概要
和名 | ツブテナガエビ |
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学名 | Macrobrachium gracilirostre (Miers, 1875) |
分類 | 節足動物門汎甲殻亜門多甲殻上綱軟甲綱真軟甲亜綱ホンエビ上目十脚目抱卵亜目コエビ下目テナガエビ上科テナガエビ科 |
体長 | 10㎝。時に15㎝に達することがある |
分布 | 日本では屋久島以南の南西諸島。国外では西部太平洋の亜熱帯・熱帯地域(ニューカレドニアからジャワ島まで) |
名称
漢字表記は粒手長海老・粒草蝦。
種小名gracilirostreは、ラテン語で「gracilis」は「細い」、「rostratus」は「嘴の、口吻の」という意味で、本種の場合は額角の形状に由来するものと思われる。
英名は不詳。
漢名は條紋沼蝦、細額沼蝦、V字沼蝦など。
形態
体色は薄緑ないしは青磁色がかった茶褐色を基色にして、頭胸甲から腹節まで朱色と青緑色の縦条が走る。各付属肢の関節部も赤く歩脚は青みがかる。第3腹節背面横帯と、第4腹節側面から尾節に掛けての縦条は薄黄色に抜けて、特に後者は背面から見るとV字に見え、漢名の一つの由来となっている。この華美な体色をして、日本最美麗のテナガエビと称されることがある(但し、この色彩は老成した雄個体では不鮮明になり、腹節のV字斑を除くとコンジンテナガエビに似た雰囲気になる)。
額角は細く、先端は僅かに上方を向き、触角鱗先端には達しない。上縁歯数は8~11(頭胸甲上には5~6歯)、下縁歯数は2。
第2胸脚は左右相称形。老成した雄はかなり長くなるが、個体数が非常に少なく、通常見かける個体は、テナガエビ属としては「腕」が短い印象が強い。掌部断面は円筒形。全体に細かい鱗状突起を生じる。可動指は掌部の0.8倍程度、鉗は腕節の1.5倍程度、掌部は腕節の0.8倍程度。
生態
流れが強い砂礫底に多く、特に急勾配で渓流域から直結して海に流れ込むような流程の短い小河川で見かけることが多い。
夜行性で、昼間は岩陰や抽水植物の根元に潜み、薄暮時から夜間に掛けて特に活発になる。
食性は肉食性が強い雑食性で、小魚や水生昆虫、貝類やミミズ、同種を含めた甲殻類を好んで食べ、水草や藻類も食べる(同属他種と比べて草食性が多少強いという意見もある)。動物の死体にも群がるため、捕食者と同時に分解者としての側面もある。
雌は長径0.6㎜程の卵を1000~10000卵ほど抱えることが知られているが、繁殖について判明していることは少ない。
寿命も不明だが、3~5年程度だ思われる。
人間との関係
分布は広いものの、個体数はそれほど多くないものとされ、食用や釣りなどの積極的利用はされていない。
美ら海水族館や新江ノ島水族館などで飼育展示実績がある。マニアックな熱帯魚店で稀に売られることもある。低温には弱いが、渓流棲ということで過度な高温にも弱く、溶存酸素量の低下や硝酸塩の蓄積などにも敏感で、飼育はやや難しいとされている。
環境省レッドデータブック及び、鹿児島県・沖縄県レッドデータブックでは、準絶滅危惧種に指定されている。
日本は本種の分布北限で、確認地点は多いものの、個体数はいずれの場所でも少なく、こと実物の観察や採集という点に於いては、一段階上の絶滅危惧Ⅱ類の種よりも見つけにくい。