概要
日本のテレビ演出家・プロデューサー、作家。2000年代以降は自身がタレントとしてテレビに出演することが多い。
1949年12月27日生。本名は伊藤輝夫。ペンネームの「テリー」は本名の「テルオ」から。
実家は東京・築地場外市場にある玉子焼き店「丸武」で、2024年現在は兄の光夫(アニー伊藤)の後を継いで甥が経営を行っている。
演出(総合演出)を手掛けた代表的な番組に「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」など多数、また企画構成、プロデューサーとして手掛けた番組に「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」がある。
著書に『お笑い北朝鮮』など。
大学卒業後、寿司屋での修業などを経て1973年にIVSテレビ制作に入社。ADからスタートし、数々の衝撃的な企画を手がける。1985年にIVSに籍を置きながら自身の会社として「ロコモーション」を立ち上げ「浅草橋ヤング洋品店」などの人気番組を世に送り出した。
1980年代以降の日本のバラエティ番組に多大なる影響を及ぼした人物の一人であり、テリーの存在がなければ全く違う内容となっていた番組も多いだろう。
一方、その演出手法はよく言えば「斬新で豪快、破天荒」で、悪く言えば「人を人とも思わない、破滅的」なものであり、彼や影響を受けたディレクターに振り回されたタレントの中には反感を持つ者も少なくないとされる。芸に対して非常に熱心で厳しく、またかなり短気で、高田純次によれば部下にもすぐ蹴りを入れようとするので、「ケリー伊藤」と呼ばれていたという。
「Tプロデューサー」の愛称で知られる土屋敏男(日本テレビ)は彼の愛弟子。また後述する「お笑いウルトラクイズ」の総合演出を担当した財津功(日本テレビ)も、彼の薫陶を受けたスタッフの一人と言える。
ビートたけしとは、IVSテレビ制作に務めていたころからの交友があり、「テリー伊藤」を名乗るより前から「IVSの伊藤」と著書などで名前が挙がっている。たけしの看板番組の演出・プロデュースを担当したことでも有名。
演出手法について
先に述べたように斬新かつ「人を人とも思わない」演出が特徴の一つで、「体を張った笑い」を通り越して「命の危機に晒される企画」も少なくなかった。お蔵入り・中止になった企画もあるようで、それらは失敗したらタレントはもちろん、自身のテレビマンとしての人生が終わるような企画だったようである。
「お笑いウルトラクイズ」の狂気じみた企画の数々は、だいたいテリーのせいと言ってもよいほどで、出演者でありつつ番組制作にも参加していたガダルカナル・タカとダンカンすら、口を揃えて「テリーさんは死刑になるべきだ」と言う。
また、自身が主催していた番組に逮捕前のオウム真理教教祖の麻原彰晃をレギュラー出演させており、2018年に麻原が死刑になった際に「(当時は)こんな悪の集団だと思わなかった」と発言している。オウム自体が「親しみやすさ」を組織的な売りとしていたというのもあるが、「危険思想を持つカルト宗教」を「おもしろリーダーのヘンテコ集団」として扱い、世間に浸透するきっかけを作ったという点での罪は大きい。オウムほど致命的な例はないにしろ、著書のタイトルに「北朝鮮」や「日本共産党」をギャグとして使うなど、少なくとも2020年代の感覚からすれば非常識、不謹慎な感性の持ち主であったと言える。
1990年代、まだ若かった頃の江頭2:50を騙して『浅草橋ヤング洋品店』の出演に一回1万5000円の格安ギャラを強要して、彼を借金地獄に落とした張本人でもある(しかも同じく出演していた玉袋筋太郎からバイト禁止令が出されたおまけ付き)。
一方、酒は呑まず、常に「面白そう」を考え続けているとのことで、常軌を逸した発言も、彼が対象に真摯に向き合っているがゆえに出るものといえる。本人はもし「明日までに企画を50個作ってきてください」と言われたら「そんなに考えてもいいの!?」と喜んでしまうだろうと述懐している。
浅草キッドの水道橋博士は次のような言葉を紹介している(『藝人春秋』)。
「ダンカンちゃん、そうだよなぁ。たけしさんの本質は哀愁だよなぁ。ただ、オレはたけしさんの哀愁以外の部分を演出したいんだよ!」
「そりゃ、朝早い番組はキツいよ。ただ、テレビマンが眠そうにしてちゃいけないんだよ。だからオレは、誰よりもデカい声で挨拶するようにしてるんだよ。そうすりゃ、みんな気合が入るし、オレも目が覚めるだろ?」
なお、「お笑いウルトラクイズ」は、テリー自身はプロデューサーを担当しており、演出を担当したのは財津功であったことを念のため付け加えておく。
タレントとして
元々は製作側だが、特に2000年代以降はテリー本人が演者(タレント)としてテレビ番組に出演する機会が増えており、一部では出演した番組の製作に、自身の製作会社であるロコモーションが名前を連ねていることがある。
2008年には「テレビ番組に出演している好きなコメンテーター」で2位を獲得している。
自身が関与しない形で決められた進行があるためか、ある程度はその言動が抑えられているものの、コメンテーター・パネラーとしては暴言・放言ともとれるような、良くも悪くも鋭く、ときに極端な発言が少なからず見られ、放送作家とはまた異なる形で批判の対象に挙がることもある。
レギュラーで出演していた『ここが変だよ日本人』では、政治文化関連の話題でヒートアップし過ぎて一般枠の外国人(タレント)に対して大声で罵詈雑言を浴びせるなどしてお茶の間を騒然とさせた。
2020年度「話し方が嫌いなタレント・ランキング」2位という不名誉な順位を獲得している。
人物像、エピソード
巨人ファン。相撲も好きで、引退まで朝青龍のタニマチをしていた。JリーグはFC東京を応援している。
40代で更年期障害を発症し、長年治療を続けていることを公言している。
結婚はしているものの家庭状況はメチャクチャらしく、妻とは長期間別居していて20年以上の付き合いになる不倫相手がいるという。
芸能人の不倫騒動にコメントすることもあるが「した側」に寄り添う姿勢を見せることが多いためか、有吉弘行が2020年1月16日放送の『サンドリ』内にて伊藤を「弱ったやつ、(人を)踏みつけんの好きだな、コイツは」と非難している。
有吉は翌2月4日放送の『ロンドンハーツ』内でも「ただの怒ってるおじさんじゃないからね、テリーさんは」「ヨダレ垂らしてる野良犬じゃないのよ」と遠回しにディスっているとしか思えない発言をしている。
一方「された側」を擁護することもあり、また不倫したこと自体を擁護しているというよりは「その後の立ち回りについて理解を示す」「本人が公に分かる形で反省することを促している」というスタンスを見せており、必ずしも無条件で完全に擁護に回っているわけではない。
松尾スズキ曰く、「あれは赤塚不二夫の漫画の登場人物」とのこと。
学生運動に参加していた際、学生が機動隊に向かって投げた石が、振り返った拍子に目に当たってしまい、失明は免れたものの左目が重度の斜視(外斜視)になっていた。
周囲からは「そのままでも良い」、「トレードマークである」と言われ、本人も励まされたと語っていたが、「僕自身は良いんですけども相手が嫌なんじゃないかと思って。相手が僕を見て斜視だとわかっても、(僕に)斜視と言えない。そういうことを相手に感じさせるのが悪いと長年思ってきた」とのことで、土屋から「手術を番組の企画にしては」と勧められ、2007年に手術を行った。
前述の一件で伊藤と有吉間の関係がギクシャクするのではと関係者は怯えていたらしいが、2021年4月1日に有吉がフリーアナの夏目三久と結婚した報せには、夏目に向けて「夏目さんが有吉を選んだというのがすごい。彼女は最高にいい女ですよ」とコメントしている。