私は単数ではない。
概要
ドラゴンラージャとは、韓国の小説家イ・ヨンドの小説のシリーズ。
日本では岩崎書店より全12巻で出版された。翻訳は洪和美。イラストは金田榮路。
人間のほか、エルフやドワーフやオーク、フェアリー、ホビット、そしてドラゴンといった様々な種族が登場する。
一方で、物語オリジナルの神や宗教の概念も大きなテーマとなっており、必ずしも王道のファンタジーと言い難い部分もある。
本編はほぼ通して主人公の青年フチ・ネドバルの一人称で進められる。
壮大で緻密な世界観や、キャラクターたちのテンポよく哲学的な会話・言葉により、コアなファンも多い。
ストーリー
バイサス王国の西端、ヘルタント領地のロウソク職人候補である17歳のフチ・ネドバルは、警備兵隊長サンソン・パーシバルと読書家カール・ヘルタントと共に、首都バイサスインペルを目指し旅をすることになる。目的は、ドラゴンに捕らえられた人々の身代金を得ること。
旅の途中でエルフ、ドワーフ、女盗賊、スパイ、放浪王子、聖職者など様々な仲間に出会い、一行は大陸の危機、そして壮大な愛憎劇に巻き込まれてゆく―――。
ドラゴンラージャとは。神とは。人間とは。
フチ・ネドバルの「魔法の秋」が始まる。
章リスト
①太陽にむかって走る馬
②やかんと頭の比較
③五十人の子供らと大魔術師ペレール
④牡牛と魔法剣
⑤復讐の黒い手
⑥トップメイジ
⑦港の少女
⑧人間の武器
⑨星は見つめる者に光をくれる
⑩約束された休息
⑪前を見るがうしろを考える
⑫不吉な予言
⑬大魔術師の挽歌
⑭正解のない選択
⑮夕陽にむかって飛ぶドラゴン
主要キャラクター
フチ一行
ヘルタントのロウソク職人候補。ブラックドラゴンに母を殺され、父を囚われる。
軽妙で早熟、機転が効く青年。剣士。
武器:ロングソード(銀加工)
ヘルタントの警備兵隊長。オーガ扱いされるほど筋骨隆々。一本気な男。フチの友人。
武器:ロングボウ
ヘルタントの領主の弟。読書家で弓使い。温厚な知識人だが、毒舌家で食わせ者の一面も。
一人で旅するエルフの美女。おっとりした性格で、他の種族に疎い。フチとの関わりを通じて人間を知っていく。
武器:バトルアックス
短気で豪放なドワーフの男。
あまり高等な魔法は使えないが、一行の役に立つ長髪の青年魔術師。元はフチたちの敵。
ジャイファン人の男でバイサスへ潜入していた元スパイ。殺気を込めた眼光で相手を怯ませることができる。寡黙。
武器:トライデント
赤髪におかっぱ頭の女の盗賊(ナイトホーク)。裏社会で生業を立ててきた人物。
かつて首都を飛び出し旅人となった廃太子。現在の王ニルシオンの実の兄。
別れ道の神テペリのプリーストの男。陽気な性格。
コスモスの神エデルブロイのプリーストの女。魔法により人間と交流が取れるようになったトロール。
武器:なし
イルス公国の港町デルハーパで働く赤毛の少女。ドラゴンラージャとしての資質がある。
ヘルタント領地の人々
フチの幼馴染で相思相愛の少女。赤毛。
ヘルタントに訪れた、盲目で刺青の老魔術師。フチを助手にする。
ドラゴン
ドラゴンラージャという媒介の能力を持つ人間をつけることではじめて交流可能となる。
⚫️ブラックドラゴン。フチらの故郷ヘルタントの脅威。何者にも従わない。
⚪️ホワイトドラゴン。ラージャにより人間に繋がれている。アムルタット討伐戦に参加するが……。
🔵ブルードラゴン。バイサスの敵国ジャイファンとの戦線に投入中。
🔴クリムゾンドラゴン。もうすぐ目覚めるという。善悪の均衡を正す思想を持つ。
バイサス建国時代の英雄
ルトエリノ大王。ドラゴンロードとの戦いに勝利しバイサス王国を建てた英雄。
八つ星という配下の騎士を束ねた。
賢者ハンドレイク。ルトエリノの親友で大魔術師。
ゴールドドラゴン。ルトエリノに敗れる。
ドラゴンロードを助けた。後にバイサスに帰属。
フェアリークイーン。ハンドレイクの恋人。
ハルシュタイル家
バイサス王国の貴族。ドラゴンロードからドラゴンラージャの血統を300年間約束された。
ドラゴンラージャの血統が途絶えたため、ドラゴンラージャの素質を持った子供達を集めている
ホワイトドラゴンのカッセルプライムのラージャ。
デートリヒの姉。
ブルードラゴンのジゴレイドのラージャ。
ネクソン一派
バイサス王国にクーデタを起こそうとする。
武門の貴族ヒュリチェル家の子息。
ネクソンに従う大男の剣士。
ネクソンに従う青年の盗賊。
ネクソンに協力する女のバンパイア。
世界設定
国家
フチたちが住む草原のバイサス王国の隣に砂漠の国ジャイファンと森の国ヘゲモニア、そして海の国イルス公国がある。
バイサスとジャイファンの間で戦争中。イルスは中立国。
種族
人にドラゴン、オークやパンパイアなど様々な種族、そしてオーガやトロールなどのモンスターが作中では登場する。
しかし言語を理解し自立して大地に立つ種族は以下の7つに限定される。
①ヒューマン(人間)
調和と混沌どちらにも愛された存在。他者を人間化する。
②エルフ
調和の幼子。自らを他者に合わせる。
③ドワーフ
自らを貫く存在。
④ホビット
楽天的。
⑤オーク
執念深く復讐で他者との関わりを持つ。
次元を飛び越える存在。
⑦ドラゴン
自らの神を持たない、完全な単数の存在。
神
形而上の存在で姿を表す描写ははないが、多数の神が存在し信仰されている。
調和のユピネルと混沌のヘルカネスの二柱が中心であり、彼らは共存のために時間をつくったという。
また、神と信者にはそれぞれ挨拶の受け答えがあり、特に信じる神がいない者でも受け答えの際には相手に合わせる。
神に使えるプリーストは神の力であるディパインパワーを行使できる。
ユピネルとその下位神
- 調和のユピネル
- エルフと純潔のグランエルベール
「耳元に日差しを浴びながら、夕陽までしあわせな旅を」
「笑いながら旅立ったように、ほほえんで帰り、ついにえられる安らぎ(しあわせ)を」
- 鷲と栄光のアシャス
「栄光の青空にかがやくひとすじの光となって」
「翼にふりそそぐ陽光のごとき正義よ」
- バラと正義のオーレム
「正義の届くどこまでも咲くバラの花を」
「情熱の花びらの如く燃える心を」
- 大地と回想のシムニアン
- 鉄鎖と自由のニルリム
ヘルカネスとその下位神
- 混沌のヘルカネス
- 嵐とコスモスのエデルブロイ
「風にゆれるコスモスを」
「嵐を眠らせる花びらの栄光を」
- オークと復讐のファレンチャー
- 剣と破壊のレッティ
「刃に宿るもっとも巨大な名の栄光に寄り添い」
「創造が届かぬ美を称えん」
- ドワーフと火のカリス・ヌーメン
「カリス・ヌーメンのご加護を」
「鉄床と金づちが放つ火花の精髄をささげん」
- ホビットとわかれ道のテペリ
「必要なときにもたらされる小さな幸運を」
「心ひかれる道はまっすぐな道」
- カラスと疾病のゲデン
魔法
マナを用いる。神の力とは互いに拒否し合う。
その日の朝にメモライズという行為をした魔法しか使うことはできない。
ドラゴンラージャ
ドラゴンと人間を繋ぐ媒介となる人間。あくまで媒介であり「何もしない」。
メディアミックス
『コード:ドラゴンブラッド』:オープンワールドMMORPGオンラインゲーム。
この他、本国ではラジオドラマ化などもしている。
続編・スピンオフ
続編は「フューチャーウォーカー」。
また翻訳されていない外伝が多く存在する。