概要
スズメやツバメといった鳥の、種ごとに存在する霊鳥たちが、巨大都市、東京都に棲むヒトという種族と、激闘を繰り広げる物語。
史上最強級の動物であるヒトと、異能力を操る霊鳥たちとの対比や、二人の主人公を始めとする個性豊かな霊鳥たちの、恋愛や葛藤、そして緻密な心理描写が、本作の見どころである。
過去編のあらすじ
母親との死別
物語の始まりは、広大なニホン列島の中央、千万のヒトが暮らす巨大都市、東京都。主人公のココは、多数の役人に追い掛けられ、命を狙われていた。
ココは生まれたときから、この東京都にて、母親と二人で暮らしてきた。
ところがその日、母親の隠していた正体が突如としてばれてしまい、彼女は娘のココを逃がす代わりに、自ら犠牲となった。
遺された端末の地図だけを頼りに、凍てつく夜の地下通路をひた走り、そうして、閉鎖城と呼ばれる未知の区画を目指す。
だが恐怖から、ココは途中で足を止めてしまった。
母親の最期の悲鳴が、脳内で鳴り止まない。およそ十数分にも及んだ、泥の固まりを吐き出すような叫び。喉が枯れるまで殴られて、動かなくなっても殴られ続けた。
ココは気が付いた。霜焼けにも似たこの心の痛みは、ひとつだけ消す方法がある。ちょうど追手はすぐそこまで迫っている。
彼等に自分を殺させるため、無心で引き返そうとした。そのときだった。深紅の着物を身にまとった、長身の女性が現れ、ココの名を呼んだのだ。
モモと名乗るその女性は、ココの母親が死に際に連絡をして、救援を求めた実の姉だった。モモは「今日から私があなたのお姉ちゃんよ」と言って、ココを安心させると、追ってきた役人たちの前に立ちはだかった。
閉鎖城を守る使命
閉鎖城には、スズメやツバメといった鳥の種ごとに存在する化身、霊鳥が暮らしている。
本作におけるもうひとりの主人公、レアもまた霊鳥だ。
閉鎖城の中央に位置する、迫倉邸にて、幼馴染のスミレとともに育てられたレアは、夜遅くになっても帰ってこない伯母、モモを探すべく、納屋に隠されていた霊具を持ち出して、霊鳥となったのだった。
レアはモモと共闘して、無事にココを救い出すことに成功した。この出来事をきっかけに、ココはレアに一目惚れ。スミレの後押しもあって、二人は恋人として付き合うようになった。
ところが、霊具を手にしたレアとスミレは、東京都から責めてくるヒトという種族から、閉鎖城を守るため、戦う道を選び、ココとはほとんど会えない期間が続いてしまう。
復讐の決意
迫倉邸に取り残されたココは、二年もの孤独な日々の中で、次第に心を病んでいった。レアとずっと一緒にいるためなら、自分も武器を取って戦う覚悟はできてる。そう訴えても、レアには全く伝わらない。
やがてココは、涙ながらに別れ話を切り出した。そこで漸く間違いに気づいたレアは、スミレに諭されて急ぎ帰宅するが、ちょうどその隙を狙ったかのように、スミレは東京都に無理やり連れ去られてしまった。
二人はスミレを助けるため、モモの力尽くの反対を押し切り、独断で東京都に乗り込んだものの、やっとのことで見つけられたのは、彼女の体の首から下だけだった。
スミレは、ココがレアと出会うよりもずっと前から、レアのことが好きだった。ココはそのことに端から気づいていながら、気づかないふりをしてきた。
そうした状況の中で、スミレは殺された。ココは、罪悪感と復讐心とでおかしくなりそうだった。
スミレの遺言を重く受け止めたレア、そして、彼女が遺した霊具を引き継いだココは、互いに永遠を誓い合うとともに、ヒトという種族を徹底的に殺戮すると、そう決意するのだった。
登場人物(霊鳥)
レア/迫倉くろえ(おいくらくろえ)
主人公らしく思い切りのよい性格だが、それでいて、冷静さも持ち合わせる。
本編では、太平洋の彼方に広がるアメリカ大陸、ララミディア地域にて、レモン、ライム、シアンを仲間に加えた後、閉鎖城に帰還。軍事省内で開発が進められているという、大核爆弾を破壊すべく、仲間たちとともに東京都に潜入する。
- 年齢|17歳
- 性別|オス
- 身長|約170cm
- 体重|約60kg
〇 トリ Gallus dinosauroid
・作中で唯一の、架空の生物。閉鎖城に暮らす者の大半は、霊鳥たちではなく彼等の方。
・ヒトには〝恐竜人間〟と呼ばれており、その正体は、物語の終盤にて明らかになる。
〇 エレメント:玄(あんこく)
・全ての属性の力を、自由自在に、黒い影で再現することができる。
〇 他の登場人物との関係
- ココ ⇒ 恋人。後に異母姉であることが判明するが、以降も関係は変わらず。
- スミレ ⇒ 同じく異母姉。皮肉にも彼女の死は、後のレアとココの原動力となる。二人の関係において、最も大切な存在である。
- ユキ ⇒ 母親。亡き夫のため、そして、最愛の息子であるレアのため、懸命に戦っている。
- モモ ⇒ 伯母。但し、実際の関係は姉弟に近い。ユキが不在の間は、基本的にはモモが親代わりといっていいだろう。
- サキ ⇒ 剣術の師匠。レアに戦う覚悟を問う。
- パイン ⇒ 同僚。妹分のような存在。レアの行動に感化され、成長を遂げていく。
- ミカン ⇒ 同僚。パイン同様にレアを慕っていたが、戦いの中で瀕死の傷を負い、最終的にはレアに解釈を任せる。遺品の長剣は、レアがここぞというときに使用する切り札となっている。
- アン ⇒ 祖母。作中では終盤まで、遠く離れた内陸アジア地域に滞在しており、それまでに顔を合わせた回数も数回程度。その行動は謎に包まれている。
- サクラ ⇒ 幼馴染。意外にも数少ない、同年代の友人。
ココ/迫倉くれは(おいくらくれは)
母親を失った経験から、過去編では消極的な思考が目立つが、本来はもっと前向きで実直な性格。いざというときには他の誰よりも先に行動を起こす。
本編では、レモン、ライム、シアン、そして最愛の恋人であるレアとともに、軍事省の大核爆弾を破壊すべく、東京都に潜入する。
- 年齢|17歳
- 性別|メス
- 身長|約160cm
- 体重|約50kg
〇 ズニコハシ Pteroceratops christops
・地面から頭までの高さは約80cmにもなる、巨大な四足鳥。前方に伸びた鋭い双角が特徴。約9000万年前のアメリカ大陸に棲息していた、トナカイ格動物。
・ヒトには〝ズニコツノトカゲ Zuniceratops christopheri〟と呼ばれている。
〇 エレメント:火(ほのお)
・火炎で敵を攻撃する。
〇 他の登場人物との関係
- レア ⇒ 恋人。後に異母弟であることが判明するが、以降も関係は変わらず。
- スミレ ⇒ 姉。皮肉にも彼女の死は、後のレアとココの原動力となる。二人の関係において、最も大切な存在である。
- クリ ⇒ 母親。自分の命と引き換えに、ココを守った。
- モモ ⇒ 伯母。但し、実際の関係は姉弟に近い。
- アン ⇒ 祖母。関係性はレアと同様。
レモン/秕名莉美(しいなれもん)
その見た目とは裏腹に、リーダー気質で気が強い。口調こそ「~わよ」や「~でしょう」というように丁寧ながら、態度は高圧的で、いたずら好きな一面もある。また、密かにレアに想いを寄せている。
ララミディア地域のトリが運営する施設にて、ライム、シアンと家族同然に育った。
- 年齢|20歳
- 性別|メス
- 身長|約140cm
- 体重|約50kg
〇 リカオニダチョウ Gorgostruthio libratus
・比類なき敏捷性が特徴の、リカオン格動物。
・ヒトには〝リブラトゥスタイラントカゲ Albertosaurus libratus〟と呼ばれている。
〇 エレメント:禾(いかずち)
・雷電で敵を攻撃する。
ライム/日梁翠(ひばりらいむ)
常に明るく元気で、天真爛漫。自由奔放。基本ずっと喋ってる。まるで子どものような性格。そのくせ天才肌で、できないことが何ひとつがない。
前世のリョウは生後たった5日で、コロラドファグという、トラに似た鳥に母と兄を食い殺されている。自身の記憶もそこで途絶えているため、恐らく家族ともども命を落としてしまったのだろう。
ライムとしては、ララミディア地域のトリが運営する施設にて、レモン、シアンと家族同然に育った。
- 年齢|17歳
- 性別|メス
- 身長|約140cm
- 体重|約40kg
〇 リョウ Barotitan diplodocus
・地球史上、最も前後に長い動物。型分類は、オカピ柄>インドリク格。
・ヒトには〝セイスモハリトカゲ Diplodocus hallorum〟と呼ばれている。
〇 エレメント:卉(くさづる)
・草蔓で敵を攻撃する。
シアン/尼崎碧(あまさきしあん)
大人しく、殆ど話さない。会話中も「うん」などと返事をする程度だが、話はきちんと聞いている。いわゆる天然。
前世のオクサライリタトリは、ロズギガノトリという、ジャガーに似た鳥との因縁がある。もともとそのロズギガノトリとは、種族は違えど、互いに友と呼べる関係を築いていた。だが深刻な食糧不足によって、彼女は裏切り、シアンを背後から襲って殺した。生きるためには仕方がなかったのだ。
シアンとしては、ララミディア地域のトリが運営する施設にて、ライム、シアンと家族同然に育った。
- 年齢|19歳
- 性別|メス
- 身長|約170cm
- 体重|約60kg
〇 オクサライリタトリ Irritatornis oxala
・浅い水場でのみ、比類なき機動力を発揮する。型分類は、イヌ柄>アンドレウシ格。
・ヒトには〝エジプトトゲトカゲ Spinosaurus aegyptiacus〟と呼ばれている。
〇 エレメント:水(みず)属性
・水で敵を攻撃する。
パイン/空梨菖愛(あななしあやめ)
サキに拾われてきた子で、両親の顔を知らない。金髪碧眼。
努力家な性格だが、戦いの中で立て続けに味わった恐怖から、過去編の中盤以降は専らレアに頼りきりになってしまう。しかし、本編で再登場した際はすっかり強くなっており、さらには女性としての自信もついているようだ。
- 年齢|15歳
- 性別|メス
- 身長|約150cm
- 体重|約50kg
〇 ケイキ Stegus dravidensis
・地面から頭までの高さは約1m50cmにもなる、巨大なキリン格動物。
・ケイキ属はハリヤマ科全体で唯一、長い後肢で自立して高所の歯を食べることができる。他の属の種はみな前後の足の長さが同じくらいである。さらに、キリンの鬣の役割を、背中の骨板で補完し、かつ、キリンのオスどうしが長い頸と角で戦うように、ケイキのオスどうしは長い尾と棘で戦う。
・ヒトには〝ツルギトカゲ Stegosaurus blanfordi〟と呼ばれている。
〇 エレメント:聿(ふで)
・四次元系属性。宇宙の力で戦う。
〇 ハネチョウ Ornithopteryx albus
・タヌキ格動物。
・ヒトには〝鳥頸類における最古の種〟と呼ばれている。なお、架空の生物ではなく〝存在してたのは間違いないけどそれがどんな見た目をしてたかは想像するしかない〟そんな生物である。
〇 エレメント:采(さいころ)
・六次元系属性。瞬間転移を可能とする。
モモ/迫倉もも(おいくらもも)
霊鳥は不老不死のため、モモの見た目も若い頃から変化はないが、実際の年齢は40歳と、レアやココにとっては姉というよりむしろ親世代だ。彼女の妹にしてココの母親であるクリが既に38歳なのだから、それも当然だ。
この年齢差ゆえ、モモがレアやココに対して些か過保護になってしまうのは、どちらかといえば仕方のないことだった。その上、実の弟妹は無惨に殺されているのだから、尚更だ。
- 年齢|40歳
- 性別|メス
- 身長|約170cm
- 体重|約70kg
〇 カミ Elvio aurodea
・地球の歴史上、ヒトよりも強い唯一の動物。都棲ヒト格動物。
・ヒトには〝ヒメタイラントカゲ Nanotyrannus lancensis〟と呼ばれている。
〇 エレメント:氷(こおり)
・氷で敵を攻撃する。
〇 他の登場人物との関係
- レア ⇒ 甥。レアに対する愛情は、彼がココと二人でスミレを助けに行こうとした際に、完全武装状態でレアに斬り掛かって「手足を切り落としてでも連れて帰る」と怒鳴ったほど。
- ココ ⇒ 姪。決して表に出すことはないが、ココと初めて会ったときから、どこか妹に重ねて見ている節がある。
- スミレ ⇒ 同じく姪。スミレのためなら自分が単身で東京都に乗り込んで殺されても構わないと、本気で思っている。
- ユキ ⇒ 義理の妹。閉鎖城の切り札として迫倉邸に押し込まれ、家族以外の人と会うこともあまりないモモにとって、唯一対等な相手で、かつ最も仲のよい友人。
- アン ⇒ 母親。終盤までほとんど物語の展開に関わることのない彼女だが、実はモモだけは頻繁に連絡を取り合っていた。
スミレ/迫倉純恋(おいくらすみれ)
いつでもはっきり物を言う性格でありながら、レアに対してはなかなか素直になれず、素直だった幼少期との乖離から、たびたびレアを困惑させてしまう。
それでも、レアを想う気持ち自体には何ら変化はなく、ココの背中を押して二人の仲を取り持ったのも、心からレアを愛しているがゆえの行動だった。
ココに対しても、まるで実の姉妹のように親しく接しており(実際はスミレ自身が知らなかっただけで本当に姉妹なのだが)最後の瞬間まで、二人の幸せを願っていた。
〇 ヘルオニダチョウ Tyrannostruthio manospondylus の老躰
・半水棲の雑食動物であり、系統分類は、鳥綱>ダチョウ目>オニダチョウ科>オニダチョウ属。型分類は、キョウシ格とカバ格を兼ねる、複合型動物。
・ヒトには〝オウサマタイラントカゲ Tyrannosaurus rex の成体〟と呼ばれている。
〇 エレメント:白(めいはく)
・全ての属性の力を、自由自在に、白い光で再現することができる。
〇 他の登場人物との関係
- レア ⇒ 異母弟にして、幼少期からの想い人。彼のために生き、そして最期には彼のために死んだ。
- ココ ⇒ 妹。
- モモ ⇒ 伯母。但し、実際の関係は姉弟に近い。
- クリ ⇒ 母親。ココとは異なり、スミレ自身に母親の記憶はない。
- アン ⇒ 祖母。
ユキ/河辺粉雪(こうべこゆき)
カキを献身的に支え、二人で過ごせる時間を一日でも長く伸ばすことに専念した、若き日の頃は、今となってはもう取り戻せない。カキは理不尽に命を奪われ、ユキは残された息子のレアを守るため、霊具を手にして霊鳥となった。
とはいえ、ひとりで戦いと子育てとを両立することはおよそ不可能で、結局、後者はモモに多くの負担をかけてしまった。ただ、そのモモのおかげもあって、レアは不自由を感じることなく成長してこられた。
それゆえにユキも、後悔することは何もないのだ。
〇 コウテイペンギン Aptenodytes imperator
・ヒトには〝コウテイペンギン Aptenodytes forsteri〟と呼ばれている。
〇 エレメント:穴(あな)
・三次元系の属性。空間を操作することで、物体を切断する。瞬間転移も可能。
サキ/紋咲葵(むらさおい)
レアやパインの剣術の師匠。燕返を始めとする数多くの強力な技、レアに伝授した。
〇 ツバメ Hirundo rustica
・ヒトにも〝ツバメ Hirundo rustica〟と呼ばれている。
〇 エレメント:肖(がらす)
・物体を透過する。
サラ/小路沙良(こみちさら)
〇 ロズギガノトリ Giganotornis roseae
・ジャガル格動物。
・ヒトには〝サハラトナントカゲ Carcharodontosaurus saharicus〟と呼ばれている。
〇 エレメント:甘(あめ)
・砂礫で敵を攻撃する。
コノハ/佐綾此巴(さあやこのは)
〇 ヴェロキラプトリ Velociraptornis antirrhopus
・キツネ格動物。
・ヒトには〝トリトカゲ Velociraptor antirrhopus〟と呼ばれている。
〇 エレメント:酉(さん)
・酸性の液体を生成する。
コノハ/佐綾此巳(さあやこのみ)
〇 ハルシュカヴェロキラプトリ Velociraptornis halszka
・タヌキ格動物。
・ヒトには〝ハルシュカトリトカゲ Velociraptor osmolskae〟と呼ばれている。
〇 エレメント:鹵(えん)
・鹸性の液体を生成する。
アン/迫倉餡黒(おいくらあんこ)
作中でアンが登場する場面はそう多くない。絶えず連絡を取り合っていたのは長女のモモくらいで、それ以外は顔を合わせることもほとんどなかったくらいだ。というのも、アンはおよそ十五年前に死別した夫と再会したい一心で、藁にも縋る思いで、新たな霊具を探す度に出ていたのだ。
クリは実は生きている、そんな連絡が来たのは、アンが内陸アジア地域に滞在していた頃だった。急ぎ駆け付けた東京都の環境省は、建物の一部が倒壊しており、その中にクリの姿はあった。クリは娘のスミレを庇う形で倒れていたが、スミレの首は無惨に切り落とされており、クリ自身も瀕死の傷を負っていた。
アンはクリを抱き締めて言った。自慢の娘だ、と。かつての過ちは許されることではなくとも、こと最期のクリの行動は、ひとりの親として立派だったから。
〇 ヘルオニダチョウ Tyrannostruthio manospondylus の成躰
・原棲ヒト格動物。
・ヒトには〝オウサマタイラントカゲ Tyrannosaurus rex の亜成体〟と呼ばれている。
〇 エレメント:歹(し)
・触れた者の命を奪う黒い炎のようなものを操る。
サクラ / 連賀咲桜(れんがさくら)
幼少期からずっと、基本的にレアのことしか見ていない。レアが最近知り合ったばかりの子となんか付き合い始めた、と知った際は、当人たちの前でも動揺を隠せなかったくらいだ。
レアがララミディアから帰還したことを聞きつけたサクラは、すぐさまアンに暫しの別れを告げ、閉鎖城に飛んで帰ってきた。レアを呼び出して強引に誘惑しようとするも、始終ココが第一のレアは全く動じることはなかった。尤も、それで諦めるようなサクラではないが。
〇 シサマイ Ankylotarx magniventris
・アルマジロ格動物。
・ヒトには〝ツチトカゲ Ankylosaurus magniventris〟と呼ばれている。
〇 エレメント:米(はな)
・真っ白な花吹雪のような攻撃。実際には花などではない。
リンゴ/芯橋りんご(しんばしりんご)
〇 サンズガイ Pachycephale stygimoloch
・ブタ格とブチハイエナ格の複合型動物。
・ヒトには〝イシアタマトカゲ Pachycephalosaurus wyomingensis〟と呼ばれている。
〇 エレメント:勺(くすり)
・虚像の幻覚で敵を攻撃する。
アンズ/絡呂初杏(からめろそあ)
〇 メイスツチノハシ Panoplocephale labryotankea
・スマトラカモシカ格動物。
・ヒトには〝デンヴァルマガリトカゲ Denversaurus schlessmani〟と呼ばれている。
〇 エレメント:斗(ほし)
・恒星の力で戦う。
キ/枢山きなこ(くるるやまきなこ)
アンの妹。それゆえに苗字はアンの旧姓と同じ。
〇 クワズル Alanqa quetzalcoatl
・リカオン格動物。
・ヒトには〝ケツァルコアトルツバサトカゲ Quetzalcoatlus northropi〟と呼ばれている。
〇 エレメント:光(ひかり)
・光る熱線で敵を攻撃する。
メロン/絡呂めら(からめろめら)
〇 ランスサンキミハシ Triceratops phalancea
・ヒグマ格とサイ格の複合型動物。
・ヒトには〝ミヅノトカゲ Triceratops prorsus〟と呼ばれている。
〇 エレメント:月(つき)
・衛星の力で戦う。
カエデ/枢山楓(くるるやまかえで)
〇 ミリン Deinocheirus mirificus
・アンドレウシ格動物。
・ヒトには〝ゴウワントカゲ Deinocheirus mirificus〟と呼ばれている。
〇 エレメント:几(かぜ)
・風で敵を攻撃する。
クリ/迫倉くり(おいくらくり)
およそ二十年前、クリの親友だったミルクが、ヒトによって攫われたことが、悲劇の始まりだった。クリは母親のアンに、ミルクを助けに行くよう懇願したが、アンは〝家族を残して危険を冒すことはできないし、そもそも恐らくもう死んでいる〟として、クリの頼みを断った。
母親に自分の気持ちが理解されていないと感じたクリは、アンと喧嘩を繰り返すようになった。親友との別れに、母親との衝突。これらの重みは、当時まだ十八歳という多感な時期だったクリの心を破壊するには、十分だった。
この頃、閉鎖城は、第一次閉鎖城爆撃によって、ほとんどの若い男性が死んでしまい、残っていたのはカキだけだった。クリは衝動的に、実の弟であるカキを襲って妊娠してしまった。怒ったアンは生まれた子どもことスミレを取り上げて、クリから引き剥がした。すると、クリは再びカキを襲って妊娠し、そのまま東京都へ逃亡してしまったのだ。
クリが逃げ出した理由はいくつか考えられる。ユキから明確な殺意を向けられたことや、精神的に追い込まれたカキが自殺未遂にまで及んだことで、罪の重さに耐えられなくなったのだろう。
〇 カルラ Therizinothronychus garuda
・キリン格とクロクマ格の複合型動物。
・ヒトには〝カマキリトカゲ Therizinosaurus cheloniformis〟と呼ばれている。
〇 エレメント:心(とき)
・五次元系の属性。時間を操作することで、自身や物体を分裂させることができる。また、瞬間転移も可能。
ブドウ/梅通葡萄(つゆりぶどう)
〇 トリマ Raphus cucullatus
・ヒグマ格動物。
・ヒトには〝モーリシャスドードー Raphus cucullatus〟と呼ばれている。
〇 エレメント:川(かわ)
・流星の力で戦う。
〇 ディアトリマ Gastornis diatryma
・ヒグマ格動物。
・ヒトには〝ディアトリマ Gastornis gigantea〟と呼ばれている。
〇 エレメント:云(くも)
・隕星の力で戦う。
〇 ニュウドウコカトリ Cocatornis anzu
・ヒグマ格動物。
・ヒトには〝タマトリトカゲ Anzu wyliei〟と呼ばれている。
〇 エレメント:雨(あま)
・彗星の力で戦う。
ユカリ/連賀紫(れんがゆかり)
〇 カロンハドロハシ Hadromagnus kalonolophus
・ヘラジカ格動物。
・ヒトには〝エドモントンカモノハシトカゲ Edmontosaurus annectens〟と呼ばれている。
〇 エレメント:口(おと)
・音で敵を攻撃する。
コロナ/杠早比奈(ゆずはやころな)
姉を失った悲しみと、霊具を手にした際に流れ込んできた刺激的な記憶によって、狂乱状態になって森を彷徨っていたところを発見される。なお、この記憶の主こそ、生前のライムの親の仇である。
ライムは森でコロナの姿を認めた途端、怪異のように怒り狂って暴れ出した。普段の明るい笑顔は見る影もなく、その蔓の連撃で、体の原形がなくなる寸前までぐちゃぐちゃにした。仲間が止める隙もなかった。
〇 コロラドファグ Epanterias amplexus
・トラ格動物。
・ヒトには〝コロラドオオトカゲクイ Allosaurus amplexus〟と呼ばれている。
〇 エレメント:日(ひ)
・太陽のように煌めく炎で敵を攻撃する。
マグナ/迫倉呈亞(おいくらてぃあ)
マグナの性格をひとことで言い表すなら、冷酷だ。普段のおっとりとしたお嬢様口調も、彼女の残忍性を隠すどころか、むしろより強調するばかりだ。実際、彼女が敵を楽に死なせることはまずない。
いわく「死ぬ間際の悲鳴というのは、死への恐怖ではなく、単に耐え難い苦痛への脊髄反射のようなもの.あなたの脳内は今、その苦痛で満たされていますわね?残念乍ら、これでは復讐が果たせません。何度も息を吹き返させて、正気に戻して、再び死にたくないと懇願させる.それが本当の意味での復讐ですわ」と。やすりでじりじりと削るように、少しずつ痛みを与えて、最後には最も苛烈な手段で止めを刺すのだ。
マグナの兄、桃李は、およそ十五年前の第二次閉鎖城爆撃で死んだとされる。だが、兄の死を受け入れられないマグナは、彼が生きている可能性に懸けて、長い間ずっと東京都で潜入調査をしている。なお、桃李はアンの夫だ。
そして、五年前。ココの身代わりになって死んだはずだったクリは、実際にはマグナによって秘密裏に匿われていた。このことをアンやモモが知らなかったのは、クリが口止めしていたからだ。
ところが、そのクリが再び行方をくらましたことで、マグナはやむを得ずアンに連絡。二人がクリを見つけたときには、既に瀕死状態で、さらに、側には首を切り離されたスミレの亡骸もあった。
クリは命懸けでココを守っただけでなく、もうひとりの娘であるスミレの命も、必死で守ろうとしていたのだ。そしてその行動は無駄ではなかった。なんと、二人が駆け付けた時点で、まだスミレの意識はぎりぎり残っており、アンの瞬間転移能力で時間の止まった氷の中に閉じ込めることで、なんとか延命させることができたのだ。
あと数秒でも遅ければ、それは不可能だった。
〇 ヤマタトリ Salamandrus tourovorus
・キョウシ格動物。
・ヒトには〝エドマルクマダラトカゲ Torvosaurus tanneri〟と呼ばれている。
〇 エレメント:辛(かれえ)
・熔岩で敵を攻撃する。
クルミ/梅通琥珀(つゆりこはく)
ララミディアで殺された夫の仇を討つため、高坂という男を探して東京都を訪れてから、少し経った頃。リノとの運命的な出会いによって、クルミの目的は復讐の達成から、彼女を守ることに変わっていった。
〇 ティアマトリ Allotyrannostruthio tiamart の成躰
・ライオン格動物。
・ヒトには〝ウモウタイラントカゲ Yutyrannus huali〟や〝チュウカリュウチョウ Sinosauropteryx prima〟と呼ばれている。
〇 エレメント:血(ち)
・赤色の水で敵を攻撃する。
リノ/高坂吏星(こうさかりの)
東京都生まれ、東京都育ちの、ちょっと頭が切れるだけのただのヒトが、当時まだ軍事省に操られていたミルクの助力によって、霊鳥として新たに生まれ変わった。
その目的の内ひとつは、クルミとともに生きていくこと。もうひとつは、リノの夢を理不尽に奪っていった者たちへの、当然の報復だ。
〇 ユラン Brachihelotitan altithorax
・キリン柄>ショウカコウゾウ格動物。
・ヒトには〝ダイオウトカゲ Brachiosaurus altithorax〟と呼ばれている。
〇 エレメント:不(どく)
・ブラックホールに似た黒い球体で敵を攻撃する。
ミルク/佐綾宮久(さあやみく)
後にクリが錯乱するきっかけとなった出来事、ミルクが東京都に拉致された事件の真相は、軍事省による霊鳥の改造計画だった。
ミルクは項に取り付けられた装置によって、行動を操作され、仲間であるはずの他の霊鳥たちと戦わされるという、長い悪夢を見ることになった。
しかしその間、ミルクの意識は完全に途絶えていたわけではない。止めを刺す直前に目を覚まして、どうにか助けることができた命も、数えられる程度にはある。
ヒガナ、アスラ、オロチ、イモリとの戦いもそのひとつだ。ミルクは彼女等4人の記憶と意識を、自身の能力で紙に写し取り、結果として奪ったのは肉体としての命だけ。後に4人は霊体のような形で、再登場を果たすことになる。
〇 オハチョウ Caudipteryx urodynamis
・マンドリル格動物。
・ヒトにも〝オハチョウ Caudipteryx urodynamis〟と呼ばれている。
〇 エレメント:巾(かみ)
・紙で敵を攻撃する。また、物体や概念を写し取る能力を併せ持つ。
ルリ/梅通瑠璃(つゆりるり)
〇 カレンダチョウ Compsostruthio prima
・パンダ格動物。
・ヒトには〝カレントカゲ Ornitholestes hermanni〟と呼ばれている。
〇 エレメント:干(かがみ)
・あらゆる力を反射する。
登場人物(記憶と意識だけを写し取られた霊鳥)
ミカン/昏井罔佳(くれいあみか)
最期の瞬間を苦しみだけで満たしたくないから、痛みで何もわからなくなる前に介錯を。そうレアに懇願したのが、ミカンの最期の言葉だった、はずだった。
レア自身も知らなかったが、実際には、ミカンの記憶と意識はレアの能力で紙に写し取られていた。桃李との最終戦で、たとえ意識体のみでもレアと再会を果たせたことは、ミカンにとって最大の祝福に他ならなかった。
〇 リエイリン Amicagraphica leaellyn
・ワオマングース格動物。
・ヒトには〝リエイリントカゲ Leaellynasaura amicagraphica〟と呼ばれている。
〇 エレメント:糸(いと)
・糸で敵を攻撃する。
ヒガナ/彼岸奈(ひがな)
〇 ジムマドセンロア Epanterias jimmadsen
・ライオン格動物。
・ヒトには〝ジムマドセンオオトカゲクイ Allosaurus jimmadseni〟と呼ばれている。
アスラ/有守(ありす)
〇 ゲリオン Kerbelophus dentisulcatus
・ジャガル格動物。
・ヒトには〝ツノトカゲ Ceratosaurus dentisulcatus〟と呼ばれている。
オロチ/鈴弥(りび)
〇 オルトロチ Hydrus orthorochus
・イヌ格動物。
・ヒトには〝ニマイトサカトカゲ Dilophosaurus wetherilli〟と呼ばれている。
イモリ/庵(いおり)
〇 ヤマタトリ Salamandrus tourovorus
・キョウシ格動物。
・ヒトには〝エドマルクマダラトカゲ Torvosaurus tanneri〟と呼ばれている。
用語
霊鳥
スズメやツバメといった鳥の種ごとに存在する化身。なお、ここでいう鳥には、ヒトによって〝鳥以外の恐竜〟と呼ばれている動物も含まれる。
彼等の実態は、何か超常的な存在などというわけではなく、体の構造はヒトと何ら変わらない。霊具というアイテムを手にしたことで、鳥の記憶と、鳥に変身する力を与えられているにすぎないのだ。
ただ、記憶はいうなれば前世であり、このためにほとんどの霊鳥の自認は〝人間〟ではなく〝鳥〟であり、ヒトとは全く別の存在というのが、彼等の共通認識になっている。
また、霊鳥の霊具は全て、刀剣などの刃物系の武器の形をしている。霊獣や霊竜といった、他の種族の場合はそうではない。
霊具
前記したとおり、霊鳥を始めとする精霊種族は、みな霊具というアイテムによって力を得ている。
そもそも、本作の舞台は、正確には〝とある科学者が核戦争による終焉を避けるために造り出した新しい宇宙において138億年かけて再現した現代日本〟であり、要するに現実の世界といっても時系列的には約138億年も先の話なのだ。
科学者はヒト遺伝子を閉じ込めたカプセルを新宇宙に遺した。それを発見したのが〝恐竜人間〟こと閉鎖城に暮らすトリであり、その閉鎖城でその遺伝子カプセルから造られたのが、レアやココを始めとする住人たちだ。
霊具というのは、ひとつの宇宙の中に二種類生まれてしまったヒトという種族を、一種類に減らすために、宇宙そのものが生み出したアイテムであり、それゆえに閉鎖城の住人にしか使用ができないのだ。
鳥
私たちヒトが〝鳥〟と呼んでいる動物だけでなく、私たちヒトが〝鳥以外の恐竜〟と呼んでいる動物も含まれる。
本作は現実世界をそのまま舞台としているため、当然、現実でヒトが〝恐竜〟や〝ティラノサウルス〟と呼んでいる動物のことを、作中でもヒトは〝恐竜〟や〝ティラノサウルス〟と呼んでいるわけだ。
学術的な前提知識にはなってしまうが、そもそも、ヒトによって〝恐竜〟と呼ばれている動物の中には、ヒトによって〝鳥〟と呼ばれている動物と、ヒトによって〝鳥以外の恐竜〟と呼ばれている動物の、両方が含まれる。
そして、ヒトによって〝鳥以外の恐竜〟と呼ばれている動物の多くは、羽毛を始めとする、現生の鳥と共通する特徴をもっていたことが、多くの研究から明らかになっている。
ところが、そもそも〝竜〟や〝サウルス〟とは、本来〝トカゲ〟を意味する言葉であり、これは、ヒトが勝手にそう呼んでいるだけ、といえる。
この、ヒトが勝手にそう呼んでいるだけ、という考え方は、本作における難解な設定を理解する上で、非常に重要となる。
アン/迫倉あんこ
Vtuberとしての活動
前記した本作に登場する霊鳥のひとり「アン/迫倉餡黒」の、下の名前をひらがな表記に変えた「アン/迫倉あんこ」の名義で、作者の方がVtuberを活動をしている。2024年現在で、活動開始から5年目になる。
デマによる被害
ただ、同氏はたびたび恐竜界隈、古生物界隈の多数のアカウントによって、デマによる悪評や理不尽な炎上の被害を受けている。遡れば4年前から、全て合わせれば数十件を超える件数だ。
本記事で説明している通り、本作の世界像や用語の設定は非常に難解であり、しかも作者としてではなく、その作品に登場するキャラクターとして情報発信をやっているため、ひとつの発言からその裏を読み解くのが非常に困難であるという性質があるのだ。
とはいえ、いずれも個人がそれぞれ最低限のネットリテラシーを見につけることで、簡単に減らせる事案であり、当人の活動方針などに問題があるとするのは、些か筋が通らない話だろう。