタンドの矢を渡しまた配下を用いて更にスタンド使いの手下を増やそうとしたこと、エンヤ婆に発掘した矢を売る際、その使用法を教わったディアボロの邪悪な躍進、ジョルノ・ジョバァーナらDIOの息子たちの誕生、エンヤ婆より矢を託された虹村兄弟の父がDIOの死に伴って肉の芽の暴走で不死の怪物と化してしまったこと、虹村形兆および音石明、吉良吉廣らが持つ矢による杜王町でのスタンド使いを巡る災禍などがある。さらに、DIOの『天国』への意志を継ぐプッチ神父の暗躍があり、それは6部ストーンオーシャンへとつながっていく。石仮面から始まったジョースター家の因縁と戦いは時代と場所を越え、さらに世界が一巡した先にまで及ぶこととなった。
また、第5部黄金の風の外伝小説、『恥知らずのパープルヘイズ』では石仮面自体がまさかの再登場を果たした。劇中ではシュトロハイムが回収出来ずに残したとされるものがシラクサのドゥオーモに隠されており、麻薬チームの切り札と目されていた。最終的には密命を帯びていたカンノーロ・ムーロロが破壊したため使われることはなかったものの、今なお脅威は存在し続けているとも取れる。なお、石仮面の探索・破壊に際しジョルノ・ジョバァーナが自ら表だって活動しなかったのは父親が父親なためSPW財団および空条承太郎からの無用の警戒を避けるためであった。(実際第5部終了時点で存命が確認されている波紋使いは高齢のジョセフ・ジョースターのみであり、他に波紋の戦士がいたとしても、新たに『スタンド使いの吸血鬼』が生まれることはSPW財団にとって決して看過できないものと思われる。)
7部以降において
7部SBR以降、石仮面やそれを使用し吸血鬼になった人物は直接登場していない。しかしながら8部ジョジョリオン99話の『岩人間』の解説において、彼らが神聖視する『特別な場所』(悪魔の手のひら、杜王町の地面≒壁の目)と共通・通底することを示唆するイメージとして石仮面やスタンドの矢が描かれている。波紋や鉄球がスタンドのような『才能』に近づくための技術なら、石仮面もまた、矢や悪魔の手のひらによるスタンド発現に近い可能性を別の形で追い求めたものと言えるだろう。
商品化
今までに何度か商品化が行われており、2006年のPS2版「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」100名購入者抽選特典が初の商品化(他にも、1/10スケールで通常・ゴールドverマグネットプレゼントが行われた)。初期に商品化された石仮面ということもあって原作や近年発売されタイプと比べるとデザイン面の差異や色の違いが見受けられる。2012年のアニメ化に伴い、荒木先生監修の超像Artコレクションや、パズル、一番くじの景品などの市販品として多くの商品化が行われた(一応2011年にも商品化されたが被るタイプではなくあくまで花札ケースであった)。