「極道ってのはなぁボクシングとは違ぇ 喧嘩に負けたヤツが敗者になるんじゃねえ 最後まで“張り続けられなかった”ヤツが負けるんだよ」
「俺を今動かしているのはな、“男の意地”ってやつだ それさえありゃ男は笑いながら死ぬことだってできる」
CV・モデル:小沢仁志
概要
『龍が如く0』に登場する東城会直系「堂島組」若頭補佐及び堂島組内「久瀬拳王会」会長。
三人の若頭補佐の中ではリーダー格でもある。背中には閻魔の刺青が彫られている。
性格は一言でいえば“凶暴”そのものだが、その反面、東城会…特に損得勘定にがめつい野心家が半数以上を占める堂島組においても希少な権力や利益、損得よりも極道…そして男としての「意地」や「信念」を優先する等、「武闘派」という言葉を地で行く人物であり、ファンからの人気も高い。
劇中の活躍
「カラの一坪」で発生した事件をきっかけに風間派の切り崩しを画策して主人公・桐生一馬と敵対するが、桐生にタイマンで敗れた事で組長の堂島宗兵や兄弟達に対して面目を潰され、以降若頭補佐における地位は一気に転落。阿波野や渋澤にいいようにこき使われ、堂島組の平組員からも半ば舐められた口を叩かれるまでになる。
それでも「極道になりきれていない半端者」と見下す桐生に名実共に敗れた事が許せず、以降は桐生への復讐心から兄弟達に利用されている事を承知の上でその刺客役を引き受け、文字通り幽魔の如く「極道の世界に K.O.は無ぇ」と口にして何度返り討ちにしても心折れる事なく彼に前に立ちはだかる。
2戦目ではバイクと鉄パイプを引っ下げ突撃、3戦目はメリケンサックを嵌め、倒されて尚も桐生を背後からの不意打ちで襲うなど、当初は桐生に雪辱を果たす事しか頭にないかのように形振り構わないやり方が目立っていた。
しかし4戦目にてマキムラマコトの居所を吐かせるために拷問していた立華鉄を、自身の部下である米田が暴走し瀕死に追いやった事で爆発した桐生の怒りから「真の極道」の魂を見出し、言い訳せずにその拳を受ける。ラストバトルである5戦目では憎みつつもいつしか一目置く存在となった桐生の覚悟を問うため、そして自分の「男の意地」を貫くため、仲間や武器などの小細工無しの拳一つでの一騎打ち(復讐に燃える心を表現したような4戦目までのBGM「怨魔の契り」から、荘厳で落ち着いているが情熱は失われていないようなBGM「閻魔の誓い」に変わる)を挑む。
そんな「男の意地」を認めた桐生にも、その誇り高き生き様に敬意を抱かせた。久瀬と敵対しカタギとなってからは呼び捨てかつタメ語を用いていた彼を「久瀬の兄貴」と呼び直し、言葉遣いも敬語に改めるところに、桐生の心情の変化が見て取れる。
その戦いに敗れると、どこか吹っ切れた様に桐生を真の極道として認め、同じく「真の極道」になろうと暴走する渋澤の居所を明かし、彼を止める事を桐生に託した。
騒動解決後、桐生に倒された渋澤と共に警察に逮捕された事が東城会幹部会の中で明らかにされた。
阿波野も騒動の渦中で死亡した事で、三大若頭補佐全員を喪失した堂島組は一気に弱体化する事となる。
『龍が如くONLINE』では
『ONLINE』の第二部「黄龍放浪記」にて再登場。獄中で10年過ごした後、東城会に復帰し、二代目代行・二井原隆の手立てで荒川組に助っ人として送られる。
更に『ONLINE』ではエンコ詰めから2戦目の時間が描かれ、あのバイクは昔惚れた女のために組を抜けた「鬼怒川」という兄弟から貰ったものであった事が判明。
エンコの件もあり精神的に悩んでいたため、気分転換も兼ねて久しぶりにバイクに乗ろうとしたところバイクがポンコツ化。改造のし過ぎでそこらの修理屋には直せないため、唯一修理が可能な兄弟の元を15年振りに尋ねるも、ヤクザ相手に商売はしないと断られ引き下がる。
実はその兄弟は15年経ったにもかかわらず、元ヤクザとして「警察が守る善良な市民ではない」と認識されており、カタギとして積み上げた立場を守るために土地の権利書を奪いに来るヤクザの嫌がらせに何の抵抗もせず耐え続け、惚れた妻子もとっくに出て行ってしまった事が判明。土地の権利書を奪われた兄弟のために敵対ヤクザの元に兄弟に修理して貰ったバイクと共にカチコミ、権利書を奪い返し、最後に兄弟と「張り続ける限り負けではない」と互いに誓い合い、渋澤からの呼び出しに応じ、桐生との第二ラウンドに向かって疾走する所で終了する。
ストーリーの評価の高い『ONLINE』だが、兄貴の過去と漢気がわかるストーリーとして特に人気が高い。
『龍が如く維新!極』では
新選組参謀「伊東甲子太郎(リメイク前は浜崎豪)」として登場。
「もう一人の坂本龍馬」と内通し、新選組を乗っ取ろうと目論んでいたが、新選組の本当の敵をあぶり出そうとした局長・近藤勇の最期の策によって本性を表し、武田観柳斎、藤堂平助と共に新選組を抜け、「御陵衛士」を結成する。
余談
久瀬の兄貴の受難
計5回と、『龍が如く』シリーズの本編ストーリー中では最多の戦闘回数を誇る(ちなみに、後に発売された『8』の山井豊も同じく5回)。しかも1戦目の段階で「ケジメ」としてエンコを詰めて(小指を切り落として)いるのにもかかわらずである。
当然各バトルではイベントが多い。当然毎回返り討ちに遭うのだが、イベントで酷い目に遭ってしまうのが久瀬の兄貴。以下兄貴の受難。
- エンコ詰め
初戦、第一章「盃の掟」のボスキャラとして対決する。
それまでのストーリー中に桐生を計略にハメて脅しや懐柔を仕掛け、「エンコ詰めとけや」、「風間をスパイしろ」とまで言い捨てた久瀬だったが、この1戦目で敗北後、「桐生に敗北した」、「前述の敗北したのに現れた阿波野と渋澤に加勢させようとした」、「親父に嘘をついた」「勝手に桐生を破門にした」「前述の破門によって既に扱いは親父に無断でカタギのはずの桐生に暴力を振るった」などの理由からまな板とドスを渡され、ケジメとして親である堂島や兄弟分の阿波野、渋澤、そして桐生の面前という、兄貴にとっては屈辱極まる状況の中で自分の方がエンコを詰める羽目に陥る。
まんまと食らわされたこの「カウンターパンチ」によって久瀬はマットに沈み、冒頭では最も近いと言われていた次期若頭への道は閉ざされてしまう。
※これ以降のシリーズ作品でケジメをつけさせられそうなシーンでは一部ファンの間で「久瀬る」「久瀬の兄貴させられる」という言葉が使われたり、阿波野が取り出したまな板とドスは「どこでもエンコセット」「ケジメスターターキット」などと通称されるように。のちの作品で「指詰めセット」と名付けられた。
※迫力ある小指詰めシーンだが、実際にはこの方法では威力が足りず指を切断することはできないと指摘する者もいる。だがこれは犯罪を扱う他のフィクション作品でも、爆弾製造やハッキングのシーン等で敢えてウソを混ぜた演出がなされるように、模倣防止の意図を含むものであろう。
…という話はさておき、素手で人間を殴り殺せるような強烈な腕力を持つ設定の創作キャラクターが全力でやれば、現実の人間の指の骨の耐久度など無視した画面になってもおかしくないかもしれないが。
- バイクで豪快転倒
2戦目冒頭。阿波野の作戦の下で一兵隊同然の扱いを受け、鉄パイプ片手に下水道をバイクで疾走し襲ってくるというあまりにも豪快すぎるスタイルで登場。
桐生をぶん殴るも勢い余って豪快にスリップ、全身下水に浸かることとなる。敗戦後には阿波野から「やっぱり兄貴はしくじったか」などと言われていた。
なおこのバイクをどうやって下水道に持ち込んだかは不明。小沢本人もこのシーンは印象的だったらしく、バイクで走ってくるシーンの顔は「あの顔ヤベェ」と思ったとか。
- スポーツカーに跳ね飛ばされる
3戦目終了後。なんだかんだあって桐生の頭をカチ割る寸前に追い込む事に成功するが、金属バットを振り上げた瞬間ペーパードライバーの立華にスポーツカーで突っ込まれ、ボンネットに乗り上げそのまま車の上を転がる。バイク事故から立て続けの自動車事故。
豪快に撥ねられたのに入院の一つもしないあたり、彼も大概超人と言える。
- 部下が人質を殺してしまう
4戦目冒頭。身柄を抑えた立華に苛烈な拷問を加えるも、これでは口を割らない上に死んでしまうと見て方針を変えようとする。
しかし血の気の多い米田は命令を聞かず、「そんな甘い考えしてるから、桐生なんかに何度も負けるんだよ!(要訳)」などと久瀬を侮辱し、ついには立華の頭部を鈍器で殴りつけて致命傷を負わせてしまう(直後、激怒した久瀬によって粛清された)。そこに立華を取り戻しに来たと桐生が突入、言い訳はせず、再度敗北し這いつくばることになる。
この戦闘では立華を傷付けられた事に怒り狂う桐生に一発殴られるシーンがあるが、彼なりのケジメなのか一切の抵抗をせず受け止めている。
- 逮捕される
全ての決着が付いた後に逮捕され懲役10年に。
カラの一坪騒動で阿波野は死亡、渋澤と久瀬が逮捕された事で堂島組は戦力的に弱体化し、堂島組長も失脚する事に。
以上のように散々な目に遭ってしまう。元々エンコとバイクは彼の不手際であり、失態続きで部下の求心力を失ってしまうのも仕方のない事ではあるのだが何度も不憫である。
とはいえ、前述した通り最後の戦いは桐生に対する憎しみよりも「男の意地」を掲げて挑んだ戦いであったため、これまでのどの戦いと違って清々しさを感じるものとなり、桐生からも「何の損得もねぇところで命を張れる男」と称して堂島組の組員達総出よりも手強い強敵と評されるなど、評価が鰻登りとなり、兄弟分の渋澤も「張り続ける限り負けじゃねぇ」という久瀬と同じ志を大事にしていた。
そして、「男の意地」を愚直なまでに貫き通した久瀬が見せた生き様は後年、『伝説の極道』として名を上げていく事となる桐生のヤクザとしての筋道に確かな影響を与えた。
中の人について
- 久瀬を演じた小沢氏が、2021年に自身のYouTubeチャンネル「笑う小沢と怒れる仁志」にて『龍が如く0』の実況プレイ企画動画を投稿。奇しくも小沢(久瀬)VS小沢(本人)という構図が描かれることとなった。ある意味ミラーマッチである。
- はじめて手にするPS4コントローラーやシリーズ独特の操作性に悪戦苦闘しつつ、昨今の3DCGの進化やヒートアクションやムービーシーンでの演出の数々、ストーリーの奥深さなどは絶賛しており、終始楽しそうにプレイを進めていた。
- プレイ中は収録当時のことを振り返り、ダンボール詰めの膨大な台本を渡され面食らったこと、他の二人(阿波野や渋澤)に比べて自身がモデルの久瀬の顔が怖すぎること、発売後は小学生から揶揄われたり(「踏んづけてやったー」と)、逆に久瀬と5度も戦うことになったことに文句を言われたこと…などなど、ボヤきを絡めたコミカルなエピソードを数多く語った。
- ちなみに以前から龍が如くシリーズに興味を持ってたらしく、オファーが来た際は「遅えよ」と思っていたと『龍が如く0』のインタビュー動画で答えた。
関連動画
怨魔の契り(1~4戦目戦闘曲)
閻魔の誓い(最終戦戦闘曲)