概要
典型的なカニ体型を有するカニの一群である。
頭胸甲は角張り、やや厚みがある。第三顎脚の長節及び座節には剛毛列が走る。
かつてはイワガニ科の亜科として扱われており、現在もモクズガニ科やオカガニ科などと共にイワガニ上科を構成する。
生態
河口域の干潟やマングローブに棲む種が多く、岩礁海岸の潮間帯や淡水域に棲むものもいる。
殆どの種は陸棲傾向が強く、陸上での活動時間が長い。
ごく一部の種を除いて動作は俊敏で、立体活動を得手とする種も多く、樹上で見かけることもある。
呼吸は他のカニと同じく鰓呼吸だが、体内に水を貯蔵する事で陸上での呼吸を可能としている。貯蔵した水が古くなると、川や水溜まりに浸かって新鮮な水に交換する。脱皮は水中で行う。
基本は植物食だが、有機物であれば大抵のものは食べるため死骸を分解する分解者としての側面も持つ。
産卵期のメスは集団で海に集まり、海水中にゾエア幼生を放出する。
幼生は海で浮遊生活を送った後にメガロパ幼生に変態して着底し、その後に稚ガニに成長後に上陸して陸に生活の場を移す。
日本に産する種は、知られている限り全てこのような生態だが、国外にはより陸上生活に適応したものも存在する。
北米南部から南米にかけて分布するSesarmaは、産卵時に完全に海まで降るものは稀で、河口域のタイドプールで放卵や変態を終えるものが多く、中には陸封化したものもおり、生涯を淡水域で過ごすものもいる。
マレー半島からインドネシアにかけて分布するGeosesarmaとその近縁属(観賞魚業界でバンパイアクラブと呼ばれるグループ)は、林床や蘚苔類が含む水分で一生を過ごし(脱皮時さえも水深のある環境を必要としない)、卵の中で変態を終える(直達発生)ことで、稚ガニがいきなり孵化するものが少なくない。
極めつけの種として、ジャマイカ特産のブロメリアガニは、ブロメリアの根元に溜まった水の中で一生を送り、更にカニでは極めて珍しい社会性(亜社会性から真社会性への移行段階)をも有する。
人との関係
泥深い環境に棲み、半ば腐りかけたものでも食べてしまう関係で、身や蟹味噌は泥臭く、食用には向かない。
陸上で長時間活動できるため、田畑の作物を食い荒らすこともあるが、被害は限定的である。
この際に駆除されたものなどが、砕いて堆肥として使われたり、釣り餌に利用されることがある。
身近な水生生物ということで、水族館や動物園で展示されることも多い。
また、ペットショップや熱帯魚店で売られることもある。種によって最適な環境は異なるが、多くの種は海水の20~50%の汽水アクアテラリウムか、テラリウムに前述の汽水プールを設置したもので飼育可能。アカテガニやベンケイガニのように成体の飼育、或いはバンパイアクラブのように生涯を通じて淡水のみで管理可能な種も少なくない。基本的に飼育管理は容易な種が多いが、複数飼育は共食いの可能性がある為、単独飼育が推奨される。
河口域というヒトの経済活動が活発な場所に産するものが多いため、治水や物流関係の開発などによる棲息地自体の消失や、ペット目的での過剰な採集によって個体数が減少傾向にあるものも少なくない。
主な属・種
Bresedium(ヘコミベンケイガニ属)
Chiromantes(アカテガニ属)
Clistocoeloma(ウモレベンケイガニ属)
Danarma(マルガオベンケイガニ属)
Episesarma(オオベンケイガニ属)
Fasciarma
Geosesarma
Karstarma(ドウクツベンケイガニ属)
Labuanium(マルベンケイガニ属)
Lithoselatium(カスリベンケイガニ属)
Metasesarma(ハマベンケイガニ属)
- ハマベンケイガニ(ボルケーノクラブ・レッドアップルクラブ)
- イワトビベンケイガニ