概要
かぢばあたるによる神々のトライフォースのコミカライズ作品。ストーリーは原作を意識しているが数々のオリジナルキャラクターや独自設定によりほぼ別物となる。
著者はこれを手掛ける前に夢をみる島のコミカライズも担当している。
本作の特徴として以下の要素がある。
- マスターソードに多数の設定が加えられている⇒マスターソード(コミックス版ゼルダの伝説)
- リンクの1人旅ではなく3人の仲間がパーティーに加入する
- バトルシーンが非常に多く、男同士の熱い友情に焦点が当てられている
- 全編に渡ってシリアスなため原作に登場するキングゾーラや魔法屋のお婆さんなどキャラが強い人物は登場しない
登場人物
パーティーメンバー
- 【勇者の子孫】リンク
伯父ザンジの下で剣技を学ぶ少年。勝ち気でヤンチャな性格。実力は既に伯父を超えているが命のやり取りをしたことがないため、殺意を持った敵との戦いではプレッシャーを感じていた。しかし次第に勇者に相応しい強さを手にしていく。正体は封印戦争の時にガノンと戦った勇者の子孫。
年齢は不明だが劇中では子供扱いされることが多い(かぢばは13、4歳くらいのイメージで描いていたとのこと)。原作のように盾やアイテム、魔法は使わず剣と体術のみで戦う。
かぢばは「勇者としての使命で戦う主人公には共感できない」「リンク一人の英雄伝説にはしたくない」というこだわりがあり「好きな女の子ために戦う。仇討ちのために戦う」などリンクに動機となる強い感情を与えたという。下記のオリジナルキャラクターたちが仲間になるのも、リンク1人ですべてを解決するのは嘘臭さがあると考えたため。
- 【カカリコ村の武闘家】ラスカ
メイン画像左下のバンダナ少年。
詳細はリンク先を。
- 【王室騎士団長】アルジュナ
メイン画像左上の青年。
詳細はリンク先を。
- 【ガノンの元参謀】カニカ
メイン画像右上のメガネ。2巻のみパーティーに加わる。
詳細はリンク先を。
サブキャラクター
- 【七賢者の血を引く王女】ゼルダ姫
アグニムに狙われるお姫様。リンクとは同い年だが年齢は不明。本作では序盤のみリンクを嫌っているという、数あるゼルダ姫の中でも珍しいキャラ付けがされている。
アグニムの野望には気付いていたが、寝所に突撃して来たリンクをアグニムの手先と誤解して剣を向けるなどそそっかしい性格。(剣っぽい感じがする)刀を武器にしており腕前もそれなりに立つ。
後にホームシックに掛かったことで「身内を失いながらも戦うリンクさんは強い人」と見直すようになった。ただしリンクとは恋愛関係にならない。
裏設定ではアルジュナやザンジからアグニムについて注意喚起されており、リンクにいきなり斬り掛かったのも前もって警戒していたため。
ゼルダ姫の初登場シーンには驚いたというファンレターが何通か来たとのこと。
- 【リンクの師匠】ザンジ
リンクの伯父さん。ハイラル城に仕える剣術指南役にしてハイラル最強の剣士。リンクに回転斬りを教えた師であるが強力過ぎるため普段の使用は控えさせていた。
1巻にてアルジュナと共にアグニムの野望を打ち砕こうとするが返り討ちに遭い敗死する。
名無しはまずいとしてザンジという名前を付けた。しかし由来は覚えていないとのこと。
- 【ラスカの師匠】ラスカの父親
カカリコ村で暮らす豪放磊落なオヤジさん。義理人情や浪花節という言葉がぴったりな人物。
リンクを助けに行きたいが自分まで指名手配されたくないと迷うラスカに稽古を付けることで背中を押した。劇中の描写からラスカ以上の実力者であり多数の弟子がいる模様。ザンジとも親交があった。
- 【アルジュナたちの協力者】神父
教会の神父。教会にゼルダ姫を匿い、邪悪な者を寄せ付けない《絶対対魔結界》を展開する。しかし地下には結界が張られておらず、このためハイラル城側の隠し通路からなら教会に入れるという致命的な欠点がある。
- 【七賢者の血を引く王】ハイラル王
ゼルダ姫の父親。優しい顔立ちの細面な男で、どこか頼りない感じを受けさせる。アグニムを信用し切っているため良いように利用されている。
- 【七賢者の血を引く娘】イリエル
ガモースに囚われていた少女。賢者としての威厳はあまりなく、陽気でお転婆なギャルっぽい感じがする。
- 【現代の七賢者】七賢者の娘の親と祖父たち
厳かな雰囲気を持った中年や老人。アグニムが討たれた後に現代の七賢者たちを率いてハイラル王にガノンの脅威を伝え、自分たちの行いが今回の原因になったのなら責任を取るべきだと意見する。
老齢の賢者が何人かいるがサハスラーラがいるのかは不明。
マスターソードを守る者たち
- 【勇者の紋章の守護者】デグアモス
1巻に登場。マスターソードを引き抜くために必要な紋章を守護していたモンスター。最初の紋章を守っており、3体のデグアモスから繰り出されるフォーメーションでリンクを苦戦させた。リンクによって1体が倒されるが、既にリンクは疲弊しておりそのまま追い詰める。しかし駆け付けたラスカによって阻まされ、残りの2体もリンクとラスカの同時攻撃によって撃破された。
- 【勇者の紋章の守護者】ラネモーラ
1巻に登場。マスターソードを引き抜くために必要な紋章を守護していたモンスター。二つ目の紋章を守っており、砂地から飛び出したところをリンクの斬撃によってあっさりと倒された。
- 【勇者の紋章の守護者】デグテール
1巻に登場。マスターソードを引き抜くために必要な紋章を守護していたモンスター。最後の紋章を守っており、リンクとラスカに死を意識させるほどまで追い詰めた強敵。
ヘラの塔にてリンク&ラスカと交戦し、頑丈な皮膚によって一切の攻撃を無効化。逆転を賭けて放たれたラスカの《暗打双撞掌》すら無効化し、ラスカを締め上げて絶望させる。しかしリンクが伯父から習った禁断の奥義・回転斬りを思い出したことで肉体を斬り裂かれ敗北した。
- 【退魔の剣に宿る霊魂】先代勇者
マスターソードに宿っていた青年剣士の亡霊。なぜかリンクとよく似た戦い方をする。お供には小さな妖精を連れている。
詳細はリンク先を。
ガノン陣営
- 【ガノンの側近】光の司祭アグニム
ガノン復活のために暗躍する中年の司祭。光の世界では赤い服、聖地では白い服で登場する。リンクの伯父ザンジを殺した仇でもある。
独自要素として武術の構えを取ったり、リンクの斬撃でも捕らえられない体捌きを見せたり、無数の光の輪で縛り付ける《光術擒拿網(こうじゅつさんだもう)》という術を披露している。
600年前に先代勇者と面識があり、自分でも理由は分からないがリンクに脅威を感じていた。
連載が伸びた影響でアグニムの設定が変わっているので矛盾が生じている。
- 【封印戦争の遺物】レプリカモンスター
魔術によって造られたモンスター。ゴーレムドライバーの術によって使役される操り人形。劇中ではアグニムやガノンのレプリカモンスターが登場した。オリジナルに劣るがそれでも凄まじい強さを持つ。特にガノンのレプリカは最近製造された新型。
- 【アグニムの配下】ガモース
2巻に登場。闇世界において最初に戦ったアグニムの配下。イリエルが閉じ込められたクリスタルを守護していた。
飛行能力によってリンクたちを苦戦させるが、ラスカの針攻撃とアルジュナの下突きでダメージを受け、怯んだところをリンクのマスターソードで一刀両断にされた。
- 【アグニムの配下】ブラインド
2巻に登場。自信家で策士を気取っているが実態は功名心が強い小者。
- 【アグニムの配下】ゲルドーガ
3巻に登場。4つ目のクリスタルを守っている。小さい目玉はアルジュナの剣に貫かれ、本体はラスカの一撃によって風穴を空けられ敗死した。
- 【アグニムの配下】デグロック
3巻に登場。3つ首の巨大な亀。最後のクリスタルを守護していたがリンク、ラスカ、アルジュナの総攻撃で首を斬り落とされて敗北する。
- 【不老不死の魔王】魔盗賊ガノン
600年前、聖地からハイラルに攻め込んだ伝説の魔王。黄金の聖三角体トライフォースを掌中に収めた唯一の人物であり、願いによって不老不死の肉体を得ている。更に歪んだ願いのエネルギーは聖地の時間を止めてしまい、そこにいる者たちを不老にしてしまった。
当時の人々はガノンに対抗するためにマスターソードを鍛えたが、先代勇者でも傷一つ付けられなかったため七賢者によって聖地のピラミッドに封印された。
あらすじ
1巻
不思議な力で病気の人間たちを救う司祭アグニム。颯爽と現れた救世主を、人々は元よりハイラル王も絶大な信頼を寄せていた。しかしアグニムの正体は、600年前に起きた封印戦争の時に聖地に封印された魔王ガノンの先兵だった。人々を救う一方で七賢者の末裔たちを捕らえて聖地に送り込んでいた。
そんなアグニムの野心を見抜いていたのがゼルダ姫、騎士団長アルジュナ、リンクの伯父ザンジだった。アグニム自らゼルダ姫の寝所まで赴こうとするが、アルジュナとザンジに阻まれる。アグニムの敵ではなく二人は魔法弾の前に容易く打ち倒され、アルジュナは重傷を負い、ザンジは絶命する。
ザンジの後を付けていたリンクから仇討ちのため勝負を挑まれるが、先の戦いで魔力を使い果たしていたため苦戦を強いられる。そこで「ゼルダ姫は既に捕らえた」と言ってリンクを騙し、ゼルダ姫の寝所まで突撃させる。
扉を突き破って来たリンクを前にゼルダはアグニムの刺客だと思い込んでいきなり斬り掛かって来る。二人が言い争っている間にアグニム率いる衛士隊がリンクを包囲するが、リンクはゼルダ姫を抱きかかえると窓の外へと飛び降りて姿を消した。
リンクの乱暴な振る舞いに怒ったゼルダは平手打ちをお見舞いするが、今はそんなことをしている場合ではないと叱咤され手を引かれる。突然のことにゼルダ姫は彼に異性を感じ胸を高鳴らせてしまう。
神父の元を訪れて間もなく騎士団長アルジュナも城の隠し通路から教会へと逃れて来る。
リンクは一般人のため巻き込みたくなかったと語るアルジュナだが、ザンジが死んでしまってはそうも言っていられずアグニムの目的を話す。
伯父の死に泣き疲れて眠るリンクを見たゼルダ姫は「まだ子供の上に、身内の死に涙する男子は信用出来ない」と口にするがアルジュナに諫められる。実力だけなら騎士団長である自分どころか剣術指南役のザンジよりも上と言われるが、ゼルダ姫は信じることが出来なかった。
翌日。気力を充実させたリンクはアグニムを倒すべくマスターソードを探しに向かう。
リンクはゼルダ姫の誘拐とザンジの殺害という無実の罪を着せられ手配書が回っていた。行く先々でお尋ね者扱いされてしまうが、カカリコ村に住むラスカとその父親だけはリンクを匿ってくれた。
ラスカの父親もアグニムを信用していたが、リンクがザンジを殺したという話も信じられなかった。事情を聞いた父親はアグニムに激しい怒りを燃やす。だがラスカだけは冷めたような、怯えたような態度だった。
ラスカはリンクに関われば自分までお尋ね者になるとして腰が引けていたが、父親から手合わせという形で活を入れられ「リンクを助けたい」という気持ちに従い、リンクの仲間になった。続けて戦線に復帰したアルジュナを加え、リンクとラスカは2つのダンジョンを攻略して紋章を手にする。
最後の紋章はヘラの塔にあった。アルジュナはリンクとラスカの二人だけで取って来るように告げる。
リンクもラスカも子供とは思えないほどの実力者だが、命を賭けた戦いをしたことがなく実戦経験が不足していた。二人の振る舞いからアルジュナはそれを見抜いていた。
アルジュナの予想通り二人は塔のボス・デグテールに歯が立たず、“死”を実感するほどの苦戦を強いられる。堅い皮膚の前にはラスカの暗打双撞掌も通用せず窮地に陥る。
リンクはここにはいない伯父に助けを求め、かつて教わった禁じ手“回転斬り”の存在を思い出しデグテールを撃破した。
その頃、ゼルダ姫は家族と引き離されたことでホームシックに掛かっていた。それによって「身内を失いながらも戦うリンクさんは強い人」と見直した。
そこへアグニムが教会に侵入して来る。ゼルダ姫は剣を手に立ち向かうが容易く気絶させられ、立ちはだかった神父も魔法で吹き飛ばされて無力化される。
神父は水晶を使ってアルジュナに連絡を取る。アルジュナはリンクにマスターソードを引き抜かせに向かわせ、自身とラスカはハイラル城に殴り込む。
リンクがマスターソードに近づくと青年剣士が現れ襲い掛かって来た。自分と似た戦い方をする青年に翻弄されるリンクだが食い下がり続ける。
青年はマスターソードを守護する者であり、リンクならギリギリ資格があるとしてマスターソードを持ち去ることを認めた。
2巻
ゼルダ姫を手中に収めたアグニム。そんな彼にハイラル王は感謝の言葉を送るが、アグニムにとって彼の存在は用済みでもあった。本性を現したアグニムは王を殺そうとするが駆け付けたリンクによって阻まれ撤退する。命を救われたハイラル王は、真の悪が誰なのか理解した。
一方、ラスカとアルジュナは城外で兵士たちを殺さないように戦っていたことが仇となって多勢に無勢となる。しかしラスカの父親率いる弟子たちが救援に駆け付け、その間にラスカとアルジュナは城内に突入する。
リンクは光術擒拿網によって身動きを封じられ、眼の前でゼルダ姫を聖地に送られてしまう。しかし激しい怒りから気合で拘束術を破り、ついに伯父の仇と対峙する。遅れてラスカとアルジュナが駆け付けるが、リンクの意を汲み取ったラスカは仇討ちに手出しは無用とアルジュナと共に傍観する。
ゼルダ姫を連れて逃げてから5日間、死線を潜り抜けたリンクの剣技はアグニムを苦戦させるほどに成長していた。
本気を出したアグニムはリンクの斬撃を避けて距離を取り、伯父を殺した魔法弾で勝負を決めようとする。しかしリンクは、マスターソードで跳ね返してして逆にアグニムを消滅させた。
だがアグニムは消滅の寸前に力を振り絞り、リンク、ラスカ、アルジュナを聖地へと引きずり込んでしまった。
見知らぬ大地に降り立った3人はガノン配下の魔物たちに追い掛けられるが、ガノンの元参謀を名乗る青年カニカが現れ匿ってくれた。
カニカは600年前、光の世界のとある村で暮らしていたがガノンによって拉致同然に参謀にされ聖地まで連れて来られてしまった。元の世界に戻りたいという気持ちは同じため手を組むことを提案される。
囚われのゼルダ姫たちを助けるべく各地のダンジョンを目指す一行。だがカニカは学者のため戦闘力がなかった。それを根性無しとなじるラスカ、言い過ぎだと諫めるリンク。二人は言い争いになるがカニカの介入によって和解する。
リンクもラスカも強者のため戦う力が無い者の気持ちを理解できずにいた。それを自覚した後はカニカを責めることなく守るようになる。
けれどアルジュナは、素性の知れないカニカを疑い続けていた。
最初のダンジョンでガモースを倒し、賢者の末裔イリエルを救出する。
彼女の口から七賢者の末裔たちは“血族封鎖の術”という自動防御術によってクリスタルに包まれていることが語られる。イリエルは一時的に姿を現していたが、末裔たちを解放するためには……というところでまたクリスタルに戻ってしまった。
マスターソードは使い手の想いに呼応して力を発揮する対ガノン用の兵器だった。本来なら刃が輝くことで威力を引き上げ、剣ビームを放つことが出来るのだがリンクには出来なかった。
リンクはその内出来るようになると暢気に構えていたのだが、ラスカとアルジュナがダンジョンのトラップによって壁に押し潰されそうになる。リンクは仲間を助けたいと思う気持ちからマスターソードを光らせ、壁の一部を破壊して二人を救出した。
実はこのトラップを作動させたのはラスカであった。ガノンを復活させるには末裔たちをクリスタルから解放する必要がある。そのためには覚醒したマスターソードが、それを扱えるリンクの存在が必要不可欠だった。
なかなかマスターソードの使い手として覚醒しないリンクに焦れたガノン陣営は、盗賊ブラインドを刺客として送り込む。
ブラインドは末裔に化けて「末裔たちはクリスタルから解放されてガノンの手に落ちた。もうハイラルに戻る方法はない」と嘘を吐いてリンクとラスカを仲間割れさせる。
調子付いて正体を現したブラインドはラスカを殺そうとするが即座に殴り倒され、続けて激怒するリンクに投げ飛ばされて敗北した。
今の話は本当かと問うリンクの質問には答えず、ブラインドは気絶する寸前に切り札を発動させた。
それは封印戦争時代に使われていた“ゴーレムドライバーの術”と呼ばれるものだった。魔術によって生み出したレプリカモンスターを使役するという術で、呼び出されたモンスターはガノンを模したものだった。
あらゆる攻撃が通じず圧倒されるリンクたち。しかしリンクの斬撃がたまたまレプリカの制御帯を破壊したことで偽ガノンは機能停止する。
だがリンクは崖の下まで落下してしまい、ラスカたちと離れ離れになってしまう。カニカもいつの間にか姿を消していた。
3巻(最終巻)
満身創痍のリンクは魔物たちに殺されそうになる。彼の窮地を救ったのは青年の霊魂であった。しかし魔物の数は圧倒的であり青年でも時間稼ぎがやっとだった。
青年はマスターソードの使い手であるリンクを死なすわけにはいかないと言い、お供の妖精もリンクに逃げるように言う。
だがリンクは拒否。自分を守るために戦う者を見捨てる人間に世界を救えるわけがない。その想いはマスターソードを今一度輝かせ、ついに剣ビームを発現させた。
魔物たちはリンクと青年によって掃討される。青年は「お前は私より少々優秀なようだ」とリンクを認め、去り際に自身がガノンと戦った先代マスターソードの使い手……リンクのご先祖様であることを明かした。
一方、ラスカとアルジュナは各ダンジョンを周って末裔たちを救出していた。リンクと合流を果たし、3人の同時攻撃でデグロックを倒し最後の末裔であるゼルダ姫を救出した。そしてマスターソードによって彼女たちをクリスタルから解放する。
血族封鎖の術が破られた影響はハイラル王たち現代の七賢者も感じ取り、テレパシーによってゼルダ姫たちと対話に成功する。七賢者と末裔たちで転移術を起動させればハイラルから増援が来るという。
しかしアルジュナは、その前にガノン陣営最後の砦であるガノンの塔を落とすべきと進言。敵側が何かしらの手段でガノンの復活を早めるかもしれないと危惧してのことだった。
ガノンの塔に乗り込んだ3人の前に意外な人物が姿を見せる。それは光の世界で倒されたはずのアグニムだった。
実はリンクが倒した“アグニム”はレプリカモンスターに過ぎず、ガノンの塔に陣取っているアグニムこそがオリジナルであった。しかもカニカを人質に取っており、マスターソードを手放すように脅しを掛けて来た。
言う通りにするリンクだがカニカはアグニムの側から離れなかった。そう、カニカはアグニムの配下でありリンクたちを監視するために送り込まれた間者だったのだ。
続けてアグニムは、自身を模した2体のレプリカモンスターを呼び出す。圧倒的不利な状況にも拘わらずリンクたちは膝を折ることなく戦い続ける。その姿に勇気をもらったカニカは反旗を翻し、レプリカの制御装置を破壊。そしてマスターソードをリンクに投げ渡した。
直後、カニカはアグニムによって心臓を貫かれ致命傷を負う。しかしアグニムもまた怒れるリンクのマスターソードに胸を刺され絶命した。
死の間際、カニカはなぜ裏切ったのか問われる。
本来ならカニカは王室学士に迎えられるはずだったが、その噂を聞き付けたのかガノン率いる盗賊団によって村を焼かれ、両親を殺されてしまった。
カニカは「トライフォースの力で両親を生き返らせ、ハイラルにも帰してやる」と言われアグニムに従っていた。また非力な自分とリンクたちを無意識に比較し、その強さに嫉妬していたのかもしれないと口にする。
当初ラスカはカニカを許すつもりがなかった。しかしそういう事情があるなら仕方ないと納得し、3人でカニカを看取った。
アグニムが倒れた直後、ガノンの封印に乱れが起こる。このままではいつ封印が解けてもおかしくないため、光の世界に一時撤退し戦力を固めてからガノンを迎え撃つという方針となった。しかし転送の術を起動するゼルダたちの前に残党である魔物の群れが出現。リンクと仲間たちが応戦に出る。
仲間たちは光の世界に戻ったが、リンクだけは帰ることを拒否。勇者として魔王と決着をつけるべくただ一人で封印地点(ピラミッド)に赴くという展開となった。
ガノンの封印は既に解けていたようでリンクがピラミッドに近づくといきなり攻撃を加え、足場を崩して内部に引き込んでから対峙する。
ガノンはトライフォースに不老不死を願ったことで不死身の肉体を得ていた。マスターソードでも傷一つ付けられず追い詰められるリンク。
リンクの動きが素早いと見たガノンは、闇を生み出す技によって周囲を漆黒に染め、リンクの視界を奪い圧倒する。
劣勢に立たされたリンクは「こんな時、仲間がいたらどう言うか」と考える。その想いは仲間たちの声援を届けさせた。
ラスカ『ケッ! やっぱ、おめーはインチキ勇者だぜ。ひっこんでな! オレがぶっ倒してやる!』
アルジュナ『頑張るんだ、リンク君! あきらめたら、そこで戦いは負けだぞ!』
ゼルダ姫『しっかりしてくださいリンクさん! あなたなら必ず勝てます!』
先代勇者『剣は扱うものじゃない。共に戦う仲間だ! 己と仲間を信じるんだ!』
ラスカの父親『気合いだ気合い――! ビビッたら負けよォ!』
伯父ザンジ『わしはおまえを…信じてるぞ…』
ガノンにはない力――仲間たちの想い。それによって支えられたリンクは心身ともに立ち直る。
そして仲間たちの想いがマスターソードの更なる力を引き出し、ガノンの不死身という特性を破るに至った。
最後の激突を制したリンクはガノンの胸を貫き、その状態から放った回転斬りによって決着を付けた。
リンクはトライフォースの新たな資格者として認められ、仲間たちの待つハイラルへと帰還を果たす。
その後、ハイラルを救った英雄として式典が行われたが「ガラじゃねえや」として抜け出し、伯父の墓参りに。
リンクは「剣のおかげで英雄になれた」ことをよしとせず、墓標代わりにマスターソードの台座に収めていた伯父ザンジ(リンクのおじさん)の形見の剣と入れ替える形でマスターソードを台座に戻す。そして追い掛けて来たラスカに見送られながらハイラルを旅立つのだった。
余談
元々は全12話(コミックス2巻分)で終わる予定であり、かぢばも「主人公たち3人でがーっとガノンを倒して終了」と考えていたという。しかし突然6話分の連載延長を告げられたことで慌ててストーリーを考えた。
当時のかぢばはオリジナル作品の連載をやりたいと編集にアピールしており、連載の延長はその機会が遠のくとして違った意味でショックを受けた。
またドット絵から背景などをイメージするのは難しいとのことで、メーカーの方に資料を求めたが一つももらえず、アシスタントと一緒に苦心しながら描き上げた。
著者によれば本作のエンディングから漫画版夢をみる島に繋がるとのこと。
著者はあとがきで「夢をみる島を超えられなかった」と述べている。
ラスカやアルジュナを登場させたのは「13、4歳の少年が1人でガノンを倒すなんて無理だろう」と考え、そのフォローのためとのこと。カニカが登場したのも聖地における案内役が必要と考えたため。
ガノンとのラストバトルは2話に渡って繰り広げられた。戦闘シーンは当時のメディアミックスの中でも長い方であり“ガノンとのラストバトル”という括りならば最長記録は破られていない。
またコミックスの巻数は夢をみる島と合わせると全5巻となる。これは姫川明のトワイライトプリンセスが刊行されるまではゼルダ漫画の中でも最も長い巻数だった。
関連タグ
ゼルダの伝説 神々のトライフォース ゼルダの伝説シリーズ(書籍作品版) レトロマンガ
リンク(コミックス版ゼルダの伝説) マスターソード(コミックス版ゼルダの伝説)
ガノン(コミックス版ゼルダの伝説) ガノンドロフ(コミックス版ゼルダの伝説)
リルトの誓い:同時期に連載していたメディアミックス仲間。