バル バル バル バル バル
これがッ! これがッ!これが『バオー』だッ
そいつにふれることは 死を意味するッ!
アームド・フェノメノンッ!
概要
荒木飛呂彦による「週刊少年ジャンプ」連載作品としては、『魔少年ビーティー』に続く2作目となる漫画。全2巻と短いながらも、良くまとめられたストーリーと、独特の奇妙な擬音、荒削りながらハイテンションで駆け抜けるような展開から、今なお根強い人気を誇る。
1989年にOVA化され、一部劇場で公開された。
作者・荒木飛呂彦は単行本1巻表紙カバーにて「カッコイイけど悲しいお話」とコメントしている。
なお、この作品は連載当時は中々読者人気を得られず、打ち切りの憂き目に遭っている。しかし物語が綺麗にまとめられており、最初から2巻完結で構想された短編なのではと誤解する声も多い。
あらすじ
秘密機関 “ドレス” が創り出した最強の生物兵器・バオー。橋沢育朗に寄生し、超能力少女・スミレと共にドレスから脱走したバオーに、暗殺者たちが次々と襲いかかる。
その時、育朗の中に眠る無敵の生命・バオーが覚醒する!!
登場人物
声優は特筆しない限りOVA版のもの。
橋沢育朗
寄生虫バオーに寄生されている17歳の少年。家族と車で旅行中に交通事故に遭い、意識不明のまま病院へ搬送されるが、実験体としてドレスに拉致され、脳にバオーを仕込まれてしまう。その後仮死状態で研究所に移送される途中、スミレの手により偶然目覚め、彼女と共に脱走。以降ドレスの刺客から追われることとなる。
真面目で物静かな性格の持ち主。バンジョーを弾く事ができるらしい。
バオー
霞の目博士によって生み出された生体兵器。見た目は3cm程度の線虫である。生物の脳に寄生し、体から分泌される体液によって宿主を瞬時に戦闘形態へと変態(メタモルフォーゼ)させる性質がある。寄生してから百数十日で成虫になり、宿主を苗床に卵を産み付け繁殖を繰り返す。
その危険な生態とは裏腹に、バオー自体は生物的にごく普通の思考を持ち、敵意に晒されない限りは何もしない。ドレスによって一方的に殺された親子を見たときは憐憫の情すら抱いていた。
スミレ
声 - 日高のり子
※画面右の少女。
孤児院で育ち、予知能力の素質をドレスに認められた9歳の少女。性格はませており、とても口が悪い。その能力は微弱で自動書記(作中ではこれを「心を滑らせる」と表現している)やコックリさんなどの手段を用いるが、稀にはっきりとした映像(ヴィジョン)を見る。物語前半に逃亡中の資金を稼ぐため、予知能力を使い競馬場で大穴を当てている。育朗と同じ列車で移送中に車両を脱走し、育朗と出会う。ドレスが創ったリスのような小動物「ノッツォ」に懐かれている(下記参照)。
サニー・ステフェン・ノッツォ
ドレスに作られた新生物。
子育て用の袋を備え、先端が膨らんだ尾で風をとらえて滑空。脚に収納されたトゲで餌となる虫を突き刺し、捕まえるといった能力を有する。
人懐っこい性格で顔を舐めてくるが、ゴキブリを好物としているためスミレには嫌がられる。鳴き声は「キキー」「イーダ」「プーダ」など。
六助じいさん
老婆と二人で山中の民家に住まう、猟師の老人。作中の数少ない、育朗の協力者。逃避行中に納屋へ転がり込んだ育朗たちと対面し、その紳士的な態度にほれ込み客人として手厚くもてなす。猟銃の名手。
一見、粗暴でよそ者嫌いの気難しい老人だが、客として認めた者に対しては最高のもてなしをする事を誓っている。これは代々、自身の先祖が行ってきた事らしい。
妻である老婆が漬けた、白菜のつけ物が好物。曰く「お前のつけ物は、世界で一番うまいぞ」。
ドルドに操られ、殺意の「におい」が無い状態でバオーに変身前の育朗を殺そうとする。しかしその後に正気に戻ってドルドに撃たれるも、猟銃でアロマ・バットを撃ち落とす。
息子がいたが、数年前に都会に出ていってしまい、音信不通になっている。育朗に息子の面影を見たのも、客として招いた理由の一つ。
育朗がバオーに変身した様子を見て、「理由はよくわからんが、彼は得体のしれん病気にさせられたんじゃ」「そんな彼に、だれも『出て行け』などと言えない」と、事情を知らないなりに育朗とスミレの事をおもんぱかっていた。
OVAには登場していない。
おばあさん
六助じいさんの妻である老婆。六助じいさんとともに、山中の家で生活している。
六助じいさんには日頃から些細な事で怒鳴られているが、自作のつけ物をほめられているなど、仲の良い夫婦。
息子たちが都会に出て行ってしまい音信不通な事から、都会の若者たちに対してあまり信用できずにいる。そのため、六助じいさんが育朗とスミレを泊める事には反対していた。
育朗がバオーに変身する様を見て、六助じいさんもドルドに撃たれた事から、育朗に出て行けと迫る。しかし六助じいさんにたしなめられ、育朗からも「ぜんぜん気にしてません。そんなに困らないで」と言われ、着替えとおむすびと、少ないへそくりを手渡して謝罪、育朗を送り出す。
六助じいさんと同じく、OVAには登場していない。
育朗の両親
回想シーンに登場。
育朗が両親とドライブ中、走り屋の二台の車により、巻き込まれる形で自動車事故を起こしてしまった。育朗と両親は三人そろって重傷を負い、近くの病院に運び込まれたが、その担当医師はドレスの一員だった。霞の目は連絡を受けて病院に赴き、「若く、遺族のいない被験者」を求めていた事から育朗のみを助け、両親は薬物により殺害してしまった。
ちなみに両親は事故の前、母親は車内で「かあさん、育朗のバンジョーが聞きたくなったわ、ひいて」と頼み、運転中の父親から「かあさん、わたしも運転しながらひいてもいいかな?」と聞かれ「人ひくからだめよ」と答えていた。
OVAには登場したが、車内で上記のやりとりはしていない。
綾
育朗が六助じいさんと別れた後、市街地で出会った高校生の少女。
クラスメイトの白沢とデートしている最中、育朗に出会い、彼に見とれる。
地図を求め書店を探していた育朗に、その場所を教えた。その直後に、踏切で線路に足を取られるが、育朗により助けられ書店へと案内。その最中に、ドルドからの狙撃に巻き込まれそうになるが、バオーの力を我が物としつつあった育朗により再度助けられる。
しかしその直後、周囲の人々を巻き込むまいと、育朗は別れも告げずに彼女の前から去って行った。
OVAには登場していない。
白沢
綾とデートしていた高校生男子。綾に下心丸出しで接しており、手を握って恋人同士になろうとたくらんでいた。書店を探す育朗を軽く見て笑いものにしていたが、その直後に踏切で足を取られた綾に対し、助けようともせずにそのまま逃走してしまった。
OVAには登場していない。
霞の目博士
声 - 永井一郎
寺の住職を表の顔にしている秘密機関ドレスの研究者で、バオーの生みの親。「なぜならッ!」が口癖のマッドサイエンティスト。名前の由来は作者ゆかりの地仙台市の霞目地区からだろう。
遺伝子操作を施した様々な動物達を、過酷な環境を作り出す実験室で飼育するという実験を「人工進化」と称して行い、それを繰り返してバオーをはじめとする新生物を多数生み出した。基本的な考え方としてはラマルク主義における要不要論に近い。ドレスにおいてはそこまで高い地位の人物ではなく、上からの命令には逆らえない。
ドレス上層部の三人の男たち
ドレスの、かなり上の地位にいるらしい三人の男たち。具体的に何者かは不明。「笑い」「泣き」「怒り」の三種の面でそれぞれの顔を隠し、霞の目に高圧的な態度で接していた。
霞の目にとってもこの男たちの素性は謎らしいが、合衆国政府と関係があるらしい。
霞の目から「バオー」に関する事を、バオー犬を用いた実験を以て説明を受ける。
女工作員
声 - 井上瑤
ドレスの工作員。
育朗とスミレを逃がした失敗の責任を問われ処刑され、翌朝顔を潰された死体として発見される。
OVAでは霞の目博士の側近ソフィーヌとしてラストまで登場する。
ドルド中佐
声 - 池田秀一
ドレス特殊工作部門所属。暗殺術と狙撃の達人で体の大半を機械化したサイボーグ。
人間に催眠術をかける洗脳装置や芳香蝙蝠(アロマバット)を操る超音波発生装置、長距離の飛行も可能なハングライダー、体に直接接続する特殊なライフルなど多種多様な兵器を備える。
詳細は、当該記事を参照。
包帯の男
ドレスの戦闘員でマーチンの調教師。
かつて訓練中マーチンに「じゃれつかれ」て重傷を負い、顔中に包帯を巻いている(しかし、そんな目に遭ってもマーチンの事を恨むどころか、「カワイイやつよ」と言っていた)。
以前は軍で、軍用の殺人犬や殺人猿の調教を行っていたらしい。振り回したムチの風切り音でマーチンに指令を下し、バオーと戦わせた。
戦いにおいては「訓練」が必要と説き、バオーの戦い方も「隙だらけだ、お前の戦いは幼稚だ。パワーだけだ」と言い放つ。
自身とマーチンを偶然に目撃した母子を、秘密保持のためにマーチンに殺害させた。
OVAには登場しない。
第22の男
声 - 沢木郁也
霞の目の指令を受け、逃亡した育朗を抹殺しようとした男。
スミレの予知により、育朗を襲う直前に見破られたが、ナイフで育朗を突き刺す事には成功。しかし何事もなくバイクでその場から逃げられたため、ガソリンスタンドで待ち伏せし、暗殺を実行した。
育朗の喉を切り裂きガソリンで焼却しようとしたが、バオーが第一段階の武装現象を発動させたため、右手首や顔を溶かされて逆に殺害された。
OVAにも登場するが、ドルドの部下に設定を変更されている。
ドレス抹殺部隊
ドレスの工作員たち。7名で追跡し、逃亡した育朗とスミレを廃墟にて追い詰め、殺害しようとした。拳銃と火炎放射器で武装していたが、武装現象を発現させたバオーの敵ではなく、リスキニハーデンセイバー・フェノメノンにメルティッデン・パルム・フェノメノン、そして石を砕き作った小石での指弾で全員が殺害された。
リーダー格の男は、「魔少年ビーティー」に登場した警備員・西戸に似ている。タバコ店の店主の老婆に育朗の事を訪ねた時、写真を見ようともしない老婆の顔をカウンターに叩き付け、目撃情報を引き出した。
最後にスミレを人質にしてバオーから逃げようとするも、握っていた拳銃ごと、手をバオーのバオー・メルテッディン・パルム・フェノメノンにより溶かされ一体化された後、顔も溶かされて止めを刺された。
ケイン&ブラッディ
ドレス本部前にて、育朗=バオーを迎え撃った二人の男。
育朗に対して手榴弾を投げつけたが、即座にバオーに変身した育朗が、初めて放ったブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノンの直撃を受け、瞬殺された。
わざわざ名乗って登場しすぐにやられてしまったが、命令違反したドルドをウォーケンの元へと連れていくシーンで既に登場していた。
ドルドはサイボーグ化されていたにもかかわらず、この二人から逃れられず、関節をひねられ悲鳴を上げていた。そのため、「バオーが強すぎただけで、本来はかなりのやり手だった」とも考えられる。
ウォーケン
声 - 屋良有作
架空のアメリカインディアンの部族・スクークム族の末裔で、誇り高き戦士。霞の目曰く「地上最強の超能力者」であり、物語における最強最後の敵としてバオーの前に立ちはだかる。
戦いこそが全てであると語り、殺戮を生きがいとする男。敵であるバオーを自身と対等の力を持つ戦士と認め、己の胸に死化粧(指で傷を刻み付ける)を施し、命を賭した凄絶な戦いを繰り広げる。
バオーに対しては戦士として、戦う相手として敬意を有し、決して恨みも怒りも有していない。その有する力も、自身が持つ超能力も「死ぬ事より恐ろしいもの」と語り、「自分も、お前(バオー)も、化物だ」と言い放つ。
詳細は、当該項目を参照。
ドレス
本作に登場する秘密組織。
その起源は、旧日本軍の化学細菌戦部隊に由来。
戦後にその部隊の研究を引き継いだのが、アメリカ軍が設立した秘密研究機関。同機関は、ベトナム戦争時の特殊兵器開発のために設立されたもの。
その存在は社会的および一般市民の間には知られておらず、徹底した情報管理がなされている。
強大な権力と資金、広い人脈を有している。交通事故で入院した育朗とその両親の存在を知らせたドレスの人間も、一般の病院に勤める医師だった。
傭兵や暗殺者、直属の特殊工作部門の工作員などを擁しており、独自の戦力をも有している。また「ハエ一匹映し出せる」ほどの精度を持つスパイ衛星も所有し、情報収集に用いている。
人工進化によって作り出した生物兵器や、超能力者などを見出し、それらを用いて世界での軍事的・医学的、そして経済的にも優位に立てるように活動している。
霞の目博士が住職を務める寺の地下、および三陸海岸に存在する研究所が、劇中には登場した。
物語の冒頭部に登場した黒い列車は、組織の専用運搬列車。時刻表には載っておらず、国鉄の線路を自由に走れる特権を有している。
霞の目博士専用の研究所
東北の北上山地に存在する、お寺にカモフラージュされている。霞の目は、表向きはそこの住職として勤めている。
本殿に地下施設への隠し入り口が存在。仏像の両目に眼紋を判別する装置が内蔵されており、本人である事を確認した後、床板が開き地下へと赴く事が出来る。
地下には、バオー犬を虎と戦わせた実験室が存在し、厚さ48ミリの硬質ガラスで仕切られ内部を観察することが可能。
育朗もこの研究所でバオーに寄生させられ、仮死状態で三陸海岸研究所へと運搬される最中だった。
ドレス三陸海岸研究所
ドレスの表向きの顔。一般人にはただの民間製薬会社直属の医学・生物研究施設と思われている。
この場所に設置された理由は、人里から離れており、海岸で輸送に便利な事に加え、日本で一番古い地質地帯で研究資料がある他に、周囲に(実験用の)動植物が豊富に生息しているためである。
周辺には監視カメラなどの防犯装置が多く設置され、一般人が近づくと有無を言わさずに退散させられる。その際にカメラなどを所有していたら、一方的にフィルムを抜き取られ、壊されてしまう(弁償代は出してくれるが)。
地下七階には、超能力者専用隔離施設が存在し、ドルドに拉致されたスミレはそこに運び込まれた。地下四階から下へと向かうには、許可証が必要な専用エレベーターに乗らねばならない。
また、自爆装置も設置。更なる地下には岩盤の下に鍾乳洞が存在する。
ドレスの新生物
霞の目が、人工的に過酷な環境を作り出し、生物を「人工進化」させる実験を経て誕生した生物。過酷な環境にも適応した能力を有している。いずれも生物兵器として開発された。
寄生虫バオーやノッツォもまた、新生物の一種である。
マーチン
※画面右。
遺伝子操作と訓練によって高い知能と残忍さ、そして殺人術を身に着けた巨大なマンドリル。
体内や毛の中に様々な武器を仕込んでいる(劇中で使用したのは、胃の中にワイヤー付きの銛、無臭毒ガスの噴射装置、体毛内に金属製の杭)。鳴き声は「ドッギャア」。
その跳躍力はバオーのそれを上回り、取り出した金属製の杭でリスキニハーデンセイバーを叩き折った。さらに前肢の一撃でバオーを地面に叩き付け、もぎ取った金属パイプを投げつけ突き刺してしまった。
バオーが投げつけた大きなコンクリ塊を、片手で止めるほどの怪力も持つ。
包帯の男のムチの風切り音で命令を受けて動くが、逆に包帯の男の命令がないと行動できない。スミレがムチの先端を握り、命令を一瞬遅らせた事が切っ掛けで、バオーの抜き手を食らった。そのまま体内の機械装置を抉り出され、さらにリスキニハーデンセイバーを頭部にうけ、縦に両断されて倒された。
OVAには登場しない。
バオー犬
霞の目がバオーに関し、上層部の人間に説明する際に登場した。ごく普通の日本犬。オス。
実験のため、バオーを寄生させて一か月が経過している。
実験室内部で虎と戦わされ、一撃で顔半分を爪で削ぎ取られた。しかしその直後に変身し、「バルバルバル」の声とともに武装現象を発動。虎を一撃で殺したのみならず、この様子を観察していた霞の目、およびドレス上層部の人間たちにも襲い掛かって来た。
実験室のレーザー光線を体中に受けても死なず、脳を破壊される事で脳内からバオーの本体が飛び出し、それを焼却することでようやくおさまった。
「水中で肺機能が停止したら仮死状態になる」「宿主が傷ついたら武装現象を発動する(それまでは何事もない)」「武装現象を発現させると発揮する、凄まじい戦闘能力」といった、バオーの数々の特徴を見せつけた。
(ちなみにこの時に戦った虎は、なぜか「ギャース」と吠えていた)。
芳香蝙蝠(アロマ・バット)
ドルドが使役した蝙蝠。霞の目により、特殊な芳香を口から放つ能力を有す。ドルドの義手から放つ超音波で操られる。
芳香により、バオーの触覚を麻痺させる事に成功するが、六助じいさんにより撃ち落される。
新生物として貴重なものだったらしく、スミレを連れ帰り逃げ帰ったドルドに対し、霞の目は「私の作り出したアロマ・バットを、無駄死にさせたのか」と非難していた。
ドルドはこのアロマ・バット以外にも、小型カメラを装着した蝙蝠を使役。六助じいさんの家の内部に潜入させ、育朗とスミレを監視していた。こちらはノッツォにより倒される。
液グモ
バオーがドレス三陸海岸研究所に殴り込みをかけた際、ある部屋にバオーを閉じ込めた霞の目が、ネペンテス液とともに差し向けた人工生物。
巨大なクモで、人間よりも大きい。口からは尖った長い舌を伸ばしており、動物の体液を吸うものとバオー=育朗は予測した。
元は熱帯の食虫植物「ネペンテス」ことウツボカズラの消化液の中に生息しているクモ。ネペンテスの消化液を分解する酵素を分泌しているため、消化されない。
霞の目はネペンテスの消化液で部屋を満たし、複数の液グモを解き放ち戦わせる事で、バオーを熔解しようと企んだ。
しかしバオーは液グモ一体と戦い、己の分泌液で生かしたままその内部に潜む。そして排液されて部屋のハッチが開くまで待ち、切り抜ける事に成功する。
バオー武装現象(アームド・フェノメノン)
バオーは宿主の脳に寄生している。
宿主が生命の危機に陥ると精神を乗っ取り、体液を全身に流すことで宿主の肉体を強靭なものに変化させる(いわゆる変身である)。これをバオー武装現象と呼ぶ。
変身中は「バルバルバルバルバル」「ウォーーーム」という咆哮しか発せず、人間の言葉はしゃべらない(そのため、オールスターバトルでは彼の思ったことや、やったことをセリフの代わりにナレーションが教えてくれる)。
バオー自体が生まれたばかりの種族なのでそのポテンシャルは未知の領域が多く、霞の目博士ですらその能力を把握し切れていない。
高い治癒能力と代謝能力の活性化や体液の変質などにより、宿主の体の一部が切断されても傷口を重ねるだけで元通りに接合して治すことができる。
物語中盤まではバオーが武装現象を起こすと意識はバオーのものとなり、育朗の意識は眠っていた(ちなみに、なぜか変身した時には、左目の眼窩部分に皮膚が伸びて、橋のようになる)。
物語が進むにつれて育朗はバオーと意識を共有し、自分の意識と意思を保ったまま武装現象を発動させられるようになり、さらには瀕死の生物にバオーの血を飲ませることでその命を救うことができるようになる。
『オールスターバトル』では橋沢育朗のバトルスタイルとなっている。
バオーは、非戦闘時には宿主に対し影響は与えないが、宿主の脳内でアドレナリンが大量分泌されるのを受ける事で、宿主の「生命の危機」を感じ取り、武装現象を発現させる。
ただし、宿主そのものが危機に晒されていないのに、アドレナリンが大量分泌した場合(例えば、目前で他者が線路にはまり、電車がすぐ近くまで迫って来るのを目の当たりにするなど)、状況によっては変身せずにバオーの能力を一部発揮する事が可能である。これは、宿主自身とバオーとが成長し、その力を増大させた事も関連があるようだ。
以下は育朗が変身中に発現した現象、いわば必殺技である。
バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン
体外に排出されると強力な酸へと変わる体液を主に掌から放出し、人体や金属などを溶解することができる。
作中の解説では強力な酸によって自らの体組織も溶解しているが、酸を出すと同時に特殊なカスを作り出しており、このカスが新たな皮膚となって溶解部分を再生するために事実上ダメージは無いとされている。
育朗の力が増大してきた結果、自身の意思で武装現象への肉体変化なしに発動させることに成功している。
バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン
前腕側部の皮膚組織を突出・硬質・鋭利化して刃物状にする。「セイバー オフ!」の掛け声で切り離して飛ばすことも可能。OVAでは掛け声なしで切り離している。
その硬度を以って銃弾を跳ね返すなど、盾のような防衛手段として活用される事もあり、更に中盤では銃弾を敵に向けて正確に跳弾させ反撃する場面がある。
因みに「ジョジョ」第二部にて登場するカーズが、この現象と類似した輝彩滑刀と言う流法を用いる。
バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン
毛髪を硬質化して射出し、標的に突き立てる。これだけでも物理的ダメージがあるが、更に抜けた髪は物質が変質し、刺さった標的からの熱の伝導などで毛髪が動物の体温に達すると自然発火し、標的を炎上させる効果も持つ。
(ちなみに初版の単行本では、誤植が多かった)
バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン
体細胞から発生される生体電気を直列にして放出、放電する。デンキウナギと同様の原理だが、バオーの筋肉細胞は一つ一つが強力なために60,000ボルトの高圧電流となる。
直接放電する以外にも、兵器への電力供給を行うことも可能。作中ではレーザー砲を発射するための電源として、ケーブルを自らの腕に刺し使用した。
バオーが嗅ぎ取る「におい」
変身後のバオーは、視覚・聴覚・嗅覚も関係なく、感覚は額部分に露出した触角でまかなう。
生物の感情は、ある種の「におい(フェロモンのようなものか)」を放つ。バオーはその「におい」をこの触角で感知する事が可能。特に、宿主を含む「自分に対する敵意」の「におい」が大嫌いで、その「におい」を止める事が、敵と戦い倒す理由となっている。
バオーおよび育朗が成長することで、敵意以外の様々な「におい」が存在することを知り、その嗅ぎ分けをする事が可能となる(劇中で、マーチンを偶然目撃し、口封じに殺された一般市民の母子の死を目の当たりにして、「生きることを止められた生き物の、『悲しみのにおい』」を知り、悲しみの感情を知った)。
その結果、敵と味方を嗅ぎ分け、殺意のにおい、邪悪のにおい、恐怖のにおい、悲しみのにおいなど、様々な感情から来るにおいを区別し、戦う相手を判別する事が可能となった。
この、「におい」で敵味方を区別する能力をドルドは利用し、六助じいさんに催眠術をかけて育朗を殺そうとした。
また、感覚を触角でまかなう事から、(芳香蝙蝠(アロマ・バット)の放つ芳香などで)触角を麻痺させられると、敵の位置を感じ取る事ができなくなる。
なお、物語後半。ドレス本部へ殴り込みをかけた時。バオーに変身した育朗の目には、瞳が描かれていた(それまでは、変身したバオーの目には、瞳が描かれていなかった)。
劇中で言及されていないものの、バオーは自身の「触角のみで感覚をまかなう」事の弱点を補うため、視覚も用いるようになったとも解釈できる。
関連イラスト
関連タグ
魔少年ビーティー ゴージャス★アイリン ジョジョの奇妙な冒険
橋沢育朗がプレイアブルキャラとして参戦
ホラー作家。荒木飛呂彦氏は同作家のファンで、バオーにはキング作品からのオマージュが見られる。特にバオー作中の言い回しには、キング「クージョ」作中の文章からの引用が見受けられる(「そいつに触れる事は死を意味する」など)。