「我々はビルサルド。我らの母星、ビルサルディア連星系・第3惑星は、呪わしきブラックホールに飲み込まれ崩壊した。ここ太陽系第3惑星への移住を希望する。受け入れの対価に、目下地球人類の最大の脅威である怪獣ゴジラの駆逐を約束しよう」
解説
アニメ映画版『GODZILLA』に登場する宇宙人。
はくちょう座V1357の第三惑星「ビルサルディア」を故郷としていたが、ブラックホールの軌道上という過酷な環境を生き残るために母星をナノマシンで管理・維持しようとして失敗。故郷を追われて宇宙を彷徨ううちに2036年、地球のロンドンへと到達した。
地球ではエクシフとともにゴジラ対策に尽力したものの力及ばず、最終的には地球人類およびエクシフとともに宇宙船アラトラム号で脱出。
地球帰還に際しては、三種族で協力関係を築きながらゴジラ討伐に挑んでゆく。
ブラックホールの軌道上という極めて過酷な環境で暮らしてきたため、人工臓器を用いた頑強な肉体と、徹底した合理主義を重んじる科学主義者。また、自分たちの卓越した科学技術を誇りに思っているあまり、ナノメタルを始めとする基礎技術を他の種族に渡したくないという独占欲が強い。
また、効率の為なら自分自身さえも機械と同化することすら厭わない無機質で冷徹な一面や、技術水準だけで知的種族を定義し、科学に頼らないフツアを「むしけら」と言い切ってしまう傲慢な一面も持っている。
こう書くと冷たい連中のようにも思われがちだが、必ずしも冷淡な性格というわけではない。
地球人との会食の際にはマナーを学んできたり、同志と認めれば地球人の感情的な願いにも犠牲覚悟で応えている。口では文句を言いつつもピーキー過ぎる搭乗兵器のデチューンを引き受けてくれたりもする。情緒面でも地球人とそこまで大差があるわけではなくゴジラによって無残に破壊された富士近隣の地形を見て感傷に浸るシーンや多くの同胞の命を奪ったゴジラに怒りを露わにするシーンすらある。
彼らが真に科学至上主義者、合理主義者であったのであればこういった感情は持ち合わせる必要はなく、実際のところは過酷な放浪生活の中で切り捨てざるを得なかった感情だったのではないかともいわれている。
また、ビルサルドからすればフツアと五十歩百歩に過ぎないはずの地球人類に対しては、20年近く放浪の旅を共にしたからか強い仲間意識を抱くようになっている。
優れた科学と工業技術をもち、亜空間飛行などのオーバーテクノロジーやナノテクノロジーによる独自のアビオニクスとベトロニクスを装備した最新鋭兵器、放射能除染用の抗核エネルギーバクテリアといった革新的技術を地球へもたらした。
特に金属とコンピュータがナノレベルで一体化した自律思考金属体ナノメタルはビルサルドのテクノロジーの粋であり、それを用いて建造した最終兵器メカゴジラは人類最後の希望とさえ言われた。
実際ビルサルドたちもこのメカゴジラ(というかナノメタル)については強い自信を持っていたようだが、いざゴジラとの決戦に際しては原因不明の事故により起動せず、為すすべなく破壊されてしまうという無残な末路を辿ってしまう。
しかし失われたはずのメカゴジラはその後、二万年もの時をかけながら富士山麓でメカゴジラシティとなっており、ビルサルドはこれを用いてゴジラ・アースとの対決に臨んだが、ハルオ・サカキの決断によりゴジラ・アース討伐は失敗。メカゴジラシティは喪失し、ムルエル・ガルグを初めとした地上に降りたビルサルドは全滅してしまう。
これに激怒した族長のハルエル・ドルドはハルオの極刑を求めてアラトラム号の動力室を部下とともに占拠するという実力行使に出たが、この際にアラトラム号の動力を奪われたことが仇となり、黄金の終焉から逃げることができず爆発。
これによりアラトラム号に乗船していたビルサルドも全滅したものと思われる。
余談
モチーフとなった元ネタは『ゴジラ対メカゴジラ』および『メカゴジラの逆襲』に登場したブラックホール第3惑星人。
原典のブラックホール第3惑星人の素顔はどうみても『猿の惑星』だったが、ビルサルドの外見は筋骨隆々の浅黒い肌をした巨漢が多いものの、そこまでゴリラに似ているわけではない。また上述の通り人工臓器による肉体改造も厭わない種族であるため地球人よりも長命で、平均寿命は200歳なのだとか。
ビルサルディアという惑星およびビルサルド自体はフィクションであるが、はくちょう座V1357は実在する恒星であり、実際に伴星としてブラックホールを伴っている可能性が推測されている。
前述の通りビルサルド全体の傾向として仲間想いで、地球人類に対する態度も一方的な地球侵略とは言い難いものであり、モチーフとなった「ブラックホール第3惑星人」よりもかなり良心的な種族ではある。
しかしやはり宇宙人だけあって思想や倫理観の根本的な部分において地球人と決して分かり合えない断絶が存在しており、その断絶が結果的に前述の破局を招いてしまうという、ある意味「ブラックホール第3惑星人」よりも悲惨な結果になってしまっている。
また、エクシフの1人であるメトフィエスはメカゴジラを建造したのはゴジラの駆逐だけでなく、その後の地球侵略も見据えたものだったのではないかと推測しており、仮にメカゴジラでゴジラ討伐に成功してビルサルドと地球人が地球で暮らせるようになったとしても、いずれは致命的な破綻をきたしていた可能性が高い。
なお、機械化やナノメタルとの融合などによって肉体を補強する等、ビルサルドは生の肉体を軽視する傾向にあるが、皮肉なことにこれは(物質的生存か精神的生存かの違いこそあれど)エクシフも同じであった。