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この記事そのものが映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の重大なネタバレである。また、(緩和されてはいるものの)映画の批判内容が含まれている為、閲覧要注意。














































概要編集

CV:井浦新


映画ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のラスボス。


劇中で正式に名前を呼ばれるシーンはないが、関連資料等によると正式名称は「ミルドラース」とのこと。元々が長編RPGの『ドラゴンクエストⅤ』を映画作品として再編した『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は、上映時間が約1時間40分に限られている。全体的にばっさりと端折る、エピソードごとカットなどして尺を節約はしているものの、主人公の因縁の相手ゲマと決着を付けるまでに1時間30分を要している。


では本来のラスボスであるミルドラースはというと、降臨を阻止されるような形で登場しない。しかし、降臨を阻止したと思ったその瞬間、ラスト10分で唐突に現れるのがこのキャラクターである。


外見は「黒い人型の情報集合で、白い仮面のような顔と手、光輪のようなものがついている」というもの。本来のミルドラースとは似ても似つかない姿で、ドラクエシリーズで言えば『ドラゴンクエストⅩ』に登場した時元神キュロノス、他IPでは色々な物に似ていると言われている


劇中での活躍編集

宿敵ゲマとの対決を制し、魔界の門を封印することのできる天空の剣(本作ではそういう設定である)を手に門を封じた主人公、勇者の前に伏線らしい伏線もなく突然現れる(一応、プサンやマーサの「今回は」という発現、「クエスト」という説明など、メタ発言と取れなくもないセリフ回しがあること、スーパーファミコン風のダイジェスト画面など、(このオチを知っていれば)伏線だったと取れなくもない要素が数か所にあるにはあるが、そこからこの展開を予想するのは困難であろう)。


現れるや否や、主人公に対して「この世界はフルダイブ型のVRゲームである」と告げ、様々な機能をハックして停止、プログラムを破壊しようとする。しかし、実はアンチウイルスプログラムだったスラりん(山寺宏一イケメンボイス)が変身した天空の剣同様ドラゴンクエストシリーズお馴染みの伝説の剣によって討ち滅ぼされハッピーエンドとなる。


唐突に出現した理由は「とあるハッカーがVRアトラクションを破壊するために送り込んだから」と説明されるものの、なぜ『ドラゴンクエストⅤ』のVRゲームをターゲットにしたかについては特に説明がない。スラりんがアンチウイルスプログラムだった理由なども不明のままである。


賛否両論点編集

1時間40分のうち、1時間30分はダイジェスト版『ドラゴンクエストⅤ』と言っても良い本作だが、ラスト10分で唐突に現れるラスボスについては説明不足な点が多く、本作の評価に関して賛否両論が大きく割れる原因となっている。特にラスト10分で繰り広げられた論戦(?)には主人公・ウイルス双方の言動に関して、不明点やツッコミどころが多く、視聴者をかなり置いてきぼりにしがちである。


黒幕であるハッカーがわざわざ『ドラゴンクエスト エクスペリエンス』(本作の舞台となるVRゲーム)を狙った動機・経緯が不明編集

  • ウイルスは「私を作った人間は、このくだらないバーチャル世界の住人達が嫌いで嫌いで仕方がない様です」「こんな物は、天才プログラマーの、ただの暇潰しです」と述べているが、ハッカーがなぜそう考えるようになったのか、暇つぶししても何故この作品を選んだのかという点については全く説明されていない。
  • 「単なる愉快犯」であるとしても、偶然その作品を選んだからこその展開などが描かれていない。結果だけ見ればウイルスはワクチンプログラムによってあっさり駆除されているが、それに対してハッカーが気づいたのか、どう思ったのかなどの描写もないためにウイルスというラスボスをねじ込む言い訳のようになってしまっている部分がある。
  • また、ウイルスにわざわざ「天才プログラマー」と呼ばせている一方で、実際のウイルスは前もって用意されていたワクチンプログラムであるスラりんによってあっさり倒されており本当に天才なのかどうかは不明瞭。ドラクエのアイテムやNPCになぞらえて用意されていた理由なども説明されない。

あやふやな説教・反論編集

  • 「そうそう。彼からの伝言があります。『大人になれ』だそうです」「さあ、現実に戻りなさい」という本作を象徴するウイルスのセリフがあるが、これについても指摘が挙がることが多い。
  • 主人公が現実逃避でVR空間に引きこもっているという設定であればこそ耳の痛い説教になりうるが、本作の主人公は社会人である(ワイシャツ・ネクタイ姿でVR施設を利用している)。仕事上がりに懐ゲーVR版をプレイしているおじさんを捕まえて「大人になれ」「現実を見ろ」という説教はなかなか苦しい。
    • 余暇に自分の金でVR施設を利用している見ず知らずの他人に対し、ウイルスを送り込むという不法行為を働いてまで説教を垂れているという状況についてもそちらの方がよほど幼稚かつ大人げない行為なのではないかというツッコミもある。

  • 説教に対する主人公の反論「ゲームは確かに作り物かもしれないが、もう一つの現実でもある」も論拠に乏しいという指摘がなされることがある。
    • 少年期~青年期で自室でゲームに興じる主人公の回想が入るが、そこから何を学んできたのか、どんな経験をしたのかという点については一切描写されていない。

『ドラゴンクエストⅤ』という作品と本作テーマの乖離編集

  • これらの会話を要約すると、本作のメインテーマは「ゲームはくだらない娯楽であるという価値観vsそれに反抗する主人公」ということになる。
  • 実際にテレビゲームという娯楽がそのように扱われてきたという事を考えると、このテーマ性自体には納得・共感できるという人も多い。しかし、1時間30分で描かれてきた『ドラゴンクエストⅤ』の物語との関連付けは薄く、VRでしたというオチ自体が横紙破りで無理やり付け加えられている感は否めない。
  • 極端な話をすれば、ラスト10分の内容が言いたいのであれば態々『ドラゴンクエストⅤ』を起用せずとも架空のゲームソフトで充分表現できてしまう点がしばしば指摘される。
    • 事前の宣伝では『ドラゴンクエストⅤ』を原作とした3DCGアニメ映画とされており、ドラクエを筋書きに組み込んだオリジナルストーリーであるとは明言されていなかった。故に「『ドラゴンクエストⅤ』の映画を期待して劇場に足を運んだら、別に『ドラゴンクエストⅤ』ひいてはドラゴンクエストシリーズである必要はないオチを見せられた…」という人が続出し、本作の評価を大きく下げてしまったことが推測される。
    • 「親子3代の物語を描く」「SFC世代のドラクエ好きへ」という宣伝も盛んに行っていたことを考えると、親子3代というテーマ、SFC世代のゲーマーに共感できる要素を絡めたうえで「もう一つの現実だった」という結論につながるべきところである。そうした描写が一切無いために、「懐かしいゲームのVR版を遊んでいたら変なやつが出てきて説教してきたので倒した」でしかない。

「VRゲーム」という設定で生じた陳腐化・矛盾点編集

  • 『ドラゴンクエストⅤ』における最大の決断とも言える結婚相手について、主人公はVR版に入る前に周回プレイ者特有の軽いノリで決める発言をする。このシーンのせいで主人公、フローラビアンカの恋愛模様や、相手の幸せを思って身を引こうとしていたフローラ・ビアンカ両名の行動がラスト10分で一気に茶番化している。
    • 多くの人がビアンカを推す理由となる幼年期編については「スキップモード」としてSFC画面風の映像で一気に飛ばされている。尺の都合上仕方がない部分ではあるが、『ドラゴンクエストⅤ』を知らない人にとってはビアンカを好きになった理由に共感しづらくなっており、優しくない部分である。

  • 「VR」としたことでかえって細かい描写の矛盾点・説明不足点が増えてしまっている。
    • 主人公のリクエストで「ロボットと戦う要素」が追加されているが、劇中で登場するのはメタルハンター(資料ではキラーマシンとも)である。元々『ドラゴンクエストⅤ』に居るモンスターのため、わざわざリクエストしないといけない理由が謎+シリーズ常連モンスターを自分でリクエストしておいて登場すると驚いているなど不明な点が多い。

総論編集

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』自体は大長編ストーリーを短い尺の中にまとめている点、ラストシーンまでのドラマ部分の描写・感情移入度など多くの評価点はあった。しかし、その一方で一番肝心なラスト10分、オチの部分で上記のように多くの人を振り落とすような形になっていたために、作品の賛否が大きく割れる結果となってしまった。


視聴者からのレビュー以外でも、『邦キチ!映子さん』に「コレやるなら『ドラゴンクエストⅢ』で良くないか!?」と評された回が存在。

実際、決まった主人公像や仲間像がなくオチがシリーズ内では比較的淡白な『ドラゴンクエストⅢ』や『ドラゴンクエストⅨ』であればマッチした可能性はあったかもしれないが、よりによって『ドラゴンクエストⅤ』はシリーズトップクラスにシナリオ部分が濃い作品である。描きたかったオチと作品の取り合わせの悪さが、ここまで評価を落とした一因と考えられる。


関連タグ編集

衝撃の結末 メタ発言

みんなのトラウマ

ドラゴンクエストエクスペリエンス


大人になれよ:この一件により生まれたスラング。類似例はこちらを参照。


ブラック・ノワール:同様のメタ発言をしたり、設定を持つラスボス繋がり。なお、コイツが出た番組スーパーファミコン版発売の約三ヶ月後に放送開始している。


ルパン三世THEFIRST:本作の監督の次回作。ラストバトルでは本作のラストと似た展開があるが現実を突きつける側と付けられる側が逆になっている。


ガルビルス:ドラゴンクエストモンスターズジョーカーシリーズにおいてウイルスに由来しているモンスター。惑星創造機関マザーをジャックする様はまさにコンピューターウイルスである。


ダイの大冒険:『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』と同じくドラゴンクエストシリーズを関したアニメだが、リメイク版では作中とは全く無関係な所で現実のハッカーによるガチで笑えない類似案件が発生してしまった。


ザボエラ:自己顕示欲を満たす為に他者を利用し、寄生するダイの大冒険で登場する敵。息子の発明を自分の発明と偽っていた。自称天才プログラマーとやらはドラクエという作品を利用して当時の映画の客を挑発した。

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