演:鈴木裕樹
概要
『ウルトラマンジード』第14話「シャドーの影」、第15話「戦いの子」に登場するシャドー星人。
極秘任務で地球を離れた同じくシャドー星人のゼナに代わってAIBのエージェントとして赴任してきた青年。なお、本来はシャドー星人お馴染みのデスマスクのような顔で、ゼナの相方である愛崎モアは当初ゼナと勘違いしていた。地球ではモアとパートナーを組んでニコニコ生命保険の社員を名乗り、地球での名前として影山来人を自称している。
地球のことは「迷惑をかけないように勉強してきた」…らしいが、地球人のことを「石の橋をたたいて渡る」とか「毒を盛られたら皿まで食べる」とか思っていたらしい(シャドー星にことわざ自体存在しない可能性もあるが)。
天然気味の好青年宇宙人の姿を見て、あの人を思い出した視聴者は多いはず。
ゼナと異なり表情筋を動かしてのコミュニケーションが可能で、会話の際もテレパシーではなくきちんと口を動かし、発声することで喋ることができる。一方で身体能力はゼナに匹敵するほど高く、クカラッチ星人に羽交い絞めにされたモアを助けに入りこれを一瞬でノックアウトしている。
以下、ネタバレにつき未見の方は注意
「栄光への道は、再び開かれた…!」
「あなたが戦わないのなら私が戦う…シャドー星の栄光を取り戻すために!!」
その正体はAIBに所属するシャドー星人ゼナが、かつて侵略者として活動していた頃に鍛え上げた最後の教え子の1人。
人間態の姿でも自由に表情を作る事が出来、テレパシーを介さずに相手と直接コミュニケーションを取ることができたのは、敵地に潜入して諜報活動や破壊工作を行うために表情を変える特殊な訓練を行ったためである(ゼナ曰く『偽りの笑顔』)。
ウルトラマンベリアルによって壊滅的な被害を受けた母星の栄光を取り戻すために、他のシャドー星人2体と共に活動しており、自身の計画を知って密かに調査を行っていたかつての恩師であるゼナに幾度か協力を呼び掛けるも、「戦いで命を落とした仲間の分も生きる」と考えていた彼に悉く拒否されたためにゼナを拘束し、何食わぬ顔でAIBへと侵入していた(思い通りに事が運ばずに業を煮やしてこのような行動に走ったかのような描写がなされていたが、偽の辞令まで用意していたあたり、実際にはこうなる事を見越していたとも考えられる)。
その後は愛崎モアの新しいパートナーと偽って彼女と行動を共にする一方、ゼナが封印した時空破壊神ゼガンのコントロール装置を盗み出すために密かに暗躍していた。AIBに侵入した理由は彼曰く、封印を解くプロテクトコードをゼナが白状しなかったのでモアから聞き出そうと思った、ということらしい。
コントロール装置を入手すると、異次元に封印されていたゼガンを地球へと転送し、途中で脱出したゼナの妨害を受けながらもゼガンと一体化、市街地で破壊活動を行うが、これを止めに入ったジードとゼロとの戦闘になる。
マグニフィセントにフュージョンライズしたジードと必殺技のぶつかり合いになるが、ゼロビヨンドに必殺技を押し返されてその効果をもろに受け、ゼガンもろとも自身が異次元空間に転送されてしまった。
その後モアと共に別地点へと転移させられ、ゼナの厳しい教育についてのモアとの会話(愚痴に近いが)や、シャドー星の言葉で“戦いの子”を意味する「ガブラ・カーノ」というゼガンのプロテクトコードの名称から、ゼナが自分を含むかつての教え子たちのことを忘れていなかったことを知るが、ゼガンのエネルギーが回復すると、駆けつけたゼナたちの「共に生きよう」という説得を受けたことで迷いながらも「もう遅い! そんな生き方俺には!!!」と言い放ち拒絶、疲弊した体のまま再びゼガンと一体化し、ジードやゼロとの戦闘になる。
両者を相手に(二人が倒すのでなく止めることを主目的としていたとはいえ)互角以上の戦いを見せるが、最後はゼガントビームをジードとゼロビヨンドのバリヤーによって跳ね返されて敗北が確定する。
しかしビームが前後両方から跳ね返されているにもかかわらず、まるで意を決したかのようにビームを放出し続け、最期は「カム・タタール・シャドー」(シャドー星の言葉で「シャドー、永久の安らぎを」という意味)と唱えつつ安らかな笑みを浮かべながらゼガン諸共爆発し、消滅。
そして直後にゼナの元に焼けただれたコントロール装置が落下したのだった。
5話にてゼナは「共に生きる」ことについて「そんなに簡単なことじゃない」と発言していたが、あまりにも悲しい形でその懸念は現実のものとなってしまった。しかし彼の死後、モアは自分の思いが届かなかったことに悲嘆にくれながらも、「共に生きる」ことを諦めたくない、そうリクに語っている。
余談
クルトを演じた鈴木裕樹氏はかつて獣拳戦隊ゲキレンジャーにて漢堂ジャンことゲキレッドを演じていた。
第14話・15話の内容は脚本を担当した根元歳三によるプロットが元になっており、根元はオリジナルでは侵略者であったシャドー星人が味方にいることが気になり、そのバックボーンを描きたくなったと述べている。
当初の設定ではクルトとゼガンは一体化しない予定だったが、ジードとゼガンが対峙する際にクルトが別の場所から操っているのではドラマが作りづらいため、一体化する形に改められた。また、クルトの顛末については、死なずに罪を償うという案やモアを庇って死ぬという案なども検討されていたが、根元はクルトに自身の意志を貫かせないと物語を終わらせることができないと感じ、完成作品での内容になった。
根元はゼガンを操ることはゼナと同等の戦士にしかできないと想定しており、仮にクルトがジードに勝ったとしても消耗して死から逃れられなかったであろうとしていた。
関連項目
マゼラン星人マヤ…おそらく元ネタ。同シリーズの別作品(奇しくも「ジード」放映時点で50周年)において、「『それまでの生き方を捨てて人類と共に生きる』ことを受け入れられず、自決に近い形で最期を遂げた宇宙人」繋がり(同作品でシャドー星人自体が初登場したという共通点もある)。