インキュベーター[incubator]
辞書的、および一般的意味は「孵卵器」を参照。
『魔法少女まどか☆マギカ』
シリーズの重大なネタバレを含みます。
TBSで2月25日に放送された第八話「あたしって、ほんとバカ」で暁美ほむらが言った台詞にて発覚。
放送時googleトレンド2011年2/25付急上昇ワードランキングで2位を獲得するほど注目されていた。
- 『魔法少女かずみ☆マギカ』の登場人物に派生キャラの「ジュゥべえがいるが、こちらの本名としても同様。同作品20話のサブタイトルでもある。詳しくは魔法少女かずみ☆マギカの項目を参照。
- 『魔法少女たると☆マギカ』においては、国や時代が違うためか、キュゥべえではなくキューブという通称を用いている。
概要
彼らは地球外知性体であり、その生態や文化は我々とかけ離れている。
まずはじめに、彼らにとって感情は極一部の個体が稀にかかる精神疾患としか認識されていない。
次にそれと関係しているのかは不明だが、彼らは記憶(場合によっては精神や人格も含むかもしれない)を共有しておりそのために個の概念が薄い。
他の個体が死んでも『いくらでも変わりはいるけどもったいない』としか認識しない事からもそれは窺える。
そして物語の始まりは、彼らの高度な文明が我々の科学では不可能とされたエントロピーの減少を可能とする技術を発明したことだった。
目的
エントロピーの増大と、そこから来る避けられないはずの宇宙の熱力学的な死を回避する事。いわば宇宙規模のSDGsである。
彼らは魂のエネルギー(感情などの強い想い)を他のエネルギーに変換する技術を開発した。
だが、彼らはすでに感情を持っていなかったため、宇宙中から強い魂のエネルギーを有する生物を探していた。
そして白羽の矢が立ったのが地球に生息する人類、特に多感な第二次性徴前の少女だった。
彼女たちの魂を加工したソウルジェムに瘴気(絶望や恨みなどの負の想い)が貯まり、それが砕けてグリーフシードへと変質する時のエネルギーを彼らは回収して宇宙に補填する。
また、彼らはある程度瘴気を吸収したグリーフシードも回収している。
ただし、後述するように、キュゥべぇの目的を真面目に考察すると、いささか疑問点や矛盾が生じる。そのため、キュゥべぇが公言している目的以外にも、何か別の目的が存在する可能性があり、考察項目として注目を集め続けている。
補足
少女達を魔法少女にする事については、前述のとおりそもそも個として意識が希薄で無感情なことから「将来人類が宇宙進出し、我々の仲間入りをするための前払い」と考えており、人類の繁殖力から多少の犠牲は問題にすらならないと考えており、自分たちを憎悪する少女達の事は理解できないらしい。
「この宇宙の為に死んでくれる気になったなら、いつでも声を掛けてくれ」と鹿目まどかに対し言っていたように、彼らにとっては『契約する=宇宙の為に死ぬ気になった』という事のようだ。
最終回では魔女の生まれるシステムそのものが消失してしまったため、ソウルジェムによる負のエネルギーの回収ではなく、魔獣がおとすグリーフシードと同様の性質をもつ(性能面では劣る)ブラックボックスを回収して使用する方針に変換。
結果、人類とは利害関係が一致し、かなり関係が改善されている。
しかし、ほむらから聞いたかつての魔法少女の結末から円環の理を観測、制御し、魔法少女を魔女に変える事で膨大なエネルギーを回収することを計画し、ほむらのソウルジェムで実験を行った。
その結果、ほむら達魔法少女とまどから円環の理勢により実験は失敗、さらに円環の理の一部を奪ったほむらにより世界は再度改変され、感情エネルギーは危険すぎるとして手を引こうとするが、魔獣を狩るために働かされることになってしまう。
続編マギアレコードでは、マギウスがこの事実を知った後に、魔女化から逃れようとエンブリオ・イブを使ったドッペルシステムを構築していたが、宇宙の延命というキュゥべぇの目的には迎合しており、人間でありながら考え方もキュゥべぇとほぼ同様になっていた。
雑記
熱力学的な死について
たびたび彼らが口にするエントロピーとは、おそらく熱力学におけるエントロピーのことで、転じて熱力学第二法則(エントロピー増大の原理)のことであると考えられる。
平たくいえば「熱は温度の高い方から低い方に流れる」ことであり、最終的には温度が均一になってしまうというものである。
また、熱機関における最大熱効率は決して100%にはならないため、熱源から発生した熱のすべてを熱源に回収することも不可能である。
この法則の確立によって、エネルギー保存の法則を破らない第二種永久機関の実現も否定されている。
この法則を宇宙に当てはめたのが宇宙の熱的死であり、宇宙のエントロピーが最大となった状態のことである。宇宙に浮かぶ多くの天体は、いわばエネルギーが偏った状態であり、それらがすべて均一になってしまうということは、宇宙から一切の天体がなくなってしまうことを意味する、という仮説である。
彼らは魔法少女の魔力こそが熱力学の法則を覆し、エントロピーを減少させる方法だと考えていたようだ。
感情を脳内における情報の一種だと考えるなら、彼らは情報をエネルギーに変換する技術を発明したと言えるのかもしれない。
しかし、宇宙が熱的死、ないしその他の方法で死を迎えるとしても、それは遥か何百億~何百兆年も先の話と考えられており(近年の研究でも、ダークマターの分布から、宇宙の残り寿命はあと1400億年以上と算出されている)、また宇宙規模の話をしているにもかかわらず、使っているのが人間の感情エネルギーという、あまりに効率も規模も釣り合わないものであり、それゆえにキュゥべぇが本当に「宇宙を永続させるために人間を生贄にしている」のかどうかは議論の余地があり、いまだに考察の対象となっている。
なお、2010年には中央大学と東京大学が共同で情報をエネルギーに変換する実験を行い、成功している。
その他
動詞のincubateは後期ラテン語のincubātuに由来する。
つまりインキュバス[incubus]と同語源であり、当然ながら響きが似ている。
彼の特性から孵卵器としての意味合いが高いが、ダブルミーニングという捉え方もできなくもない。
ソウルジェムのグリーフシード化(1.)、魔法少女の勧誘(2.)、その裏の思惑(語源)。
どこを切り取っても彼はインキュベーターであった。
尚、クリーチャーのネーミングとしてはコナミの某名作ホラーゲームのラスボスが先であるが、その目的も「神(邪神)を孵化させる事」だったりする。
余談ながら、2月27日付で公開されたAdobe FLASH Player/AIR の開発版名称も「Incubator」であった。
よりにもよってこのタイミングなので考えることは皆同じだったとさ。
Adobe南無。
モチーフに関して
QBもとい、彼の種族であるモチーフに関しては、猫やウサギなどのかわいらしい小動物をイメージしているとされているが、一説では名前の由来から子宮がモチーフなのではないかという考察がまことしやかにささやかれている。(つまり背中の口は…もはや何も言うまい。)
また、名前の元ネタと思われるインキュバスは女性を孕ませて、特殊な能力を持った子供を産ませると言う伝承があり、アーサー王伝説に名高い魔法使いマーリンもその一人である…と魔法使い誕生に関わっている悪魔なので、非常に彼ららしいネーミングと言える。(一説ではインキュバスは自分で精液を作る事が出来ないため、別側面であるサキュバスの姿で男性から精液を奪うとも。人間を利用するところまでそっくりである。)
この事から、グリーフシードと言う単語にシード(種)が使われているのはその手のワードにも掛けていると言う事なのだろうか。
関連項目
プロジェクト東京ドールズ:感情をエネルギーとして活用する作品繋がり。ただしこちらでは、感情エネルギーをさらに「フィール」という物理学的な物質の形で取り出しており、キュゥべぇよりもさらに高度な技術が使用されている可能性がある。