概要
学名は「Prosopocoilus astacoides」。
和名でオオアカノコギリクワガタ、キバナガアカクワガタと呼ばれる。また、ブリーダーの間ではアスタコの略称で親しまれている。
オスの体長は50〜80mmで、最大で90mmに達する個体も確認されている。
ノコギリクワガタ属の中ではギラファノコギリクワガタ、コンフキウスノコギリクワガタに次ぎ大きくなる。
体色はオスメス共に全体が鮮やかな明るい赤褐色を帯び、一部の亜種は黄褐色を帯びる。
死ぬと黒ずんだ色合いになるため、標本では最大の特徴である鮮やかな体色は残せない。
オスの大顎は全体が弓形に緩く湾曲するように伸び、先端に細かい内歯が3〜4つ、中央に太い内歯が1つ生え、中型個体は太い内歯が基部付近に生える。小型個体は日本のノコギリクワガタの小型個体に類似した形状となる。大顎の形状は亜種により若干の差異が見られる。
頭部には前方に一対の突起が生える。
生息地では原生林の奥地ではなく、林縁部や畑地などの開けた場所を好み、太い樹木には集まらず、マメ科植物の細い枝に集まり、大型種との競合を避けるようにして生息している。そのため、他種のクワガタムシやカブトムシと闘う様子は確認されていない。但し、ノコギリクワガタ属の例に漏れず気性は荒い。
メスの形態から、日本のノコギリクワガタのグループとは比較的近縁とされている。
外国産クワガタムシの中では流通量が多く、各種オオヒラタクワガタやパリーフタマタクワガタと並び入手は容易である。
また、ブリードも容易であるため、外国産クワガタの入門種としても扱われている。
亜種
8亜種に分類される。
原名亜種(ssp.astacoides)
本種では一番小型の亜種となり、飼育レコードも49.1mmと最も小さくなる。
亜種フラテルナス(ssp.fraternus)
ミャンマー北部、中国(雲南省南部)、ラオス北部、ベトナム北部に分布している。
上記の原名亜種と形状に差異は無いが、原名亜種より大型で、飼育レコードは69.0mmとなる。
亜種カルベイ(ssp.karubei)
ベトナム中部から南部に分布している。
オスメス共に光沢が強く、上翅は黄褐色を帯びる。
大顎は根本で湾曲してから直線状に伸び、中央に太い内歯が1つ、先端に細かい内歯が3つ生える。
飼育レコードは70.2mmとなる。
亜種ドゥベルナルディ(ssp.dubernardi)
中国(雲南省北部から中部、四川省南部、貴州省西部)に分布している。
大顎の太い内歯は中央からやや先端寄りとなり、細かい内歯の列に混じるようにして生える。
飼育レコードは67.2mmとなる。
亜種ブランカルディ(ssp.blanchardi)
モンゴル、中国(四川省から福建省)、韓国(済州島)、台湾に分布している。
前胸に一対の黒い斑点があることから、フタテンアカノコギリクワガタとも呼ばれている。
体色は薄い黄褐色を帯びる。
済州島の個体群については絶滅危惧種Ⅱに指定されているが、許可が下りればオスに限り採取できる。また、他の個体群よりも黄褐色がより強く出る傾向がある。
台湾の個体群は大アゴの湾曲が弱く、大型個体では基部付近の内歯が中央よりやや前方に生えるなど、本亜種との差異が見られることから、分類が見直された場合に別亜種となる可能性がある。
飼育レコードは70.3mmとなる。
亜種レニ(ssp.reni)
中国(海南省)に分布している。
レニノコギリクワガタと呼ばれている。
大顎は全体が弓形に強く湾曲し、先端に細かい内歯が4つ、基部付近に太い内歯が前向きに1つ生える。
体色は全体が黒褐色となり、上翅にパリーフタマタクワガタのような赤褐色が入る個体もいる。
飼育レコードは68.7mmとなる。
亜種ミズヌマイ(ssp.mizunumai)
マレー半島に分布している。
形状は原名亜種と差異は無い。
最大の亜種であり、野外で体長90mmの個体が確認されている。
飼育レコードも本種最大で、82.4mmとなる。
亜種パリディペンニス(ssp.pallidipennis)
インドネシアのスマトラ島、ニアス島、ジャワ島に分布している。
亜種カルベイと似た形状となる。
最も流通している亜種であり、入手は容易である。
飼育レコードは72.7mmとなる。