概要
バニップ(Bunyip)とは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州(東部)やクィーンズランド州(北東部)の水辺に棲息するとされる水妖。
日本では訳者により「バンイップ」「バニープ」「ブニィープ」「バニヤップ」「ブンイップ」などの別表記がある。
語源についてはヴィクトリア州(南東部)の北西部ウィメラ地方のワーガイア族の言葉で「黒鳥のように長い首を持つ」という意味の「Bunib」とする説が大阪大学の藤川隆男教授によって唱えられている。
藤川教授の著作『妖獣バニヤップの歴史』ではこの地域に「バニープ・バニープ(Buneep buneep)」という名称の土地がある事も紹介されている。
このように名前は元々オーストラリア南東部の特殊な方言に過ぎなかった。
藤川教授によれば19世紀中盤、1845年の『ジロング・アドヴァタイザー』紙の新聞記事に登場した、怪物の出現を語る記事がきっかけで、オーストラリア全土の水妖の名称として、広まったという。
その証拠に1846年の新聞記事では、先住民による同様な水妖の呼称として「カインプラティ(Kinepratie)」「カテンパイ(Katenpai)」「チュナットバー」「ドンガス」の名が紹介されているのだという。
「オーストラリアの怪物目撃談」に広く使用された為か、姿についてはカバやワニのように形容されたりと一貫性がない。だが、大きな鳴き声を放つ、という点は共通している。
これまでに正体の候補に挙げられてきた生物だと、例えばヒョウアザラシやゾウアザラシ、イリエワニやミズオオトカゲ、絶滅種だとメガラニアやディプロトドンやティラコレオ等々、果ては恐竜説もある。古生物学者のリチャード・オーウェンは、T・ミッチェルの発見した「バニップの骨」と称するものを詳細に検討し、古代の絶滅有袋類として「ディプロトドン」と命名した(一応「水棲有袋類」は大嘘というわけでなくて、南米にミズオポッサムという水生のがいるからバニップさんがそういうのである可能性はないではない)。
- オーストラリア北部には獣脚類型のUMAの伝承もあり、近海にも古生代の爬虫類を思わせるUMAやメガロドンの目撃情報もある((實吉達郎『UMA解体新書』では、「南極の怪物」を指す呼称としてバニップが使われている)。
草野巧による説
※イメージが近いヘビガラス
作家の草野巧は、バニップの姿を蛇の胴体に鳥の頭部を持つキメラとしている。
しかし、バニップは人喰いで、目撃者はみな食べられる為、その姿を確実に知る者はいないという。乾季の間は土に掘った穴の中に隠れ、雨季になると活動を始めるとされる。その鳴き声は「ブー」と唸るような響きがあり、雨期の間はあちこちでバニップの鳴き声が聞かれるという。
創作での扱い
爬虫類(魔物娘図鑑)の魔物娘である、バニップ(魔物娘図鑑)として登場。
pixivではこのキャラクターのイラスト投稿が最も多い。
バニップそのものが怪獣として登場したわけではなく、作中の都市伝説「怪物バンニップ」として存在が語られている。人間の記憶を消す「一つ目の鳥」を連れた獰猛な怪物であり、目撃者は捕食されるか記憶を消されてしまうという。
その正体は人間を捕食して恐怖を喰らう異生獣スペースビーストと、その存在を秘匿する為に目撃者の記憶を消去する秘密組織メモリーポリス。何者か(作中に登場した「世界UFO研究所」のメンバーである可能性が高い)が両者の存在を暴露する為にあえて「嘘を混ぜた都市伝説」という形で流布したとされている。
世界各地に眠るタイタン(怪獣)の一体。オーストラリアのエアーズロックに潜んでおり、ギドラのアルファコールによって目覚めたとされるが、現時点では名前以外の詳細が明かされておらず姿や能力は不明。
期間限定イベント『水怪クライシス〜無垢なる者たちの浮島〜』に登場する水棲エネミーの一種。
黒い犬の頭に魚類の体を繋げたような姿で、「姿を見た者は死ぬ」という逸話を「姿を見た者に高速で接近する能力」として瞬間移動しながら襲ってくる厄介な敵となっている。