概要
演:サミュエル・L・ジャクソン 吹替:玄田哲章
黒人男性のジェダイ・マスターで、ジェダイ評議会においてヨーダに次ぐ実権を持つ人物。
また、メイスはライトセーバーを扱うフォーム中、究極といわれるフォームⅦジュヨーを会得しており、さらにジュヨーを発展させた彼オリジナルのフォーム、ヴァーパッドを編み出している。
ジェダイ・マスターとしては非常に優秀で、その戦闘力はジェダイ騎士団の中でも最強格の実力者であり、ライトセーバーの技量だけならヨーダすら凌ぐとも言われている。数多くの功績と奥深い知識を兼ね揃えており、威厳と確信に満ちた言葉でジェダイ達を導くその姿勢から多くの者達から尊敬を集め、クローン大戦においてもその激しい戦いを生き残った一人となっている。
ドゥークー伯爵の先導によって引き起こった分離主義運動が引き金となった武力抗争の際は、200人近くのジェダイ達を率いてオビ=ワン・ケノービを救出すべく惑星ジオノーシスへと向かい、処刑闘技場で大量のバトルドロイド軍団と交戦。ドゥークーの雇った殺し屋であるジャンゴ・フェットの首を刎ねる形で討ち取った。
その後は劣勢に追い込まれるも、ヨーダが駆けつけた事で何とか戦いを生き延びる事になった。
クローン大戦の終盤では、ヨーダと共にそれまで支持していたパルパティーン最高議長の行動に疑念を抱くようになり、彼がジェダイ評議会を直接支配下に置こうとしているのではないかと考えるようになる。そして彼が個人的代理人(事実上のスパイ)として送り込んでいたアナキン・スカイウォーカーからの報告で、パルパティーンがシス側の人間であるとその危険性を確信したメイスは、キット・フィストーら3人のジェダイを引き連れてパルパティーンの元へ赴き、他の3人がなすすべも無く殺される中で、彼はパルパティーンを後一歩の所まで追い詰める。
しかし、本来ならシス側との関連性について詳しい調査をしなければならない所を、パルパティーンは自身の権限を用いてそれを不可能にするだろうと考えたメイスは、暗殺に等しい形で彼を討ち取る強攻策に出ようとした。結果その姿勢が完全に仇となってしまい、パルパティーンに必死に助けを求められたアナキンに不意を突かれる形でライトセーバーを握った腕を切断され、直後パルパティーンの放った全力のフォース・ライトニングを受けて、そのままビルから放り出されて死亡した。
そしてパルパティーンにとってこれまでの暗躍における真の狙いは、メイスを初めとするジェダイが自身に対してこのような強硬策に訴える事にこそあった。パルパティーンはこの事件を「ジェダイがクローン大戦で得た軍事力を背景にして元老院に対しクーデターを起こし、最高議長の暗殺を試みた」との口実に利用しクローントルーパーにジェダイを抹殺させる緊急指令オーダー66を発令。元老院による承認の下で(少なくとも表面上は)合法的にジェダイを虐殺する事に成功したのである。
アナキンの扱いについて
ジェダイの中でも尊敬を集めている人物ではあったものの、一方でメイスは権力拡大と同時に傲慢な考えに陥っていく様子も見せるようになり、結果的にアナキン・スカイウォーカーが暗黒面に堕ちてしまい、更にはジェダイに壊滅的な被害をもたらす決定的な要因を作ってしまった一人になっている。
クワイ=ガン・ジンは、預言でアナキンを「フォースにバランスをもたらす者」と見出していたのだが、アナキンの可能性を信じようとしたヨーダやオビ=ワンと異なり、メイスはアナキンが「ダークサイドの一時的増大を招く者」と見なしていた。
一度はオビ=ワンの弟子になる事を承認はしたものの、彼の暴走しがちな気質を再び危険視するようになったメイスは、次第に彼と彼に関連する人物への態度を硬化させていく事となった。
3Dアニメ「クローン・ウォーズ」においては、アナキンのパダワンとなった少女・アソーカ・タノがジェダイ聖堂襲撃事件の犯人に仕立て上げられてしまった際は、アナキンの弟子であるという理由だけでアソーカを信じようとせず、「ダークサイドに堕ちた」と一方的に見なして強い疑いを向けていた。
結果的にはアナキンが真犯人を捕らえて冤罪である事が発覚したが、彼女が心身共に受けた苦しみを「試練」として美化する等、評議会の非を認めないばかりかその行いを正当化するような発言までした事により、結果的にアソーカがジェダイに不信感を抱き、ジェダイ聖堂を去ってしまう決定的な要因を作っている。
この出来事は、アナキンのジェダイに対する疑心を更に強めた一件とされており、去っていくアソーカからも、アナキンはジェダイに強い疑いを持っている事実を指摘されてしまっている。
クローン戦争末期(新三部作エピソード3)では、パルパティーンの勧めで評議会の一員に就任したアナキンの実力を正当に評価せず、パルパティーンの情報を引き出す為の捨て駒のようにしか扱おうとしなかった。グリーヴァス討伐に関してもアナキン一人が反対したのを完全に無視して「満場一致」として賛成を可決するなど、彼に対する扱いの悪さは露骨さを増していく。
その厳格という域を通り越して、傲慢や狭量とも言える態度は、当然アナキン側の不信感も募らせる事となり、彼にジェダイに対する大きな反感と疑いを募らせる一方となってしまった。
アナキン本人からの報告でパルパティーンがシスの側の人間だと確信した際も、彼を信用していない事を示した発言をわざわざしている。
更にヨーダやオビ=ワンに何の相談もせず、越権行為に等しい形でパルパティーンの逮捕に向かい、抵抗されてジェダイ達を殺されたとは言え、駆けつけたアナキンからの「既に抵抗力を失った人間を殺す事はジェダイの教えに反する(この直後にパルパティーンはメイスを殺害している事から、実際到底抵抗力を失った人間とは言い難いのだが)」という訴えも無視して強引に殺害に踏み切ろうとした事は、厳格かつ公正な合議制によって事を進めなければならないジェダイの指導者としての在り方を揺るがせるものであった(パルパティーンが自身の政治的権限を用いて事を有利に進め、罪を免れてしまうであろう事を考慮しての判断であろうが)。
そればかりか、苦渋の決断とはいえパルパティーンがシスだと判明した事で、元老院を一時的にジェダイの管理下に置く事すら考えていた(元老院とジェダイ騎士団は、あくまで対等の立場でそれぞれ互いに対して内部干渉をする権利はなく、越権も甚だしい行為である)。
ちなみにメイスはEP2でオビ=ワンを説得する際に「予言が正しければフォースにバランスをもたらせるのは彼しかいない」とアナキンに期待を寄せる発言をしていたが、小説版EP3で逆にオビ=ワンから「彼は選ばれし者のはずでは?」と問われた際には「予言ではそうなっているが、フォースにバランスをもたらすことがジェダイの勝利を意味するとは記されていない」という確かにその通りではあるのだが、以前の自分の発言すら否定する身も蓋もない発言をしている。
また同作ではオビ=ワンが「彼は常に我々の期待に応えてきた」と擁護したにもかかわらず、徹頭徹尾アナキンを評価しようとしなかった姿勢には大いに問題があったとしか言いようがない。
そもそもアナキンを危険視、嫌悪していながらも結局は彼をジェダイの手元に置き続け、パルパティーンへの密偵を命じるなど、彼を都合良く使い続けていた事にも矛盾を感じさせる。
そういった自らの負の部分への自覚が無かったメイスは、自身の行為がジェダイの正義であると信じて疑わず、またアナキンも自分の考えに賛同するのが当然とさえ考えていたようだが、かねてよりジェダイに疑いを抱き精神的に追い詰められていたアナキンからしてみれば、「ジェダイの上層部が傲慢に陥って銀河を支配しようとしている」と確信させるには十分過ぎるものだった。
そして彼自身の死後、当然ながら彼の行動は『ジェダイの反乱』を捏造する為の材料としてこれ以上ない格好なものとなってしまい、ジェダイと銀河共和国は民衆の支持を失い、求心力低下の決定打となる。
閉鎖的な掟に縛られ、無自覚の内に自分達が絶対的に善であり正しいという傲慢な在り方が当たり前の様になってしまっていたメイス、そしてジェダイ評議会の姿勢が、結局は自身の破滅を招く原因になってしまったのである。パルパティーンの言葉を借りれば、まさに「傲慢ゆえに見えるものが見えなくなった」という事なのだろう。
高位のジェダイマスターであるメイスがここまで傲慢になってしまった要因も提示されており、現在では部分的に非公式(レジェンズ)設定になっているものの、彼が編み出し用いている固有のライトセーバーフォーム「ヴァーパッド」は攻撃力こそ極めて強大であるが、本来はジェダイにはあるまじき「戦闘の高揚感」に身を任せる事を極意とする為に、暗黒面に近付きやすいという性質を持つ。これの原型であるフォームⅦ「ジュヨー」ですら、基本フォームの中では最も暗黒面に染まりやすいとされているが、ヴァーパッドはそれ以上に暗黒面に肉薄してしまう危険極まりない型であり、実際にこのフォームを修得しようとした者はメイスを除いて悉く暗黒面に堕ち、破滅している。メイスは強靭な精神力によって暗黒面を跳ね除けて開発・修得に成功し、ジェダイ最強の剣士にのし上がったとされているが、実際はこの弊害を完全に克服しきれていた訳ではなく、本人も気付かぬ内に徐々に精神が闇に蝕まれていった可能性もある。
また、これとは逆に、あくまでファンの考察ではあるが「メイスが蝕まれていったのは闇ではなく、むしろ信じて疑わなかった光であり、強すぎる光が物事を見えなくした結果傲慢に陥ったのではないか?」といったものも存在している。
小説版EP3ではパルパティーンの逮捕に向かう直前にメイスは、長らくパルパティーンの近くに居ながら彼をシスの暗黒卿と見抜けなかった事について「ヴァーパッドによってもたらされた闇が目を曇らせていた」と痛感して激しくショックを受け、悔恨の念を抱いていた(その反省をもっと早くできていれば…)。同作においてメイスはヴァーパッドを編み出した理由について「自分の弱さを補うため」とオビ=ワンに語っているシーンがあるが、皮肉にもそれこそが彼自身に闇を植え付け、メイス自身だけでなくジェダイそのものを破滅に導く事となってしまった。
また、メイスの理不尽極まる言動が一段と酷くなったのはクローン戦争の勃発後であり、開戦前のEP2前半ではアナキンについて「彼の技量は群を抜いている」と高く評価し、彼に単独任務を任せる事に不安を感じるオビ=ワンを説得した事もあった。アナキンの方もオビ=ワンへの称賛を語る際に「マスター・ヨーダのように賢く、マスター・ウィンドゥのように強い」と引き合いに出しており、当初は1人のジェダイとして尊敬していた事が分かる。
しかし戦争が始まって以降はメイス自身も精神的な余裕を失い、上述のようにアナキンを筆頭に周囲への不信感を拗らせると共に、自身については正当性を妄信して傲慢な振る舞いを見せるようになっていった。映画版EP3のオープニングのあらすじの中に「世は悪に満ちていた」という一文があるが、メイスも戦争の悪意(狂気)によって歪みを加速させてしまったのかもしれない。
アナキンは全体的に見てジェダイの中で爪弾き者にされていたかといえばそんな事はなく、オビ=ワンは口やかましくアナキンを指導しながらも結局は何かと彼に甘い面もあり、問題行動を起こしたアナキンを評議会から庇うことも少なくなかった。ヨーダはEP3で悪夢に悩まされるアナキンから相談を受けた際にはきちんと1対1で対応し、(アナキンが望む答えではなかったものの)ヨーダなりに真摯に応えている。クローン・ウォーズで弟子としたアソーカとは強い絆で結ばれ、同作中では彼女の恩人である評議会メンバーのプロ・クーンとも親しくしている。また他の評議会メンバーでも、イース・コスは過去の境遇が自身と似ているアナキンを気遣っていたし、ジェダイ屈指のエースパイロットであるセイシー・ティンはメカニックとしても優れたアナキンを絶賛していた。
しかし、ジェダイのナンバー2にしてヨーダに次ぐ発言権を持つメイスから不当な扱いを受け続けた影響は大きく、アソーカのジェダイ脱退時のようにメイスの決定的な一言が事態の引き金となった上に、立場上オビ=ワンなど他のジェダイがそれ以上発言できなくなるという悪循環を生む結果にもなった。また、上述のパルパティーンに対する密偵の指令をわざわざオビ=ワンを通じて命じる事で間接的にアナキンがオビ=ワンに嫌悪感を抱くきっかけを作ってしまい、彼のジェダイでの拠り所を失わせるという余計な事もやらかしている。
アナキンに対する扱いが悪い意味で印象的な事もあり、スターウォーズのスピンオフ作品が生まれるごとに新たに悪い面が掘り下げられて彼自身のキャラ(ひいては当時のジェダイ騎士団という組織そのもの)の評価を下げてしまう事も多い。EP3の公開当時では(尺の都合上展開が急だった事もあり)アナキンの闇堕ちと裏切りに唐突さを感じ、その行動に疑問を持つ声も少なくなかったのだが、クローン・ウォーズでのアソーカに対する仕打ちの描写はこの補填を行う事に成功したものと言える。
勿論、アナキンの闇堕ちやジェダイ壊滅の責任に関して全てをメイス1人の責任と見なす事は出来ず、オビ=ワンやヨーダ(特にヨーダ)も批判の的になる事があるが、彼らにはルークの育成の場で名誉挽回の機会が与えられている事に加え、評議会時代の行いを悔いて後悔、反省している描写があるのに対し(特にヨーダ)、評価を落としたまま死亡してしまったメイスに関してはそのような場が与えられる事は考えにくく、それどころかスピンオフにおいて更なるメイス批判の材料が与えられている事も悪印象に繋がってしまっている。
メイスの存在がアナキンのジェダイそのものへの不信感を増大させる要因だった事は疑うべくもないが、一方でメイスの影響が絡まないアナキン自身の都合にも問題は山程あった。
彼のアナキンに対するレッテル貼りのような行為が「アナキンが闇に堕ちた原因」と捉える事ができる一方で、結果的に闇堕ちしているという事実から、別の側面から見れば本質を見抜いていた慧眼の持ち主と捉える事もできなくもない(あくまで結果論だが)。尤も彼の言動が事態の悪化を促した点については疑いようもなく、危機管理能力については壊滅的だったと言わざるを得ないのだが。
アナキンの「選ばれし者」としての使命については「増長し硬直化していたジェダイと、強大となったシスの両方を滅ぼす事でフォースにバランスをもたらした」とされているのだが、パルパティーン(ダース・シディアス)を強大化したシスの象徴、メイスを増長したジェダイの象徴とするならば、事実アナキンは両名を自らの手によって殺害している事になる。
このように作品における役割を考慮すれば、フォースのバランスを取り戻す為には光を信じて疑わず、バランスを崩していたきらいのあるジェダイの側にも一度滅びねばならない理由があるという事を提示する必要があった為に、メイスは当時のジェダイの増長と傲慢を示す為の必要悪であったとも考えられる。
余談
メイスといえば紫のライトセーバーが有名だが、これはメイスを演じたサミュエル・L・ジャクソンが違う色のライトセーバーを使いたいといった事でこの色になった(設定上はメイスのライトセーバーに使う部品のクリスタルが特殊なものであるから、とされている)。
また最期は、ビルの窓を突き破り彼方まで吹き飛ばされるという結末を迎えるが、この死に方もジャクソンが劇的で派手な死亡シーンを希望したからと言われている。尤もジャクソンは、本気なのか冗談なのか「飛ばされただけで死んだかどうか分からないから生きてるかも」という旨の事も言っているが、勿論公式では死亡したと明言されている。
ちなみに最期のシーンでは、メイスがパルパティーンからトドメの攻撃を受け、窓ガラスを突き破ってコルサントの上空へ吹き飛ばされたが、その場を飛行していた航空機群は不気味な程に一切滞りなく通行を続けており、これがジェダイの敗北と滅亡が最初から既定路線となっていた事を演出している。