概要
和名 | オオキベリアオゴミムシ |
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学名 | Chlaenius nigricans |
分類 | 鞘翅目 食肉亜目 オサムシ上科 オサムシ科 ゴモクムシ亜科 アオゴミムシ族 アオゴミムシ属 Epomis亜属 |
体長 | 19.5~22mm |
分布域 | 日本(北海道~九州、石垣島)、朝鮮半島、中国、台湾、東南アジア、インド、セイロン |
餌 | ニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエル、ツチガエル、ヌマガエル、トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ニホンアカガエル、ニホンヒキガエル、オオヒキガエル、ウシガエル、アフリカツメガエル |
オサムシ科アオゴミムシ属に分類される大型美麗ゴミムシ。
肉食性で、成虫は他の昆虫やミミズ、貝類等を捕食するが、本種は特に本来ゴミムシ類の天敵であるカエルを好んで捕食する。「自分とあまり大きさが違わない、又は自分より大きな脊椎動物をも主食とする昆虫」という点では非常に珍しい存在。
幼虫はカエル専食でカエルに外部寄生する形で体液を吸って食い殺してしまう。
河川敷や水田の開発や農薬散布、湿地の埋め立てなどの影響で捕食対象のカエルと共に全国的に減少している。元々はカエルに捕食されそうになった際に顎で反撃していたものが発展し、捕食を行うように進化したと考えられる(幼虫が一度カエルに呑み込まれながらも、カエルの体液を体内で吸う形で反撃し、弱って幼虫を吐き出したカエルをそのまま捕食した例すらあり、捕食への耐性が非常に強いことを示している)。
コキベリアオゴミムシやツヤキベリアオゴミムシなどの似た種がいるが、これらはカエルを襲わない。
ヨーロッパには同じ様な生態の近縁種、オウシュウオオキベリアオゴミムシが分布する。
オウシュウオオキベリアオゴミムシはイモリやサンショウウオなどの両生類も捕食するほか負傷していた場合の鳥類や齧歯類を捕食すると言われている、パラポネラほど凶暴な虫ではないのでそこまで大きくない哺乳類や爬虫類等には当たり前に捕食される、鳥類と齧歯類が捕食されるというのはよほど死にかけの状態であり万全だとゴミムシは逆に捕食対象である。
形態
体色は黒色だが、背面には金属光沢に似た構造色がある。
上翅は暗緑色で、光の当たり方によっては紫色に輝く。
キベリ(黄縁)の名の通り、上翅の外縁には黄色に縁取られる。
脚は黄褐色。
生態
平地~低山地の水田地帯や河川敷、池沼などの湿った草原や周辺の林内に生息する。
成虫は年一化性(成虫に羽化するシーズンが1年に1回だけの昆虫)だが、成虫のまま越冬をするため1年を通して見られる。
日中は石や植物の下に潜み、夜間に餌を求めて活動する。
灯火にもよく飛来する。
冬は朽木内や崖の土中で集団越冬する。
カエルを中心に様々な動物を捕食し、時にはトノサマガエルやヒキガエルなどの大型カエルをも襲うことがある(ヒキガエルは10cmを超える事がある程大きくなる。もっとも大型個体であるほど、機動力は当然高いので捕獲は困難となる。後述するように仔ガエルが上陸する活動が活発化することからも解るように主食はオタマジャクシから変態して間もないカエルの幼体である)。只、流石に外来種で悪食かつ巨大すぎるウシガエルの成体には敵わず、逆に捕食されてしまうこともあるらしい(勿論、ウシガエルでも幼体ならば捕食対象である。更にウシガエルは共喰いも日常茶飯事なほど他のカエルを盛んに捕食するため、オオキベリアオゴミムシの餌を奪ってしまう形でも彼等の脅威となる)。
成虫がカエルを襲う際は足の神経を顎で断ち切り、動けなくして生きたまま(カエルが生きているので腐敗しない)少しずつ食べる。大きなカエルを食べている際には他の個体が集まってきて複数で貪ることもしばしばある。
刺激を受けると悪臭を放つガスを放出する(ゴミムシ類に多い特徴)。
水中でも短時間活動する事ができ、オタマジャクシを捕食する事もある。滅多にはないが泳いでいる時に運悪くカメやザリガニに捕食される事もある。
カエルの活動や繁殖が活発化する時期に合わせて自らも繁殖するため、産卵から羽化までは夏に集中する(特にカエルの幼体が上陸する時期や場所で盛んになる)。
湿った泥(マッドセル)に包まれた卵は草の根元に産み付けられる。産卵された卵は数日で孵化する。
幼虫はカエルのみを捕食して成長し、カエルを食べないと死ぬ(飼育下で別の餌を与えても食べなかったり、成長しない、しかし共食いでは何故か成長する。カエルの血と肉の栄養で得た体であるためか?)。
幼虫は植物上で待ち伏せ、通りかかったカエルの主に喉元(後肢などの場合もある)に噛み付き、消化液を流し込んで少しずつ溶かしながら体液を啜る。
非常にグロテスクなので調べる際は自己責任でお願いします。
SNSではヤモリが幼虫を咥えていた画像がありヤモリは幼虫に食べられているとコメントしている者がいるがそもそもヤモリは爬虫類であり幼虫自体カエル以外の餌には興味はなくヤモリが目を瞑っている状態は獲物が大きい為飲み込むのに時間がかかっていると思われる。↓
https://x.com/okayu284/status/1431840668012269568?s=46
蛹化するまでに捕食するカエルは約3匹。
幼虫は派手な体色をしているが、これはカエルに気づかれやすくし、襲って来たカエルを返り討ちにする為だと考えられている。
時には牙と触角をカエルに向けて互い違いに動かし、餌昆虫と思わせてカエルを挑発し、わざと自らを襲わせる事もある。
蛹化は土中で行う。
羽化は8月頃。飼育下では孵化から羽化までは1ヶ月程かかることが確認されている。羽化の頃には親世代の成虫が産卵を終え切って死んでいるため、世代が交代する。
天敵
カエルに強いというだけのオサムシ科の生物なので天敵はもちろん存在するどころかむしろ多い。強力な武器となる顎も、あくまでカエルの弱い皮膚に対しての話なので、忽ち食べられてしまう。幼虫に至ってはカエル以外の生き物からしたら青虫同然である。
幼虫時代はカマキリや蜘蛛やキリギリスやニホントカゲやカナヘビに捕食され、成虫になってももちろん無敵というわけではなくカマキリや蜘蛛などは変わらず脅威であるし、小型中型の肉食・雑食哺乳類や鳥類達(ネズミやタヌキやイタチやカラス、ニワトリ(ニワトリは自然に放し飼いにされている場合)等、さらには特定外来生物であるアライグマなども)にはなす術なく捕食される、猫からは食べる目的ではなく玩具にされて殺される事もなくはない、ゴミムシに寄生するハリガネムシは内臓を食い荒らすため脅威の存在である。
飼育下ではなんとカエルに餌としてオオキベリアオゴミムシを(幼虫成虫両方)与える事は理論上は可能である。もちろんそのままでは(カエルがウシガエルの成体並のものでない限り)反撃を喰らう可能性が非常に高いのでジャイアントミルワームの様に牙(顎)は全てカットしておくように、それが面倒と思う人はゴミムシの頭を潰しておくのも手である。