概要
控車が連結される目的としては以下のものがある
- 曲線が多い貨物駅や専用線などで連結器の偏向を減らし、連結作業を容易にするため。
- 鉄道連絡船へ客車や貨車を積み込む際に重い機関車が可動橋へ進入してバランスを崩さないようにするため。
- 車長よりも長い積み荷を積んだ貨車や車体が連結器よりも先に伸びている車両を牽引する際に張り出し分を補償するため。長物車で代用されることもある。
- 架線が張られていない区域へ電気車両で車両を押し込む際、パンタグラフを搭載した車両が架線の張られていない区域へ入り込まないようにするため
- オープン構造のトロッコ列車において荒天時や複線区間などトロッコ車両に乗車できない区間で乗客が待機するための密閉構造の車両のこと
- 動態保存中の車両や私有車を回送する際に付属品や添乗員を載せるため
- 連結器の異なる車両同士で連結させる際のアダプター
控車として設計された車両はヒの記号を与えられる。多くは古くなった無蓋車から側板を取っ払って柵を設けたり、作業員の休憩用に屋根を取り付けたりといった改造を施す。
近年は控車を必要とする事例が減り、2002年度までにヒの記号を持つ控車は消滅した。
2.の控車
青森、函館、宇野、高松など鉄道連絡船との接続駅では郵便車・荷物車・貨車をそのまま船へ積み込む車両航送を行っていた。
通常ヒーリングポンプによって沈んだ分を修正しているが、重量のかさむ機関車が入り込むとヒーリングポンプでは修正しきれず、踏面が不安定となって空転や滑走が起き、脱線や激突の危険が生じる。このため機関車が船や可動橋へ極力入り込まなくても済むように控車を連結していた。
可動橋の強度の関係で機関車を入れられないから控車を挟んでいたというのは誤り。
4.の控車
車両基地や工場などに架線の張られていない無架線地帯が時折存在する。そういった場所へパンタグラフを上げたままの電気車両が入るとパンタグラフが上がりきって損傷してしまう(通称:バンザイ事故)
そういった事故を防ぐため、電気車両で無架線地帯へ車両を押し込む際に控を何両か挟む事がある。
代表例として伊豆箱根鉄道大雄山線の車両を全般検査等で駿豆線沿線の大場工場へ入出場させる際に小田原-三島間で設定される甲種輸送列車の機関車次位にコンテナ車を連結している。
このコンテナ車は小田原駅構内の伊豆箱根-JR渡り線に架線が張られておらず、牽引する電気機関車が渡り線に入ってパンタグラフを損傷しないようにするために連結される。
7.の控車
勾配区間での補助機関車連結、異種電化区間、非電化路線への乗り入れを目的として連結される。被牽引車が電車の場合は電源車を兼用する事例も多い。
事業用車として用意されることもあるが、営業用の客車や貨車を流用する事例もある。
- セノハチで補助機関車のEF61と153系を連結するため、片側の連結器を自動連結器から密着連結器へ交換したオヤ35が用意された。
- 直流対応の151系を交流電化の博多へ乗り入れさせるため、交直両用の481系が落成するまでの暫定措置として電源供給用控車としてサヤ420が用意された。
- 電車の153系急行汐風と80系準急白浜を非電化の房総東線、房総西線へ乗り入れさせるため、DD13との間に電源車兼用のクハ16を連結。
- 非電化の豊肥本線水前寺駅へ電車特急有明を乗り入れさせるため、電源車兼用の控車としてスハフ12・ヨ28000が使用された。
- 169系を使用して小海線を含む区間で運転された臨時快速葉っピーきよさとや信州循環列車は、小海線内でのサービス電源供給用としてスハフ12を使用。169系の連結器は密着連結器から密着自動連結器へ交換。
- 1988年に来日したオリエント急行はネジ式連結器を装備しており、そのままでは日本の自動連結器と連結できないため、連結アダプタ兼備品倉庫として片側の連結器をネジ式連結器に交換した20系オニ23形とマニ50を用意し、編成の前後へ連結した。
- ゆうマニことマニ50 2186はディーゼル発電機と双頭連結器を装備しており、廃車回送時の控車として連結されることも多かった。
- フル規格の新幹線電車を甲種輸送する際、嵩上げされた車高へ対応させるため機関車との間に大物車のシム1を連結していた。
- 国鉄時代は機関車が気動車を牽引する際は機関車と被牽引車の間に控車として客車や車掌車を連結させていた。これは気動車の台枠や連結器の強度が比較的弱く、事故に繋がる恐れがあったためとされる。